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2019-04-18(Thu)

【事例から民法を考える】事例⑥「取られてたまるか」

どうやら,ついに今日,受験票が届き出したようですが,

まだうちには来ていません。

ちゃんと出願できてるよな……

これで受けられなかったら困りますね。

それはおいといて,事例⑥です。

≪問題≫

●Aが所有する商業用賃貸ビル(本件建物)は,老朽化のため傷みが激しく,入居者がいない状態であったが,Aには大規模な改修に踏み切るほど資力に余裕はなかった。2006年4月,Aから話を聞き本件建物に興味をもった友人Bは,本件建物を購入して自ら改修したいとの意向と,その際はAに工事業者の手配や改修後のテナント募集も依頼したい旨をAに伝えたところ,Aはこれに応じた。同年10月,Bは,銀行Cから2億円を借り入れ,うち1億6000万円をAに支払って本件建物の所有権移転を受けるとともに,Cのための抵当権を本件建物に設定し,各登記を経由した。同年12月,Aが手配したDとBの間で代金を8000万円とする本件建物改修工事の請負契約が結ばれ,2007年10月に同工事は完了した。以下の各設問(それぞれ独立した問いである)においてCの請求は認められるか。

【設問1】 B・D間では,工事代金の支払を着工時と竣工時に半額ずつ行う旨が約されていたが,Bは竣工時の支払ができなかった。そこで,2007年12月,準備ができ次第,Aが残金を建て替えてDに支払い,そのかわり本件建物の収益を得ることがA・B間で合意され,これに基づき,Aは,Bとの間で本件建物の賃貸借契約を,入居を希望してきたEとの間で転貸借契約を締結した。AはEから収取した転貸賃料600万円のうち200万円をBの銀行口座に振り込み,Cはこの口座からの引き落としで毎月の債務の弁済をBから受けていた。ところが,Aは,2008年3月にA・B間での合意に従い工事残代金(遅延損害金を含む)4500万円をDに支払って以降,Bの口座への賃料振込みを止めてしまい,そのためBのCに対する債務の不履行が生じた。そこでCは,BのAに対する賃料を物上代位により収取しようとしたが,A・B間の契約内容が不明確であったため断念し,かわりにAがEに対して有する将来の賃料債権のうち被担保債権額に満つるまでの分につき差押命令を求めた。

【設問2】 2006年9月,Bは,Aから紹介されたFとの間で,期間を2007年12月から15年,賃料月額100万円とする賃貸借契約を締結し,同日,2017年12月から毎年800万円ずつFに返還する約定で保証金4000万円をFから受領した。そのご,Bの業績不振の噂を聞いたFは,Bが保証金を返還してくれるのか不安になり,Bと保証金減額の交渉を開始した。その結果,2008年6月,BとFは,従前の賃貸借契約を解消したうえで,これと同内容の賃貸借契約を締結するとともに,保証金について,額を2000万円に減じたうえ従前の保証金の一部をこれに充てること,2012年7月以降毎年400万円ずつ返還すること,本件建物につき差押え等があった場合にはBは保証金返還債務につき当然に期限の利益を失うことを合意し,保証金の差額2000万円がBからFに返還された。2010年5月,Bの一般債権者が本件建物を差し押さえたため,Fはただちに保証金返還請求権をもって2010年6月分以降20か月分の賃料債権を対当額で相殺する旨の意思表示をBにした。一方Cは,2011年4月,Bの履行遅滞を受け,BのFに対する賃料債権のうち被担保債権額に満つるまでの分につき差押命令を得,2011年9月,支払に応じないFを相手に,2011年5月~9月分の賃料の支払を求め,訴えを提起した。


