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2018-01-29(Mon)

【事例演習刑事訴訟法】第25問「伝聞法則⑶」

旧司と並行してになりますが,定評のある演習書にも目を通そうと思い,

刑訴については『事例演習刑事訴訟法』,いわゆる古江本をやることにしました。

この本をやり込んでいる人は学部でもローでも結構多い印象があります。

したがって,この本に書いてあることくらいはちゃんと書けるようにしないと,

本番で大変なことになってしまうのだろうということですね。

怖いわー。

≪問題≫
 検察官は,XのVに対する殺人の目撃者である外国人甲を取り調べ,Xの殺害行為の態様について詳細な供述調書を作成した。その後,Xは,殺人罪で起訴され,検察官は,第1回公判期日において,他の証拠とともに,甲の検察官に対する上記供述調書を,立証趣旨を「被告人のVに対する犯行を目撃した状況」として証拠調べの請求をしたが,被告人Xは当該供述調書を不同意とした。そこで,検察官は,上記供述調書の証拠調べを撤回したうえ,甲の証人尋問を請求し,裁判所は,これを採用し,第2回公判期日に甲の証人尋問が実施されることとなった。ところが,甲はオーバー・ステイで入管施設に収容され,第1回公判期日後間もなく,退去強制令書の執行により,母国である乙国に退去させられた(自費出国)。そこで,検察官は,甲の検察官に対する上記供述調書を刑訴法321条1項2号前段に該当する書面として,改めて証拠調べの請求をした。裁判所は,これを証拠として採用することができるか。

なんだか知らないですけど,古江本の問題って,日本語の文章が下手じゃないですか。

1文が長かったり,1文に主語が2つ以上あったり……

まぁそれは置いておいて,問題の検討です。

元ネタ的な判例はおそらく最判平成7年6月20日だと思います。

あの「手続的正義」とかいうワードでキメてきているやつですね。

かっこいいですね。僕も答案で書いてみたいです。「手続的正義」。

たぶんこういう視点でしか判例を読んでいないから,いつまでたっても勉強できるようにならないんでしょう。

≪答案構成≫
1.供述調書の伝聞証拠該当性
 →規範=形式説
 →該当
2.伝聞例外
 ⑴ 326条1項
  →不該当
 ⑵ 321条1項2号前段
  →該当
  but) 手続的公正の観点から問題
   →規範=最判平成7年6月20日
   →検討
3.結論

≪答案≫
1⑴ 検察官は,Xを取り調べた際に作成した供述調書(以下「本件供述調書」という。)を証拠調べ請求しているが,これが「公判期日における供述に代えて書面を証拠と」する場合であれば,伝聞証拠にあたり原則として証拠能力が否定される(320条1項)。そこで,本件供述調書は伝聞証拠にあたるか,伝聞証拠の意義が問題となる。
 ⑵ 320条1項の趣旨は,供述証拠は人の知覚,記憶,表現,叙述という過程を経ており,その各過程で誤りを生ずるおそれが高いにもかかわらず,反対尋問,偽証罪による制裁,裁判所による観察という真実性の担保が欠けることから,その証拠能力を否定する点にある。そこで,伝聞証拠とは,①公判廷外の供述を内容とする証拠で,②要証事実との関係で原供述の内容の真実性が問題となるものをいう。
 ⑶ これを本件についてみると,①本件供述調書の内容は,公判期日外で検察官がXに対して行った取調べにおけるXの供述であるから,公判廷外の供述を内容とする証拠である。
 また,②検察官の提示した立証趣旨は「被告人のVに対する犯行を目撃した状況」とされており,これを立証することにより,XがVを殺害したことが推認される。そのため,要証事実は,被告人のVに対する犯行を目撃した状況であり,これは甲が現場において知覚し,それを記憶し,取調べにおいて表現,叙述した内容を問題とするものであるから,内容の真実性が問題となる。
 したがって,本件供述調書は伝聞証拠にあたり,原則として証拠能力が否定される。
2.そうだとしても,本件供述調書について伝聞例外(321条以下)が適用され,例外的に証拠能力が肯定されないか。
 ⑴ まず,X側は,第1回公判期日において,検察官が本件供述調書の証拠調べ請求をした際に,不同意としている。したがって,326条1項の適用はない。(※1)
 ⑵ア.次に,検察官は,本件供述調書が321条1項2号前段に該当する書面として証拠調べ請求をしているので,この点について検討すると,本件供述調書は,検察官が甲を取り調べた際に作成したものであるから,「検察官の面前における供述を録取した書面」にあたる。そして,甲は,オーバー・ステイを原因として強制的に国外退去させられており,退去した日から5年間本邦に入国することができず(入管法5条1項9号ロ)(※2),継続的に,かつ,可能な手段を尽くしても公判期日に出頭させることができないから,「国外にいるため……公判期日において供述することができないとき」にあたる。そして,甲の「署名若しくは押印」があれば,321条1項2号の要件を充たす。
 そうすると,本件供述調書には,伝聞例外が適用され,例外的に証拠能力が認められるように思われる。
  イ.しかし,本件では,甲に対して実施予定であった証人尋問がされる前に,退去強制が行われ,証人尋問を実施できなくなっている。このような場合でも,本件供述調書の証拠能力を認めてもよいか。
   (ア) 刑訴法はその全体を通して手続的正義,具体的には手続的公正を要求していると考えられるところ,公判の場面においては,相手方当事者の論拠と証拠に抗弁する公正な機会が与えられることが求められる。このような機会が奪われるような場合には,手続的正義の観点から証拠能力を否定すべきである。(※3)
 具体的には,(ⅰ)検察官において供述者がいずれ国外に退去させられ公判準備又は公判期日に供述することができなくなることを認識しながら殊更そのような事態を利用しようとした場合や,(ⅱ)裁判官又は裁判所が供述者について証人尋問の決定をしているにもかかわらず強制送還が行われた場合など,供述者の検察官面前調書を証拠請求することが手続的正義の観点から公正さを欠くと認められるときは,これを事実認定の証拠とすることが許容されず,証拠能力が否定される。(※4)
 そして,手続的正義の観点から公正さを欠くか否かの判断は,供述者の収容の理由及び時期,強制送還の態様・時期,証人尋問請求の時期,証人尋問決定の時期,関係機関の連絡・調整状況などの諸事情を総合的に考慮して行う。(※5)
   (イ) これを本件についてみると,具体的事情が認定されていないため,仮に(ⅰ)または(ⅱ)のような事情があり,手続的正義の観点から公正さを欠くと認められるような場合には,本件供述調書の証拠能力は認められない。反対に,手続的正義の観点から問題がないと認められるような場合には,本件供述調書の証拠能力は認められる。
3.よって,前者の場合には,裁判所は本件供述調書を証拠として採用することができない。後者の場合には,裁判所は本件供述調書を証拠として採用することができる。
以 上


(※1)しかし,本件では,一旦証拠調べ請求を撤回した上で,再度証拠調べ請求がされているので,前者でされた不同意が後者の方にも当然に及ぶかどうかは分かりません。まぁでも,前者で不同意としていたら後者でも不同意とするのが自然な気がするので,いちいちこの点を指摘する必要はないように思います。

(※2)入管法の記述は,古江本の解説に書いてあったので書きましたが,本番では参照条文でもあがっていない限り書けるわけがないです。ただ,書けたらめちゃくちゃドヤ顔できそうです。

(※3)古江本の解説での議論を踏まえると,このような規範になるのでしょうか。具体例の記述まで含めると,規範が長くなってしまうので,もう少しコンパクトに書ければいいなと思います。そもそも,具体例を示す必要もないような気はしますが。

(※4)判例では「これを事実認定の証拠とすることが許容されないこともあり得る……」とされているにすぎないので,本来は≪答案≫のように証拠能力が否定されると言い切ってはいけないのでしょう。しかし,答案上「あり得る」というあいまいな表現を用いるのは避けたいところなので,もう少しうまい表現がないか検討してみたいです。

(※5)この問題では具体的事情が何も書いていないので,今回は規範段階でいろいろ考慮事情をあげてみましたが(考慮事情は最判平成7年6月20日の調査官解説を参照),本番でこんなことをいちいち書いている余裕はないと思われますし,具体的事情が落ちていれば,規範で示さずとも,いきなりあてはめで考慮事情に沿った認定をするだけで足りると思います。
2018-01-29(Mon)

【高校入試】東京都英語平成20年度第4問

問題:東京都英語平成20年度第4問
難易度:Aランク
解答時間の目安:12分

≪問題≫
4  次の文章を読んで,あとの各問に答えよ。
  (*印の付いている単語・語句には、本文のあとに〔注〕がある。)

  Fred became a member of a baseball team for little boys when he was seven. He practiced on a *field near a river. He enjoyed baseball with his *teammates.
  When he became a junior high school student, he joined the baseball club. One summer day the *manager said to him, “Fred, *pitch to me.” Fred did that. The manager said, “Nice pitching! You’ll be a good pitcher.” Fred was very glad. He became a pitcher.
  It was fun for him to pitch in games. When he pitched, his team won. But things were getting bad. He began to think the team was winning *only because of him. He *lost his temper when his teammates *made errors. He always tried to get *strikeouts, but often *failed. His teammates didn’t feel good. The team began to lose games. The manager said, “Remember, Fred. You’re not just a pitcher. You’re one of the team.” The manager stopped using him.
  One day Fred was sitting by the river and *was deep in thought. Then he heard a *voice. Someone was singing. He looked around. A girl was playing the guitar and singing. He spoke to her, “Hi, I’m Fred. That was a nice song.” She said, “Thank you. I’m Jane. I wrote it. What are you doing here?” He said, “I love baseball. But now it’s not fun.” He told her his story about baseball. She said, “Listen, Fred. I love singing. I write songs and visit a hospital to sing for people. They *look forward to my visits. When I’m with them, they look happy. I’m happy, too.” He felt something warm in his heart. He wanted to be like her and told that to her. She said, “I think you can. Look, those little boys are playing baseball on the field over there. How about teaching them? They’ll be glad.” He said, “Will they? OK, I will.”
  He walked to the field and asked a little boy, “Can I join you?” The boy smiled and answered, “Sure!” Fred taught the boys how to throw, catch and hit balls. Each boy was enjoying baseball. He thought, “They’re *sharing a good time. I was like them when I was little.” In the evening, a boy smiled and said to him, “We had a very good time today. Please come to teach us again.” He looked around. Everyone was smiling. He said to the boys, “I had a very good time, too. See you.” Then he left the field.
  That night Fred remembered Jane’s words and thought, “Doing favorite things can make people happy.” And then he thought about the boys. He thought, “They shared a very good time together through baseball. Now I understand what the manager meant.”
  Then next day he said to his teammates, “I’m so sorry. *I was selfish. I want to enjoy baseball with you. I’ll try my best to pitch well.” The manager smiled and listened. After that Fred practiced very hard with his teammates. They began to *accept him.
  The manager gave Fred a chance to pitch in a game again. The little boys came to watch him. He tried his best for everyone. He pitched through the game and his team won. Everyone was glad and came to him. He was really happy. He felt that sharing a good time with people around him was wonderful. He looked up at the blue sky. Just then there was a girl’s voice, “Nice pitching!” He looked back and saw Jane. She was smiling.

〔注〕field 野球場 teammate チームメート manager 監督 pitch 投球する only because of ~ ~だけで  lost his temper 腹を立てた make errors エラーをする strikeout 三振 fail 失敗する  be deep in thought 物思いにふける voice 声 look forward to ~ ~を楽しみに待つ share 共有する  selfish 自分勝手な accept 受け入れる

〔問1〕But things were getting bad. とあるが,この内容を,次のように書き表すとすれば,【     】の中に,下のどれを入れるのがよいか。
    【     】, and then the manager stopped using him.
   ア Fred became selfish, the team began to lose games
   イ Fred’s teammates became selfish, he didn’t feel good
   ウ Fred pitched well, his teammates didn’t make any errors
   エ Fred’s teammates felt the team was winning only because of him

〔問2〕次のア~エの文を,本文の内容の流れにそって並べ,順に記号を書け。
   ア Fred said sorry to his teammates.
   イ Fred told Jane his story about baseball.
   ウ Fred wanted to be like Jane and told that to her.
   エ Fred joined the little boys and taught them how to play baseball.

〔問3〕次の(1)~(3)の文を,本文の内容と合うように完成するには,【     】の中に,それぞれ下のどれを入れるのがよいか。
   (1) One summer day 【     】, and that made Fred very glad.
    ア Fred’s teammates asked him to be a pitcher
    イ the manager told Fred to join the baseball club
    ウ the manager said that Fred would be a good pitcher
    エ Fred’s teammates asked the manager to pitch in front of them

   (2) Fred said to his teammates that he would 【     】.
    ア leave the field alone
    イ try his best to pitch well
    ウ make people in the hospital happy
    エ practice hard to stop making errors

   (3) When Fred pitched in a game and won again, he 【     】.
    ア found he was just a pitcher in the baseball club
    イ began to know why his teammates didn’t accept him
    ウ understood why the manager didn’t use him as a pitcher
    エ felt that sharing a good time with people around him was wonderful

〔問4〕次の質問に英語で答えよ。
   (1) Where did Fred meet Jane for the first time?
   (2) What did Fred think when he remembered Jane’s words that night?


≪解説≫
1.全訳
 Fredは7歳のときに,少年野球チームのメンバーになった。彼は川のそばの野球場で練習をした。彼はチームメートと野球を楽しんだ。
 彼は中学生になると,野球部に入った。ある夏の日,監督が彼に「Fred,投球してみろ。」と言った。Fredは投球した。監督は,「ナイスピッチング!君は良いピッチャーになれるよ。」と言った。Fredはとても嬉しかった。彼はピッチャーになった。
 彼にとって試合で投球することが楽しみだった。彼が投げると,彼のチームは勝った。しかし,事は次第に悪くなっていった。彼は,彼だけのおかげでチームが勝っているものだと思い始めた。彼はチームメートがエラーをすると腹を立てた。彼は常に三振をとろうとして,よく失敗した。チームメートはそれを良く思わなかった。(彼の)チームは負けるようになった。監督は「思い出せ,Fred。おまえはただのピッチャーじゃない。おまえはチームの1人なんだ。」と言った。監督は彼を使うのをやめた。
 ある日,Fredは川岸に腰を掛け,物思いにふけっていた。すると,声が聞こえてきた。誰かが歌っていた。彼は辺りを見渡した。1人の少女がギターを弾きながら歌っていた。彼は彼女に「よう,俺はFred。良い歌だね。」と話しかけた。彼女は「ありがとう。私はJane。私が(この歌の歌詞を)書いたの。あなたはここで何をしているの。」と言った。彼は「俺は野球が大好きなんだ。だけど,今はそれが楽しくない。」と言った。彼は彼女に彼の野球の話をした。彼女は「よく聞いて,Fred。私は歌うことが大好き。私は歌詞を書いて,いろんな人に歌うために病院へ行く。彼ら(病院にいる人たち)は私が来ることを楽しみにしている。私が一緒にいると,みんな嬉しそう。私もうれしいわ。」と言った。彼は心に何か温かいものを感じとった。彼は彼女のようになりたいと思い,そのことを彼女に伝えた。彼女は「あなたなら出来ると思う。見て,少年たちが向こうの野球場で野球をしているわ。彼らに教えてきてあげたらどう?彼らは嬉しがると思うわ。」と言った。彼は「彼らに?よっしゃ,やるよ。」と言った。
 彼は野球場に歩いていき,少年らに「俺も入れて。」と言った。少年は微笑んで「もちろん。」と答えた。Fredは少年らに投げ方,捕え方,打ち方を教えた。各々が野球を楽しんでいた。彼は「彼らは良い時間を共有している。私も小さい頃は彼らみたいだった。」と思った。夕方,少年は笑顔で彼に「今日はとても良い時間を過ごせました。また私たちに教えに来てください。」と言った。彼は周りを見渡した。全員笑顔だった。彼は少年らに「俺もとても良い時間を過ごせた。またな。」と言った。そして,彼は野球場を去った。
その晩,FredはJaneの言葉を思い出し,「好きな事をすることで人々を幸せにすることができる。」と思った。そして,彼は少年らのことについて想起した。彼は「彼らは野球を通してとても良い時間を共有していた。やっと監督の意味するところが分かった。」と考えた。
 次の日,彼はチームメートに「本当にすまなかった。俺は自分勝手だった。お前たちと野球を楽しみたいと思う。俺はうまく投球するために最善を尽くす。」と言った。監督は笑顔で聞いていた。そのあと,Fredはチームメートととても一生懸命練習した。彼らは彼を受け入れるようになった。
 監督は再び試合で投球するチャンスをFredに与えた。少年らが彼を見に来ていた。彼は皆のために全力を出した。彼は完投し,彼のチームは勝った。皆が喜び,彼のもとへ寄った。彼はとても嬉しかった。彼は,彼周りの人たちと良い時間を共有することは素晴らしいことだと感じた。彼は青空を見上げた。ちょうどその時,「ナイスピッチング!」という少女の声が聞こえた。彼は振り向くと,Janeが視界に入った。彼女は微笑んでいた。

2.各問解答・解説
〔問1〕(配点:4) 解答:ア
 But things were getting bad.の内容について問うことで,内容についての理解を見る問題である。getting badとあるので,内容としては「悪」そうなことが空欄に入るものと考えられる。また,前半の空欄部分と後半のand then the manager stopped using him.とは,等位接続詞andで結ばれているが,因果関係にあるものと考えてよいだろう。そこで前半の空欄部分に入る内容が,he manager stopped using him.となるに至った原因である。
ア Fredは自分勝手になり,チームは試合で負けるようになり始め,そして監督は彼を使うのをやめた。
→正しい。同様の内容が本文3段落目に書かれている。
イ Fredのチームメートは自分勝手になり,彼はそれを良く思わず,そして監督は彼を使うのをやめた。
→誤り。selfishになったのはFred自身であってFred’s teammatesではない(根拠は,3段落の内容及び7段落括弧内“I was selfish.”。)。また,Fredがselfishになったことを良く思わなかったのはFred’s teammatesである(根拠は,本文3段落目7文目)。よって,本肢は主語が入れ替わっている点で誤っている。
ウ Fredはうまく投球し,彼のチームメートはほとんどエラーをせず,そして監督は彼を使うのをやめた。
→誤り。本文後半部分に同様の趣旨の内容の記載があるが,この内容はむしろ「善」の内容である。監督がFredを使うことをやめる原因とはならない。
エ Fredのチームメートは,チームは彼だけのおかげで勝っていると感じ,そして監督は彼を使うのをやめた。
 →誤り。チームがFredだけのおかげで勝っていると感じているのはFred自身である(根拠は,本文3段落目4文目)。よって,主語がFred’s teammatesとなっている点が誤っている。

〔問2〕(配点:4) 解答:イ→ウ→エ→ア
  各肢を並べ替えることによって,内容の流れをつかむとともに,その要旨を捉えることができるかを見る問題である。本文を丁寧に読んだ上で,各肢との適合部分を本文中に見つけ出せばよい,非常に単純な作業である。間違えようがない。
 ア Fredは彼のチームメートに謝った。
 →本文該当箇所は7段落目1行目“I’m so sorry.”
 イ FredはJaneに彼の野球の話をした。
 →本文該当箇所は4段落目3行目後半“He told her his story about baseball.”
 ウ FredはJaneのようになりたいと思い,そのことを彼女に伝えた。
 →本文該当箇所は4段落目5行目後半“He wanted to be like her and told that to her.”
 エ Fredは少年らに加わって,野球の仕方を教えた。
 →本文該当箇所は5段落目

