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2019-04-18(Thu)

【事例から民法を考える】事例②「その土地,誰にも売ってません。」

本日2通目。

割と順調に進んでいます。

やっぱり今日中に終わるかもしれないですね。

とりあえず,事例②です。

≪問題≫

●事例
 X(2013年11月の時点で80歳)は,妻(同78歳)とともに長年理髪店を営んでいたが,2008年に白内障を患ったのを機に店をたたみ,以後,年額約80万円の国民年金と1998年に取得した甲土地を月極駐車場として賃貸して得られる賃料(月額10万円)により生計を立て,不足するときには預金(約1000万円)を取り崩していた。諸事に不安を覚えるようになったXは,近所に住み親身に面倒を見てくれる姪Aに(X夫妻に子はなかった),2010年夏頃から甲土地の登記済証,実印,預金通帳,銀行届出印を預けていた。

【設問1】 Xは,Aに,甲土地の登記済証等を預けた頃から,甲土地にかかる駐車場契約の管理をゆだねているY不動産会社(Bが従業員を2名雇って営んでいた)との連絡と預金の管理を任せていた。
 2012年5月に,Xは,Yが社内手続のため管理契約確認書の作成への協力を求めてきているとAから聞かされ,Aの求めに応じて書類に署名し,Aから渡された実印を押捺した。この書類は,Xを売主,Yを買主とする甲土地の売買契約書であった。また,Aが,愛人関係にあるBに唆され,Xは目が悪いため書類を差し出せばAに代読させ,それを信じるという状況を利用して,Xに署名捺印させたものだった。その後まもなく,甲土地につきこの売買を原因とするX名義からY名義への所有権移転登記がされた。契約書において売買代金額は4000万円とされていたが,この売買はAとBが経営不振に陥ったYに甲土地を得させようとして仕組んだものであったため,代金の支払はされていなかった。
 2012年8月に,YとZとの間で代金額3000万円とする甲土地の売買契約が締結され,これを原因とするY名義からZ名義への所有権移転登記がされた。Zは,障害のある子を持ち,その将来の生活資金確保の目的でこの売買をしていた。また,売買代金額がかなり割安と感じていたが,資金調達の必要から早く処分したいためというBの説明を信じていた。
 Aは,入ってこなくなった賃料分をXの前記預金の取崩しにより賄って事態の発覚を防いでいたが,Bにほかにも愛人がおり甲土地の売買代金の一部がその愛人のために使われたことを知り,2013年11月にXに事実を伝えた。Xは,弁護士に相談して,YおよびZに対して所有権移転登記の抹消登記手続を求めた。この請求の認否を論じなさい。

【設問2】 XとYとの間の売買に関する事情が,【設問1】と次の2点において異なっていたとすればどうか。①Aは,Xから駐車場契約につき全面的にゆだねられ,契約の更新,解除,新規締結など代理人として行っていた。②2012年5月にXは,Aから駐車場契約の内容を改定したうえでの更新に必要と聞かされて,数通の書類に署名した。同様のことはそれまでに何度かあったが,今回Xが署名した書類は,Aを代理人とするX・Y間の売買契約書とXを本人・Aを代理人とする白紙委任状であった。