物上代位とその他との優劣の問題です。

私が慶應ローの入試を受けたときに出題された気がします。

それもちょうど保証金との相殺だったような……

当時は全然分からんかったなあ……

≪答案≫
第1 設問1
 1 Cは,AのEに対する賃貸借契約に基づく賃料支払請求権に対して差押命令(民執法145条)をする根拠は,Cが本件建物に設定した抵当権に基づく物上代位(民法372条,304条1項)であると考えられる。
 前提として,賃料債権に対して物上代位をすることができるかどうかについて検討すると,抵当権は,目的物の占有を抵当権設定者の下にとどめ,設定者が目的物を自ら使用し,又は第三者に使用させるとを許す性質の担保権であるところ,抵当権設定者が目的物を第三者に使用させることによって対価を取得した場合に,その対価について抵当権を行使することができるとしても,抵当権設定者の目的物に対する使用を妨げることにはならない。したがって,賃料債権に対して物上代位をすることはできる(※1)
 そうだとしても,Cが差押命令の発令を受けているのは,抵当権設定者であるBのAに対する賃料債権ではなく,賃借人Aの転借人Eに対する賃料債権である。このような賃借人が,民法372条が準用する同法304条1項本文にいう「債務者」にあたるかどうかが問題となる。
 2 抵当不動産の賃借人は,抵当不動産をもって物的責任を負担するものではなく,自己に属する債権を被担保債権の弁済に供されるべき立場にはない。また,転貸賃料債権を物上代位の目的とすることができるとすると,正常な取引により成立した抵当不動産の転貸借契約にやける賃借人の利益を不当に害する。そこで,民法372条が準用する同法304条1項本文にいう「債務者」には,原則として抵当不動産の賃借人は含まれない(※2)
 もっとも,判例によれば,所有者の取得すべき賃料を減少させ,又は抵当権の行使を妨げるために,法人格を濫用し,又は賃貸借を仮装した上で,転貸借関係を作出したものであるなど,抵当不動産の賃借人を所有者と同視することを相当とする場合には,その賃借人が取得すべき転貸賃料債権に対して抵当権に基づく物上代位権を行使することが許されるとする(※3)。これによる場合には,本件におけるAB間の賃貸借契約は,AのBに対する工事代金の立替金債権の回収のためにされたものにすぎないから,抵当不動産の賃借人を所有者と同視することができる事情はなく,CがAの前記請求権について物上代位権を行使することはできないようにも思える。
 しかし,抵当権は登記をもって物上代位が公示されているところ,抵当権者は設定登記によって将来の賃料債権まで物上代位によって優先弁済効を及ぼすことを確保できるのであって,以後,他の債権者等がこれらを自らの債権の回収の原資として利用する措置を講ずることはできないと考えるべきである。また,判例によれば,債権譲渡がされた後であっても当該債権についての物上代位権の行使を認めるが(※4),転借人に対する賃料債権の帰属を転貸借契約に基づくものとする場合と,賃貸人から賃借人への債権譲渡によるものとする場合とで,物上代位権の行使の可否が左右されるのは妥当ではない。したがって,判例のいう転貸賃料への物上代位権の行使が認められる場合に限られず,債権回収を目的として賃貸借契約が結ばれた場合であっても,転貸賃料に対して物上代位権を行使することができると考える。