〔問3〕
 空欄に適切な文を挿入することで,内容の理解を見る問題である。空欄以外の部分に本文と共通または同趣旨の内容の文が与えられているので,それを頼りに本文から該当箇所を探し,適切な肢を選べばよい。
(1) (配点:4) 解答:ウ
 「ある夏の日……」と与えられているので,本文2段落目2文目と一致する。この付近の内容と一致する内容が書かれている肢を選ぶ。
 ア Fredのチームメートは彼にピッチャーになるように頼んだ
 →誤り。そのような趣旨のことは本文中のどこにも書かれていない。
 イ 監督がFredに野球部に入るように言った
 →誤り。そのような趣旨のことは本文中のどこにも書かれていない(本文2段落目1文目にただ“…, he joined the baseball club.”とあるから,監督から勧誘があったものとは伺えない。)。
 ウ 監督はFredに良いピッチャーになれると言った
 →正しい。本文2段落目2行目にある。
 エ Fredのチームメートは監督に,彼らの目の前で投球するよう頼んだ
 →誤り。そのような趣旨のことは本文中のどこにも書かれていない。

(2) (配点:4) 解答:イ
 「Fredはチームメートに……と言った。」と与えられているので,Fredがチームメートに話しかけている場面である本文7段落目の付近の内容と一致する内容が書かれている肢を選ぶ。
ア ひとりで野球場を去る
→誤り。そのような趣旨のことは本文中のどこにも書かれていない。
イ うまく投球できるよう最善を尽くす
→正しい。本文7段落目1行目後半にある。
ウ 病院にいる人たちを幸せにする
→誤り。これはJaneがしたことであって,Fredの話ではない(根拠は,本文4段落目4行目)。
エ エラーをしないよう一生懸命練習する
→誤り。エラーをするのはFredのチームメートであって(根拠は,本文3段落目2行目),Fredではない。

(3) (配点:4) 解答:エ
 「Fredが試合で投球し,また勝ったとき」と与えられているので,Fredが再び投球のチャンスが与えられ,試合で勝つことができた場面の本文8段落目付近の内容と一致する内容が書かれている肢を選ぶ。
ア 彼は野球部のただのピッチャーであるということに気付いた
→誤り。本文3段落目3行目後半で,監督がFredに対して同趣旨のことを言ってはいるが,Fred本人がこのように考えている趣旨の内容は本文中のどこにも書かれていない。
イ なぜ彼のチームメートが彼を受け入れないか分かり始めた
→誤り。本文7段落目最終文に“They began to accept him.”とあるから,この時点では,彼はチームメートに受け入れられている。
ウ なぜ監督が彼をピッチャーに抜擢しなかったのかを理解した
→誤り。そのような趣旨のことは本文中のどこにも書かれていない。
エ 彼の周りにいる人たちと良い時間を共有することは素晴らしいことだと感じた
→正しい。本文8段落目2行目後半にある。

〔問4〕
(1) (配点:4)  模範解答:He met her by the river.

  どこでFredは初めてJaneに会ったか。
 →FredがJaneと出会った場面が初めて書かれているのは本文4段落目前半である。そのとき,Fredは川のそばにいると書いてある(本文4段落目1文目)。そこで,「彼(Fred)は彼女(Jane)に川のそばで会った。」という趣旨の文を作る。
  ※まずは問題に的確にこたえること。今回の質問のメインは「どこで」なので,場所の情報は正確に本文中から引用する。メイン質問に対する答え以外の情報は書かなくてよい(その方が解答としてすっきりしていて,採点官への印象が良い。)。また,時制にも注意すること。今回は質問文が過去形で書かれているので,答えも過去形で答えなければならない。さらに,質問文と同一人物に関しては,答えるときは代名詞を用いる。今回はFredとJaneがすでに質問文中に登場しているので,答えるときは代名詞で答える。単に“By the river.”としても誤りではないが,質問がしっかりした文であるのに,解答が不完全な文であるのは無愛想であるから避けた方がよいかもしれない。

(2) (配点:4) 模範解答:He thought, “Doing favorite things can make people happy.”
 Fredはその晩にJaneの言葉を思い出したとき,何を考えたか。
 →この場面は本文6段落目に書かれている。6段落1文目にFredが考えたことが丸々書かれているので,ここから抜き出せばよい。
  ※今回はほぼ抜き出すだけであるのでほとんど問題は生じないが,(1)と同様に主語は代名詞に置き換えなければならないことに注意しなければならない。

以 上



2018-01-29(Mon)

【高校入試】東京都英語平成21年度第4問

問題:東京都英語平成23年度第4問
難易度:Bランク
解答時間の目安:15分

≪問題≫
 4 次の文章を読んで,あとの各問に答えよ。
  (*印の付いている単語・語句には、本文のあとに〔注〕がある。)

  Hayashi Masanori was a doctor at a hospital in Tokyo. His *patients and *staff loved him very much. He loved his job. But he wanted to do something more as a doctor. He often thought, “What can I do?” But he didn’t know the answer to this question.
  One day, he saw an old picture in a notebook. When he looked at the picture, he *realized what he wanted to do. In that picture, there was a man smiling with some people around a *well. The man was *Dr. Hayashi. He thought, “I went to a village in a country in Asia and joined a volunteer group to *dig a well. This picture was taken there. When I got to the village, I became sick. There were no doctors there. People there took care of me. They were poor, but they gave me food. It wasn’t easy to get water, but they gave me water. They saved my life.” He wanted to save people in a country that didn’t have enough doctors. He thought, “This is the thing I should do as a doctor.”
  After a few weeks, he got a letter. It was from one of his old teachers, Dr. Fujikawa. He was in a country in Africa. He had a small *clinic in a village there and worked as a doctor. In that letter, he asked Dr. Hayashi to look for another doctor to work there. Dr. Fujikawa was so old that he couldn’t keep working. He was the only doctor there. Dr. Hayashi wanted to help sick people there. He decided to go to Africa.
  Three months later, Dr. Hayashi visited the village. He asked Dr. Fujikawa, “What can I do for the people here as a doctor?” Dr. Fujikawa said, “As a doctor? Doing something as a doctor isn’t enough.” He didn’t answer Dr. Hayashi’s question.
  Before Dr. Fujikawa left the village, he gave Dr. Hayashi his answer. He said, “Do everything you can do for the people here.” But Dr. Hayashi didn’t understand the *meaning of these last words. Many people came to the clinic every day. He realized they got sick because of water. They were using water from a *pond. This water was not so clean. He thought, “They need a well. I’ll tell them what to do to dig a well.”
  The next morning at the clinic, Dr. Hayashi told his idea to his staff. *Most of the staff looked happy, but one woman, Fara, didn’t. She said, “Are you only going to tell us what to do to dig a well? I think digging a well is hard work. You didn’t say you would work with us. Why?” He didn’t know what to say.
  That night, he remembered her words and thought, “I thought giving something to them was important. But that isn’t enough. It’s important to do things with people. I did that when I was in the country in Asia.”
  One Saturday afternoon, he started to dig the ground near the clinic. Soon some children playing soccer came to him and asked what he was doing. He smiled and answered, “Digging a well!” They stopped playing soccer and helped him on that day.. They took their fathers the next day. The well became deeper. After one month, all the people in the village came there every day and did something. Now it wasn’t only Dr. Hayashi’s dream. It was also their dream.
  Four months later, “Water!” one man *shouted. Dr. Hayashi heard that and ran to the well. There was some water at the *bottom. Many people came to him and began dancing around the well. Fara was dancing there, too. She looked at him and smiled. He remembered Dr. Fujikawa’s last words. He thought, “Now I really understand their meaning.”

〔注〕patient 患者  staff 職員  realize 分かる  well 井戸  Dr. ~ ~医師  dig 掘る  clinic 診療所  meaning 意味  pond 池  most of ~ ~のほとんど  shout 叫ぶ  bottom 底

〔問1〕When he looked at the picture, he realized what he wanted to do.の内容を,次のように書き表すとすれば,【      】の中に下のどれを入れるのがよいか。
    When he looked at the picture, he realized he wanted to 【     】.
   ア save people in a country that didn’t have enough doctors
   イ smile with people around the well in a country in Asia
   ウ love his job as a doctor at a hospital in Tokyo
   エ give some food and water to poor people in Asia

〔問2〕次の(1)~(3)の文を,本文の内容と合うように完成するには,【     】の中にそれぞれ下のどれを入れるのがよいか。
   (1) Dr. Hayashi realized people in the village got sick because 【     】.
    ア they came to the clinic every day
    イ Dr. Fujikawa left the village
    ウ he was the only doctor there
    エ the water they were using was not so clean

   (2) Fara didn’t look happy because 【      】.
    ア she thought Dr. Hayashi wouldn’t work with the people in the village
    イ she thought Dr. Hayashi would tell his idea to the staff of the clinic
    ウ Dr. Hayashi didn’t know what to say
    エ Dr. Hayashi started to dig the ground near the clinic

   (3) After some children understood what Dr. Hayashi was doing near the clinic, they 【     】.
    ア came to him and asked him about a well
    イ helped him on that day and took their fathers the next day
    ウ looked at him and smiled
    エ thought it was important to do things with people

〔問3〕次のア~エの文を,本文の内容の流れに沿って並べ,順に記号で書け。
   ア Dr. Hayashi decided to work as a doctor in a country in Africa.
   イ Dr. Hayashi really understood the meaning of his old teacher’s words.
   ウ Dr. Hayashi joined a volunteer group to dog a well in a country in Asia.
   エ Dr. Hayashi thought giving something to people in the village wasn’t enough.

〔問4〕次の質問に英語で答えよ。
   (1) Where was the picture in the notebook taken?
   (2) What were Dr. Fujikawa’s last words that Dr. Hayashi remembered when the people were dancing around the well?


≪解説≫
1.全訳
 ハヤシマサノリ氏は東京にある病院の医師であった。彼の患者と職員は彼のことをとても好いていた。彼は彼の職を愛していた。しかし,彼は医師としてもっと他のことをしてみたかった。彼はよく「私には何ができるのだろうか。」と考えていた。しかし,彼はこの疑問に対する答えを出せずにいた。
 ある日,彼はノートにあった1枚の古い写真を見た。写真を見ると,彼は自分のしたかったことが分かった。その写真には,井戸の周りで何人かの人たちと笑顔でいる男性がいた。その男性はハヤシ医師であった。彼は「私はアジアのある村へ行き,井戸を掘るボランティアグループに入った。この写真はそこで撮られたものだ。村に着くと,私は病にかかった。そこには医師がいなかった。現地の人たちが私の世話をしてくれた。彼らは貧しかった,しかし彼らは私に食べ物をくれた。水を得るのは簡単なことではない,しかし彼らは私に水をくれた。彼らは私の命を救ってくれたのだ。」彼は,医者が十分に足りていない国の人たちを救いたいと思った。彼は「これが私が医師としてすべきことだ。」と考えた。
 数週間後,彼は手紙を受け取った。それは,彼の昔の教授であるフジカワ医師からであった。彼はアフリカのある国にいた。そこの村に小さな診療所を構えており,医師として働いていた。その手紙では,彼はハヤシ医師にそこ(アフリカの診療所)で働いてくれる医師を探してほしいとのことだった。フジカワ医師はあまりに年老いているため,このまま働き続けることは困難であった。彼は現地で唯一の医師であった。ハヤシ医師はそこの病の人たちを助けようと思った。彼はアフリカへ行くことを決意した。
 3か月後,ハヤシ医師はその村を訪れた。彼はフジカワ医師に「私は医師としてここで人々に何ができるでしょうか。」と尋ねた。フジカワ医師は「医師として?医師として何かするのでは十分ではないんだな。」と言った。彼はハヤシ医師の質問に答えなかった。
 フジカワ医師が村を去る前,ハヤシ医師に彼なりの答えを伝えた。彼は「ここにいる人たちのために君が出来ることの全てをやりなさい。」と言った。しかし,ハヤシ医師は最後のこの言葉の意味を理解できなかった。たくさんの人たちが毎日診療所にやって来る。彼は,患者らは水のせいで病気になるのだと分かった。彼らは池の水を使っていた。この水は全然きれいではない。彼は「彼らには井戸が必要だ。彼らに井戸を掘るためにすべきことを教えてやろう。」と考えた。
 次の日の朝,診療所で,ハヤシ医師は自分の考えを職員に伝えた。ほとんどの職員は嬉しそうに見えた,しかし1の女性Faraはそうではなかった。彼女は「あなたは井戸を掘るのにすることを私たちに教えるだけのつもりなの?私は井戸を掘ることはすこぶる大変でと思うんだけど。あなたは私たちと一緒に仕事をするとは言わないわね,なんで?」と言った。彼は何と言ったらいいか分からなかった。
 その晩,彼は彼女の言葉を思い出し,「私は,彼らに何かを与えることは大事だとは思う。しかし,それだけでは足りない。みんなと一緒にすることが大事なんだ。私はアジアの国にたときにそうしていたじゃないか。」と考えた。
 ある土曜日の午後,彼は診療所近くの地面を掘り始めた。すぐにサッカーをしていた子供たちが彼のもとへ寄ってきて,何をしているのか聞いてきた。彼は笑顔で「井戸を掘ってるんだ!」と答えた。子供たちはサッカーをするのをやめてその日は彼を手伝った。次の日彼らはお父さんらを連れてきた。井戸はどんどん大きくなっていく。1か月後,村中の全ての人が毎日そこへやって来て,何かをした。今や,それは彼だけの夢ではない。それは彼らの夢でもあった。
 4か月後,1人の男性が「水だ!」と叫んだ。ハヤシ医師はそれを聞いて井戸へ駆け寄った。底のところに水があった。たくさんの人たちが彼のところへ来て,井戸の周りで踊り始めた。Faraもそこで踊っていた。彼女は彼を見て微笑んだ。彼はフジカワ医師が最後に言った言葉を思い出した。彼は「今では私はその意味がちゃんと分かる」と思った。

2.各問解答・解説
〔問1〕(配点:4) 解答:ア
 要旨となっている文を解釈することで,本文の内容についての理解を見る問題である。1段落でハヤシ氏は医師としてもっと何かをしたいと書かれており,そのうえで本問下線部において,ハヤシ氏はすべきことが分かったと書かれているから,ハヤシ氏が医師としてこれからしようと思ったことを記述している部分を探したらよい。
ア 写真を見たとき,彼は医師の足りていない国の人たちを救いたいということが分かった。
→正しい。本文2段落目にある。
イ 写真を見たとき,彼はアジアの国において井戸の周りで人々と笑顔になりたいということが分かった。
→誤り。この事実はノートにあった写真に写っていたことであって(根拠は,2段落目1行目後半In that picture, there was a man smiling with some people around a well.),彼が写真を見て考えたことではない。
ウ 写真を見たとき,彼は東京の病院での医師としての仕事を愛していたいということが分かった。
→誤り。彼はそのように思っていることは事実であるが,写真を見てお持って事ではない。
エ 写真を見たとき,彼はアジアの貧しい人たちへ食べ物や水を与えたいということが分かった。
→誤り。これは,彼が実際にアジアで行ってきた過去の事実であり,写真を見てこれからしようと思った内容ではない。

〔問2〕
 空欄に適切な文を挿入することで,内容の理解を見る問題である。空欄以外の部分に記載されている英文から,同趣旨または一致する該当箇所を本文から探し,適切な肢を選べばよい。
(1) (配点:4) 解答:エ
  「ハヤシ医師は,村の人たちが……のために病気にかかっていることが分かった。」とあるので,本文5段落目2行目後半のHe realized they got sick because of water.と適合することが分かる。村の人たちが病気にかかる原因を表している肢を選ぶ。
 ア 彼らが毎日診療所に来ているため
 →誤り。本文5段落目2行目にMany people came to the clinic every day.とあるが,これによって病気の原因が分かっただけであり,直接の病気の原因ではない。
 イ フジカワ医師が村を去ったため
 →誤り。フジカワ医師が村を去ったことが原因となったとの記載は本文中のどこにも書いていない。
 ウ 彼が村の唯一の医師であったため
 →誤り。3段落目3行目にHe was the only doctor there.とあるが,ここでHeとはフジカワ医師のことであり,本文の内容とそもそも合わない。
 エ 彼らが使っている水が全然きれいではなかったため
 →正しい。本文5段落目2行目にある。

 (2) (配点:4) 解答:ア
  「Faraは……のため嬉しそうではなかった。」とあるので,本文6段落目1行目後半Most of the staff looked happy, but …… Fara, didn’t.と適合することが分かる。Faraの機嫌が悪い原因は6段落目2行目からはじまる彼女の発言に表れているので,同趣旨のことを表している肢を選ぶ。
 ア 彼女は,ハヤシ医師が村の人たちと働こうとしようとしないと考えたため
 →正しい。本文6段落目2行目 You didn’t say you would work with us.
 イ 彼女は,ハヤシ医師が診療所の職員に彼の考えを伝えようとしたと考えたため
 →誤り。Faraの発言内容に含まれていない。
 ウ ハヤシ医師が何と言ったらいいか分からなかったため
 →誤り。これはFaraの発言を受けてのハヤシ医師の反応であるので,Faraの機嫌が悪い直接の原因とはなっていない。
 エ ハヤシ医師が診療所の近くの地面を掘りだしたため
 →誤り。Faraはハヤシ医師自身が働こうとしないことに怒っているのである。それを受けてハヤシ医師は自ら井戸を掘りだしたのであるから,これが理由だとすると矛盾が生じる。

 (3) (配点:4) 解答:イ
  「子供たちは,ハヤシ医師が診療時の近くで何をしているかが分かると,彼らは……」とあるので,本文8段落目2行目と適合する。そこで,この近辺から,子どもたちがその後どうしたかを読み取ったうえで,それを表す肢を選ぶ。
 ア 彼のもとにやって来て井戸について尋ねた
 →誤り。そのような趣旨のことは本文中のどこにも書かれていない。
 イ その日は彼を手伝い,次の日お父さんらを連れてきた
 →正しい。本文8段落目にある。
 ウ 彼を見て微笑んだ
 →誤り。本文9段落目2行目にあるShe looked at him and smiled.はFaraがとった行動であり,子どもたちがしたことではない。
 エ みんなと一緒にものごとをすることは大事だと考えた
→誤り。本文7段落目2行目にあるIt’s important to do things with people.とはハヤシ医師が考えたことであり,子どもたちがしたことではない。

〔問3〕(配点:4) 解答:ウ→ア→エ→イ
各肢を並び替えることで,内容の流れをつかむとともに,その要旨を捉えることができるかを見る問題である。本文をしっかり読んだうえで,各肢との適合部分を本文中から見つけ出す。
ア ハヤシ医師はアフリカの国で医師として働くことを決意した。
→本文該当箇所は3段落目3~4行目 Dr. Hayashi wanted to help sick people there. He decided to go to Africa.
イ ハヤシ医師は彼の昔の教授の言葉の意味をちゃんと理解した。
→本文該当箇所は9段落目3行目 He thought, “Now I really understand their meaning.”
ウ ハヤシ医師はアジアの国で井戸を掘るボランティアグループに加わった。
→本文該当箇所は2段落目2行目 He thought, “I went to a village in a country in Asia and joined a volunteer group to *dig a well.……
エ ハヤシ医師は村の人たちに何かを与えるだけでは不十分だと考えた。
→本文該当箇所は7段落目1行目 I thought giving something to them was important. But that isn’t enough.