94条から96条あたりのあれです。

代理も絡んでいます。

ここらへんが問題になるときは,

単純に記述量が多くなるので大変です。

≪答案≫
第1 設問1
 1 Xは,Y及びXに対して,所有権に基づく妨害排除請求権としての所有権移転登記抹消登記請求権を行使する。Xは,甲土地を所有しており,甲土地についてはX名義からY名義,Y名義からZ名義の所有権移転登記が存在しているから,Xの上記請求は認められるのが原則である。
 2 Y及びZは,Xが,Yに対して,甲土地を売却していることをもって(以下「本件売買契約」という。),甲土地の所有権を喪失しているとの抗弁を主張することが考えられる。これに対してXは,甲土地の売買契約書への署名捺印は,Xがその内容を把握しないまましたものであり,売買契約締結の認識がなく,本件売買契約は成立していないと再抗弁する。
 しかし,意思表示の成立は厳格に判断せず,意思表示・法律行為の効力に関する諸規定の解釈を通じて,当該事情のもとで適切な結論を得られるようにすべきであるから,表示意識が欠如していても,契約は成立する。そうすると,本件売買契約も,Xの表示意識の有無にかかわらず,成立する。
 3 また,Xは,本件売買契約が,Yの詐欺によるものであるとして,その取消しを主張する(民法96条1項)。しかし,Zは,本件売買契約との関係では「第三者」であるところ,ZはXの意思表示が詐欺によるものであることにつき「善意」であると考えられるから,Xは本件売買契約を取り消しても,これをZに対抗することができず,無意味である。
 4⑴ そこで,Xは,本件売買契約は錯誤に基づくものであるから,無効であると再抗弁する(同法95条本文)。
 「錯誤」とは,内心的効果意思と表示に不一致があることをいう。Xは,Yの社内手続に係る管理契約確認書であると認識して署名捺印をしているから,本件売買契約を締結する意思はなく,内心的効果意思と表示との間に不一致があるから,「錯誤」が認められる。そして,Xが,署名捺印をする書類が本件売買契約に係る契約書であると認識していれば,それをしていなかったと認められるから,「法律行為の要素」に錯誤があると認められる。
  ⑵ これに対して,Y及びZは,Xが内容を確認しないまま署名捺印をしたことが「重大な過失」であるとして,錯誤無効は認められないと再々抗弁をする(同条ただし書)。
 しかし,同条ただし書の趣旨は,意思表示の有効に対する相手方の信頼を保護する点にあるから,相手方がそのような保護に値しないときには,重大な過失の有無にかかわらず,無効の主張を認めることができる。Yは,Aを利用して,Xの目の悪いことを利用して,本件売買契約を締結させようとしたものであるから,Xが錯誤に陥っていることを認識していたということができる。そうすると,YにおけるXの意思表示の有効に対する信頼は保護に値しないというべきであるから,Y及びZは「重大な過失」があることをもって再々抗弁とすることができない。
  ⑶ また,Zは,Xの錯誤無効の主張に対しても,民法96条3項が類推適用されるから,Zに対して対抗することができないと再々抗弁する。
 この主張の論拠は,詐欺による意思表示において表意者は他人の違法な干渉により錯誤に陥るのに対し,錯誤による意思表示は他人の干渉なく表意者が自ら錯誤に陥る場合も含まれる点において,本人の帰責性の程度が錯誤の方が強い点にある。しかし,詐欺取消しは表意者の錯誤の重大性を問わずに認められるのに対し,錯誤無効は法律行為の要素に錯誤がなければ認められない点で,錯誤者はよりいっそう保護に値するというべきである。したがって,錯誤無効の主張に対して民法96条
3項が当然に類推適用されるものではない。
  ⑷ さらに,Zは,民法94条2項の類推適用により,ZのY名義の登記に対する信頼は保護されるべきであると再々抗弁する。
 しかし,民法94条2項も第三者の外観に対する信頼を保護する制度である点で,民法96条3項と類似する。そして,前記の通り,要素の錯誤の場合には,錯誤者を第三者との間でも保護すべきであるから,同様の事情をもって民法94条2項を類推適用することは矛盾となるため,認められない。
 4 以上から,Xの錯誤無効の主張が容れられるから,Xの上記請求は認められる。
第2 設問2
 1 Xは,Y及びZに対して,第1.1と同様の請求をする。
 2 Y及びZは,代理(同法99条1項)によって締結された本件売買契約により,Xは甲土地の所有権を喪失していると抗弁する。
