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2019-09-08(Sun)

【Law Practice民法Ⅰ】問題36「民法177条の第三者の範囲」

何しろ,てきとーに更新されるブログなわけですから,

まただいぶ間があいてしまいました。

何の記事が見られているのか分かりませんが,

最近定期的に訪問者がおられるようですので,

とはいっても1日に5人前後ですが,

たまには演習書解こうかななどと思ったり思わなかったり。

ちなみに管理人は,明後日が司法試験の合格発表です

困りましたねえ。

ところで,今回はロープラ民法Ⅰの問題36です。

≪問題≫
 多数の貸家を所有するAは,Y1に甲・乙2軒の家を貸していたが,家族構成の変化で1軒がY1には不要になっていることを知り,そのうちの乙を自分の愛人Y2に手切金代わりに贈与して住まわせることを思いついた。そこで,AはY1と交渉し,乙から立ち退いてくれるなら,甲をY1に贈与し敷地は使用貸借とすることを提案した。Y1はこの提案を承諾して乙から立ち退き,乙にはY2が入居した(敷地は同様に使用貸借)。しかし,Yらは移転登記の費用を用意できなかったので,登記名義はAのままとなっていた。
 その後数年の間,甲・乙両建物の固定資産税を課税され続けたAは,Yらにその償還と移転登記への協力を繰り返し求めたが,Yらは応じなかった。「移転登記をするまでは贈与は不完全で所有権はまだAにある」という誤った教示を信じたAがX1に相談したところ,X1はAに同情して,優良な賃借人Y1が長年住んでいる甲なら買ってもよいといった。
 そこで,Aは,甲とその敷地をX1に売り,他方,乙を妻X2に贈与し,それぞれ移転登記をした。X1がY1に賃料を請求したところ,Y1は甲は自分の物だと主張して支払を拒んだ。他方,X2は,財産管理に興味がなく,そもそも乙の所在地すら正確に知らず,乙の所有権移転登記手続もいわれるままに夫Aに任せていたが,Y2が夫の元愛人と知って怒りを爆発させた。
 XらがYらに対してそれぞれ甲・乙からの退去を請求した場合,認められるか。


民法177条の第三者というド典型論点を扱う問題のはずですが……

なんか問題おかしくね???