〔問4〕
 (1) (配点:4) 模範解答:It was taken in a village in a country in Asia.
  ノートにあった写真はどこで撮られたものか。
 →写真についての記述がある場面は本文2段落目である。下線部と同じ箇所であったから見つけやすかったであろう。写真が撮られた場所については3行目にThis picture was taken there.とある。ここで,thereとは直前の……a village in a country in Asiaを指している。これらを文法事項に注意しながら1文にまとめればよい。

 (2) (配点:4) 模範解答:They were “Do everything you can do for the people here.”
人々が井戸の周りで踊っているときハヤシ医師が思い出したフジカワ医師の最後に言った言葉は何だったか。
 →この場面が書かれているのは本文9段落目であるが,フジカワ医師の最後に言った言葉までは直接には書かれていない。これについては,本文5段落目にBut Dr. Hayashi didn’t understand the *meaning of these last words.との記載がある。these last wordsとあるから,直前の“Do everything you can do for the people here.”というのがフジカワ医師の最後に言った言葉にあたる。
  ※質問文における主語はDr. Fujikawa’s last wordsなので,代名詞はtheyを用いる。

以 上



2018-01-29(Mon)

【旧司】刑事訴訟法平成22年第2問

証拠法の旧司を解き始めて3問目になりましたが,どれも難しいです。

学部時代にちゃんと勉強してないと痛い目にあうということが分かりました(遅い)。

このブログを見た学部生がもしいたら,学部の間にちゃんと7法まわしておきましょう。

≪問題≫
 警察官は,Aを被害者とする殺人被疑事件につき,捜索差押許可状を得て,被疑者甲の居宅を捜索したところ,「①Aにレンタカーを借りさせる,②Aに睡眠薬を飲ませる,③Aを絞め殺す,④車で死体を運び,X橋の下に穴を掘って埋める,⑤明日,決行」と記載された甲の手書きのメモを発見したので,これを差し押さえた。その後の捜査の結果,X橋の下の土中からAの絞殺死体が発見され,その死体から睡眠薬の成分が検出された。また,行方不明になる直前にAがレンタカーを借りたことも判明した。
 甲が殺人罪及び死体遺棄罪で起訴された場合,上記メモを証拠として用いることができるか。

メモの証拠能力ということですが。

非伝聞証拠になんとかしてもっていくということをやらないといけないらしいです。

知らねえ。

≪答案≫
1.甲の手書きのメモ(以下「本件メモ」という。)は,犯行計画と思われる事実が記載されているが,これが「公判期日における供述に代えて書面を証拠と」する場合であれば,伝聞証拠として原則証拠能力を有さないこととなる(320条1項)。そこで,本件メモは伝聞証拠にあたるか,伝聞証拠の意義が問題となる。
2.320条1項の趣旨は,供述証拠は人の知覚,記憶,表現,叙述という過程を経ており,その各過程で誤りを生ずるおそれが高いにもかかわらず,反対尋問,偽証罪による制裁,裁判所による観察という真実性の担保が欠けることから,その証拠能力を否定する点にある。そこで,伝聞証拠とは,①公判廷外の供述を内容とする証拠で,②要証事実との関係で原供述の内容の真実性が問題となるものをいう。
3⑴ これを本件についてみると,①本件メモは公判期日外で作成されたものであるから,公判廷外の供述を内容とする証拠である。
 ⑵ア.また,②公判においては,Aに対する殺人及び死体遺棄事件に関する甲の犯人性について,甲が否認し,問題になると考えられる。この場合,検察官は本件メモの存在を立証趣旨として,本件メモを提出する。これが認められれば,本件メモの内容の真実性が問題とならないから,伝聞証拠とはならない。
 しかし,本件メモのような犯行計画と思われる記載のあるメモの存在から,作成者がその後に計画通り犯行を遂行したことを推認することは,不確かな推認であり,許されない。
  イ.もっとも,本件では,以下のように本件メモの存在以外の犯人性に関する推認事情があり,これをもって合理的な推認ということができる。
 まず,本件メモは,甲の居宅から発見されており,かつ,甲の手書きで作成されたものであるから,甲が作成したものであるということが強く推認される。そうすると,以下のような推認が可能となる。
 本件メモ④にはX橋の下に穴を掘って埋めると記載されているが,これは本件メモ③でAを絞め殺すと記載されていることから,殺害したAを埋めるということを意味するものと考えられる。そして,実際に,AはX橋の下から絞殺死体として発見されている。特定の人物が絞殺状態で橋の下の土中に埋まっていることは一般的なことではないことからすると,この事実と同一の内容が本件メモに記載されていたことは,偶然一致しただけであるということは考えにくい。そうすると,本件メモに従って犯行が遂行されたことが強く推認される。
 そして,本件メモ①Aにレンタカーを借りさせる,②Aに睡眠薬を飲ませるという記載も,実際にAが行方不明になる直前にAがレンタカーを借りていることや,Aの死体から睡眠薬の成分が検出されたことから,客観的事実と合致している。たしかに,レンタカーを借りることや睡眠薬を服用することは,ごく一般的な出来事ではあるが,上記のように犯行が遂行されたことが強く推認されている状況においては,これらの事実との合致は,甲の犯行計画の一端が確かに遂行されていたことを十分に推認するものである。
 以上から,本件メモの存在から,実際に犯行が遂行されたことを推認することは,確かな根拠によって支えられたものであるといえ,不確かな推認ではない。
  ウ.したがって,本件の要証事実は本件メモの存在とすることができ,これとの関係で本件メモを提出することは,要証事実との関係で内容の真実性が問題とならない。
 ⑶ よって,本件メモは,伝聞証拠にはあたらない。
4.そこで,本件メモを証拠として用いることができる。
以 上

2018-01-28(Sun)

【高校入試】東京都英語平成23年度第3問

問題:東京都英語平成23年度第3問
難易度:Aランク
解答時間の目安:10分

≪問題≫

 3 次の対話の文章を読んで,あとの各問に答えよ。

   (*印の付いている単語・語句には,本文のあとに〔注〕がある。)


    Yoko is a high school student.  Mark and Carrie Alder are a young American *married couple.   They live near Yoko's house.  They know her and her friend Kana.  One Sunday, they see Yoko and Kana in a park.


Mark: Hi, Yoko and Kana.  What are you doing here?

Kana: We are talking about a dance.  Our dance school will have a *performance next month.

Mark: That's nice.

Carrie: What are you going to dance at the performance?

Yoko: We haven't decided yet.  Now we are trying to make a dance for our group.   It is difficult.

Kana: Yes.  We haven't had a good idea yet.

Carrie: ⑴I can understand that.

Yoko: Are you interested in dancing, Carrie?

Carrie: ⑵Yes, very much.  I danced in dance festivals every year in America.

Yoko: Oh, did you?

Carrie: Yes.  Our city has a big dance festival every year, and many people dance in it.

Yoko: What kind of dances do they do?

Carrie: All kinds of dances.  People dance in their own styles.  There are many kinds of *patterns and *rhythms in the dances.

Kana: Sounds interesting!

Mark: That's right.  I enjoyed many patterns and rhythms.  Dance styles may be different, but something *is common to all dances.

Kana: What is that?

Carrie: I know.  Dancers try to *express their *feelings and ideas to the *audience.  ⑶The audience can share them.  That is common to all kinds of dances.

Yoko: I see.   Dancers have messages in their dances, right?

Carrie: Yes.   ⑷I believe that is very important.

Kana: Then, what will our message be, Yoko?

Yoko: I'm thinking about that....  How about "Let's have dreams for the future"?

Kana: Dreams for the future?

Yoko: Yes.  When we have dreams for the future, they give us the energy to *do our best.

Kana: ⑸That's a good idea!

Carrie: I think so, too.

Kana: Let's express that to the audience!  Next, let's *choose the music for our dance.

Yoko: Yes, let's.  I think we will make a great dance.

Mark: You can do it.  Can we go to see your dance?

Yoko: Sure.  We will give you the information later.

Carrie: Thank you.  I'm looking forward to your dance.  I hope the audience will get your message.

Yoko: ⑹I hope so, too.  Thank you, Carrie and Mark.

Mark: Good luck!

〔注〕married couple 夫婦  performance 公演  pattern 型  rhythm リズム  be common to ~ ~に共通している  express 表現する  feelings 気持ち  audience 観客  do our best 最善を尽くす  choose 選ぶ

〔問1〕⑴I can understand that.の内容を,次のように書き表すとすれば,【     】の中に,下のどれを入れるのがよいか。


  I can understand 【     】.

 ア you are going to dance

 イ it is difficult to make a dance

 ウ it is nice to have a performance

 エ you haven't decided to dance yet


〔問2〕⑵Yes, very much.の内容を,次のように語句を補って書き表すとすれば,【     】の中に,どのような1語を入れるのがよいか。


  Yes, I am 【     】 in dancing very much.


〔問3〕⑶The audience can share them.の内容を,次のように書き表すとすれば,【     】の中に,下のどれを入れるのがよいか。


  The audience can 【     】.

 ア have the same feelings and ideas

 イ make all kinds of dances interesting

 ウ enjoy many patterns and rhythms

 エ dance in festivals together with dancers


〔問4〕⑷I believe that is very important.の内容を,次のように書き表すとすれば,【     】の中に,どのような1語を入れるのがよいか。


  I believe having 【     】 is very important in dancing.


〔問5〕⑸That's a good idea.の内容を最もよく表しているのは,次のうちではどれか。

 ア We have good dreams for the future.

 イ The energy to do our best is a good thing.

 ウ We will choose the good music for our dance.

 エ "Let's have dreams for the future" is a good message.


〔問6〕⑹I hope so,too.の内容を,次のように書き表すとすれば,【     】の中に,下のどれを入れるのがよいか。


  I also hope 【     】.

 ア you will come to see our dance

 イ the audience will get our message

 ウ we will have dreams for the future

 エ we will give you information about our performance


〔問7〕次の文章は,公演の後にCarrieがYokoに送ったEメールの一部である。【 (A) 】及び【 (B) 】の中にそれぞれ入る語の組み合わせとして正しいものは,下のア~エのうちではどれか。

    Hi, Yoko. Thank you very much for inviting us to your 【 (A) 】 last week. Mark and I enjoyed your dance and the dances of the other groups very much. I got a strong message from your dance. Having dreams for the future is wonderful!  We think dreams really give us a lot of 【 (B) 】 to do our best. Thank you again, and I hope you and Kana will enjoy dancing a lot and become wonderful dancers.


 ア (A) house  (B) information

 イ (A) school  (B) dances

 ウ (A) performance (B) energy

 エ (A) festival  (B) groups

≪解説≫

1.全訳

 Yokoは高校生です。MarkとCarrie Alderは若いアメリカ人夫婦です。彼らは,Yokoの家の近所に住んでいます。彼らは,彼女のことと友達のKanaのことを知っています。ある日曜日,彼らは公園でYokoとKanaを見かけました。

Mark:やあ,YokoとKana。何をやっているんだい。

Kana:私たちはダンスのことについて話をしていたところなの。私たちが通っているダンススクールで来月公演があるのよ。

Mark:そりゃいいね。

Carrie:君たちはその公演で何のダンスをするの。

Yoko:まだ決まってないのよ。いま,私たちのグループに向けてダンスを作ろうと思っているところなの。これが難しいのよね。

Kana:そうそう。いいアイデアがまだ浮かばないのよ。

Carrie:⑴なるほどね。

Yoko:Carrieはダンスに興味あるの。

Carrie:⑵めっちゃあるわ。私はアメリカで毎年やっているダンスフェスティバルでダンスをしていたの。

Yoko:まじで。

Carrie:そうよ。私たちの町では毎年大きなダンスフェスティバルがあって,たくさんの人がそこでダンスするの。

Yoko:みんなどんなダンスをするの。

Carrie:全部よ。みんな独自のスタイルでダンスをするの。ダンスにはいろんな種類の型とかリズムがあるのよ。

Kana:おもしろそうだね。

Mark:そうなんだよ。僕はいろんな型とかリズムを楽しんでいたんだ。ダンスの型って違うように思えるけど,全てのダンスに共通するところもあるんだ。

Kana:どういうこと。

Carrie:私知ってる。ダンサーは観客に自分たちの感情や考えを表現しようとしているの。⑶観客はそれを共有するの。それがすべてのダンスに共通するところだわ。

Yoko:なるほどね。ダンサーはダンスの中にメッセージを込めているってことね。

Carrie:そう。⑷私はそれがとても大事なことだと思っているわ。

Kana:そしたら,私たちのメッセージは何かな,Yoko。

Yoko:そのことを考えているんだけど……。「将来の夢を持とう」なんてどうかしら。

Kana:将来の夢。

Yoko:そう。将来の夢を持つと,夢は私たちが最善を尽くすエネルギーをくれるの。

Kana:⑸いいアイデアね。

Carrie:私もそう思うわ。

Kana:じゃあそれを観客に披露してあげよう。そしたら,ダンスに合う音楽を選ばなきゃね。

Yoko:そうしよう。素晴らしいダンスを作れると思うわ。

Mark:君たちならできるよ。僕たちも君たちのダンスを見に行ってもいいかな。

Yoko:いいわよ。また今度詳しいことを教えるわね。

Carrie:ありがとう。楽しみだなあ。観客も君たちのメッセージを受け取ってくれるといいね。

Yoko:⑹私もそう思うわ。ありがとう,Carrie,Mark。

Mark:うまくいくといいね。


〔問7〕

 こんにちは,Yoko。先週は【 (A) 】に私たちを招待してくれて本当にありがとう。Markと私は,あなたたちのダンスも他のグループのダンスも,とても楽しませてもらったよ。あなたたちのダンスからは強いメッセージを受け取ったわ。将来の夢を持つって素晴らしいことね。夢は私たちに最善を尽くすためのたくさんの【 (B) 】を本当に与えてくれると思うわ。重ねてありがとう。あなたとKanaが楽しくダンスをして,素晴らしいダンサーになることを願っているわ。


2.各問解答・解説

〔問1〕(配点:4) 正答:イ

 指示語の指す内容について問う問題である。本問でいう指示語とは指示代名詞thatである。このthatが何を指しているかが問われている。国語と同様に,指示語の指す内容は,たいていの場合は,その直前にあるので,下線部⑴の直前を重点的に読み込むことが必要である。

 ア 君たちがダンスをするということが分かる。

  →誤り。Carrieは,下線部⑴よりも前の時点で,What are you going to dance at the performance?とダンスのことについて触れているから,下線部⑴の段階でYokoたちがダンスをすることについて理解したわけではない。

 イ ダンスを作ることは難しいということが分かる。

  →正しい。下線部⑴は,直前でYokoがNow we are trying to make a dance for our group. It is difficult.と話し,続いてKanaがWe haven't had a good idea yet.と発言したことを受けてのことである。この部分は,まとめると,「ダンスを作ろうとしているが難しくてアイデアが浮かばない」ということであるから,これを表すのはイである。

 ウ 公演があることは素晴らしいということが分かる。

  →誤り。下線部⑴よりも前にKanaがOur dance school will have a performance next month.と発言し,それを受けてMarkがThat's nice.と応答しているから,「公演があるなんていいね」という流れはこの段階で終わっている。したがって,下線部⑴の段階まではこの話は続いていないから,誤りである。

 エ まだ君たちがダンスすることを決め切れていないことが分かる。

  →誤り。エは一見迷うかもしれないが,選択肢をよく検討すると,エの肢はつまり「ダンスをするかどうか自体が決まっていない」ということである。しかし,下線部⑴よりも前にKanaがOur dance school will have a performance next month.と発言していることから,ダンスをすること自体は決定している。YokoとKanaが悩んでいるのは,ダンスはするとして,どのようなダンスをするかということである。したがって,ダンスをするかどうか自体を問題にしているエは誤りである。


〔問2〕(配点:4) 正答:interested

 空欄を補充することで,読解力と文法力をみる問題である。本問のようにYesやNoで答えている文は,その直前にYesかNoで答えられるような疑問文があるはずなので,まずはその疑問文が何を聞いているか考えなければならない。そこで1つ前の文をみると,Are you interested in dancing, Carrie?とあるので,これが疑問文であることが分かる。そして,この疑問文では,「ダンスに興味があるかどうか」が聞かれているから,それに対する答えとしてはYesで始まっているので,「ダンスに興味がある」ということが伝わればいいことが分かる。「~に興味がある」というのはbe interested in ~で表すことができる。したがって,空欄にはinterestedが入る。また,be interested in ~というセットが思い出せなくても,疑問文にAre you interested in ……とあるので,そこから抜き出すことでも,正答を導き出すことができる。


〔問3〕(配点:4) 正答:ア

 〔問1〕と同様に,指示語の指す内容について問う問題である。本問でいう指示語とは人称代名詞themである。このthemが何を指しているかが問われている。

 ア 観客は同じ感情や考えを持つことができる。

  →正しい。下線部⑶の直前にDancers try to express their feelings and ideas to the audience.とあり,ダンサーから観客に向けて,感情や考えといったものが投げかけられるということが書かれている。したがって,観客としては,ダンサーから投げかけられた感情や考えをshareできるとするのが下線部⑶であるということが分かる。したがって,そのような感情や考えを持つことができると言い換えているアが正答である。

 イ 観客は全ての種類のダンスをおもしろくすることができる。

  →誤り。観客はダンサーがダンスをしているところを見るだけであるので,ダンスに直接何かするわけではない。したがってイのようなことは本文中には書かれておらず,誤りである。

 ウ 観客はいろんな型やリズムを楽しむことができる。

  →誤り。下線部⑵以降の本文は,「ダンスにはいろんな型やリズムがある」→「しかし,それらの中には共通する部分がある」→「それはダンスに感情や考えを盛り込むことだ」という流れになっている。そのような流れを受けての下線部⑶であるので,この段階で「ダンスの型やリズム」について話をすると,本文を逆流することとなってしまう。そこで,ウは不正解とまではいえないものの,適切ではない。

 エ 観客はダンサーと一緒にフェスティバルでダンスをすることができる。

  →誤り。そのようなことは本文中に書かれていない。


〔問4〕(配点:4) 正答:messages

 〔問2〕と同様に,空欄を補充することで,読解力と文法力をみる問題である。本問も,下線部⑷の直前を見ると,Yes.という記述があるから,解答の方針も〔問2〕と全く同じである。また,thatという指示代名詞があるから,この内容も明らかにしなければならない。そうすると,直前の文で,Dancers have messages in their dances, right?という疑問文がある。この疑問文は「ダンサーはダンスの中にメッセージを盛り込んでいるということか。」ということを聞いているから,それに対する答えとしてはYesで始まっているので,「ダンサーはダンスの中にメッセージを盛り込んでいる。」ということを伝えればいいことが分かる。ここで「盛り込む」というのをhaveで表現しており,書き換え後の文ではhavingとされている。そこで,その直後には,目的語,つまり「何を」盛り込むのかを回答すればいいということになる。したがって,messagesが正答である。


