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2019-04-18(Thu)

【事例から民法を考える】事例⑧「あっしには,かかわりのねえことでござんす」

じれかん民法,ついに最後の問題です。

とても長い道のりでした。。。

どの演習書よりも1周するのが大変でしたね。

だって難しすぎんだもん。

こんなの司法試験でも聞かれないんじゃないかって議論めちゃくちゃ出てくるし。

しかし,民法の復習もかねて,とてもいい勉強になったので,

一読の価値はありました。

とはいえ,これだけは言いたいですが,

司法試験直前期に読む本ではない

そんなこんなで,最後は,事例⑧です。

≪問題≫

●事例
 ファミリー・レストランや居酒屋など数種類の飲食店をチェーン展開するB社は,2009年末に,翌年夏から秋にかけて各店舗で開催する「北海道フェア」で用いる食材として,北海道十勝地方の農家Aから,Aが2010年6月から9月の収穫期に収穫する「恵味86」という品種--実在する品種である--のトウモロコシ500tを,1kg当たり100円,総額5000万円で買い受けることとした。BがAと取引をするのは初めてのことであったが,Aの生産する「恵味86」は,例年評判が高く,買い付けの引き合いが多かった。そこで,Bは代金の内金として3000万円を前払いするという条件で,この収穫期における予想されるAの総収穫量800tの60%余りの買い付けに成功したものである。
 また,この契約では,Aが自己所有の倉庫のひとつである甲倉庫に目的物を保管して,Bが必要に応じて甲倉庫までトラックで出向いてトウモロコシを受領すること,Bは10月末日までに全部を受領することとされた。
 Bは,約定に従って内金として3000万円を支払ったうえで,2010年8月までに,200tのトウモロコシの引渡しを受けたが,その年に収穫されたAの「恵味86」は,冷夏のためか,粒皮が例年よりもやや固めで,AのB以外への「恵味86」の販売も低調であったし,Bの北海道フェアでの売上げも期待していたほどには伸びなかった。そのためBは,9月以降はしばらく引き取りに行かずにいた。Aは,Bが引き取りに来ればいつでもBの求めに応じた引渡しができるように,甲倉庫に「恵味86」を多めに,余裕をもって確保して待っていたが,甲倉庫にあった在庫は9月末にすべて盗難されてしまった。
 この場合について,以下の設問に答えなさい。設問はそれぞれ独立の問いである。

【設問1】 Aは,甲倉庫とは別に,自己所有の乙倉庫にも,約定の収穫期に収穫した「恵味86」を保管しており,それらは盗難にあっていないとする。このとき,Bは,内金の残余1000万円の返還をAに求めることができるかどうか論じなさい。

【設問2】 Aは,その収穫期の「恵味86」を,すべて甲倉庫に保管しており,そのすべてが盗難にあったとする。Bは,内金の残余1000万円の返還をAに求めることができるかどうか論じなさい。

【設問3】 【設問2】と同じ事案で,ただ盗難が生じたのが,9月末ではなく,11月に入ってからのことであったとする。このとき,Bは内金の残余1000万円の返還をAに求めることができるかどうか論じなさい。


ここらへんの話は,去年の司法試験で問われていました。

そうすると今年は出ない気もしますが,

やはり弱点分野ですので,ちゃんとやっておきたいです。

しかし,この回の解説,マジで分かりやすいですね。

もう,分かりやすさのあまり感動の涙を流してしまいました(大嘘)

