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2019-04-18(Thu)

【事例から民法を考える】事例①「任せてくれてもいいんじゃない?」

じれかん民法もあと4問になりました。

ワンチャン今日中に終わらせられるかもしれないですね。

そうだと嬉しいですね。

でもたぶん今までのペースからして無理でしょうね。

≪問題≫

●事例
 Aは,2013年4月に保佐開始の審判を受けた。Aには子BとCがあり,Aと同居していたBが保佐人に選任された(13条2項に基づく同意事項の付加も,876条の4に基づく代理権の授与もされていない)。Aは,2013年6月中旬に,不動産業を営むCから,「経営が苦しいので援助してほしい。Bには反対されると思うので,内密にしてほしい。」と頼まれた。

【設問1】 2013年9月16日に,Aは,Cの仲介により,Dとの間で,所有する甲土地を代金額2500万円でDに売却する契約(以下,「甲売買」)を結んだ。同月30日に,代金の支払と移転登記手続が行われた。代金の支払は,Cの事務所で行われた。甲土地の登記済証とAの実印はBが保管していたが,AがBに気づかれないように持ち出し,移転登記手続に用いていた。代金として支払われた2500万円のうち,2000万円はその場でCに分け与えられ,500万円はCがAに代わって新たに開設したA名義の普通預金口座に預け入れられた。
 2014年2月10日に,Bは,甲土地の登記済証が見当たらないことからAに事情を聞き,前記の諸事実を知った。Bは,同年3月12日に,Dに対して甲売買の取消しの意思表示をした。ところが,Dは,甲土地の返還にも抹消登記手続にも応じようとしない。Aも,土地の返還も登記の抹消も必要がないと言い張っている。Bは,どのような対応をとることができるか。

【設問2】 【設問1】において,Dは,土地の返還と抹消登記手続に応じることにした。この場合,Dは,Aに対してどのような請求をすることができるか。
 なお,Aの前記普通預金口座は,2013年9月30日に500万円が入金された後,同年10月15日に80万円,同月20日に30万円,同月28日に50万円の出金があり,残高が340万円となっている。10月15日出金分の80万円はAが競馬や競輪に使い,同月20日出金分の30万円はAが1年前にEからした借金の返済に充てたことが分かっているが,同月28日出金分の50万円の使途は不明である。

【設問3】 Aは,2013年11月初旬に,所有する不動産の管理・処分をCに委任してそのための代理権を与え,Bの目を盗んで登記済証と実印を持ち出してCに交付した。Cは,それらを利用して,2013年11月中に,乙土地の店舗敷地としての賃貸借契約(期間10年,賃料月額20万円。以下,「乙賃貸借」)をFとの間で,丙土地の駐車場としての賃貸借契約(期間1年,賃料月額2万円。以下,「丙賃貸借」)をGとの間で,丁土地の売買契約(代金額3000万円。以下,「丁売買」)をHとの間で,いずれもAの代理人として締結した。賃料,売買代金は,Aの了解のもと,Cが収受し,Aには渡されていなかった。
 事情を知ったBは,乙賃貸借については賃料をAまたはBが収受することにして継続し,丙土地と丁土地はAのもとに取り戻したいと考えている。これは可能か。