〔問5〕(配点:4) 正答:エ

 〔問1〕,〔問3〕と同様に,指示語の指す内容について問う問題である。本問でいう指示語とは指示代名詞thatである。このthatが何を指しているかが問われている。

 ア 私たちは将来の素晴らしい夢を持っている。

  →誤り。直前にWhen we have dreams for the future, they give us the energy to do our best.とあり,一見するとThatはこの部分を指しているようにも思える。しかしアの肢と同様のことが書かれているwe have dreams for the futureの部分は,あくまでWhenという条件の内容を表すので,この文章の核はthey give us the energy to do our best.の部分である。したがって,条件の方だけを指摘してThat's a good idea.とするのは,話の本質を見誤っている。また,この文章は,YokoがHow about "Let's have dreams for the future"?という提案をしたのに対して,KanaがDreams for the future?と聞き返したことに対する返答である。つまり,Let's have dreams for the future.を詳しく説明している部分にすぎない。したがって,やはり話のメインはLet's have dreams for the future.というメッセージ自体であるので,アは不適切である。

 イ 最善を尽くすためのエネルギーはいいものである。

  →誤り。アで説明したように,ここでの話の本質はLet's have dreams for the future.というメッセージであって,直前の

When we have dreams for the future, they give us the energy to do our best.はそれを詳しく説明しているだけにすぎない。したがって,イも不適切である。

 ウ 私たちはダンスに合う良い曲を選ぶだろう。

  →誤り。ダンスの曲を選ぶ話は,下線部⑸の後でKanaがNext, let's choose the music for our dance.と言い出したところからである。Nextという表現が使われていることから,この前後で話が分断されていることが分かる。したがって,下線部⑸の時点では,まだダンスの曲の話は関係がないことになる。よって,ウは誤りである。

 エ 「将来の夢を持とう」というのは素晴らしいメッセージだ。

  →正しい。アの解説参照。


〔問6〕(配点:4) 正答:イ

 〔問1〕,〔問3〕,〔問5〕と同様に指示語の指す内容について問う問題である。本問で指示語とは代名詞soである。このsoが何を指しているかが問われている。

 ア 私も,君たちが私たちのダンスを見に来ることを待ち望んでいる。

  →誤り。話の流れとしてはおかしくはないが,文法的に解釈が誤っている。I hope so,つまり「そのように思う」としている以上は,相手と同じことを思っていなければならない。そこで,相手がどのように思っているかについてみてみると,直前でCarrieが I hope the audience will get your message.と言っている。したがって,soの内容はthe audience will get your messageであることが分かる。そうするとアは誤りである。

 イ 私も,観客が私たちのメッセージを受け取ってくれることを願っている。

  →正しい。アの解説参照。

 ウ 私も,私たちが将来の夢を持てることを望んでいる。

  →誤り。アの解説参照。

 エ 私も,君たちに私たちの公演についての情報をあげることを望んでいる。

  →誤り。アの解説参照。また,下線部⑹より前の部分でWe will give you the information later.と言っているので,情報をあげること自体の意思は明確にされているので,hopeという表現とは適合しない。


〔問7〕(配点:4) 正答:ウ

 本文の続きの文章について,空欄にあてはまる語を答えることで,本文の理解を問う問題である。本文の続きであるから,新しい概念が登場することはなく,本文で述べられていたことをしっかりと理解していれば解答可能である。

 まず【 (A) 】は,inviting ... to yourの後にきているから,CarrieとMarkがYokoに招待された場所を答えればいいことになる。そうすると,下線部⑸と下線部⑹との間で,MarkがCan we go to see your dance?と聞いたのに対してYokoがSure.  We will give you the information later.と解答しているので,2人はダンスに招待されたことが分かる。そして,このダンスは,本文の最初の方でKanaがOur dance school will have a performance next month.としていることから,performanceの中で行われることが分かる。したがって,【 (A) 】にはperformanceが入る。この時点で,正答はウである。

 また,【 (B) 】はdreams ... give us ...の後にきているから,夢によって与えられるものを答えればいいことになる。そうすると,下線部⑸の直前で,YokoがWhen we have dreams for the future, they give us the energy to do our best.と言っていることから,dreamsはthe energyを与えてくれることが分かる。そこで【 (B) 】にはenergyが入ることが分かる。したがって,正答はウである。



2018-01-28(Sun)

【旧司】刑事訴訟法昭和53年度第2問


証拠法シリーズ第2弾。

≪問題≫
 殺人被告事件において,目撃者である証人甲は,公判期日に,検察官の主尋問に対し「ピストルを撃った犯人は被告人に間違いない」と述べた。弁護人は,甲の検察官に対する供述調書中では被告人が犯人である点については明確な供述がないと考えていたので,反対尋問の準備のためその延期を申し出て,反対尋問は次回期日に行われることとなった。ところが,甲は,次回期日前に急死してしまった。裁判所は,甲の右証言を被告人の有罪の証拠とすることが許されるか。この場合,右証言が被告人と犯行を結びつける唯一の証拠であるか否かによって差異を生ずるか。

伝聞です。

形式説と実質説で分かれるところです。

多くの人が形式説を採ると思いますが,その場合,この問題はどう処理すればいいのでしょうか。

普通に書いたらめちゃくちゃ短い答案が出来上がると思うのですが……。

≪答案≫
第1.設問前段
 1.裁判所は,甲の証言(以下「本件証言」という。)を証拠とすることができるか。甲は,公判期日において検察官の主尋問を受けているが,被告人側からの反対尋問を受けていない。そこで,このような証拠は伝聞証拠として証拠能力が認められないのではないか(320条1項)。(※1)
 2.320条1項の趣旨は,供述証拠は人の知覚,記憶,表現,叙述という過程を経るため,その各過程で誤りを生じるおそれが高いにもかかわらず,反対尋問,偽証罪による制裁,裁判所による観察という真実性の担保に欠けるため,証拠能力を否定する点にある。そこで,伝聞証拠とは,①公判廷外の供述を内容とする証拠で,②要証事実との関係で原供述の内容の真実性が問題となるものをいう。
 これを本件についてみると,本件証言は①甲が公判期日において直接供述したものであるから,公判廷外の供述を内容とするものではない。したがって,本件証言は伝聞証拠にはあたらない。(※2)
 よって,本件証言は証拠能力を否定されないから,裁判所は本件証言を証拠とすることが許される。
 3.なお,320条1項の趣旨について反対尋問の機会を重視し,伝聞証拠とは,事実認定をする裁判所の前での反対尋問を経ていない供述証拠をいうとする見解もある。この見解によれば,本件供述は,被告人側からの反対尋問を経る前に甲が死亡したことによって,反対尋問を経ることができなくなっているから,裁判所の前での反対尋問を経ていない供述証拠にあたり,伝聞証拠となる。
 しかし,被告人の公判廷供述を伝聞証拠とするのは320条1項の文言と整合せず,伝聞法則を反対尋問だけで説明することは無理があるというべきである。したがって,この見解は採用することができない。(※3)
第2.設問後段
 上記のように,本件証言はそもそも伝聞証拠にあたらず,証拠能力が認められるので,本件証言が被告人と犯行を結びつける唯一の証拠であるか否かによって差異を生じない。(※4)
以 上


(※1)問題提起の段階で,「公判期日における供述に代えて書面を証拠とし」,または,「公判期日外における他の者の供述を内容とする供述を証拠とする」にあたるかどうか,という形を示したいところではあります(新司の出題趣旨でも,たとえば「(立証趣旨から想定される要証事実は,いずれもWが知覚・記憶してノートに記載した事実の真実性を前提とするものであるから,これが「伝聞証拠」,すなわち刑事訴訟法第320条第1項の定める「公判期日における供述に代えて書面を証拠と」する場合であることは明瞭である。)」(平成20年新司法試験論文式試験問題出題趣旨7頁)というような書き方がされており,320条1項の文言に引き付けて検討されています。)。しかし,本問のような場合には,文言にあたらないことが明らかなので,文言にひきつけての問題提起をしにくいような気がします。そこで,今回の答案では,あえて文言には言及しないという形を採りました。
(※2)本当に①要件だけで切れてしまう気がするので,あてはめもクソもないです。こんなに短くていいのか不安になりますが,かといって他に書くべきことはないように思います。こんな書き方でいいのか,後日改めて検討してみたいところです。
(※3)まさに,ここの見解の採否によって,結論が変わってくるので,一応反対説に言及すべきなのかと思います。ただ,新司でこんなことを書いている時間は多分ないです。
(※4)形式説で伝聞証拠にあたらないという結論を採った以上はこうならざるを得ないと思いますが,果たしてこれでいいのか再度検討してみたいところです。
2018-01-25(Thu)

【旧司】刑事訴訟法平成21年第2問

遅くなりましたにもほどがありますが,あけましておめでとうございます。

本年もよろしくお願いいたします。

私の今年の,というより春休み中の目標の1つに,

証拠法を勉強する

というのがあります。

これは,どういうことか。

新司で周りに差をつけることができるようなテクニックを学ぶちゃんとした勉強をするとか,

誰も研究していない未知の論点について深く勉強するとか,

そういうことではないです。

あろうことか,私は,もうロースクールも半分が終わろうとしているのに,

まだ生まれてこの方一度も証拠法を勉強したことがないのです。


入学した当初は,証拠法もやってない奴がよくロースクールに受かったなくらいで笑い話にしていたわけですが,

司法試験まで残り1年ちょっととなってくると,さすがに焦ります。

選択科目もちゃんと勉強し始めないといけないのに,基本7法ですら未完成だったとは。

おそるべし。

ということで,これから証拠法をちゃんと真剣に勉強していきます。

その過程で,旧司や新司の問題も解いていこうと思いますので,その際に書いた答案をここに掲載していこうと思います。

というわけで,第一弾は,自白の問題。

旧司の平成21年第2問です。

≪問題≫

 警察官Aは,強盗殺人の被疑事実で勾留中の甲を取り調べたが,その際,黙秘権の告知をしなかった。甲は,当初,アリバイを主張して犯行を否認したが,Aが「犯行現場の防犯カメラにあなたの顔が写っていた 。」旨の虚偽の事実を告げたところ,甲は犯行を自白し,被害品を友人宅に隠匿していることも供述したので,その内容を録取した供述調書①が作成された。そこで,Aは,供述調書①を疎明資料として捜索差押許可状の発付を受けて甲の友人宅を捜索したところ,被害品が発見されたので,これを差し押さえた。その後,別の警察官Bが,黙秘権を告知して取り調べたところ,甲が犯行を再度自白したので,その内容を録取した供述調書②が作成された。
 裁判所は,供述調書①,甲の友人宅で差し押さえられた被害品及び供述調書②を証拠として採用することができるか。

勉強したところによると,自白法則についてはいろんな説が対立しているようです。

どれがいいのかわからないので,とりあえず,人権擁護説はないなくらいのスタンスでいようと思います。

早速答案を……

≪答案≫

第1.供述調書①の証拠としての採否について
 1.警察官Aは,甲の取調べにあたり,黙秘権の告知を行わず,また虚偽の事実を告げており,これに引き続いて供述調書①を作成している。このような状況下で作成された,供述調書①は「任意にされたものでない疑のある自白」(319条1項)にあたり,証拠として採用することができないのではないか。
 2⑴ 自白法則(憲法38条2項,刑訴法319条1項)の趣旨は,類型的に虚偽の自白を誘発するおそれがある状況下でされた自白を予め排除することで,誤判の防止を図る点にある。そこで,「任意にされたものでない疑のある自白」か否かは,類型的に虚偽の自白を誘発するおそれがあったか否かによって判断する。
  ⑵ これを本件についてみると,黙秘権の告知は取調べによる心理的圧迫から被疑者を解放するためになされるところ(※1),これがされないことにより,甲が心理的圧迫を感じ,正常な判断能力に支障をきたすことで,冷静な供述をすることができなくなるおそれを生じている。このような状況のもと,Aは犯行現場の防犯カメラに甲の顔が写っていた旨の虚偽の事実を告げている。そうすると,甲としては,アリバイ主張が否定され,もはやどのような弁解をしても無駄であると考えるにいたるおそれがある。そして,黙秘権の告知がないことと相俟って,甲は何らかの供述をしなければならないと考え,事実に反して犯行をした旨の供述をしてしまうおそれがある。
 以上から,供述調書①の作成におよぶ取調べの段階では,類型的に虚偽の自白を誘発するおそれがあったと認められる。
  ⑶ したがって,供述調書①は,「任意にされたものでない疑のある自白」にあたる。
 3.よって,供述証拠①は,証拠能力が認められないため,裁判所はこれを証拠として採用することができない。
第2.被害品の証拠としての採否について
 1.被害品については,供述調書①を疎明資料として発付を受けた捜索差押許可状に基づく捜索により発見,差押を受けたものである。そこで,供述調書①と同様に「任意にされたものでない疑のある自白」として証拠能力が否定されないか検討するに,被害品自体は供述ではなく,虚偽が混入するおそれがないから,これにあたらない。
 しかし,供述調書①の取調べにおいては,上記のように黙秘権の告知を行わなかったという198条2項に反する法令違反がある。そこで,このような違法な手段によって収集された証拠は,証拠能力が否定されないか。
 2⑴ 違法な手続によって獲得した証拠を採用することは,司法の無瑕性と将来の違法捜査抑止の観点から問題がある。もっとも,獲得手続に軽微な違法があるにすぎない場合にも証拠能力を否定してしまうことは,かえって司法の無瑕性が害される。そこで,①憲法および刑訴法の所期する基本原則を没却するような重大な違法があり(※2),②これを証拠として許容することが将来における違法な捜査の抑止の見地からして相当でないと認められる場合には,その証拠物の証拠能力は否定されるべきである。
  ⑵ これを本件についてみると,①198条2項で要求される黙秘権の告知は,憲法上規定されているものではなく,これに違反したことをもって直ちに重大な違法があるということはできない。しかし,Aは,黙秘権の告知を行わなかったことに加えて,虚偽の事実によって自白を獲得している。このような一連のAの取調べ態様からすると,Aが黙秘権の告知を行わなかったのは,単にそれを失念していたにとどまらず,あえてそれを行わないことにより,Aの心理状態を圧迫し自白を促すことを狙っていた可能性が高い。そうすると,198条2項に反する法令違反は,Aが刑訴法の基本原則を潜脱する意図のもと行われたものと認められる。したがって,上記手続違反は刑訴法の所期する基本原則を没却するような重大な違法ということができる。
 また,②Aが特段の理由なくこのような態度に出たことからすれば,今後も違法な取調べを繰り返し行う可能性はかなり高いと考えられる。そして被害品は,違法な取調べによって作成された供述調書①を疎明資料として発付された捜索差押許可状に基づく捜索によって発見され,差し押さえられたものであるから,違法手続と被害品との間には関連性がある。この点,捜索差押許可状の発付段階で裁判所による審査を経てはいるものの,疎明資料には供述調書①が提出されたのみで,裁判所としてはそれに基づいて審査を行っていることからすれば,違法手続と被害品との間の関連性は密接である。そうすると,違法手続と被害品獲得との因果性は強いということができる。したがって,被害品を証拠として許容することは,将来における違法な捜査の抑止の見地からして相当でないと認められる。
 3.よって,被害品は,証拠能力が認められないため,裁判所はこれを証拠として採用することができない。
第3.供述調書②の証拠としての採否について
 1.供述調書②は,警察官Bが黙秘権の告知を行ったうえでされた取調べによって作成されており,それ自体の手続違反は認められない。しかし,ここでの甲の供述内容は,供述調書①におけるのと同様であるから,このような自白についても「任意にされたものでない疑のある自白」にあたり,証拠として採用することができないのではないか。
 2⑴ 自白法則の上記趣旨に照らし,先行する取調べによって獲得された自白が虚偽であるおそれがある場合の,後行の取調べによって獲得された自白の任意性は,同様に,類型的に虚偽の自白を誘発するおそれがあったか否かによって判断する。
  ⑵ BがAと同じ警察官という立場にあることからすれば,Aに対して弁解しても無駄であればBに対して同じことをしても無駄であろうと考えても自然である(※3)。そうすると,Bが積極的にAの取調べによる心理的圧迫を遮断するような措置を講じない限り,Bによる取調べにおいても類型的に虚偽の自白を誘発するおそれが継続していると言わざるを得ない。そして,Aによる取調べとBによる取調べとは時間的間隔があまりないと考えられるうえ,BはAの指摘した事実は虚偽である旨を説明したうえで,再度供述内容を考えなおさせる等,積極的にAの取調べによる心理的圧迫を遮断するような措置を講じていない。
 以上からすると,Bによる取調べにおいても類型的に虚偽の自白を誘発するおそれがあるといえる。
  ⑶ したがって,供述調書②は,「任意にされたものでない疑のある自白」にあたる。
 3.よって,供述調書②は,証拠能力が認められないため,裁判所はこれを証拠として採用することができない。
以 上



(※1)浦和地裁平成3年3月25日判決(刑訴百選10版72事件)のかっこ書部分参照。
(※2)違法収集証拠排除法則の1つ目の要件は,判例では「憲法35条及びこれを受けた刑事訴訟法218条1項等の所期する令状主義の精神を没却するような重大な違法があり」とされていますが,本件では取調べの態様を問題としており,「令状主義」の話にそもそもならないため,このような言い回しに代えています。古江刑訴でも触れられていたかと思います。
(※3)はじめにこの部分を「……と考えるのが通常である」としていましたが,本当にそれが通常かどうかわからないですし,仮にマイナーな考えであったとしたら,採点実感でキレられるので(過去に変なことを欠いた答案に対して常識を疑うみたいな記述をしていた気がします。),まぁこう考えてもおかしくはないよね???くらいの記述にとどめました。
2017-10-23(Mon)

【新司】刑事系科目平成26年第2問

ついに新司に手を出してみようと思います(震え声)

年度・科目の順番はてきとーに……

まずは,平成26年刑事訴訟法から。

[刑事法科目]