 しかし,AとYとの間で甲土地の売買契約締結の意思表示がされ,その際に顕名もされているが,Aはこれらに先立って本件売買契約の締結についての代理権を付与されていないから,代理の要件を満たさず,その効果はXに帰属しない。
 3⑴ そこで,Y及びZは,民法109条所定の表見代理によって,Xはその責任を負うと抗弁する。AY間における売買契約締結の意思表示,その際の顕名については前記の通りである。そして,Xを本人・Aを代理人とする委任状が作成されたことにより,XがAに代理権を授与したことがYに対して表示されている。そうすると,Xは,民法109条所定の表見代理によって,本件売買契約の責任を負う。
  ⑵ これに対しては,Xは,本件売買契約の締結のための委任状との認識なく署名したものであるから,委任状の成立は否定されると再抗弁する。しかし,代理権授与表示は,意思表示類似のものであるため,表示意思は不要である。そうすると,Xが,前記の認識なく署名をしたとしても,それをもって前記委任状の存在により,Aが本件売買契約の代理権を有する旨が表示されたというべきである。
  ⑶ また,Xは,YがAに代理権がないことを知っていたため,Xは民法109条所定の表見代理による責任を負わないと再抗弁する(同条ただし書)。YはAとの協力の下,Xに本件売買契約を締結させようとしたものであるから,Aに代理権がないことを知っていたと認められるため,Xは民法109条所定の表見代理責任を負わない。
 4 また,Y及びZは,民法110条所定の表見代理によって,Xはその責任を負うと抗弁する。しかし,前記のように,YはAに代理権が存在しないことを知っていたため,認められない。また,同条は,本人に契約の効力か本来帰属しない場合につき,代理権の存在に対する信頼を保護するために例外を認めるものであるところ,転得者はの信頼の対象は,直接には前主が権利を有することであり,前主との間でその権利について契約をした者がその契約をする代理権を有していたことではない。したがって,同条にいう「第三者」には転得者は含まれないから,転得者であるZは,同条所定の表見代理の責任について抗弁することができない。
 5 そこで,Zは,民法94条2項の類推適用により,Y名義の登記を信頼したことは保護されるべきであると抗弁する。
 前記のように,民法94条2項は,権利の外観を信頼した第三者を保護する趣旨に出たものであるから,同様に第三者の信頼を保護すべき場合には類推適用される。そして,不実の権利の外観が存在し,この外観の存在について権利者に帰責性があり,第三者がこれを真正に信じたことが認められる場合には,同項が類推適用される。そして,自らが不実の外観の作出に直接かかわっていなくとも,これと同程度の帰責性が認められる場合には,民法110条をも類推適用すべきである。
 これを本件についてみると,甲土地の所有権移転登記については,本件売買契約が有効にされていないにもかかわらわず,Y名義とされていることから,不実の登記が存在する。そして,Xは,重要な財産の管理をAに任せきりにしており,Aに言われるがままにその内容も確認せず書面に署名し実印を捺印していることからすると,Xにおいて不実の登記が作出されたことについて帰責性が認められるようにも思える。しかし,Xは,高齢で目が不自由であり,他人を頼らざるを得なかったということができる。そして,全く無関係の者に頼っていたわけではなく,親族である姪のAを頼っていたものであるから,このような事情の下では,XがAに頼りきりにしていたことを避難することはできず,不実の登記の作出について必ずしも帰責性があったということはできない。そして,Zにおいては,不動産業者であるYが買い取った土地をわずか3か月で買値より1000万円,率にして25%も下回る価格で売却することは,通常考えられないところであり,不自然であるというべきである。そうすると,Zにおいても,甲土地の取引について不自然に考えられるはずであるところ,Zは,廉価での売却は資金調達を急ぐ必要があるためというYの説明だけをもって安易に納得している。不動産業者による説明であったとしても,その事実関係を詳細に確認するなどの手段を講じることができたと考えられ,またそうすべきであったというべきであるから,ZによるY名義の登記の存在への信頼には「正当な理由」が欠ける。
 したがって,Zについて,民法94条2項及び110条を類推適用することはできない。
 6 よって,Xの上記請求は認められる。

以 上



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