保佐人……

なるほど……

保佐人にこんなに論点があるとは知りませんでしたね……

≪答案≫
第1 設問1
 1 まず,BがDに対してした甲売買の取消しの意思表示の効力について検討する。
 Aについては保佐開始の審判(民法876条)がされ,Bがその保佐人(同法12条)となっている。甲売買は,不動産である土地の売買であって,日常生活に関する行為であるとは認められないから,AがこれをするにはBの同意が必要である(同法13条1項3号)。しかしながら,Aは,Bの同意を得ることなく甲売買をしているから,Bはこれを取り消すことができる(同条4項)。そして,Aが詐術を用いたことを示す事情は存在せず(同法21条),取消しの意思表示は甲売買をBが知った時から約1か月後にされており(同法126条),それ以前に追認(同法122条本文)または法定追認(同法125条)に該当する事実もないから,その効力は否定されない。
 したがって,BがDに対してした甲売買の取消しの意思表示は有効である。
 2 そこで,Bは,甲土地を現実に取り戻すために,Dに対して,甲土地の返還及び所有権移転登記抹消登記手続をすることを催告し,これにDが応じない場合にAに代わって訴訟を提起し,それに備えて甲土地が他に処分されることを防止するため処分禁止の仮処分(民保法23条1項,53条1項)を請求し,それらのために弁護士との間でAに代わって委任契約を結ぶことなどをすることが考えられる。
 もっとも,Bがこれらの行為をするためには,Aに代理して行う必要があるが,保佐開始の審判によっては当然に保佐人に代理権は与えられることにはならない。そうすると,Bは,Aから代理権授与行為を受けるか,代理権付与の審判(同法876条の4)を受けることによって,代理権を取得しなければならない。しかし,Aは,土地の返還も登記の抹消も必要がないと言い張っているから,これらを受けることができる見込みはない。そこで,保佐開始の審判によって,保佐人に法定代理権が与えられている場合があるということができないかについて検討する。
 保佐人に同意権が認められる行為については,その保護のために,被保佐人の行為が制限されている。この限りでは,被保佐人の自己決定権の尊重に対して被保佐人の保護の要請を優越させることが,民法においてすでに決せられているとみることができる。そして,この保護が現実に図られるためには,取消権の行使だけでは足りず,取消権行使の効果として生ずる権利の行使が必要になることもある。その場合に,当該権利行使の権限が保佐人に認められないとすると,法政策上の一貫性を欠く。したがって,取消しの目的を達成するために必要な行為については,保佐人に法定代理権が認められるべきである。
 これを本件についてみると,前記のように,甲売買にはBの同意が必要であって,Bの同意なく行われた甲売買は,取消しの対象となるから,その目的の達成のために必要な行為については,すでにBに代理権があるというべきである。したがって,Bは前記行為をすることができる。
第2 設問2
 1 Bが甲売買を取り消すことにより,甲売買は遡求的に無効となり(同法121条本文),Aは給付として得たものを返還する義務を負う。もっとも,Aは「制限行為能力者」であるから,現存利益についてのみ返還すれば足りる(同条ただし書)。その趣旨は,契約上の給付として得たものを原則通り全部返還しなければならないとすると,すでにそのものを失っており返還義務を履行できそうにないため取消しを断念せざるを得ないという事態が発生するので,これを回避するために返還義務の履行のための新たな負担を制限行為能力者に免れさせた点にある。したがって,制限行為能力者にとって新たな負担となる場合には,その返還義務を免れる。
 2 本件では,Aは甲売買による給付として現金2500万円を得ている。この点,給付として得た金銭が他の金銭と混蔵されれば,返還を求められている金銭の価値が消滅したと証明することは困難であるが,Aは,甲売買の代金の一部はその場でAからCに与えられ(以下「本件贈与」という。),残部は普通預金口座に入金されており,しかもその普通預金口座にはそれ以外の入金はなく,かつ,入金後比較的短い間に相次いで出金があったきりであることから,Aのした支出は,甲売買の代金からの支出であると認められる。
 3⑴ そこで,各支出について検討すると,普通預金口座からの出金分のうち,競馬・競輪に使われた80万円は,受益と無関係にされるべき出費とはいえず,これに相当する額の返還を認めると,取り消された行為をしていなければ生じなかったはずの負担を強いることになるから,Aは返還義務を免れる。
 Eへの借金の返済のに充てられた30万円について,債務の弁済は,甲売買による代金の取得とは関わりなくされるべきものであるから,甲売買がされていなければ生じなかった負担を強いることにはならず,Aは返還義務を免れない。
 使途不明の50万円については,利得の消滅が認められるべき事情の証明がされていないため,Aは返還義務を免れない。
  ⑵ 次に,本件贈与による2000万円については,甲売買による代金の取得に関わりなくされるべきものとはいえないから,これに相当する額の返還を認めると,取り消された行為をしていなければ生じなかったはずの負担を強いることになり,利得の消滅が認められるようにも思われる。