〔第2問〕(配点:100)
 次の【事例】を読んで,後記〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
【事 例】
1 L県警察は,平成26年2月9日,Wから「自宅で妻のVが死亡している。」との通報を受けた。同日,L県M警察署の司法警察員Pらは,L県M市N町にあるW方に臨場したところ,Vは頭部を多数回殴打されて死亡しており,Wは「私は,本日,2週間にわたる海外出張から帰宅した。帰宅時,玄関の鍵が掛かっておらず,居間に妻の死体があった。家屋内は荒らされていないが,妻のダイヤモンドの指輪が見当たらない。」と供述した。
2 Pらは,Vに対する殺人・窃盗事件として捜査を開始し,その一環として,Wが供述する指輪について捜査したところ,同月10日,M市内の質屋から,同月3日午前中に甲がダイヤモンドの指輪を質入れしたとの情報を得た。そこで,Pがその指輪を領置し,Wに確認したところ,Wは「指輪は妻のものに間違いない。甲は,私のいとこで,多額の借金を抱えて夜逃げしたが,時々金を借りに来ていた。」と供述した。そして,甲が,隣県であるS県T市所在のU建設会社で作業員として働き,同社敷地内にある従業員寮に居住していることが判明したことから,Pは,同月11日,同所に赴き,午後1時頃,寮から出てきた甲に対し,「M市内の質屋にダイヤモンドの指輪を質入れしたことはないか。」と言ってM市所在のM警察署までの同行を求め,甲は素直にこれに応じた。
3 P及び甲は,同日午後4時頃,M警察署に到着し,Pはその頃から,同署刑事課取調室において,甲に供述拒否権があることを告げ,その取調べを開始した。甲は,当初,「私がダイヤモンドの指輪を質入れしたことは間違いないが,その指輪は拾ったものである。」と供述したが,同日午後7時頃,「指輪は,私がW方から盗んだものである。」と供述した。さらに,Pは,甲に対し,V死亡の事実を告げて,甲の関与について尋ねたものの,甲は「私は関係ない。」と答え,同日午後10時頃には,「先ほど指輪を盗んだと言ったのは嘘である。私は,Ⅴを殺していないし,指輪を盗んでもいない。指輪は知人からもらった。」と供述を変遷させた。
4 この時点で夜も遅くなっていたため,Pは取調べを中断することとしたが,翌日も引き続き甲を取り調べる必要があると考え,甲に対し,「明日朝から取調べを再開するので,出頭してほしい。」と申し向けた。すると,甲は,翌日はS県内の建設現場で働く予定があるとして出頭に難色を示したものの,Pから,捜査のため必要があるので協力してほしい旨説得され,「1日くらいなら仕事を休んで,取調べに応じてもよい。しかし,今から寮に帰るとなると,タクシーを使わなければならない。安いホテルに泊まった方が安上がりだと思うので,泊まる所を紹介してほしい。」と述べた。そこで,Pが,甲に対し,M警察署から徒歩約20分の距離にあるビジネスホテル「H」を紹介したところ,甲は,Hホテルまで自ら歩いて行き,同ホテルに自費で宿泊した。なお,Pは,甲に捜査員を同行させたり,甲の宿泊中に同ホテルに捜査員を派遣したりすることはしなかった。
 翌12日午前10時頃,捜査員が同行することなく,甲が1人でM警察署に出頭したので,Pは,前日に引き続き,同署刑事課取調室において,甲に供述拒否権があることを告げ,①甲の取調べを開始した。甲は,当初,殺人及び窃盗への関与を否認したものの,Pが適宜食事や休憩を取らせながら取調べを継続したところ,同日午後6時頃,甲は,殺人及び窃盗の事実を認め,「指輪を質入れした日の前日の昼頃,W方に金を借りに行ったが,Wは不在で妻のⅤがいた。居間でⅤと話をするうち口論となり,カッとなって部屋にあったゴルフクラブでⅤの頭などを多数回殴り付けて殺害した。殺害後,Ⅴがダイヤモンドの指輪を着けていたことに初めて気付き,その指輪を盗んだ。ゴルフクラブは山中に捨てた。」と供述するとともに,ゴルフクラブの投棄場所を記載した図面を作成した。また,Pは,甲の上記供述を記載した甲の供述録取書を作成した。なお,取調べ開始からこの時点まで,甲が取調べの中止を訴えたり,取調室からの退去を希望したりすることはなかった。
5 この時点で午後9時になっていたので,Pは取調べを中断することとし,甲に対し,「ゴルフクラブを捨てた場所に案内してもらったり,更に詳しい話を聞きたいので,ホテルにもう1泊してもらい,明日も取調べを続けたいがよいか。」と申し向けた。これに対し,甲は「宿泊する金がないし,続けて仕事を休むと勤務先に迷惑をかけることになるので,一旦寮に帰って社長に相談したい。落ち着いたら必ず出頭する。」と述べたものの,Pから「社長には電話で相談すればいいのではないか。宿泊費は警察が出すので心配しなくてもよい。」と説得され,渋々ながら「分かりました。そうします。」と答えた。
 そこで,Pは警察の費用でHホテルの客室を確保した。同客室は同ホテルの7階にあり,6畳和室と8畳和室が続いていて,奥の6畳和室からホテルの通路に出るためには,必ず8畳和室を通らなければならず,両室の間はふすまで仕切られているだけで,錠が掛からない構造であった。Pは,部下であるQら3名の司法警察員に対し,警察車両で甲をHホテルまで送り届けて上記客室の6畳和室に宿泊させ,Qら3名の司法警察員は同客室の8畳和室で待機するよう指示した。甲は,Qらと共に上記客室に到着し,Qらも宿泊することを知ると,「人がいると落ち着かない。警察官は帰ってほしい。せめて私を個室にして警察官は別室にいてもらいたい。」と訴えた。しかし,甲は,Qから「ふすまで仕切られているのだから,別室と同じようなものだろう。私達は隣の部屋にいるだけで,君の部屋をのぞくようなことはしない。」と説得されると,諦めて6畳和室で就寝し,Qら3名の司法警察員は8畳和室で待機した。
 翌13日午前9時頃,甲が警察車両に乗せられてM警察署に出頭したので,Pは,前日に引き続き,同署刑事課取調室において,甲に供述拒否権があることを告げ,②甲の取調べを開始したところ,甲は前夜同様に,Vを殺害して指輪を窃取した旨供述した。そこで,Pは,甲にゴルフクラブの投棄場所まで案内するように求め,これに応じた甲を警察車両に乗せ,甲の案内で山中まで赴いたところ,同所から血のついたゴルフクラブが発見された。Pは,これを領置した上,Wに確認を求めたところ,Wは,同クラブは特注品であり,自宅にあったものに間違いない旨供述した。また,同クラブからは数個の指紋が検出され,そのうち一つが甲の指紋と合致した。Pは,これらの捜査を踏まえて甲に対する殺人及び窃盗の被疑事実で逮捕状を請求し,裁判官から逮捕状を得た上,同日午後4時,M警察署において甲を通常逮捕した。なお,この日も,Pは,甲に適宜食事や休憩を取らせ,甲は,取調べ開始から逮捕まで,取調べの中止を訴えたり,取調室からの退去を希望したりすることはなかった。
6 甲は,逮捕後の弁解録取においても両被疑事実を認め,翌14日午前9時,検察官に送致された。甲は,検察官Rによる弁解録取においても両被疑事実を認め,Rは,殺人及び窃盗の被疑事実により甲の勾留を請求し,同日,勾留状が発付された。甲は,その後も両被疑事実を認め,「2月2日午後1時頃,借金を申し込むためにW方に行ったがWは不在だった。Ⅴと口論となり,Vから『Wの金ばかり当てにしている甲斐性なし。』などと罵られ,カッとなってゴルフクラブでVを殴り殺した。その後,Ⅴがダイヤモンドの指輪を着けていたことに初めて気付き,金に換えようと思ってその指輪を盗んだ。ゴルフクラブは山中に捨てた。」と供述した。Rは,その他所要の捜査を遂げ,延長された勾留期間の満了日である同年3月5日,甲を殺人罪及び窃盗罪により起訴した(公訴事実は【資料】のとおり。)。
7 同月8日,別の窃盗事件により勾留中の乙が,警察による取調べにおいて,W方でダイヤモンドの指輪及びルビーのペンダントを窃取し,ダイヤモンドの指輪は友人の甲に無償で譲渡し,ルビーのペンダントは自ら質入れした旨供述した。警察がこの供述に従い捜査したところ,W方にあったVの宝石箱から検出された指紋の一つが乙のものと合致するとともに,乙が供述した質屋からルビーのペンダントが発見され,そのペンダントは,VがWの出張中に購入したものであり,Vの所有物に間違いないことが判明した。さらに,甲がV殺害に使用したと供述するゴルフクラブから検出された数個の指紋のうち,一つは乙のものと合致することが判明したが,乙は「室内で金目の物を探しているうちに,ゴルフクラブに私の指紋が付いたと思う。私はV殺害には関係ない。」と供述した。
 上記事情を把握したRは,第1回公判前整理手続期日前である同月24日,甲が勾留されているL拘置所において,甲に対し,「君が起訴されている事件につき,もう一度,取調べを行うが,嫌なら取調べを受けなくてもよいし,取調べを受けるとしても,言いたくないことは言わなくてもよい。」と告げ,甲が取調べに応じる旨述べたので,Rは,弁護人を立ち会わせることなく,③甲の取調べを開始した。Rは,甲に対し,「乙という人物を知っているか。殺人・窃盗事件に乙が関係しているのではないか。」と質問したところ,甲は,しばらく逡巡していたものの,「乙は友人で,借金を肩代わりしてもらったことがある。今回の殺人事件に乙は関係していないが,実は,ダイヤモンドの指輪は私が盗んだのではなく,乙が盗んだものである。以前,私は,乙に,資産家であるいとこのWについて話したことがあった。2月2日午後7時頃,乙が寮の私の部屋に来て,『今日,W方から盗んできた。』と言ってダイヤモンドの指輪をただでくれた。私は,2月3日午前中にその指輪を質入れしたが,期待していたほどの金にならなかったので,Wから借金をしようと考え,その日の午後1時頃にW方に行った。しかし,Wはおらず,Vと口論になり罵られてカッとなって,ゴルフクラブでⅤを殺した。金目の物を探したり盗んだりすることなく,直ちにその場から逃げてゴルフクラブを捨てた。殺害の方法はこれまで話してきたとおりであり,私一人でしたことである。そして,私は,乙には日頃から世話になっていたことから,乙をかばうために,ダイヤモンドの指輪を私が盗んだと嘘をつき,それとつじつまを合わせるために,Vを殺したのは質入れの前日だということにした。」と供述した。
 その後,Rは,乙をも取り調べるなど所要の捜査を遂げた結果,甲及び乙の各供述に矛盾はなく,本件の真相は,甲が,平成26年2月2日午後7時頃,U建設会社従業員寮の甲の居室において,乙から盗品と知りつつダイヤモンドの指輪を無償で譲り受け,同月3日午後1時頃,W方居間において,単独で,Vを殺害した事件であると認め,④公判において,その旨立証するとの方針を立てた。

〔設問1〕1. 【事例】中の4及び5に記載されている①及び②の甲の取調べの適法性について,具体的事実を摘示しつつ論じなさい。
2. 【事例】中の7に記載されている③の甲の取調べの適法性について,具体的事実を摘示しつつ論じなさい。

〔設問2〕 検察官は,④の方針を前提とした場合,【資料】の公訴事実に関し,どのような措置を講じるべきかについて論じなさい。


さすが新司,長いですね。

長いです。いやぁ,長い。

≪参考答案≫
第1.設問1
 1.小問1
  ⑴ ①の甲の取調べの適法性について
   ア、「司法警察職員」である司法警察員Pは,Vに対する殺人・窃盗事件の「捜査をするについて必要がある」として,甲をM警察署まで同行させ,取調べを行っている。そうすると,①の甲の取調べは,198条1項の任意同行,任意取調べとして,任意捜査の一環として行われている。もっとも,①の甲の取調べに際しては,宿泊を伴うなど,その拘束時間等に鑑み,実質的にみれば「逮捕」(199条1項)にあたり,令状(憲法33条,刑訴199条1項)がないため,違法とならないか。「逮捕」すなわち「強制の処分」(197条1項但書)の意義が問題となる。
   イ、197条1項但書の趣旨は,現行刑事訴訟法が定める強制処分(199条,218条)に鑑み,それと同程度に厳格な要件,手続を定めて保護に値する程度の権利や利益が侵害されている場合にも,立法的コントロールを及ぼす点にある。そこで「強制の処分」とは,個人の意思を制圧し,重要な権利を制約する処分をいうと考える。
 そして,任意捜査の名目でなされた同行,取調べが個人の意思を制圧するか否かは,(ⅰ)同行を求めた時刻・場所,(ⅱ)同行の方法・態様,(ⅲ)被疑者の属性,(ⅳ)同行後の取調べの時間・場所・方法,(ⅴ)その間の監視状況,(ⅵ)被疑者の対応状況等の諸般の事情を総合的に考慮して客観的に判断する。
   ウ、これを本件についてみると,甲は,Pから同行を求められ,素直に応じてM警察署に出頭しており,これを拒絶するような意思は特段表明していない。
 また,(ⅰ)Pが同行を求めたのは午後1時であって,深夜のように通常外出しないようなプライベートな時間ではない。ばしょも,甲が寮から出てきたところであって,あくまで公共的な空間である。したがって,これらの事情からは,上記取調べが甲の意思に反することは推定されにくい。
 さらに,(ⅱ)項の取調べを行うにあたって,供述拒否権があることを告げ,甲の権利に配慮した適正な手続きが踏まれている。その他,取調べが圧迫感を感じさせるような態様で行われたといった事情はない。したがって,これらの事情からも,上記取調べが甲の意思に反することは推定されにくい。
 たしかに,(ⅳ)取調べは,午後4時頃から午後10時すぎまで,少なくとも6時間以上にわたる長時間をもって行われており,夜遅くまで続けられていた。しかし,Pはそれ以降当日中の取調べを中断しており,続きは翌日とする態様をとっている。取調べが開始された時刻が,夕方と比較的遅い時であったことからすれば,当該取調べは甲の意思に反しておらず,それに続く上記取調べも甲の意思に反するものとは推定されにくい。
 (ⅵ)当日中の取調べ後,甲は,翌日の取調べのため,寮に帰ることなく,M警察署の知覚にあるビジネスホテルに宿泊している。しかし,この宿泊については,甲が寮に帰るよりも安上がりであるとして,自らPに紹介を求めたものである。そうすると,甲としては,積極的にホテルに泊まることを希望していたものと考えられる(※1)。加えて,ホテルの宿泊は,甲の自費であったことからも,甲がホテルへの宿泊について意欲的であったものと推定される。したがって,これらの事情からしても,上記取調べが甲の意思に反していたものとは推定されにくい。
 そして,(ⅴ)甲がホテルに宿泊するに際して,Pは,甲に捜査員を同行させたり,甲の宿泊中に捜査員を派遣したりすることはなく,また,出頭にあたっても捜査員を同行させるようなことはなかった(※2)のであるから,甲のプライベートな時間は確保されており,不当に甲を拘束する態様ではなかったとみられる。したがって,上記取調べは,甲の意思に反するとは推定されにくい。
 以上からすれば,翌日甲が取調べを受けるにあたって,それが甲の意思に反していたとみることはできないから,甲の特段の拒絶意思はなかったとみるべきである。したがって,①の甲の取調べは,甲の意思を制圧するものではない。よって,①の甲の取調べは「強制の処分」にあたらない。
   エ、もっとも,取調べは,甲の精神的・肉体的苦痛や疲労を課すものである。そこで,「目的を達するために必要な」(197条1項本文)という捜査比例の原則が妥当し,必要性,緊急性を考慮し,具体的状況の下で相当といえなければ違法である。
 これを本件についてみると,甲にすけられている嫌疑は,殺人罪という最高刑である「死刑」が法定刑とされる重大犯罪であり(刑法199条),嫌疑がほぼ固まっている甲を取り調べることによって犯人を探る必要がある(※3)。また,再びこのような犯罪が生じないように犯人を確保する緊急性も強く認められる事案である(※4)(※5)。そして,上記のように,甲に対する取調べは夜遅くまで続けられていたものの,その時点をもって取調べは中断されており,甲の精神的・肉体的ストレスは大きいとまではいえない。さらに,宿泊を自ら申し出ており,かつ,捜査員の同行もないことからしても,プライベートな時間は確保されており,甲の精神的・肉体的ストレスは小さいものと考えられる。
 以上から,上記取調べは,甲の被侵害利益を考慮しても,具体的状況の下相当であったというべきである。したがって,上記取調べは,任意取調べの限界を逸脱しない。
 よって,①の甲の取調べは適法である。
  ⑵ ②の甲の取調べの適法性について
   ア、②の甲の取調べも,「強制の処分」にあたらないか,検討する。
   イ、上記第1.1.⑴イと同様の基準によって判断する。
   ウ、(ⅰ)及び(ⅱ)については,①の甲の取調べと同様である。そして,(ⅳ)取調べの間,Pは,適宜食事や休憩をとらせながら取調べを行っており,甲の疲労等に配慮がなされた態様であって,無理矢理取調べを受けさせるといったものではなく,また,圧迫的な取り調べがなされた事情もないことから,これらの事情から甲の意思に反することは推定されにくい。また,(ⅵ)甲は,取調べ開始から,取調べの中止を訴えたり,取調室からの退去を希望したりすることはなかったとあるから,甲は取調べに対しさほど抵抗していなかったと思われ,上記の取調べが甲の意思に反することは推定されにくい。
 もっとも,翌日以降も取調べを行いたい旨Pが申し向けた際,甲は,一旦寮に帰って社長と相談したいと述べている。したがって,甲としては,翌日以降の取調べに対して消極的であることが推認される。それにもかかわらず,Pは,社長には電話で相談すればよいとして,甲の上記意向を無視している。したがって,このような態様で行われた②の甲の取調べは,甲の意思に反するものと推定される。
 さらに,①の甲の取調べの場合と異なり,甲は宿泊の意向を示していない。むしろ寮に帰りたい旨示している。また,①の甲の取調べの場合は,前日の取調べが夜遅くまで続きタクシーでしか帰れなくなったために,金銭面の事情から宿泊を選択したにとどまり,②の甲の取調べの場合は,前日の取調べが午後9時頃には終了しており,まだタクシー以外の手段で帰ることができた可能性がある。そうすると,①の甲の取調べの前日にされた宿泊の同意は,②の甲の取調べの前日にされた宿泊については及ばないというべきである。加えて,ホテル内では,Qら3名の司法警察員が動向している。両室の間はふすまで仕切られているとはいえ,錠も掛けられない上,構造上Qらがいる部屋を通らなければホテルの通路に出られないものとなっている。他人の出入りを遮断できてはじめて外部からのプライバシーが保護されることからすれば,甲とQらは別室にいたものとみることはできず,実質的に甲はQらと同室で宿泊したものとみるべきである。そうすると,甲のプライベートな空間が確保されていたものとは到底いうことができず,これに引き続く甲の取調べは,甲の意思に反していたものと強く推認される。
 以上からすると,②の甲の取調べについて,甲はこれを拒絶する強い意思があったとみるべきであり,このような状況下で行われた取調べは,甲の意思を制圧するものである。
 そして,取調べによって甲は移動の自由を奪われ,また,精神的・肉体的ストレスを強く生じさせているから,重要な権利利益の侵害がある。
 よって,②の甲の取調べは,「強制の処分」にあたる。それにもかかわらず,令状なくして行われた②の甲の取調べは,令状主義違反の違法がある。
 2.小問2
  ⑴ ③の甲の取調べは,甲が殺人罪及び窃盗罪により起訴された後になされたものであるが,このように公訴提起後にも被告人を取り調べることは適法か。
  ⑵ 197条1項本文は,「目的を達するため必要な取調をすることができる」とし,客体について被疑者及び被告人の別を問うていない。そして,公訴提起後であっても,公訴維持の目的があるから,これに基づく捜査としての取調べも行うことができるというべきである(※6)
 しかし,公訴提起後は,検察官と被告人とは,相対立する当事者の関係になる。したがって,上記取調べも,被告人の当事者としての地位に配慮し,無制限に認めるべきではなく,被告人が自ら申し出たか,被告人がこれを拒絶できることを十分に承知していた場合に限られるべきである。
  ⑶ これを本件についてみると,Rは,③の甲の取調べを行うにあたり,嫌なら取調べを受けなくてもよいし,取調べを受けるとしても,言いたくないことは言わなくてもよい旨告げており,甲は取調べを拒絶できることを承知していたようにも思われる。
 しかし,突然取調べを行う旨を告げられ,その際に簡単に供述拒否権があることを告げられたとしても,素人である被告人には正確に判断することが期待できるようには思われない。したがって,甲の取調べを行うに当たっては,弁護人の意見を聞かせるなどしない限り,甲は十分承知していたものとはいえないと考えるところ,本件でRは弁護人を立ち会わせていない。
 したがって,甲は,取調べを拒絶できることを十分に承知していたものとはいえない。
 よって,③の甲の取調べは,「目的を達するため必要」ということができず,違法である。
第2.設問2(※7)
 1.公訴事実中殺人罪の嫌疑にかかる部分について
  ⑴ 公訴事実によれば,甲がVを殺害したのは,平成26年2月2日午後1時頃とされているが,甲の供述によれば,それは同月3日午後1時となっており,両者に差異が生じている。そこで,この場合に,訴因を変更することが必要であるか。
  ⑵ 当事者主義を採用する現行法(256条6項,298条1項,312条1項)の下では,裁判所の審判対象は,検察官の主張する具体的犯罪事実たる訴因であるところ,その機能は,裁判所に対し審判対象を画定し,その限りにおいて被告人に防御範囲を明示する点にある。したがって,審判対象の画定に必要不可欠な事実,すなわち,①被告人の行為が特定の犯罪構成要件に該当するかどうかを判定するに足る具体的事実,及び,②他の犯罪事実と区別するに足る事実に変更がある場合には,訴因変更手続が必要である。また,③訴因変更と異なる認定事実が一般的に被告人の防御にとって重要な事項であるときは,争点明確化による不意打ち防止の要請がとられるべきであり,検察官が訴因においてこれを明示した場合,原則として,訴因変更手続を要する。もっとも,④被告人の防御の具体的な状況等の審理経過に照らし,被告人に不意打ちとならず,判決で認定される事実が訴因に記載された事実と比べて被告人にとってより不利益であるとはいえない場合には,訴因変更は不要である。
  ⑶ これを本件についてみると,①日時は構成要件ではなく,②殺人は論理的に一回しかなしえないから,他の犯罪事実と区別するに足る事実に変更はない。しかし,③日時が公訴事実中に記載されている以上,原則として検察官は訴因変更すべきである。もっとも,④日時について公訴事実と異なる供述を行ったのは甲自身であり,これに基づいて訴因変更がされようとしているのであるから,この場合,甲に不意打ちはないというべきである。そして,日時が変わるのみで罪状に変更はないのであるから,より不利益な認定がされるものではない(※8)
 したがって,上記の点について検察官は訴因変更をする必要はない。
 2.公訴事実中窃盗罪の嫌疑にかかる部分について
  ⑴ 公訴事実によれば,甲は指輪を窃取したものとされているが,甲の供述によれば,甲は乙が窃取した指輪を譲り受けているにすぎないから,盗品等無償譲受罪(刑法256条1項)が成立するはずであり,両者に差異が生じている。
 両者は,構成要件が異なるから,訴因変更をしなければ公訴維持ができない。それでは,訴因変更をすることは可能か。「公訴事実の同一性」(312条1項)の範囲内といえるか,その判断基準が問題となる。
  ⑵ 「公訴事実の同一性」の範囲内で訴因変更が認められているのは,二重起訴禁止(338条3号,339条1項5号)や一事不再理効(337条1項)と一体となって,これらの範囲内にある犯罪事実を検察官に一回の手続で訴追することを要求する趣旨である。そして,刑事訴訟法が刑罰権の実現を目的とする以上,刑罰権が1個しか発生しない事実については,訴訟法上も一回の手続で処理すべきである。したがって,①両訴因の基本的事実が社会通念上である場合,または,②両訴因が実体法上一罪の関係にある場合には「公訴事実の同一性」の範囲内にあると考える。そして,基本的事実が社会通念上同一といえるか否かは,犯罪の日時,場所,行為態様,方法,相手方,両訴因の非両立性などから判断する(※9)(※10)
  ⑶ 両者における被害品は指輪であって,被害品,法益が共通している。また,犯罪日時は,両者とも平成26年2月2日であり,時刻も6時間程度しか差がなく,近接している。たしかに,行為態様は,窃取と譲受けでは異なるが,被害者はVであることは共通し,そこから運び出されたものである点も共通している。そして,窃盗罪と盗品等無償譲受罪とは併合罪(刑法45条前段)の関係にあるから,訴因として両立しない。
 異常からすれば,両訴因は,その基本的事実が社会通念上同一から,訴因変更をすることができる。
 よって,検察官は上記の点につき訴因変更措置を講じるべきである。
以 上(※11)


