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2019-04-17(Wed)

【事例から民法を考える】事例④「そんなの,絶対,認めない!」

なぜか知らないですけど,

急におなかの調子が悪くなりました。

大変です。

健康第一ですから,

勉強なんかしている場合ではありません。

≪問題≫

●事例
 A(77歳)は,丘の中腹にある自宅(その建物を甲,土地を乙とする)に住んでいた。夫とともに懸命に働いて手に入れ,一男一女を育てあげた家であり,Aは,この家に強い愛着をもっていた。ただ,子2人が独立し遠方に住むようになり,夫に先立たれてひとり暮らしになってからは,その広さが孤独感をいっそう増すこともあった。また,膝を悪くしてからは,外出のたびに急な坂道を上り下りしなければならないことがつらかった。
 そんなあるとき,Aは,日ごろ何かと気を配ってくれる甥Bから,乙付近の地盤に問題があり,集中豪雨があると急に崩落するところもあるらしいと教えられ,専門家に調べさせようかと,もちかけられた。Aは,近くに住むBを普段から頼りにしており,また,Bが不動産業を営んでいることもあって,この申し出を受け入れた。後日,Bは,Cら3人を連れてA宅を訪れ,建設コンサルタント会社の者であるとAに紹介した。Cらは,ボーリング調査らしきことを行った。2週間後,Cが,BとともにA宅を再訪し,Aに,「調査報告書」と題する書面を手渡し,対策を講じなければ乙に地盤崩壊の可能性があること,その対策には2000万円ていどの費用を要することを告げた。しかし,実際には,これらすべてが,Aに甲と乙を売却させるためのBの偽計であった。
 途方に暮れるAに,Bが,甲・乙の相場価格はあわせて4500万円程度であるが,崩壊対策費がかかるので3000万円でなら購入してもよい,転居先も手配すると申し出た。Aは,子らに事情を話して相談のうえ,Bの申し出を受けることにした。Aは,Bから,急な話なので,代金のうち300万円はすぐに支払うが,残りは3か月後に支払うことにしてほしいと頼まれ,これを了承した。2011年11月18日に,Aは,Bが用意した契約書に署名押印し(以下,「本件売買契約」),Bから300万円を受け取り,Bに委任状・実印・登記済証・印鑑証明書を交付した。Bは,これらを用いて,甲と乙につき所有権移転登記手続をした。また,Aは,同月21日に,Bが仲介した借家に転居し,甲・乙をBに明け渡した。
 Bは,2012年3月1日になっても残代金の支払をしなかった。Aが支払を求めたところ,Bは,もう1か月待ってほしいと言い,同年4月15日には,さらにもう1か月待って欲しいと言った。Aは,子らとも相談のうえ,同月20日に,Bに対して,「今月中に2700万円を支払うか,そうでなければ,300万円を返すので,家を返してほしい。」と伝えた。しかし,その後も,Bは,2700万円の支払も甲・乙の返還もしなかった。同年6月10日に,Aの長男がBに会い,事情を厳しく問い質していたところ,前記地質調査等はBの偽計であったことが発覚した。これを伝え聞いたAは,同日,Bに対し,「ひどいじゃないの。危なくないと知っていたら,売らなかったわ。すぐに返しなさい。」と述べた。しかし,Bは甲・乙を明け渡さず,甲・乙いずれについても所有権移転登記の抹消登記手続もしていない。また,甲にはDのための抵当権設定登記(2011年12月1日付)が,乙にはEのための抵当権設定登記(2012年5月1日付)とFのための抵当権設定登記(2012年6月14日付)が,それぞれされている。いずれの登記も契約締結日にされており,契約締結の当時,Dは,Bの前記偽計を知らなかった。Eは,Bの偽計は知っていたが,AがBに甲・乙の返還を求めている事実は知らなかった。Fは,Bの偽計を知っていたAが怒って甲・乙の返還をBに求めている事実を知っていた。
 Aは,Bに対し甲・乙の返還と所有権移転登記の抹消登記手続を,D・E・Fに対し上記各抵当権設定登記の抹消登記手続を請求した。AのD・E・Fに対する請求は認められるか。