 もっとも,本件贈与は,Bの同意が必要となる行為であるから(同法13条1項5号),Bが取り消すことができる。Bが本件贈与を取り消した場合には,AはCに対して,2000万円の返還請求権を有することとなるから,利得の消滅が認められないのではないかが問題となる。
 Bが甲売買を知った後に本件贈与を追認した場合には,それによって贈与金の支出が確定するから,甲売買の取消しは認められなくなる(同法125条5号)。一方,Bが甲売買について知った後,その取消し前に本件贈与を取り消した場合には,AがCに対する2000万円の返還請求権を取得し,これが価値変形物としてDに返還されるべき利益になる。これらのことからすると,Bが甲売買の取消し又は追認をすることができるようになった時において,本件贈与の取消しが可能であったならば,Dは,本件贈与の効力判断によって不利益を受けない,すなわち,Aは本件贈与の効力判断によってDの利益を害することができない立場にある。そうすると,本件贈与の効力が不確定である場合には,贈与金分の利得の消滅を認めるべきではなく,また,甲売買を取り消す以上は,本件贈与を追認するのであれば,Aは2000万円全額をDに返還する義務を負うというべきである。
 そこで,甲売買の取消しによってDに回復されるべき利益を確保するために,甲売買の取消しによの本件贈与の贈与者の地位がDに移転すると考える。
第3 設問3
 1 Aは,Cに代理権を与えて,乙賃貸借,丙賃貸借及び丁売買をしている。代理権の授与行為自体は民法13条1項の同意が必要とされていないから,代理権の授与行為により,本来保佐人の同意が必要となる行為をその同意なくして代理人に行わせることができるかが問題となる。
 2 代理行為と代理権授与行為とは別個の法律行為であるが,代理において目的とされるのは代理行為による本人と相手方との間の法律関係の変動であり,代理権授与行為はその変動を生じさせるための前提にすぎない。そのため,代理行為と代理権授与行為との独立性を過度に強調することは適当ではなく,代理行為が民法13条1項に掲げられた行為に該当する場合には,被保佐人がその代理行為のための代理権授与行為をするには保佐人の同意が必要である。
 ここで,本件では,乙賃貸借,丙賃貸借及び丁売買がされているが,これらの行為についての代理権授与行為が包括的にされているといえるか,それとも個別的にされているといえるかについて検討すると,乙賃貸借及び丁売買については本来Bの同意が必要となる行為であるが(同法13条1項3号,9号),丙賃貸借についてはBの同意が必要とならない行為である。この場合に,代理権授与行為が包括的にされているとみて,全部の行為が取消しの対象となると,AがBの同意を得ることなく単独でなし得た行為についてまで制限を受けることになり,Aの自己決定権への過剰な介入となり妥当ではない。また,代理権授与行為は代理行為のための手段であり,目的となる代理行為に複数の可能性が考えられるため,それに備えて包括的に行われるのであって,最終的に目的とされているのは個別的な代理行為である。そうすると,代理甲がされるまでは代理権授与を包括的に捉えるべきであるが,代理行為がされたならば,その限りで代理権授与は具体化されて目的を達しており,抽象的包括的な内容にとどまる代理権授与の他の部分と別個に捉えることができる。したがって,代理権授与の効力は,代理行為がされた後においては,個別に判断する。
 本件でも,既に乙賃貸借,丙賃貸借及び丁売買がされているから,これらの効力は個別的に判断する。
 3 そして,被保佐人が保佐人の同意を得ずにしたことを理由として代理権授与行為が取り消された場合,その代理権の行使としてされた行為は無権利代理となる。ここで,相手方の信頼保護のため,表見代理の適用があるか問題となるが,制限行為能力違反を理由とする取消しは第三者にも対抗することができるものとして,制限行為能力者の保護を第三者との関係でも貫くのが民法の立場である。そうすると,表見代理を適用して第三者を保護することは,民法の立場に矛盾することとなる。したがって,この場合には,表見代理規定が適用されることは原則としてない。
 4 これを本件についてみると,乙賃貸借については,取り消すことができるが,追認することもできるため,Bが追認をすれば,乙賃貸借のAへの効果帰属が確定する。乙賃貸借における賃貸人はAであるから,AはFに対して賃料の支払を請求することができる。他方で,Bは代理権を有しない以上,Aのためであっても,賃料の支払を請求することはできない。
 丙賃貸借は,取消しの対象とならないから,Aが丙土地を取り戻すことはできない。
 丁売買にかかる代理権授与も取り消すことができるため,Bがこれを取り消すことにより,丁売買は無権代理行為となるから,Hに対する丁土地の返還オ余語所有権移転登記の抹消登記手続請求が可能となる。この場合に,Aがこれらの請求をしようとしないときは,取消しの目的を達成するため,Bに法定代理権があるとみるべきであるから,BがAに代わって請求することが可能である。

以 上



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