学部の頃に貞友民法を読んでいて,

債務不履行と危険負担の関係がいまいちよく分かっていなかったのが,

今回の解説を読んでほとんど解決されました。

この回の解説は一読をおすすめします。

≪答案≫
第1 設問1
 1 AとBとの間では,「恵味86」の売買契約(民法555条。以下「本件売買契約」という。)が締結されている。そうすると,AはBに対し「恵味86」の引渡請求権を,BはAに対し売買代金支払請求権を有している。ここで,Bが売買代金のうち1000万円の返還を求めるためには,前記代金支払請求権が消滅している必要がある。そこで,前記代金支払請求権が存続しているかどうかについて検討する。
 2 Bとしては,甲倉庫内の「恵味86」の盗難により,Aの「恵味86」の引渡債務が履行不能となっているため,本件売買契約を解除すると主張する(民法543条)ことが考えられる。そこで,Aの前記引渡債務が履行不能になっているかどうかについて検討する。
 Aの前記引渡債務は,「恵味86」という種類物を引き渡す債務であるが,「恵味86」のうち2010年6月から9月にかけて収穫されるものを対象としているため,制限種類債務である。そこで,これが特定されている(同法401条2項)といえるかについてみると,Aの前記引渡債務は,Bが甲倉庫に出向いて受領するというものであるから,取立債務である。取立債務においては,債務者が引渡しの準備をして,目的物を他の同一種類物から分離して,債権者にその旨を通知することによって特定が生じる。しかし,甲倉庫において盗難があった時点において,AはBに引き渡すべき残量200tを超える量の制限種類物を甲倉庫に保管していたのであるから,甲倉庫に保管していることだけをもって当然には特定がなされていたことにはならないというべきである。したがって,Aの前記引渡債務は,履行不能に陥っていない。
 したがって,Bは本件引渡債務を解除することはできない。
 3 また,履行不能となっていない以上,危険負担の適用もない。
 4 よって,未だ前記代金支払請求権は存続しているのであるから,BはAに対し,内金の残余1000万円の返還を求めることができない。
第2 設問2
 1 本件においても,AのBに対する売買契約に基づく代金支払請求権が存続しているかどうかについて検討する。
 2 本件では,設問1と異なり,制限種類物である「恵味86」がすべて盗難されている。制限種類物が全部滅失したに履行不能となるかどうかについて検討すると,制限種類債権においては,個別具体的な個体の特定まではされていなくても,制限の範囲内という程度の特定はされており,制限の範囲内の物がすべて滅失した場合には,給付危険の移転を判断するのに十分な程度の特定が生じているから,これが全部滅失した場合には履行不能となる。そうすると,Aが引き渡すべき「恵味86」は,前記の期間内に収穫したものの範囲内という程度で特定されているから,これらがすべて盗難されたことをもって履行不能になったものというべきである。
 そこで,Aに帰責事由があるかどうかについて検討すると,前記のように制限種類債権では,個別の個体の特定をまたずに履行不能となることからすれば,種類債権と同様に個別の個体の特定前は注意義務を負わないとするのは妥当ではなく,債務者はその目的物について,自己の財産におけるのと同一の注意義務(同法659条参照)を負うと考える。本件では,AはBに引き渡すべき目的物とそれ以外の目的物を一緒に甲倉庫に保管していたのであるから,自己の財産におけるのと同一の注意義務を果たしていたと認められる。したがって,Aに帰責事由はない。
 よって,Bは,本件売買契約を解除することはできない。
 3 そこで,Bは,危険負担の適用により,Aの前記代金支払請求権は消滅すると主張することが考えられる。
 本件売買契約の目的物は,制限種類物であって,不特定物であるが,前記のように制限の範囲内という程度で特定されており,それによって履行不能を基礎づけられるのであるから,遅くともその全部の滅失時には,目的物が特定されていたと考えられる。そうすると,本件売買契約は,特定した不特定物に関する物権の移転を双務契約の目的としているから,民法534条2項の適用により,債権者の危険負担となり,Aの前記代金支払請求権は消滅するようにも思われる。
 しかし,双務契約の締結をもってその目的物の滅失による対価危険を債権者に移転させることは,当事者間の利益均衡を著しく害するものであり,妥当ではない。そこで,買主は,目的物の引渡しを受けることによって使用収益ができるようになることや,目的物を実質的に管理しえた者が危険を負担すべきであるから,目的物の引渡しがあった時点で対価危険は移転すると考える。したがって,民法534条は,目的物の引渡しがあったときから適用がある。
 これを本件についてみると,甲倉庫内の「恵味86」は,Bへの引渡しがされる前に滅失しているから,民法534条は適用されず,対価危険は未だAにあるというべきである。したがって,Aの前記代金支払請求権は消滅している。
 4 よって,Bは,代金の返還を請求することができる。
第3 設問3
 1 本件においても,AのBに対する売買契約に基づく代金支払請求権が存続しているかどうかについて検討する。
 2 AB間では,「恵味86」の受領を2010年10月末日までに行う旨の合意がされているが,Bはこの期日までに目的物の受領を受けていないため,受領遅滞(同法413条)に陥っている。受領遅滞があった場合には,受領義務を履行しなかった債権者の帰責事由となり,民法536条2項により,対価危険が債務者から債権者に移転すると考える。そうすると,Bの受領遅滞により,対価危険がAからBに移転し,Aの前記代金支払請求権は存続することとなりそうである。
 3 もっとも,Aの前記引渡債務に履行遅滞がある場合には,その後の履行不能は,Aに帰責事由があるものとして,Bは本件売買契約を解除することができる。そこで,Aが,粒皮がやや固い「恵味86」を提供したことをもって,本件売買契約における弁済の提供をしているといえるかどうかについて検討する。
 判例には,制限種類債務においては,目的物の品質は問題とならないとしたものがある。これによれば,品質が劣悪であっても,制限の範囲内の物が提供される以上,それは弁済の提供にあたることとなる。しかし,同判例の趣旨は,制限種類債権において,品質についての合意がない場合について中等の品質の物の給付義務を定める民法401条1項の適用がないことをいうにすぎず,品質についての明示又は黙示の合意を排除するものではないと考えられる。
 そうすると,本件では,Bは,Aの生産する「恵味86」の評判がよいことを理由として買い付けているのであるから,評判を維持する程度に高品質の「恵味86」を目的物とすることを黙示に合意していると考えられる。それにもかかわらず,AがBに提供した「恵味86」は,粒皮がやや固く,評判がいまいちであったから,当事者間において合意された品質のものが提供されていない。したがって,Aにおいては履行遅滞がある。
 そのため,本件では,Aの履行遅滞後の履行不能として,Aの帰責事由が認められるから,Bは本件売買契約を解除することができる。したがって,Aの前記代金支払請求権は消滅する。
 4 よって,Bは,代金の返還を請求することができる。

以 上



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