(※1)そうはいっても,タクシーでしか帰宅できない状況を作り出したのはPによる取調べであるから,甲としてみれば渋々ビジネスホテルに泊まるという選択をとったものとみるべきなのかもしれない。

(※2)問題文だと,ここの部分は,「警察が甲に捜査員を同行させて甲が出頭してきたわけではない」というよりも「甲は捜査員の同行がなくても出頭してきた」というような書き方になっているので,むしろ甲の態度として考慮すべき事情であったのかもしれない。

(※3)この点について出題趣旨(http://www.moj.go.jp/content/001127521.pdf)13頁では
本件が殺人・窃盗という重大事件であることや,甲が窃盗の被害品である指輪を質入れしたとの情報がある一方,それ以外の証拠はなく,甲を取り調べる必要性があること……は,「①甲の取調べ」及び「②甲の取調べ」の双方に共通する
としているので,必要性を基礎づける事情として,甲が質入れをした事情を指摘するべきであった。

(※4)この点について出題趣旨13頁では
「殺人・窃盗は同一犯人によって実行された可能性が高く,甲には窃盗のみならず殺人の嫌疑も存在することは,「①甲の取調べ」及び「②甲の取調べ」の双方に共通する」
としているので,緊急性(又は必要性)の考慮事情として,このことも指摘すべきであった。

(※5)必要性・緊急性の考慮について,学部の刑訴の教授は,必要性が肯定されれば緊急性は当然に肯定される,とおっしゃっていたように記憶しているので,必要性を認定したのであれば,別個に緊急性と明示して検討する必要はないのではないかとも思う。その場合は,緊急性で拾うはずだった事情は必要性の中に放り込んでしまえばいいのか。必要性と緊急性が隔たりのあり概念ではなく,連続したものであるならば,このような事情の拾い方をしてもよさそう。

(※6)この点について採点実感(http://www.moj.go.jp/content/001130132.pdf)39頁では
多くの答案は,起訴後の被告人の取調べが公判中心主義及び当事者主義の要請の少なくともいずれかと抵触するおそれがあり,その許容性に問題があることは指摘できていたものの,その一方で,刑事訴訟法第198条は取調べの対象を「被疑者」とするのみで,「被告人」の取調べについては何ら規定がないところ,この点を指摘・検討した答案は少なかった。
としている。上記答案では専ら当事者主義との関係からでしか論じられていないので,公判中心主義の観点からの論述も取り入れたいところである。しかし紙幅が足りない。どこを削るべきなのかを,じっくり検討したい。また,198条との関係について言及しなければならなかったようである。つらい。

(※7)設問1に時間と行数を費やしすぎたため,この時点で129行目に達しており,設問2にあまり紙面を割くことができなかった。悔やまれる。

(※8)この点について出題趣旨14頁では
検察官による訴因の変更が問題となる場合には,大別して,検察官が起訴状の記載と異なる事実を意識的に立証しようとして,証拠の提出に先立って訴因変更しようとする場合と,証拠調べの結果,起訴状の記載と異なる事実が証明されたと考えられることから,訴因変更しようとする場合とがあることについて,留意する必要がある。本問は,検察官が,公判前整理手続開始前,すなわち具体的な主張・立証を展開する以前に訴因と異なる心証を得て,その心証に基づく主張・立証活動を行おうとする場合に採るべき措置について検討を求めるものであるから,前者の局面の問題である。一般に「訴因変更の要否」と呼ばれ,上記の最高裁判例でも扱われた後者の問題とは局面を異にするから,その差異を意識して論じなければならない。
としている。その差異がどのように答案上表現されるかについて,現時点では分かっていない。

(※9)ここの規範をどうにかしてもう少し短くしたい。

(※10)この点について出題趣旨14頁では
本問で問題となるいわゆる「狭義の同一性」について,最高裁の判例は,「基本的事実関係が同一」かどうかを基準とした判断を積み重ねてきているが,その判断に当たっては,犯罪の日時,場所,行為の態様・方法・相手方,被害の種類・程度等の共通性に着目して結論を導くものと,両訴因の非両立性に着目して結論を導くものがある……。そこで,一連の判例の立場も踏まえつつ,「公訴事実の同一性」の判断基準を明らかにした上で,本件の各公訴事実につき訴因変更の可否を論じる必要がある。
としている。単純に読んだ限りでは,「犯罪の日時,場所,行為の態様・方法・相手方,被害の種類・程度等の共通性に着目して結論を導くもの」と,「両訴因の非両立性に着目して結論を導くもの」とは,択一的なものであるようにも思える。両者の関係について,答案上単に並列的に示していいものなのかは,はっきりしない。

(※11)196行目までいった。私が本番でここまで書くことは,およそ不可能であろう。

……といった感じで,出題趣旨と採点実感を読んだだけでも,これだけ粗が出てきてしまいました。

こんな調子で果たして合格することはできるのでしょうか。

果てしない。

以上


2017-10-20(Fri)

【ロー過去】中大ロー平成29年刑法

だいぶ間が空きましたが,ロー入試の再現を……。

もう1年経ってしまいましたが,微かな需要のために……。

苦手な刑法ですが……。

Ⅲ 刑 法

 次の【事例】を読み,下記の【設問】に答えなさい。解答用紙は,表面(30行)のみを使用すること。

【事例】
 X警察署X派出所勤務の警察官甲は,深夜,担当区域のパトロールに出たが,やがて,A道路舗装会社の工事用資材置き場がある道路に進入していく小型トラックを認めた。当時,X警察署管内では,工事用資材置き場から資材が盗まれる窃盗事件が多発していたことから,甲は,窃盗犯のトラックではないかと考え,後を追い掛けたところ,間もなく資材置き場の入り口前で小型トラックが停止し,運転席から乙が下りてくるのを現認した。実は,乙は運送会社の勤務を終え,自宅に向かっているところであったが,エンジンの調子が悪いのか,運転中異音がしたため,エンジンルームを点検しようと思い立ち,街路灯がある比較的明るい場所で車を停めたもので,それが偶々A道路舗装会社の工事用資材置き場前だっただけのことであった。下車した乙は,エンジンルームを見ようと車の前に回ったが,甲にはこれがいかにも資材置き場の入口から中をのぞき込んで,そこに置かれている資材を物色し始めているように見えた。加えて,深夜という時間帯や乙の服装が黒ずくめだったこともあって,甲は,頭から乙を多発している資材泥棒の犯人であると決め付け,現行犯逮捕の要件はまだないということが一瞬頭をかすめたものの,功名心から,この際資材置き場に侵入する前に捕まえてしまえという気になり,いきなり走り出して乙に駆け寄ると,その背後から両手を広げて飛びつき,乙を組み伏せて逮捕しようとした。乙は,人が走ってくる音に気付いて振り返り,警察官の制服を着た甲が自分の方に向かってくるのを認めたが,その直後甲に急に飛びかかられたため,驚くとともに,振り向きざま思わず右手で甲を強く突き飛ばした。乙は空手を嗜んでおり,右手の突き出しは,いわゆる掌底突き(手のひらの手首に近い部分で相手を突く技)であったため,その強さは半端なものではなく,そのため,甲はもんどり打って後ろに倒れ,路面に頭をしたたかに打ち付けて脳震盪を起こし,搬送先の救急病院で気がつくまで,約1時間にわたって気を失ってしまった。

【設問】
 甲及び乙の罪責について論じなさい。

(120点)


≪再現答案≫
第1.甲の罪責について
 1.甲が,乙に向けて飛びつき,組み伏せて逮捕しようとした行為について,逮捕罪(220条)が成立しないか。
 2.「逮捕」とは,人の身体を拘束し,場所的移動の自由に制約を加える行為をいう。そして,人の身体に対する拘束は,それが短時間であったとしても,その間の被害者の場所的移動の自由を制限するものであるから,一瞬でも人の身体を拘束すれば,同罪は既遂に達すると考える。甲は,乙に飛びつき,乙によって攻撃をされるまでの間乙の身体を拘束していたと考えられるから,甲の上記行為は「逮捕」にあたる。また,同条にいう「不法」とは,注意的文言にすぎず,構成要件とはならない。甲は,乙を捕まえてしまえという意図で上記行為に出ているから,構成要件的故意も認められる。したがって,甲の上記行為は,逮捕罪の構成要件に該当する。
 3.甲は,乙が資材泥棒の犯人であると考えて,これを逮捕しようとしていることから,正当行為(35条)として違法性が阻却されるとも思えるが,上記行為は,未だ現行犯逮捕の要件を満たしていないため,正当行為にあたらない。したがって,違法性は阻却されない。加えて,甲は,現行犯逮捕の要件がまだないと認識しているから,責任も阻却されない。
 4.以上から,甲の上記行為に逮捕罪が成立する。
第2.乙の罪責について
 1.乙が,甲に対して,掌底突きをした行為について,傷害罪(204条)が成立しないか。
 2.「傷害」とは,人の生理的機能に障害を加え,または,人の健康状態を不良に変更することをいう。空手に嗜んだ者が,本来人に対して攻撃を仕掛けるものである空手技を素人相手に行えば,高確率で決まり,相手の生理的機能に障害を加える危険性が十分に認められる。そして,甲は乙の上記行為によって,脳震盪を起こしており,実際に生理的機能に障害が生じている。したがって,乙の上記行為は,「傷害」にあたる。乙は,甲を認識した上で,これを思わず右手で殴っている。反射的とはいえ,そのような行為に出ることを認識しているといえるから,構成要件的故意も認められる。したがって,乙の上記行為は,傷害罪の構成要件を満たす。
 3.しかし,乙は,甲から飛び掛られたことから,それを避けようとして上記行為に出ている。そこで,正当防衛(36条1項)が成立し,違法性が阻却されないか。
 「急迫」とは,法益侵害の現実的危険性が現に存し,または間近に押し迫っていることをいう。「不正」とは,違法と同義である。「やむを得ず」とは,自己の防衛行為が相当性を保っていることをいう。また,主観的正当化要素として防衛の意思が必要であり,その内容は,急迫不正の侵害を避けようとする単純な心理状態をいう。これを本件についてみると,乙は,甲によって,自己の身体の自由が侵害されるおそれがあり,「急迫」性がある。また,甲の逮捕行為は,上記のように,違法性を阻却する事由がないから,「不正」である。そして,乙は,「自己…の権利」である身体の自由を守ろうとしている。これについて,乙は,反射的に上記行為に出たことからすれば,積極的に甲を加害しようとするといった意思ではなく,単純に自己を防衛する心理状態であったといえる。したがって防衛の意思も認められる。さらに,乙の掌底突きは,その強さが半端ではなかったのであるが,このような緊急状態の下で,自己の力を調節している暇はなく,本件のような状況の下でも未だ相当性は失われないというべきである。したがって,甲の上記行為には正当防衛が成立し,違法性が阻却される。
 4.以上から,乙の上記行為については,犯罪不成立となる。
以上


最初に問題を見たときの感想は,うーんなんだこれは,という感じでした。

見たことない問題だけど,何を論じてほしいかはわからなくはない,

だけどそれが合ってるのかも自信ないと困惑を極めていました。

とりあえず,甲から検討していくわけですが,

甲は飛びついて逮捕しようとしているけど,結局身体拘束に至ってないから,

逮捕未遂かなぁと考え,六法をめくったら,

逮捕罪には未遂規定がないことを知り,10秒くらいかたまりました。

(逮捕未遂がないだと……!?じゃあこれ何罪検討するんだ……)と,

本当にこんな心情になりました。

あとから周囲の人に聞くと,暴行罪にした人がほとんどでしたが,

なぜか当時の私には暴行罪の発想がありませんでした。

そうなってくると,私には逮捕罪を推し進めるしかありませんでした。

同時に,刑訴のやらかしもあるから(後述),いよいよ落ちたぞと覚悟しました。

ただ,冷静に考えたら,絶対この問題のメインは乙の罪責だから,

乙で頑張ればいいやと思い直し,どう考えても逮捕罪が成立しない本問で,

軽く逮捕罪を成立させて終わりました。

とにかく,甲をさっさと終わらせようという気持ちから,

違法性・責任のところはすごくあっさり論じるにとどめました。

乙の罪責については,

まぁ,人並みには書けたかな……書けてるといいな,くらいです。

構成要件該当性の検討で,順番がごちゃごちゃして読みづらくなってしまったのは,

反省点だと思います。

あとは,正当防衛の検討もごちゃごちゃしていて,

全体的にごちゃごちゃの答案ができました。

当時の心理状態が強く反映された劣った答案といえよう。

周りには,正当防衛については,相当性できって,

過剰防衛に流した人も結構いました。

私は,答案構成時点で少し迷いましたが,

この状況で乙に前科つけるのかわいそすぎだろという

完全な私情のもと相当性を肯定しました。

評価次第で変わるでしょうし,どっちでもいいと思いますが。

ちなみに,乙の罪責で公務執行妨害罪を検討している方も,結構いました。

私も,本番で少し思いましたが,行数足りないし,

どうせ否定されるから書かなくていいやと思い,書きませんでした。

とりあえず,中大の刑法は,

定義をしっかり書くだけで,合格ラインに乗るんだと思います。

罪責を間違えてもなんとかなるというのは,私の答案によって証明されました。

その問題でもっとも求められている論点さえ外さなければ大きなミスにはならないでしょう。

刑法と刑訴の失敗を通じて,私が言いたいことは,

1科目や2科目失敗したところで,まだまだ挽回のチャンスはあるから,

心を揺さぶられずに,他の科目に専念してほしいということです。

そうすれば,一度は消えかかった全免の希望であっても,

取り戻すことができると思います。

以上
2017-07-05(Wed)

