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2021-02-13(Sat)

【ロー過去】神戸ロー2020年度民法

お久しぶりです。

私はついに弁護士になりました。

あと副業で,ロー進学の学生を対象にしたオンライン家庭教師も始めました。

その関係で,今後もちょっとずつ答案を書くことになりそうです。

今回は神戸ローの2020年度の民法です。

≪問題≫

 平成29年10月10日,XはAから代金3千万円を借り入れるとともに,自己所有の土地甲に抵当権を設定する旨Aと合意し,契約書を交わした。同年10月20日,Xは甲に抵当権を設定するにあたり,その登記手続をZに委任した。その際,Zは登記手続に必要だからと述べ,実印,印鑑証明書および甲の登記済証(以下「実印等」という。)の交付をXに求め,Xは登記手続をなすものと信頼し,Zに実印等を交付した。しかし,Zは登記手続をなすことなく,同年11月20日に,Xの承諾を得ないまま,交付された実印等を用い,甲を5千万円で譲渡する旨の契約をYとの間で締結した。同日Zは売買代金の支払いを受けるとともに,Yへの移転登記を完了した。同年11月30日に,Aから抵当権設定登記が完了していない旨の問いあわせを受け,Xは初めて甲がYに譲渡されていることを知った。そこで直ちにXは甲の所有権は自分にあると主張し,Yに対し移転登記の抹消を求めた。
 以上の事実関係に加え,以下の事実関係1または2の下で,Xの主張は認められるか,根拠条文を示しつつ論じなさい。その際,事実関係1と2においてZのとった行為の違いにより,Xの主張に対するYの反論を基礎付ける法的構成にどのような相違が生じるかを意識しつつ論述しなさい。なお,事実関係1,2は互いに独立したものと扱い,事実関係1に基づく解答は〔第1問の答案用紙〕に論述し,事実関係2に基づく解答は〔第2問の答案用紙〕に論述しなさい。

〔事実関係1〕(60点)
 契約を締結するにあたり,Zは一貫してXの名をかたり,契約書面にも「売主X」とのみ署名捺印してYとの間で契約を締結していた。

〔事実関係2〕(40点)
 ZはXから実印等の交付を受けた後,必要書類を偽造し,甲の登記名義をZに移転した上で,「売主Z」と署名捺印してYとの間で契約を締結していた。

≪出題趣旨≫

 事実関係1は,Xが物権的請求権(妨害排除請求権)に基づき登記抹消を請求したことに対して,表見代理(110条)に基づき法律行為(売買契約)の効果がXに帰属し,これによりXは請求の根拠となる所有権を失っている旨Yが抗弁することの成否を問うものである。まず,Zの行為が代理行為といえるためには,本人名を用いて行為しているZに99条1項の顕名が認められるかどうかが問題となり,論拠を示しつつ論じることが求められる。次に,顕名が認められるとしても,Zは本人Xから甲についての抵当権設定行為をなす権限を与えられているにすぎず,この権限が110条で求められる基本代理権に該当するかを論じる必要がある。抵当権設定行為はXA間で抵当権設定の合意により既に発生した物権変動につき対抗力を与える行為に過ぎず,私法上の権利変動を惹起する行為ではない。このため,原則として110条の基本代理権要件を満たさない。しかし,判例は,当該行為が私法上の契約による義務履行のためになされる場合には,基本代理権要件が充足され110条が適用されるとしており,この点を踏まえて示しつつ論じることが求められる。

 事実関係2においては,相手方Yは登記に公示されたZの所有権限を信頼しており,事実関係1と異なり行為者Zの代理権限に対する信頼を有する者ではない。さらに,Zは無権利者であるにもかかわらず実体的権利関係を反映しない虚偽の登記を用いてYと売買契約を締結している。よって,事実関係2は表見代理の問題とはならず,虚偽表示(94条2項の類推適用事例)の問題となる。事実関係2では,Yの抗弁を支える法律構成に事実関係1と比較していかなる理由で相違が生ずるかを明示しつつ,94条2項の類推適用,ないし,110条を併せた法意に基づき相手方が保護されるとするためには,94条2項における通謀要件と比較してどの程度の帰責性が本人Xに求められるかという点を踏まえ論述することが求められる。