第三者シリーズです。

特に目新しいことがあったというわけでもありませんが,

それぞれの効果の対抗関係について,

整理できるという意味でいい問題です。

≪答案≫
1 Dに対する請求
 ⑴ Aは,Dに対して,所有権に基づく妨害排除請求権としての抵当権設定登記抹消登記請求権を行使する。これが認められるためには,Aが甲が所有していること,Dの抵当権設定登記が存在することが必要であるところ,これに対して,Dは,本件売買契約により,Aが甲の所有権を喪失しているとの抗弁を主張する。
 ⑵ そこで,Aは,本件売買契約を解除したとして(民法541条),その所有権の復帰をもって再抗弁を主張する。Aは,Bとの間で,本件売買契約に係る売買代金のうち2700万円の支払期日を2012年2月18日としているが,Bは同日を経過してもこれを支払っていないため,「当事者の一方がその債務を履行」していない。また,Aは,同年4月20日,Bに対して,今月中に残代金を支払うよう告げており,2度も支払期日を猶予してもらっている事情のもとではその期間も相当であるから,「相当の期間を定め定めてその履行の催告」をするとともに,同発言をもって履行がない場合の契約解除の意思表示があったものとみることができる。そして,Bは,履行をしないまま同月末日を経過しているから,「その期間内に履行がない」といえる。したがって,Aは,本件売買契約について解除権を有し,その行使により,本件売買契約は解除されている。解除の効果(同法545条1項本文)によって,契約前の状態に直接法律関係が復帰するから,Aは甲の所有権を取り戻している。
 しかし,これに対しては,Dは「第三者」(同項ただし書)にあたるため,Aは解除の効果を対抗することはできないとの再々抗弁を主張する。前記の解除の効果との関係から,同項ただし書は,解除前に現れた第三者を解除の遡及効による地位の喪失から保護する趣旨に出たものである。したがって,同項ただし書にいう「第三者」とは解除前の第三者をいう。そして,Dは解除前に甲に抵当権を設定した第三者であるから「第三者」にあたる。したがって,AはDに対して解除の効果を主張することはできない。
 ⑶ 次に,Aは,本件売買契約がBによる詐欺に基づくものから詐欺取消しをしたとして(同法96条1項),遡及的に本権売買契約が無効になる(同法121条本文)との再抗弁を主張する。Bの偽計は,Aに甲売却の意思表示をさせる目的でされており,本件売買契約はAに重大な不利益を被らせるものであるから,「詐欺」にあたる。また,Aがこの詐欺により甲売却の意思表示をしたことは明らかである。Aは,2012年6月10日,Bに対して,甲をすぐに返すように伝えているから,これをもって取消しの意思表示(同法123条)がされている。したがって,Aは,本件売買契約について取消権を有し,その行使により,本件売買契約は取り消されている。その結果,Aは甲の所有権を取り戻している。
 しかし,これに対しては,Dは「善意の第三者」(同法96条3項)にあたるため,Aは取消の効果を対抗することができないとの再々抗弁を主張する。同項は,取消しの遡及効から第三者を保護する趣旨に出たものであるから,「第三者」とは,取消し前に法律上の利害関係を有するに至った者をいう。Dは,Aの取消し前に甲に抵当権を設定しており,かつ,Bの偽計を知らなかったのであるから,「善意の第三者」である。したがって,AはDに対し取消しの効果は主張することはできない。
 ⑷ そこで,Aは,本件売買契約が錯誤(同法95条本文)に基づくものであるとして,その無効であることを再抗弁として主張する。もっとも,Aは,本件売買契約を締結する点において内心的効果意思と表示行為とは一致しているから,「錯誤」がないように思えるが,動機の錯誤であっても,それが外部に表示され,法律行為の要素となっている場合には,錯誤無効を主張することができる。本件売買契約における甲の売買代金は,Aの誤信の対象である地盤崩壊の危険性をAとBがともに前提として定めたものであることから,Aの動機はBに少なくとも黙示されており,かつ,この錯誤は売買代金額を相場額よりその3分の1にあたる1500万円程度も低下させた原因であり,極めて重大なものであるから,法律行為の要素となっていると考えられる。したがって,Aには「錯誤」が認められる。そうすると,本件売買契約は無効であって,Aは甲の所有権を当初から有していたことになる。