 これを本件についてみると,AB間の賃貸借契約は,AがEから得る転貸賃料とBに支払う賃料の差額をもって,Bに対する立替金債権を回収する意図があったとみられ,Bに対する賃料支払が中断されたのは,Aの立場からすれば,前記立替金債権と賃料債権とを相殺して,Bに対する債権を回収するという意味を持つ措置であるということができる。したがって,この場合には,Cは,AのEに対する転貸賃料についても物上代位権を行使することができるというべきである。
 3 よって,Cの請求は認められる。
第2 設問2
 1 Cは,BのFに対する賃貸借契約に基づく賃料支払請求権に対して差押命令の発令を受け,Fに対してこれを求める訴訟を提起している根拠も,物上代位権の行使としてであると考えられる。
 これに対して,Fは,Cが差押命令の発令を受けた目的である賃料債権は,保証金債権との相殺(民法505条1項本文)により消滅しているから,これは認められないと反論する。そこで,物上代位と相殺の優劣が問題となる。
 2 抵当権設定者が抵当不動産を他人に賃貸している場合に,物上代位により抵当権の効力が賃料債権に及ぶことは抵当権設定登記により公示されているとみることができるから,抵当権設定登記の後に取得した賃貸人に対する債権と物上代位の目的となった賃料債権とを相殺することに対する賃借人の期待を物上代位権の行使により賃料債権に及んでいる抵当権の効力に優先させる必要はない。したがって,抵当権者が仏事よう代位権を行使して賃料債権の差押えをした後は,抵当不動産の賃借人は,抵当権設定登記後に賃貸人に対して取得した債権を自働債権とする賃料債権との相殺をもって,抵当権者に対抗することはできない(※5)
 3 これを本件についてみると,Fが自働債権として供した保証金債権は,Bの本件建物の改修工事に先立って保証金として支払われ,Fの入居後一定期間にわたって返済されるもので,その実質は,建設協力金としてFのBに対する融資であり,貸金債権と同視し得る。そこで,Fが,保証金債権を取得した時期について検討すると,Fは,Cが本件建物に抵当権を設定する以前に,前記保証金を支払っているため,この時点で保証金債権を取得しているとみることができる。この点,BF間では,その後に賃貸借契約を締結しなおしているが,その後も一貫してFが賃借人であり,その趣旨は,当初の賃貸借契約に付随する保証金請求権につき弁済期を前倒しにさせるものであると評価できる。したがって,Fの保証金請求権は,Cの抵当権設定登記前に取得したものであるから,これを自働債権として賃料債権と相殺することができる。
 なお,このように考えると,当初は2017年までFは保証金の返還を請求できなかったはずであり,相殺もできなかったはずなのに,抵当権設定登記後に期限の利益喪失の合意を新たに行って相殺可能な状態にしたものであって,これをもって物上代位に優先させるとするのは不当であるようにも思える。しかし,相殺による当事者間における両債権を対当額で消滅させることへの期待の保護からすれば,抵当権設定登記前に弁済期が到来している必要はないから,物上代位のための差押えの効力発生前に弁済期が到来している必要もない。
 また,将来分の賃料債権を受働債権とする相殺が可能かどうかも問題となるが,将来の賃料債権に対する差押えが可能であることとの均衡から認められる。
 4 よって,Cの請求は認められない。
以 上