110条とか94条2項とか問題にさせる割には過失要件に使える事情が少ない気がします。

これは仮定的に事実関係を設定させる趣旨なのか,もうこれだけで事案を検討させる趣旨なのか,よく分かりません。

余裕があればいろいろ書けばいいと思いますが,問題文に書かれていない事実を勝手に書くのは勇気がいります。

無難に書いた方がいいんでしょう。

≪答案≫
第1問
1 XはYに対し,所有権に基づく妨害排除請求権 として土地甲の所有権移転登記抹消登記請求をする(※1)。これが認められるためには,①自己が所有していること,②相手方名義の登記があることが必要である。
 ①Xは,平成29年11月20日時点で,土地甲を所有しており(※2),②土地甲にはY名義の所有権移転登記が存在する。したがって,Xの上記請求は認められるようにも思われる。
2⑴ これに対して,Yは,Zが土地甲をXの名でYに対し売却しており,これが代理(民法99条)にあたり,その効果がXに帰属するため,これにより土地甲の所有権がYに移転する反面Xは所有権を喪失したとして,Xの上記①の主張に対して反論することが考えられる。
Zは,自身がXの代理人であることを示していないが,一貫してXの名をかたり,契約書面にも「売主X」とのみ署名捺印しているため,Xが法律行為の当事者となる者であることが明らかとされているといえ(※3),「本人のためにすることを示して」いるといえる。しかし,XがZに対して土地甲の売却につき代理権を授与した事実はないから,Yのこの反論は認められない。
 ⑵ そうだとしても,Yは,表見代理(民法110条)が成立するから,上記⑴と同様に,土地甲の所有権がYに移転したとして,Xの上記①の主張に対して反論することが考えられる。
  ア 本条の「代理人」すなわち基本代理権の授与があるといえるためには,事実行為にとどまらず法律行為について代理権が授与される必要がある(※4)。本件で,XはZに対して,土地甲に抵当権を設定する登記手続を委任したものであるが,登記申請行為は公法上の行為にすぎず,法律行為について代理権が授与されたとはいえないようにも思われる(※5)
 しかし,本件の登記手続は,XがAから代金3000万円を借り入れるにあたって抵当権を設定するものであり,私法上の法律行為を原因として行われるものであるから,抵当権設定登記がされれば債務の弁済とその受領という私法上の効果が生ずる。そのため,本件の登記手続の委託は,法律行為による法律関係の形成に準ずるものとみることがでるから(※6),上記の代理権の授与をもって基本代理権とすることができる(※7)
  イ Zは,Xから委託を受けた登記手続を行わず,土地甲をYに売却しているから,「その権限外の行為をした場合」にあたる。
  ウ それでは,「第三者」であるYがZに「代理人の権限があると信ずべき正当な理由」,すなわちZに代理権があると信じたことにつき過失がないといえるか(※8)
 通常であれば,実印,印鑑証明書,登記済証といった重要な書類は本人しか持ち得ない上,これを無権限の第三者に預ける事態も稀である。また,契約締結にあたり,Zは一貫してXの名をかたり,契約書面にも「売主X」とのみ署名押印していたのであるから,YからすればX本人が前記の重要書類を持参して契約締結に臨んでいたものと受け取るしかない。そうすると,YはZが土地甲を売却するにつき代理権があると信じたことにつき過失があったとはいえない。
  エ 以上から,Yの上記反論は認められる。
3 よって,Xの上記請求は認められない。
第2問
1 XはYに対し,第1問と同様の請求を行う。
2⑴ これに対し,Yは,土地甲をZから売買契約(民法555条)によって取得しているから,Xは土地甲の所有権を喪失したとして,上記①の主張に反論する。しかし,Zは土地甲の所有者ではないから,他人物売買であり,YはXに対して土地甲の所有権を主張できるものではない。
 ⑵ そこで,Yは,土地甲の所有権移転登記の名義がZになっており,これを信じて土地甲を購入したのであるから,民法94条2項の「第三者」にあたり,Xはもはや土地甲の所有権をYに対抗することができないと反論する。
  ア XはZに対して,土地甲につき抵当権設定のための登記手続を依頼したにすぎず,不実の所有権移転登記の作出を通じたわけではないから,そもそも通謀虚偽表示がなく,民法94条2項を直接適用することはできない。
 もっとも,同項の趣旨は,自らは虚偽の外観を作出した真正権利者を犠牲にした上で,不実の外観を信頼して取引に入った者を保護し,取引の安全を図る点にある。そこで,ⓐ虚偽の外観が存在し,ⓑ真正権利者がその外形を作出し,ⓒ第三者がその外観を信頼して取引に入ったことの要件をそれぞれ満たす場合には,同項の上記趣旨が妥当するから,同項を類推適用することができる。
  イ これを本件についてみると,ⓐ真実はXからZに土地甲の所有権が移転した事実はないにもかかわらず,Z名義の所有権移転登記が存在する点で,虚偽の外観が認められる。
 ⓑ土地甲のZ名義の所有権移転登記は,ZがⅩから必要書類を預かっていたことを奇貨として,Zが自ら行ったものであり,Xは虚偽の外観の作出について何ら関与していない。
 この点,真正権利者が虚偽の外観の作出に加担していなくとも,虚偽の外観の作出を容易にする著しい不注意が存在し,一定期間の放置があった場合には,真正権利者自身が虚偽の外観を作出したものと同視し得るほどの帰責性が認められ。この場合には,民法94条2項のほか同法110条も類推適用し,第三者の善意無過失が要求して保護する(※9)。しかし,本件の事実関係から,Xに,虚偽の外観を作出するにつき著しい不注意があったとの事実は認められず,また,Xが,虚偽の外観が作出されていることを知ったのは,XがZに登記手続を委任してから約2か月後であり,特段長期間が経過していたとも認められない。
 したがって,本件では,Xに,Z名義の所有権移転登記の作出につき帰責性が認められない。
  ウ 以上から,Yの上記反論は認められない。
3 よって,Xの上記請求は認められる。