最判平成24年12月7日刑集66巻12号1337頁-堀越事件

◎最判平成24年12月7日刑集66巻12号1337頁

       主   文

 本件上告を棄却する。

       理   由

 1 検察官の上告趣意のうち,憲法21条1項,31条の解釈の誤りをいう点について
 (1) 原判決及び記録によれば,本件の事実関係は,次のとおりである。
 ア 本件公訴事実の要旨は,「被告人は,社会保険庁東京社会保険事務局目黒社会保険事務所に年金審査官として勤務していた厚生労働事務官であるが,平成15年11月9日施行の第43回衆議院議員総選挙に際し,日本共産党を支持する目的をもって,第1 同年10月19日午後0時3分頃から同日午後0時33分頃までの間,東京都中央区(以下省略)所在のB不動産ほか12か所に同党の機関紙であるしんぶん赤旗2003年10月号外(『いよいよ総選挙』で始まるもの)及び同党を支持する政治的目的を有する無署名の文書である東京民報2003年10月号外を配布し,第2 同月25日午前10時11分頃から同日午前10時15分頃までの間,同区(以下省略)所在のC方ほか55か所に前記しんぶん赤旗2003年10月号外及び前記東京民報2003年10月号外を配布し,第3 同年11月3日午前10時6分頃から同日午前10時18分頃までの間,同区(以下省略)所在のD方ほか56か所に同党の機関紙であるしんぶん赤旗2003年10月号外(『憲法問題特集』で始まるもの)及びしんぶん赤旗2003年11月号外を配布した。」というものであり,これが国家公務員法(以下「本法」という。)110条1項19号(平成19年法律第108号による改正前のもの),102条1項,人事院規則14-7(政治的行為)(以下「本規則」という。)6項7号,13号(5項3号)(以下,これらの規定を合わせて「本件罰則規定」という。)に当たるとして起訴された。
 イ 被告人が上記公訴事実記載の機関紙等の配布行為(以下「本件配布行為」という。)を行ったことは,証拠上明らかである。
 ウ 被告人は,本件当時,目黒社会保険事務所の国民年金の資格に関する事務等を取り扱う国民年金業務課で,相談室付係長として相談業務を担当していた。その具体的な業務は,来庁した1日当たり20人ないし25人程度の利用者からの年金の受給の可否や年金の請求,年金の見込額等に関する相談を受け,これに対し,コンピューターに保管されている当該利用者の年金に関する記録を調査した上,その情報に基づいて回答し,必要な手続をとるよう促すというものであった。そして,社会保険事務所の業務については,全ての部局の業務遂行の要件や手続が法令により詳細に定められていた上,相談業務に対する回答はコンピューターからの情報に基づくものであるため,被告人の担当業務は,全く裁量の余地のないものであった。さらに,被告人には,年金支給の可否を決定したり,支給される年金額等を変更したりする権限はなく,保険料の徴収等の手続に関与することもなく,社会保険の相談に関する業務を統括管理していた副長の指導の下で,専門職として,相談業務を担当していただけで,人事や監督に関する権限も与えられていなかった
 (2) 第1審判決は,本件罰則規定は憲法21条1項,31条等に違反せず合憲であるとし,本件配布行為は本件罰則規定の構成要件に当たるとして,被告人を有罪と認め,被告人を罰金10万円,執行猶予2年に処した。
 (3) 原判決は,本件配布行為は,裁量の余地のない職務を担当する,地方出先機関の管理職でもない被告人が,休日に,勤務先やその職務と関わりなく,勤務先の所在地や管轄区域から離れた自己の居住地の周辺で,公務員であることを明らかにせず,無言で,他人の居宅や事務所等の郵便受けに政党の機関紙や政治的文書を配布したことにとどまるものであると認定した上で,本件配布行為が本件罰則規定の保護法益である国の行政の中立的運営及びこれに対する国民の信頼の確保を侵害すべき危険性は,抽象的なものを含めて,全く肯認できないから,本件配布行為に対して本件罰則規定を適用することは,国家公務員の政治活動の自由に対する必要やむを得ない限度を超えた制約を加え,これを処罰の対象とするものといわざるを得ず,憲法21条1項及び31条に違反するとして,第1審判決を破棄し,被告人を無罪とした。
 (4) 所論は,原判決は,憲法21条1項,31条の解釈を誤ったものであると主張する。
 ア そこで検討するに,本法102条1項は,「職員は,政党又は政治的目的のために,寄附金その他の利益を求め,若しくは受領し,又は何らの方法を以てするを問わず,これらの行為に関与し,あるいは選挙権の行使を除く外,人事院規則で定める政治的行為をしてはならない。」と規定しているところ,同項は,行政の中立的運営を確保し,これに対する国民の信頼を維持することをその趣旨とするものと解される。すなわち,憲法15条2項は,「すべて公務員は,全体の奉仕者であって,一部の奉仕者ではない。」と定めており,国民の信託に基づく国政の運営のために行われる公務は,国民の一部でなく,その全体の利益のために行われるべきものであることが要請されている。その中で,国の行政機関における公務は,憲法の定める我が国の統治機構の仕組みの下で,議会制民主主義に基づく政治過程を経て決定された政策を忠実に遂行するため,国民全体に対する奉仕を旨として,政治的に中立に運営されるべきものといえる。そして,このような行政の中立的運営が確保されるためには,公務員が,政治的に公正かつ中立的な立場に立って職務の遂行に当たることが必要となるものである。このように,本法102条1項は,公務員の職務の遂行の政治的中立性を保持することによって行政の中立的運営を確保し,これに対する国民の信頼を維持することを目的とするものと解される。
 他方,国民は,憲法上,表現の自由(21条1項)としての政治活動の自由を保障されており,この精神的自由は立憲民主政の政治過程にとって不可欠の基本的人権であって,民主主義社会を基礎付ける重要な権利であることに鑑みると,上記の目的に基づく法令による公務員に対する政治的行為の禁止は,国民としての政治活動の自由に対する必要やむを得ない限度にその範囲が画されるべきものである
 このような本法102条1項の文言,趣旨,目的や規制される政治活動の自由の重要性に加え,同項の規定が刑罰法規の構成要件となることを考慮すると,同項にいう「政治的行為」とは,公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが,観念的なものにとどまらず,現実的に起こり得るものとして実質的に認められるものを指し,同項はそのような行為の類型の具体的な定めを人事院規則に委任したものと解するのが相当である。そして,その委任に基づいて定められた本規則も,このような同項の委任の範囲内において,公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められる行為の類型を規定したものと解すべきである。上記のような本法の委任の趣旨及び本規則の性格に照らすと,本件罰則規定に係る本規則6項7号,13号(5項3号)については,それぞれが定める行為類型に文言上該当する行為であって,公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるものを当該各号の禁止の対象となる政治的行為と規定したものと解するのが相当である。このような行為は,それが一公務員のものであっても,行政の組織的な運営の性質等に鑑みると,当該公務員の職務権限の行使ないし指揮命令や指導監督等を通じてその属する行政組織の職務の遂行や組織の運営に影響が及び,行政の中立的運営に影響を及ぼすものというべきであり,また,こうした影響は,勤務外の行為であっても,事情によってはその政治的傾向が職務内容に現れる蓋然性が高まることなどによって生じ得るものというべきである。
 そして,上記のような規制の目的やその対象となる政治的行為の内容等に鑑みると,公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるかどうかは,当該公務員の地位,その職務の内容や権限等,当該公務員がした行為の性質,態様,目的,内容等の諸般の事情を総合して判断するのが相当である。具体的には,当該公務員につき,指揮命令や指導監督等を通じて他の職員の職務の遂行に一定の影響を及ぼし得る地位(管理職的地位)の有無,職務の内容や権限における裁量の有無,当該行為につき,勤務時間の内外,国ないし職場の施設の利用の有無,公務員の地位の利用の有無,公務員により組織される団体の活動としての性格の有無,公務員による行為と直接認識され得る態様の有無,行政の中立的運営と直接相反する目的や内容の有無等が考慮の対象となるものと解される。

【法令審査】
 イ そこで,進んで本件罰則規定が憲法21条1項,31条に違反するかを検討する。この点については,本件罰則規定による政治的行為に対する規制が必要かつ合理的なものとして是認されるかどうかによることになるが,これは,本件罰則規定の目的のために規制が必要とされる程度と,規制される自由の内容及び性質,具体的な規制の態様及び程度等を較量して決せられるべきものである(最高裁昭和52年(オ)第927号同58年6月22日大法廷判決・民集37巻5号793頁等)。そこで,まず,本件罰則規定の目的は,前記のとおり,公務員の職務の遂行の政治的中立性を保持することによって行政の中立的運営を確保し,これに対する国民の信頼を維持することにあるところ,これは,議会制民主主義に基づく統治機構の仕組みを定める憲法の要請にかなう国民全体の重要な利益というべきであり,公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められる政治的行為を禁止することは,国民全体の上記利益の保護のためであって,その規制の目的は合理的であり正当なものといえる。他方,本件罰則規定により禁止されるのは,民主主義社会において重要な意義を有する表現の自由としての政治活動の自由ではあるものの,前記アのとおり,禁止の対象とされるものは,公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められる政治的行為に限られ,このようなおそれが認められない政治的行為や本規則が規定する行為類型以外の政治的行為が禁止されるものではないから,その制限は必要やむを得ない限度にとどまり,前記の目的を達成するために必要かつ合理的な範囲のものというべきである。そして,上記の解釈の下における本件罰則規定は,不明確なものとも,過度に広汎な規制であるともいえないと解される。なお,このような禁止行為に対しては,服務規律違反を理由とする懲戒処分のみではなく,刑罰を科すことをも制度として予定されているが,これは,国民全体の上記利益を損なう影響の重大性等に鑑みて禁止行為の内容,態様等が懲戒処分等では対応しきれない場合も想定されるためであり,あり得べき対応というべきであって,刑罰を含む規制であることをもって直ちに必要かつ合理的なものであることが否定されるものではない
 以上の諸点に鑑みれば,本件罰則規定は憲法21条1項,31条に違反するものではないというべきであり,このように解することができることは,当裁判所の判例(最高裁昭和44年(あ)第1501号同49年11月6日大法廷判決・刑集28巻9号393頁,最高裁昭和52年(オ)第927号同58年6月22日大法廷判決・民集37巻5号793頁,最高裁昭和57年(行ツ)第156号同59年12月12日大法廷判決・民集38巻12号1308頁,最高裁昭和56年(オ)第609号同61年6月11日大法廷判決・民集40巻4号872頁,最高裁昭和61年(行ツ)第11号平成4年7月1日大法廷判決・民集46巻5号437頁,最高裁平成10年(分ク)第1号同年12月1日大法廷決定・民集52巻9号1761頁)の趣旨に徴して明らかである。

【適用審査】
 ウ 次に,本件配布行為が本件罰則規定の構成要件に該当するかを検討するに,本件配布行為が本規則6項7号,13号(5項3号)が定める行為類型に文言上該当する行為であることは明らかであるが,公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるものかどうかについて,前記諸般の事情を総合して判断する。
 前記のとおり,被告人は,社会保険事務所に年金審査官として勤務する事務官であり,管理職的地位にはなく,その職務の内容や権限も,来庁した利用者からの年金の受給の可否や年金の請求,年金の見込額等に関する相談を受け,これに対し,コンピューターに保管されている当該利用者の年金に関する記録を調査した上,その情報に基づいて回答し,必要な手続をとるよう促すという,裁量の余地のないものであった。そして,本件配布行為は,勤務時間外である休日に,国ないし職場の施設を利用せずに,公務員としての地位を利用することなく行われたものである上,公務員により組織される団体の活動としての性格もなく公務員であることを明らかにすることなく,無言で郵便受けに文書を配布したにとどまるものであって,公務員による行為と認識し得る態様でもなかったものである。これらの事情によれば,本件配布行為は,管理職的地位になく,その職務の内容や権限に裁量の余地のない公務員によって,職務と全く無関係に,公務員により組織される団体の活動としての性格もなく行われたものであり,公務員による行為と認識し得る態様で行われたものでもないから,公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるものとはいえない。そうすると,本件配布行為は本件罰則規定の構成要件に該当しないというべきである。
 エ 以上のとおりであり,被告人を無罪とした原判決は結論において相当である。なお,原判決は,本件罰則規定を被告人に適用することが憲法21条1項,31条に違反するとしているが,そもそも本件配布行為は本件罰則規定の解釈上その構成要件に該当しないためその適用がないと解すべきであって,上記憲法の各規定によってその適用が制限されるものではないと解されるから,原判決中その旨を説示する部分は相当ではないが,それが判決に影響を及ぼすものでないことは明らかである。論旨は採用することができない。
 2 検察官の上告趣意のうち,判例違反をいう点について
 所論引用の判例(前掲最高裁昭和49年11月6日大法廷判決)の事案は,特定の地区の労働組合協議会事務局長である郵便局職員が,同労働組合協議会の決定に従って選挙用ポスターの掲示や配布をしたというものであるところ,これは,上記労働組合協議会の構成員である職員団体の活動の一環として行われ,公務員により組織される団体の活動としての性格を有するものであり,勤務時間外の行為であっても,その行為の態様からみて当該地区において公務員が特定の政党の候補者を国政選挙において積極的に支援する行為であることが一般人に容易に認識され得るようなものであった。これらの事情によれば,当該公務員が管理職的地位になく,その職務の内容や権限に裁量の余地がなく,当該行為が勤務時間外に,国ないし職場の施設を利用せず,公務員の地位を利用することなく行われたことなどの事情を考慮しても,公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるものであったということができ,行政の中立的運営の確保とこれに対する国民の信頼に影響を及ぼすものであった
 したがって,上記判例は,このような文書の掲示又は配布の事案についてのものであり,判例違反の主張は,事案を異にする判例を引用するものであって,本件に適切ではなく,所論は刑訴法405条の上告理由に当たらない。
 3 よって,刑訴法408条により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。なお,裁判官千葉勝美の補足意見,裁判官須藤正彦の意見がある。