 これに対して,Dは,錯誤無効についても民法96条3項が類推適用されるべきであるとの再々抗弁を主張することが考えられる。この主張の論拠は,錯誤による意思表示の無効は原則として錯誤者からしか主張することができないから,錯誤者が無効の主張をするまでは,意思表示は事実上効力を有するものとして扱われる点で,錯誤無効の主張は取消しに類似すること,また,詐欺取消しと錯誤無効は,錯誤者を意思表示の拘束から解放する点で共通しており,民法95条による場合には他人の干渉によらず自ら錯誤に陥った者を含む点で,表意者の帰責性が同法96条の場合よりも大きいことにある。しかし,同法95条の無効主張には錯誤の要素性が必要であるから,この点で,錯誤者は,より厚く保護されるべきである。したがって,錯誤無効の場合に同法96条3項を類推適用すべきではない。そうすると,Dの前記主張は認められない。
 そこで,Dとしては,民法94条2項の類推適用を主張することも考えられるが,BD間の契約の時点でAは錯誤に気づいていなかったのであるから,同項の類推適用を基礎づける帰責性が認められない。したがって,Dのこの主張も認められない。
 ⑸ よって,Aは,本件売買契約の無効を主張することにより,上記請求が認められる。
2 Eに対する請求
 ⑴ Eに対する請求の根拠も1⑴と同様である。
 ⑵ Aが解除を主張する場合には,Eは解除後の第三者であるから,同法545条1項ただし書の「第三者」にはあたらない。しかし,解除による所有権の復帰的物権変動は,「第三者」(同法177条)との間で対抗関係となるから,登記を具備しなければ対抗することができない。また,Eは,本件解除が自己の抵当権取得に先行することを知らないから,「第三者」から除外されるものではない。したがって,Aの解除の主張は認められない。
 ⑶ Aが取消しを主張する場合には,Eは取消し前の第三者であるが,Bの偽計について知っているのであるから「善意の第三者」ではない。したがって,Aの上記請求は,取消しを理由として認められる。
 ⑷ またもAが無効を主張する場合にも,1⑷と同様に,Aの上記請求が認められる。
3 Fに対する請求
 ⑴ Fに対する請求の根拠も1⑴と同様である。
 ⑵ Aが解除を主張する場合には,Fは本件解除について知らないのであるから,「第三者」から除外されない。
 ⑶ Aが取消しを主張する場合には,Fは取消し後の第三者であるから,同法96条3項の「第三者」にあたらない。もっとも,取消しに基づく所有権の復帰的物権変動についても,第三者と対抗関係になるから,登記がなければ対抗することができない。そうすると,Fは「第三者」にあたり,登記を具備している。
 ところが,同条は自由競争下での対抗関係の処理について定めたものであるから,自由競争を逸脱する背信的悪意者は,登記の欠缺を主張するにつき正当な利益を有しているとはいえず,「第三者」にあたらない。二重売買の場合と異なり,先行する物権変動の原因が取消しである場合には,第三者は,取消者と対等な立場で同一前主からの物権の取得を競うものとはいえないから,この場合の悪意の第三者は,取消しによる権利の原状回復を妨害する者であるとして,背信的悪意者であるというべきである。そうすると,FはAによる取消しを知りつつ乙に抵当権を取得しているから,Fは「第三者」にあたらない。
 したがって,Aは登記なくしてFに取消しの効果を対抗することができるため,Aの上記請求は認められる。
 ⑷ Aが無効を主張する場合にも,1⑷と同様に,Aの上記請求が認められる。

以 上



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