以 上


(※1)所有権に基づく「返還請求権」なのか「妨害排除請求権」なのかは,物権に対する侵害が「占有」によって行われているか否かにより区別します(占有による場合は返還請求権で,占有以外の方法による場合は妨害排除請求権です。)。相手方の登記の存在は,占有以外の方法による物権(本問では所有権)の侵害と考えることができますので,同登記の抹消を求める場合には,妨害排除請求権が請求の根拠になります(司法研修所編『新問題研究要件事実』(法曹会,2011年)88頁)。
(※2)所有権に基づく物権的請求をする場合の原告所有の要件については,「現在(口頭弁論終結時)の所有」を主張立証する必要があります。しかし,いったん取得した所有権は,喪失事由が発生しない限り,現在もその者に帰属していると扱われます。したがって,過去のある時点で原告が所有権を有していたことが指摘できれば,請求原因レベルでは足ります。また,所有権については,実務上は権利自白が認められていますから,権利自白が成立する時点での所有権の存在が主張されれば,喪失事由がない限り,現在も原告が所有権を有していると考えられます。そうすると,本問の事案は,Yが代理人Zを経由してXから甲を買ったというものであから,Yは,甲を買った平成29年11月20日時点で,Xに甲の所有権があったこと自体は争わないものと予想されます。そうすると,Yは,平成29年11月20日時点でXが甲を所有していたことにつき権利自白が成立することが予想されますので,答案上も平成29年11月20日時点でのXの所有が示せれば足りるのではないかと思われます(以上につき,前掲新問研59頁以下参照。)。
(※3)「「本人のためにすることを示して」とは,法律行為の当事者となる者を明らかにして,という意味である。」佐久間毅『民法の基礎Ⅰ総則〔第4版〕』(有斐閣,2018年)251頁
(※4)金融会社Zの投資勧誘員をしていたAが病弱であったためBに勧誘を委ねていた事案で,最判昭和35年2月19日民集14巻2号250頁は,「勧誘それ自体は、論旨の指摘するごとく、事実行為であつて法律行為ではないのであるから、他に特段の事由の認められないかぎり、右事実をもつて直ちにBがAを代理する権限を有していたものということはできない」と判断しています。
(※5)「登記申請行為は(登記所という国の機関に対してする)公法上の行為であり,これを委任しても法律行為を委ねたことにならない。」前掲佐久間Ⅰ・280頁
(※6)「登記申請が法律行為を原因としておこなわれる場合,登記がされれば債務の弁済とその受領という私法上の効果が生ずる。そのため,この登記申請の委託は,法律行為による法律関係の形成に準ずるものとみることができる。したがって,この委託をした本人に表見代理責任を課すことは,私法関係の変動を企図した本人にのみ法律行為的責任を負わせるという考え方に,矛盾するものではない。」前掲佐久間Ⅰ・280頁