>>>裁判官千葉勝美の補足意見は,次のとおりである。
 私は,多数意見の採る法解釈等に関し,以下の点について,私見を補足しておきたい。
 1 最高裁昭和49年11月6日大法廷判決・刑集28巻9号393頁(いわゆる猿払事件大法廷判決)との整合性について
 (1) 猿払事件大法廷判決の法令解釈の理解等
 猿払事件大法廷判決は,国家公務員の政治的行為に関し本件罰則規定の合憲性と適用の有無を判示した直接の先例となるものである。そこでは,特定の政党を支持する政治的目的を有する文書の掲示又は配布をしたという行為について,本件罰則規定に違反し,これに刑罰を適用することは,たとえその掲示又は配布が,非管理職の現業公務員でその職務内容が機械的労務の提供にとどまるものにより,勤務時間外に,国の施設を利用することなく,職務を利用せず又はその公正を害する意図なく,かつ,労働組合活動の一環として行われた場合であっても憲法に違反しない,としており,本件罰則規定の禁止する「政治的行為」に限定を付さないという法令解釈を示しているようにも読めなくはない。しかしながら,判決による司法判断は,全て具体的な事実を前提にしてそれに法を適用して事件を処理するために,更にはそれに必要な限度で法令解釈を展開するものであり,常に採用する法理論ないし解釈の全体像を示しているとは限らない。上記の政治的行為に関する判示部分も,飽くまでも当該事案を前提とするものである。すなわち,当該事案は,郵便局に勤務する管理職の地位にはない郵政事務官で,地区労働組合協議会事務局長を務めていた者が,衆議院議員選挙に際し,協議会の機関決定に従い,協議会を支持基盤とする特定政党を支持する目的をもって,同党公認候補者の選挙用ポスター6枚を自ら公営掲示場に掲示し,また,その頃4回にわたり,合計184枚のポスターの掲示を他に依頼して配布したというものである。このような行為の性質・態様等については,勤務時間外に国の施設を利用せずに行われた行為が中心であるとはいえ,当該公務員の所属組織による活動の一環として当該組織の機関決定に基づいて行われ,当該地区において公務員が特定の政党の候補者の当選に向けて積極的に支援する行為であることが外形上一般人にも容易に認識されるものであるから,当該公務員の地位・権限や職務内容,勤務時間の内外を問うまでもなく,実質的にみて「公務員の職務の遂行の中立性を損なうおそれがある行為」であると認められるものである。このような事案の特殊性を前提にすれば,当該ポスター掲示等の行為が本件罰則規定の禁止する政治的行為に該当することが明らかであるから,上記のような「おそれ」の有無等を特に吟味するまでもなく(「おそれ」は当然認められるとして)政治的行為該当性を肯定したものとみることができる。猿払事件大法廷判決を登載した最高裁判所刑集28巻9号393頁の判決要旨五においても,「本件の文書の掲示又は配布(判文参照)に」本件罰則規定を適用することは憲法21条,31条に違反しない,とまとめられているが,これは,判決が摘示した具体的な本件文書の掲示又は配布行為を対象にしており,当該事案を前提にした事例判断であることが明確にされているところである。そうすると,猿払事件大法廷判決の上記判示は,本件罰則規定自体の抽象的な法令解釈について述べたものではなく,当該事案に対する具体的な当てはめを述べたものであり,本件とは事案が異なる事件についてのものであって,本件罰則規定の法令解釈において本件多数意見と猿払事件大法廷判決の判示とが矛盾・抵触するようなものではないというべきである。
 (2) 猿払事件大法廷判決の合憲性審査基準の評価
 なお,猿払事件大法廷判決は,本件罰則規定の合憲性の審査において,公務員の職種・職務権限,勤務時間の内外,国の施設の利用の有無等を区別せずその政治的行為を規制することについて,規制目的と手段との合理的関連性を認めることができるなどとしてその合憲性を肯定できるとしている。この判示部分の評価については,いわゆる表現の自由の優越的地位を前提とし,当該政治的行為によりいかなる弊害が生ずるかを利益較量するという「厳格な合憲性の審査基準」ではなく,より緩やかな「合理的関連性の基準」によったものであると説くものもある。しかしながら,近年の最高裁大法廷の判例においては,基本的人権を規制する規定等の合憲性を審査するに当たっては,多くの場合,それを明示するかどうかは別にして,一定の利益を確保しようとする目的のために制限が必要とされる程度と,制限される自由の内容及び性質,これに加えられる具体的制限の態様及び程度等を具体的に比較衡量するという「利益較量」の判断手法を採ってきており,その際の判断指標として,事案に応じて一定の厳格な基準(明白かつ現在の危険の原則,不明確ゆえに無効の原則,必要最小限度の原則,LRAの原則,目的・手段における必要かつ合理性の原則など)ないしはその精神を併せ考慮したものがみられる。もっとも,厳格な基準の活用については,アプリオリに,表現の自由の規制措置の合憲性の審査基準としてこれらの全部ないし一部が適用される旨を一般的に宣言するようなことをしないのはもちろん,例えば,「LRA」の原則などといった講学上の用語をそのまま用いることも少ない。また,これらの厳格な基準のどれを採用するかについては,規制される人権の性質,規制措置の内容及び態様等の具体的な事案に応じて,その処理に必要なものを適宜選択して適用するという態度を採っており,さらに,適用された厳格な基準の内容についても,事案に応じて,その内容を変容させあるいはその精神を反映させる限度にとどめるなどしており(例えば,最高裁昭和58年6月22日大法廷判決・民集37巻5号793頁(「よど号乗っ取り事件」新聞記事抹消事件)は,「明白かつ現在の危険」の原則そのものではなく,その基本精神を考慮して,障害発生につき「相当の蓋然性」の限度でこれを要求する判示をしている。),基準を定立して自らこれに縛られることなく,柔軟に対処しているのである(この点の詳細については,最高裁平成4年7月1日大法廷判決・民集46巻5号437頁(いわゆる成田新法事件)についての当職[当時は最高裁調査官]の最高裁判例解説民事篇・平成4年度235頁以下参照。)。
 この見解を踏まえると,猿払事件大法廷判決の上記判示は,当該事案については,公務員組織が党派性を持つに至り,それにより公務員の職務遂行の政治的中立性が損なわれるおそれがあり,これを対象とする本件罰則規定による禁止は,あえて厳格な審査基準を持ち出すまでもなく,その政治的中立性の確保という目的との間に合理的関連性がある以上,必要かつ合理的なものであり合憲であることは明らかであることから,当該事案における当該行為の性質・態様等に即して必要な限度での合憲の理由を説示したにとどめたものと解することができる(なお,判文中には,政治的行為を禁止することにより得られる利益と禁止されることにより失われる利益との均衡を検討することを要するといった利益較量論的な説示や,政治的行為の禁止が表現の自由に対する合理的でやむを得ない制限であると解されるといった説示も見られるなど,厳格な審査基準の採用をうかがわせるものがある。)。ちなみに,最高裁平成10年12月1日大法廷決定・民集52巻9号1761頁(裁判官分限事件)も,裁判所法52条1号の「積極的に政治運動をすること」の意味を十分に限定解釈した上で合憲性の審査をしており,厳格な基準によりそれを肯定したものというべきであるが,判文上は,その目的と禁止との間に合理的関連性があると説示するにとどめている。これも,それで足りることから同様の説示をしたものであろう。
 そうであれば,本件多数意見の判断の枠組み・合憲性の審査基準と猿払事件大法廷判決のそれとは,やはり矛盾・抵触するものでないというべきである。
 2 本件罰則規定の限定解釈の意義等
 本件罰則規定をみると,当該規定の文言に該当する国家公務員の政治的行為を文理上は限定することなく禁止する内容となっている。本件多数意見は,ここでいう「政治的行為」とは,当該規定の文言に該当する政治的行為であって,公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが,現実的に起こり得るものとして実質的に認められるものを指すという限定を付した解釈を示した。これは,いわゆる合憲限定解釈の手法,すなわち,規定の文理のままでは規制範囲が広すぎ,合憲性審査におけるいわゆる「厳格な基準」によれば必要最小限度を超えており,利益較量の結果違憲の疑いがあるため,その範囲を限定した上で結論として合憲とする手法を採用したというものではない
 そもそも,規制される政治的行為の範囲が広範であるため,これを合憲性が肯定され得るように限定するとしても,その仕方については,様々な内容のものが考えられる。これを,多数意見のような限定の仕方もあるが,そうではなく,より類型的に,「いわゆる管理職の地位を利用する形で行う政治的行為」と限定したり,「勤務時間中,国の施設を利用して行う行為」と限定したり,あるいは,「一定の組織の政治的な運動方針に賛同し,組織の一員としてそれに積極的に参加する形で行う政治的行為」と限定するなど,事柄の性質上様々な限定が考え得るところであろう。しかし,司法部としては,これらのうちどのような限定が適当なのかは基準が明らかでなく判断し難いところであり,また,可能な複数の限定の中から特定の限定を選び出すこと自体,一種の立法的作用であって,立法府の裁量,権限を侵害する面も生じかねない。加えて,次のような問題もある。
 国家公務員法は,専ら憲法73条4号にいう官吏に関する事務を掌理する基準を定めるものであり(国家公務員法1条2項),我が国の国家組織,統治機構を定める憲法の規定を踏まえ,その国家機構の担い手の在り方を定める基本法の一つである。本法102条1項は,その中にあって,公務員の服務についての定めとして,政治的行為の禁止を規定している。このような国家組織の一部ともいえる国家公務員の服務,権利義務等をどう定めるかは,国の統治システムの在り方を決めることでもあるから,憲法の委任を受けた国権の最高機関である国会としては,国家組織全体をどのようなものにするかについての基本理念を踏まえて対処すべき事柄であって,国家公務員法が基本法の一つであるというのも,その意味においてである。
 このような基本法についての合憲性審査において,その一部に憲法の趣旨にそぐわない面があり,全面的に合憲との判断をし難いと考えた場合に,司法部がそれを合憲とするために考え得る複数の限定方法から特定のものを選び出して限定解釈をすることは,全体を違憲とすることの混乱や影響の大きさを考慮してのことではあっても,やはり司法判断として異質な面があるといえよう。憲法が規定する国家の統治機構を踏まえて,その担い手である公務員の在り方について,一定の方針ないし思想を基に立法府が制定した基本法は,全体的に完結した体系として定められているものであって,服務についても,公務員が全体の奉仕者であることとの関連で,公務員の身分保障の在り方や政治的任用の有無,メリット制の適用等をも総合考慮した上での体系的な立法目的,意図の下に規制が定められているはずである。したがって,その一部だけを取り出して限定することによる悪影響や体系的な整合性の破綻の有無等について,慎重に検討する姿勢が必要とされるところである。
 本件においては,司法部が基本法である国家公務員法の規定をいわばオーバールールとして合憲限定解釈するよりも前に,まず対象となっている本件罰則規定について,憲法の趣旨を十分に踏まえた上で立法府の真に意図しているところは何か,規制の目的はどこにあるか,公務員制度の体系的な理念,思想はどのようなものか,憲法の趣旨に沿った国家公務員の服務の在り方をどう考えるのか等々を踏まえて,国家公務員法自体の条文の丁寧な解釈を試みるべきであり,その作業をした上で,具体的な合憲性の有無等の審査に進むべきものである(もっとも,このことは,司法部の違憲立法審査は常にあるいは本来慎重であるべきであるということを意味するものではない。国家の基本法については,いきなり法文の文理のみを前提に大上段な合憲,違憲の判断をするのではなく,法体系的な理念を踏まえ,当該条文の趣旨,意味,意図をまずよく検討して法解釈を行うべきであるということである。)。
 多数意見が,まず,本件罰則規定について,憲法の趣旨を踏まえ,行政の中立的運営を確保し,これに対する国民の信頼を維持するという規定の目的を考慮した上で,慎重な解釈を行い,それが「公務員の職務遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められる行為」を政治的行為として禁止していると解釈したのは,このような考え方に基づくものであり,基本法についての司法判断の基本的な姿勢ともいえる
 なお,付言すると,多数意見のような解釈適用の仕方は,米国連邦最高裁のブランダイス判事が,1936年のアシュワンダー対テネシー渓谷開発公社事件判決において,補足意見として掲げた憲法問題回避の準則であるいわゆるブランダイス・ルールの第4準則の「最高裁は,事件が処理可能な他の根拠が提出されているならば,訴訟記録によって憲法問題が適正に提出されていても,それの判断を下さないであろう。」,あるいは,第7準則の「連邦議会の制定法の有効性が問題とされたときは,合憲性について重大な疑念が提起されている場合でも,当最高裁は,その問題が回避できる当該法律の解釈が十分に可能か否かをまず確認することが基本的な原則である。」(以上のブランダイス・ルールの内容の記載は,渋谷秀樹「憲法判断の条件」講座憲法学6・141頁以下による。)という考え方とは似て非なるものである。ブランダイス・ルールは,周知のとおり,その後,Rescue Army v.Municipal Court of City of Los Angeles,331 U.S. 549(1947)の法廷意見において採用され米国連邦最高裁における判例法理となっているが,これは,司法の自己抑制の観点から憲法判断の回避の準則を定めたものである。しかし,本件の多数意見の採る限定的な解釈は,司法の自己抑制の観点からではなく,憲法判断に先立ち,国家の基本法である国家公務員法の解釈を,その文理のみによることなく,国家公務員法の構造,理念及び本件罰則規定の趣旨・目的等を総合考慮した上で行うという通常の法令解釈の手法によるものであるからである。
 3 本件における本件罰則規定の構成要件該当性の処理
 本件配布行為は,本件罰則規定に関する上記の法令解釈によれば,公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められない以上,それだけで構成要件該当性が否定される。この点について,原審は,本件配布行為の内容等に鑑みて,本件罰則規定を適用することが違憲となるとして,被告人を無罪とすべきであるとしている。これは,本件のような政治的行為についてまで,刑罰による規制を及ぼすことの問題を考慮した上での判断であり,実質的には,本件の多数意見と同様に,当該公務員の職務の遂行の政治的中立性に与える影響が小さいことを実質的な根拠としていると解され,その苦心は理解できるところではある。しかしながら,表現の自由の規制立法の合憲性審査に際し,このような適用違憲の手法を採用することは,個々の事案や判断主体によって,違憲,合憲の結論が変わり得るものであるため,その規制範囲が曖昧となり,恣意的な適用のおそれも生じかねず,この手法では表現の自由に対する威嚇効果がなお大きく残ることになろう。個々の事案ごとの政治的行為の個別的な評価を超えて,本件罰則規定の一般的な法令解釈を行った上で,その構成要件該当性を否定することが必要であると考えるゆえんである。

>>>裁判官須藤正彦の意見は,次のとおりである。
 本件につき,私は,多数意見と結論を同じくするが,一般職の国家公務員の政治的行為の規制に関しその説くところとは異なる見解を有するので,以下この点につき述べておきたい。
 1 公務員の政治的行為の解釈について
 (1) 私もまた,多数意見と同様に,本法102条1項の政治的行為とは,国民の政治的活動の自由が民主主義社会を基礎付ける重要な権利であること,かつ,同項の規定が本件罰則規定の構成要件となることなどに鑑み,公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められる(観念的なものにとどまらず,現実的に起こり得るものとして認められる)ものを指すと解するのが相当と考える。
 (2) すなわち,まず,公務員の政治的行為とその職務の遂行とは元来次元を異にする性質のものであり,例えば公務員が政党の党員となること自体では無論公務員の職務の遂行の政治的中立性が損なわれるとはいえない。公務員の政治的行為によってその職務の遂行の政治的中立性が損なわれるおそれが生ずるのは,公務員の政治的行為と職務の遂行との間で一定の結び付き(牽連性)があるがゆえであり,しかもそのおそれが観念的なものにとどまらず,現実的に起こり得るものとして実質的に認められるものとなるのは,公務員の政治的行為からうかがわれるその政治的傾向がその職務の遂行に反映する機序あるいはその蓋然性について合理的に説明できる結び付きが認められるからである。そうすると,公務員の職務の遂行の政治的中立性が損なわれるおそれが実質的に生ずるとは,そのような結び付きが認められる場合を指すことになる。進んで,この点について敷えんして考察するに,以下のとおり,多数意見とはいささか異なるものとなる。
 2 勤務外の政治的行為
 (1) しかるところ,この「結び付き」について更に立ち入って考察すると,問題は,公務員の政治的行為がその行為や付随事情を通じて勤務外で行われたと評価される場合,つまり,勤務時間外で,国ないし職場の施設を利用せず,公務員の地位から離れて行動しているといえるような場合で,公務員が,いわば一私人,一市民として行動しているとみられるような場合である。その場合は,そこからうかがわれる公務員の政治的傾向が職務の遂行に反映される機序あるいは蓋然性について合理的に説明できる結び付きは認められないというべきである。
 (2) 確かに,このように勤務外であるにせよ,公務員が政治的行為を行えば,そのことによってその政治的傾向が顕在化し,それをしないことに比べ,職務の遂行の政治的中立性を損なう潜在的可能性が明らかになるとは一応いえよう。また,職務の遂行の政治的中立性に対する信頼も損なわれ得るであろう。しかしながら,公務員組織における各公務員の自律と自制の下では,公務員の職務権限の行使ないし指揮命令や指導監督等の職務の遂行に当たって,そのような政治的傾向を持ち込むことは通常考えられない。また,稀に,そのような公務員が職務の遂行にその政治的傾向を持ち込もうとすることがあり得るとしても,公務員組織においてそれを受け入れるような土壌があるようにも思われない。そうすると,公務員の政治的行為が勤務外で行われた場合は,職務の遂行の政治的中立性が損なわれるおそれがあるとしても,そのおそれは甚だ漠としたものであり,観念的かつ抽象的なものにとどまるものであるといえる。
 結局,この場合は,当該公務員の管理職的地位の有無,職務の内容や権限における裁量の有無,公務員により組織される団体の活動としての性格の有無,公務員による行為と直接認識され得る態様の有無,行政の中立的運営と直接相反する目的や内容の有無等にかかわらず――それらの事情は,公務員の職務の遂行の政治的中立性に対する国民の信頼を損なうなどの服務規律違反を理由とする懲戒処分の対象となるか否かの判断にとって重要な考慮要素であろうが――その政治的行為からうかがわれる政治的傾向がその職務の遂行に反映する機序あるいはその蓋然性について合理的に説明できる結び付きが認められず,公務員の政治的中立性が損なわれるおそれが実質的に生ずるとは認められないというべきである。この点,勤務外の政治的行為についても,事情によっては職務の遂行の政治的中立性を損なう実質的おそれが生じ得ることを認める多数意見とは見解を異にするところである。
 (3) ちなみに,念のためいえば,「勤務外」と「勤務時間外」とは意味を異にする。本規則4項は,本法又は本規則によって禁止又は制限される政治的行為は,「職員が勤務時間外において行う場合においても,適用される」と規定しているところであるが,これは,勤務時間外でも勤務外とは評価されず,上記の結び付きが認められる場合(例えば,勤務時間外に,国又は職場の施設を利用して政治的行為を行うような場合に認められ得よう。)にはその政治的行為が規制されることを規定したものと解される
 3 必要やむを得ない規制について
 (1) ところで,本法102条1項が政治的行為の自由を禁止することは,表現の自由の重大な制約となるものである。しかるところ,民主主義に立脚し,個人の尊厳(13条)を基本原理とする憲法は,思想及びその表現は人の人たるのゆえんを表すものであるがゆえに表現の自由を基本的人権の中で最も重要なものとして保障し(21条),かつ,このうち政治的行為の自由を特に保障しているものというべきである。そのことは,必然的に,異なった価値観ないしは政治思想,及びその発現としての政治的行為の共存を保障することを意味しているといってよいと思われる。そのことからすると,憲法は,自分にとって同意できない他人の政治思想に対して寛容で(時には敬意をさえ払う),かつ,それに基づく政治的行為の存在を基本的に認めないしは受忍すること,いわば「異見の尊重」をすることが望ましいとしているともいえよう。当然のことながら,本件で問題となっている一般職の公務員もまた,憲法上,公務員である前に国民の一人として政治に無縁でなく政治的な信念や意識を持ち得る以上,前述の意味での政治的行為の自由を享受してしかるべきであり,したがって,憲法は,公務員が多元的な価値観ないしは政治思想を有すること,及びその発現として政治的行為をすることを基本的に保障しているものというべきである。
 (2) 以上の表現の自由を尊重すべきものとする点は多数意見と特に異なるところはないと思われ,また,同意見が述べるとおり,本法102条1項の規制は,公務員の職務の遂行の政治的中立性を保持することによって行政の中立的運営を確保し,これに対する国民の信頼を維持することを目的とするものであるが,公務員の政治的行為の自由が上記のように憲法上重大な性質を有することに照らせば,その目的を達するための公務員の政治的行為の規制は必要やむを得ない限度に限られるというべきである。そうすると,問題は,本法102条1項の政治的行為の解釈が前記のようなものであれば,このような必要やむを得ない規制となるかどうかである。
 そこで更に検討するに,まず,刑罰は国権の作用による最も峻厳な制裁で公務員の政治的行為の自由の規制の程度の最たるものであって,処罰の対象とすることは極力謙抑的,補充的であるべきことが求められることに鑑みれば,この公務員の政治的行為禁止違反という犯罪は,行政の中立的運営を保護法益とし,これに対する信頼自体は独立の保護法益とするものではなく,それのみが損なわれたにすぎない場合は行政内部での服務規律違反による懲戒処分をもって必要にして十分としてこれに委ねることとしたものと解し,加うるに,公務員の職務の遂行の政治的中立性が損なわれるおそれが実質的に認められるときにその法益侵害の危険が生ずるとの考えのもとに,本法102条1項の政治的行為を上記のものと解することによって,処罰の対象は相当に限定されることになるのである。
 のみならず,そのおそれが実質的に生ずるとは,公務員の政治的行為からうかがわれる政治的傾向がその職務の遂行に反映する機序あるいはその蓋然性について合理的に説明できる結び付きが認められる場合を指し,しかも,勤務外の政治的行為にはその結び付きは認められないと解するのであるから,公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められる場合は一層限定されることになる。
 結局,以上の解釈によれば,本件罰則規定については,政党その他の政治的団体の機関紙たる新聞その他の刊行物の配布は,上記の要件及び範囲の下で大幅に限定されたもののみがその構成要件に該当するのであるから,目的を達するための必要やむを得ない規制であるということが可能であると思われる。
 (3) ところで,本法102条1項の政治的行為の上記の解釈は,憲法の趣旨の下での本件罰則規定の趣旨,目的に基づく厳格な構成要件解釈にほかならない。したがって,この解釈は,通常行われている法解釈にすぎないものではあるが,他面では,一つの限定的解釈といえなくもない。しかるところ,第1に,公務員の政治的行為の自由の刑罰の制裁による規制は,公務員の重要な基本的人権の大なる制約である以上,それは職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるものを指すと解するのは当然であり,したがって,規制の対象となるものとそうでないものとを明確に区別できないわけではないと思われる。第2に,そのようにおそれが実質的に認められるか否かということは,公務員の政治的行為からうかがわれる政治的傾向が職務の遂行に反映する機序あるいは蓋然性について合理的に説明できる結び付きがあるか否かということを指すのであり,そのような判断は一般の国民からみてさほど困難なことではない上,勤務外の政治的行為はそのような結び付きがないと解されるのであるから,規制の対象となるかどうかの判断を可能ならしめる相当に明確な指標の存在が認められ,したがって,一般の国民にとって具体的な場合に規制の対象となるかどうかを判断する基準を本件罰則規定から読み取ることができるといえる(最高裁昭和57年(行ツ)第156号同59年12月12日大法廷判決・民集38巻12号1308頁(札幌税関検査違憲訴訟事件)参照)。
 以上よりすると,本件罰則規定は,上記の厳格かつ限定的である解釈の限りで,憲法21条,31条に反しないというべきである。
 (4) もっとも,上記のような限定的解釈は,率直なところ,文理を相当に絞り込んだという面があることは否定できない。また,本法102条1項及び本規則に対しては,規制の対象たる公務員の政治的行為が文理上広汎かつ不明確であるがゆえに,当該公務員が文書の配布等の政治的行為を行う時点において刑罰による制裁を受けるのか否かを具体的に予測することが困難であるから,犯罪構成要件の明確性による保障機能を損ない,その結果,処罰の対象にならない文書の配布等の政治的行為も処罰の対象になるのではないかとの不安から,必要以上に自己規制するなどいわゆる萎縮的効果が生じるおそれがあるとの批判があるし,本件罰則規定が,懲戒処分を受けるべきものと犯罪として刑罰を科せられるべきものとを区別することなくその内容についての定めを人事院規則に委任していることは,犯罪の構成要件の規定を委任する部分に関する限り,憲法21条,31条等に違反し無効であるとする見解もある(最高裁昭和44年(あ)第1501号同49年11月6日大法廷判決・刑集28巻9号393頁(猿払事件)における裁判官大隅健一郎ほかの4人の裁判官の反対意見参照)。このような批判の存在や,我が国の長い歴史を経ての国民の政治意識の変化に思いを致すと(なお,公務員の政治的行為の規制について,地方公務員法には刑罰規定はない。また,欧米諸国でも調査し得る範囲では刑罰規定は見受けられない。),本法102条1項及び本規則については,更なる明確化やあるべき規制範囲・制裁手段について立法的措置を含めて広く国民の間で一層の議論が行われてよいと思われる。
 4 結論
 被告人の本件配布行為は政治的傾向を有する行為ではあることは明らかであるが,勤務時間外である休日に,国ないし職場の施設を利用せず,かつ,公務員としての地位を利用することも,公務員であることを明らかにすることもなく,しかも,無言で郵便受けに文書を配布したにとどまるものであって,被告人は,いわば,一私人,一市民として行動しているとみられるから,それは勤務外のものであると評価される。そうすると,被告人の本件配布行為からうかがわれる政治的傾向が被告人の職務の遂行に反映する機序あるいは蓋然性について合理的に説明できる結び付きは認めることができず,公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるとはいえないというべきである。したがって,被告人の管理職的地位の有無,その職務の内容や権限における裁量の有無等を検討するまでもなく,被告人の本件配布行為は本件罰則規定の構成要件に該当しないというべきである。被告人を無罪とした原判決は,以上述べた理由からして,結論において相当である。
(裁判長裁判官 千葉勝美 裁判官 竹内行夫 裁判官 須藤正彦 裁判官 小貫芳信)



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