気のせいかな……

YらがXらに対して請求する場面なら第三者の話を出しやすいんですが,

この問題はその逆なんですよね。

背信的悪意者かどうかが問題となる側から請求を立てているので,

どうやって第三者の話に展開させるかがいまいちよく分かりません。

そもそも請求自体が信義則で遮断されるんじゃないかとかも思ったり……

≪答案≫
第1 X1のY1に対する請求
 1 X1は,Y1に対し,甲の所有権に基づく返還請求権としての建物明渡請求をする。これが認められるためには,①X1が甲を所有していること,②Y1が甲を占有していることの要件をそれぞれ満たす必要がある。
 ①甲はAのもと所有に係るところ,X1はAとの間で甲の売買契約(民法555条)を締結しているから,これによって甲の所有権を取得している(同法176条)。②Y1は甲に居住して占有している。したがって,X1の上記請求は認められるように思われる。
 2 これに対して,Y1は,自己もAから甲の贈与(同法549条)を受けて甲の所有権を取得しているから,①X1の甲に対する所有権は認められないと反論する。そこで,X1は,自己がY1からみて「第三者」(同法177条)に当たるところ,甲についてはX1名義の登記があるから,X1が甲の所有権をY1に対抗することができる結果,Y1は甲の所有権を喪失していると再反論する。
 民法177条の趣旨は,同一の不動産についての物権の得喪又は変更は登記をもって画することとして,正常な権利又は利益のもとに不動産取引に入った者が不測の損害を負うことを防止する点にある(※1)。したがって,「第三者」とは,当事者又はその包括承継人以外の者で,登記の欠缺を主張するにつき正当な利益を有する者をいう。
 これを本件についてみると,X1は,当事者又はその包括承継人以外の者で,Aとの売買により甲の所有権を取得し,Y1と利害が対立する関係にある者であるから,Y1の登記の欠缺を主張するにつき正当な利益を有する者といえ,「第三者」に当たるように思われる(※2)
 3 これに対して,Y1は,X1の主観的態様から,X1はいわゆる背信的悪意者であり,「第三者」に当たらない旨再々反論する。
 ここで,本条の上記趣旨は,同一不動産の取得を争うわせることが通常は経済的であるという意味での自由競争の枠内で妥当するものであるから,これを逸脱する態様で取引をする者は,登記の欠缺を主張するにつき正当な利益を有する者とはいえない。したがって,単なる悪意者であれば自由競争の枠内から外れないが,実体法上物権変動があった事実を知る者であって,物権変動について登記欠缺を主張することが信義に反すると認められる事情のあるものは,もはや自由競争の枠内から逸脱しているから,本条にいう「第三者」にはあたらない。
 これを本件についてみると,X1は,Aから甲を取得した当時,既に甲がY1に贈与されていた事実について知らなかったのであるから,実体法上物権変動があった事実を知る者ではない。仮に,X1が,当時甲がY1に贈与されていた事実を知っていたとしても,X1において登記欠缺を主張することが信義に反すると認められる事情はない。したがって,X1は背信的悪意者ということはできず単なる悪意者にすぎないから,「第三者」にあたる。
 4 よって,X1の上記請求は認められる。
第2 X2のY2に対する請求
 1 X2は,Y2に対し,乙の所有権に基づく返還請求権としての建物明渡請求をする。
①乙はAのもと所有に係るところ,AはX2に対し,乙を贈与しているから,これによってX2は乙の所有権を取得している。②Y2は乙に居住して占有している。したがって,X2の上記請求は認められるように思われる。
 2 これに対して,Y2は,自己もAから乙の贈与を受けて乙の所有権を取得しているから,①X2の乙に対する所有権は認められないと反論する。そこで,X2は,自己がY2からみて「第三者」に当たるところ,乙についてはX2名義の登記があるから,X2が乙の所有権をY2に対抗することができる結果,Y2は乙の所有権を喪失していると再反論する。
 X2は,当事者又はその包括承継人以外の者で,Aとの売買により乙の所有権を取得し,Y2と利害が対立する関係にある者であるから,Y2の登記の欠缺を主張するにつき正当な利益を有する者といえ,「第三者」に当たるように思われる
 3 これに対して,Y2は,X2の主観的態様から,X2はいわゆる背信的悪意者であり,「第三者」に当たらない旨再々反論する。
 X2は,Aから乙を取得した当時,既に甲がY2に贈与されていた事実について知らなかったのであるから,実体法上物権変動があった事実を知る者ではない。仮に,X2が,当時乙がY2に贈与されていた事実を知っていた場合について検討すると,X2とAとは夫婦であって,経済的にも一体となって共通の利害を有する関係にある。また,X2は,乙を譲り受けた当初から財産管理に興味がなく,乙の所在地すら正確に知らない状態にあり,Y2に対して乙の明渡しを求めるに至ったのも,Y2がAの元愛人であるという特殊の関係にあることを知ったことを契機とするものである。そうすると,X2は,実質的には乙について利害を有していないというべきであり,それにもかかわらず単にY2が確定的に乙を取得するのを妨害するべく,その明渡しを求めたものと評価される。したがって,この場合には,X2は,Y2の登記欠缺を主張することが信義に反するというべきであり,「第三者」にあたらない(※3)
 4 よって,X2が,Aから贈与を受けた当時,A・Y2間の贈与の事実を知らなければ,X2の上記請求は認められ,A・Y2間の贈与の事実を知っていれば,X2の上記請求は認められない。