(※1)抵当権の目的不動産が賃貸された場合においては、抵当権者は、民法372条、304条の規定の趣旨に従い、目的不動産の賃借人が供託した賃料の還付請求権についても抵当権を行使することができるものと解するのが相当である。けだし、民法372条によって先取特権に関する同法304条の規定が抵当権にも準用されているところ、抵当権は、目的物に対する占有を抵当権設定者の下にとどめ、設定者が目的物を自ら使用し又は第三者に使用させることを許す性質の担保権であるが、抵当権のこのような性質は先取特権と異なるものではないし、抵当権設定者が目的物を第三者に使用させることによって対価を取得した場合に、右対価について抵当権を行使することができるものと解したとしても、抵当権設定者の目的物に対する使用を妨げることにはならないから、前記規定に反してまで目的物の賃料について抵当権を行使することができないと解すべき理由はなく、また賃料が供託された場合には、賃料債権に準ずるものとして供託金還付請求権について抵当権を行使することができるものというべきだからである。」「そして、目的不動産について抵当権を実行しうる場合であっても、物上代位の目的となる金銭その他の物について抵当権を行使することができることは、当裁判所の判例の趣旨とするところであり……、目的不動産に対して抵当権が実行されている場合でも、右実行の結果抵当権が消滅するまでは、賃料債権ないしこれに代わる供託金還付請求権に対しても抵当権を行使することができるものというべきである。」最判平成元年10月27日民集43巻9号1070頁
(※2)民法372条によって抵当権に準用される同法304条1項に規定する『債務者』には、原則として、抵当不動産の賃借人(転貸人)は含まれないものと解すべきである。けだし、所有者は被担保債権の履行について抵当不動産をもって物的責任を負担するものであるのに対し、抵当不動産の賃借人は、このような責任を負担するものではなく、自己に属する債権を被担保債権の弁済に供されるべき立場にはないからである。同項の文言に照らしても、これを『債務者』に含めることはできない。また、転貸賃料債権を物上代位の目的とすることができるとすると、正常な取引により成立した抵当不動産の転貸借関係における賃借人(転貸人)の利益を不当に害することにもなる。」最決平成12年4月14日民集54巻4号1552頁
(※3)「もっとも、所有者の取得すべき賃料を減少させ、又は抵当権の行使を妨げるために、法人格を濫用し、又は賃貸借を仮装した上で、転貸借関係を作出したものであるなど、抵当不動産の賃借人を所有者と同視することを相当とする場合には、その賃借人が取得すべき転貸賃料債権に対して抵当権に基づく物上代位権を行使することを許すべきものである。」前掲最決平成12年4月14日
(※4)「民法304条1項の趣旨目的に照らすと、同項の『払渡又ハ引渡』には債権譲渡は含まれず、抵当権者は、物上代位の目的債権が譲渡され第三者に対する対抗要件が備えられた後においても、自ら目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができるものと解するのが相当である。」「けだし、(一)民法304条1項の『払渡又ハ引渡』という言葉は当然には債権譲渡を含むものとは解されないし、物上代位の目的債権が譲渡されたことから必然的に抵当権の効力が右目的債権に及ばなくなるものと解すべき理由もないところ、(二)物上代位の目的債権が譲渡された後に抵当権者が物上代位権に基づき目的債権の差押えをした場合において、第三債務者は、差押命令の送達を受ける前に債権譲受人に弁済した債権についてはその消滅を抵当権者に対抗することができ、弁済をしていない債権についてはこれを供託すれば免責されるのであるから、抵当権者に目的債権の譲渡後における物上代位権の行使を認めても第三債務者の利益が害されることとはならず、(三)抵当権の効力が物上代位の目的債権についても及ぶことは抵当権設定登記により公示されているとみることができ、(四)対抗要件を備えた債権譲渡が物上代位に優先するものと解するならば、抵当権設定者は、抵当権者からの差押えの前に債権譲渡をすることによって容易に物上代位権の行使を免れることができるが、このことは抵当権者の利益を不当に害するものというべきだからである。」「そして、以上の理は、物上代位による差押えの時点において債権譲渡に係る目的債権の弁済期が到来しているかどうかにかかわりなく、当てはまるものというべきである。」最判平成10年1月30日民集52号1頁
(※5)抵当権者が物上代位権を行使して賃料債権の差押えをした後は,抵当不動産の賃借人は,抵当権設定登記の後に賃貸人に対して取得した債権を自働債権とする賃料債権との相殺をもって,抵当権者に対抗することはできないと解するのが相当である。けだし,物上代位権の行使としての差押えのされる前においては,賃借人のする相殺は何ら制限されるものではないが,上記の差押えがされた後においては,抵当権の効力が物上代位の目的となった賃料債権にも及ぶところ,物上代位により抵当権の効力が賃料債権に及ぶことは抵当権設定登記により公示されているとみることができるから,抵当権設定登記の後に取得した賃貸人に対する債権と物上代位の目的となった賃料債権とを相殺することに対する賃借人の期待を物上代位権の行使により賃料債権に及んでいる抵当権の効力に優先させる理由はないというべきであるからである。」「そして,上記に説示したところによれば,抵当不動産の賃借人が賃貸人に対して有する債権と賃料債権とを対当額で相殺する旨を上記両名があらかじめ合意していた場合においても,賃借人が上記の賃貸人に対する債権を抵当権設定登記の後に取得したものであるときは,物上代位権の行使としての差押えがされた後に発生する賃料債権については,物上代位をした抵当権者に対して相殺合意の効力を対抗することができないと解するのが相当である。」最判平成13年3月13日民集55巻2号363頁



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