(※7)「不動産登記法が登記申請についての形式的要件(特に、同法三五条一項五号)を定めている主要な目的は、登記義務者の意思に基づかない虚偽の登記申請による登記がなされることにより、実体上の権利関係と登記上の権利関係との不合致を生ずることを防止し、公示制度としての登記の目的を達成せしめようとするにあることはいうまでもない。しかるに、本件においては、前記のように、本件根抵当権設定契約は表見代理の規定により実体上の効力を生じているから、本件根抵当権設定登記は、実体上の権利関係に符合するものであるからその登記手続の申請行為の登記所に対する関係はしばらくおき、登記権利者が登記義務者に登記申請行為をなすべく請求(登記請求権の行使)する場合は、被上告人はこれに応じて登記に協力すべき義務あるを免れないものと解すべく、この関係は私法関係であることは論なきところである。それ故、原判決が確定した前記事実関係の下においては、訴外Aがなした本件根抵当権設定登記申請行為については、それが前記のごとく私法関係と解せられる以上、これに民法一一〇条による表見代理の成立を認めて妨げない……。」最判昭和37年5月24日民集16巻7号1251頁
(※8)最判昭和44年6月24日判時570号48頁は,「民法一一〇条にいう「正当ノ理由ヲ有セシトキ」とは,無権代理行為がされた当時存した諸般の事情を客観的に観察して,通常人において右行為が代理権に基づいてされたと信ずるのがもっともだと思われる場合,すなわち,第三者が代理権があると信じたことが過失とはいえない(無過失な)場合をい」うとしています。
(※9)「前記確定事実によれば,上告人は,Aに対し,本件不動産の賃貸に係る事務及び**番*の土地についての所有権移転登記等の手続を任せていたのであるが,そのために必要であるとは考えられない本件不動産の登記済証を合理的な理由もないのにAに預けて数か月間にわたってこれを放置し,Aから**番*の土地の登記手続に必要と言われて2回にわたって印鑑登録証明書4通をAに交付し,本件不動産を売却する意思がないのにAの言うままに本件売買契約書に署名押印するなど,Aによって本件不動産がほしいままに処分されかねない状況を生じさせていたにもかかわらず,これを顧みることなく,さらに,本件登記がされた平成12年2月1日には,Aの言うままに実印を渡し,Aが上告人の面前でこれを本件不動産の登記申請書に押捺したのに,その内容を確認したり使途を問いただしたりすることもなく漫然とこれを見ていたというのである。そうすると,Aが本件不動産の登記済証,上告人の印鑑登録証明書及び上告人を申請者とする登記申請書を用いて本件登記手続をすることができたのは,上記のような上告人の余りにも不注意な行為によるものであり,Aによって虚偽の外観(不実の登記)が作出されたことについての上告人の帰責性の程度は,自ら外観の作出に積極的に関与した場合やこれを知りながらあえて放置した場合と同視し得るほど重いものというべきである。そして,前記確定事実によれば,被上告人は,Aが所有者であるとの外観を信じ,また,そのように信ずることについて過失がなかったというのであるから,民法94条2項,110条の類推適用により,上告人は,Aが本件不動産の所有権を取得していないことを被上告人に対し主張することができないものと解するのが相当である。上告人の請求を棄却すべきものとした原審の判断は,結論において正当であり,論旨は理由がない。」最判平成18年2月23日民集60巻2号546頁


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