以 上

(※1)「物権は,本来絶対の権利にして待対の権利に非ず。而して,民法第177条には,不動産に関する物権の得喪及び変更は,登記法の定むる所に従い其登記を為すに非ざれば,之を以て第三者に対抗することを得ずと規定し,第三者の意義に付て明に制限を加えたる文詞あるを見ず。是故に,之を物権の性質に考え,又之を民法の条文に徴して卒然之を論ずるときは,所謂第三者とは,不動産に関する物権の得喪及び変更の事為に於ける当事者及び其包括承継人に非ざる者を挙て指称すと云える説は,誠に間然すべき所なきが如し。然れども,精思深考するときは,未だ必しも然らざることを知るに難からず。そもそも民法に於て登記を以て不動産に関する物権の得喪及び変更に付ての成立要件と為さずして之を対抗条件と為したるは,既に其絶対の権利たる性質を貫徹せしむること能わざる素因を為したるものと言わざるを得ず。然れば則ち,其の時に或は待対の権利に類する嫌あることは必至の理にして毫も怪むに足らざるなり。是を以て,物権は其の性質絶対なりとの一事は,本条第三者の意義を定るに於て,未だ必ずしも之を重視するを得ず。加之本条の規定は,同一の不動産に関して正常の権利若くは利益を有する第三者をして,登記に依りて物権の得喪及び変更の事状を知悉し,以て不慮の損害を免るることを得せしめんが為に存するものなれば,其条文には特に第三者の意義を制限する文詞なしといえども,其自ら多少の制限あるべきことは之を字句の外に求むること豈難しと言うべけんや。何となれば,対抗とは彼此利害相反する時に於て始めて発生する事項なるを以て,不動産に関する物権の得喪及び変更に付て利害関係あらざる者は本条の第三者に該当せざること尤著明なりと言わざるを得ず。又本条制定の理由に見て,其規定したる保障を享受するに直せざる利害関係を有する者は,亦之を除外すべきは蓋疑を容るべきに非ず由,是之を見れば,本条に所謂第三者とは,当事者若くは其包括承継人に非ずして不動産に関する物権の得喪及び変更の登記欠缺を主張する正当の利益を有する者を指称すと論定するを得べし。即ち同一の不動産に関する所有権抵当権等の物権又は賃借権を正当の権原に因りて取得したる者の如き,又同一の不動産を差押えたる債権者若くは其差押に付て配当加入を申立てたる債権者の如き,皆均しく所謂第三者なり。之に反して,同一の不動産に関し正当の権原に因らずして権利を主張し,或は不法行為に因りて損害を加えたる者の類は,皆第三者と称することを得ず。」大判明治41年12月15日民録14輯1276頁
(※2)「物権変動の効果が主張される不動産について他に物権を取得した者(物権取得者)は,原則として,第三者に該当する……。二重譲渡における譲受人(相互)が,その典型例である。」佐久間毅『民法の基礎2物権』66頁
(※3)「控訴人と信彦は夫婦であって、経済的にも一体となって共通の利害を有する関係にあること、信彦はかつて特殊の関係にあった被控訴人に対し充分な経済的利益を与えないのみか、却って同人から登記手続を求められながらこれを故意に引延し、移転登記を回避し自己および控訴人の利益を図ることを目的として控訴人に贈与しその登記名義としたもので、その行為は著しい違法性を有していること、控訴人においても信彦と被控訴人との関係を知っていたのであり、信彦に事情を尋ねる等して通常の注意を払うならば、以上の事情を容易に知り得たし、かつ、本件建物の所有権を取得すればこれに居住する被控訴人との間に本件建物に関する紛争の生ずることを知り得たのに、あえて本件建物の所有権を無償で取得し、その後の所有権移転登記および維持管理の一切を信彦に委ね信彦に依存することによって同人と共通の利益を得たものということができる。」「右のような事情のもとでは、控訴人が被控訴人の登記の欠缺を主張することは著しく信義則に反し権利の乱用となるものであって、右のような主張をすることは許されないというべきである。」神戸地判昭和48年12月19日判時749号94頁




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