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2019-04-17(Wed)

【事例から民法を考える】事例⑱「もっと生きられたはずなのに」

【今日の一品】

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本日の昼飯兼夜飯はラーメン二郎立川店にて小豚です。

去年だか一昨年くらいに営業を再開したところですが,

今回初めて伺いました。

よくtwitterでは「しょっぱい」とか「豚がかたい」などと書かれていましたが,

本当にその通りでした。

なんなら野菜もかたかったです。

とはいえ私は別にジロリアンでもなんでもないので,

これで十分二郎欲は満たされます。

おいしかったです。

ところで,今回は,事例⑱です。

≪問題≫

●事例
 A(52歳)は,2011年3月にB病院の医師Cの診察を受けたが,同年12月に白血病で死亡した。次の各設問におけるAの妻X1(47歳)と子X2(15歳)の損害賠償請求につき検討せよ(設問はそれぞれ独立した問いである)。

【設問1】 2011年3月にAを診察したCは,仕事に忙殺され睡眠も十分とれず毎晩大量に飲酒をしていたこと等をAから聞き,特段の検査もせずに,Aの体調不良は過労やストレスによる内蔵機能の低下が原因であると判断し,Aに対し静養と断酒等の指示をし,肝機能疾患薬を処方した。Aは,一時は症状が改善したものの,1か月後には再び極度の疲労感に襲われ,体重減少や発熱も続いたため,総合病院で精密検査を受けたところ,同年5月,進行期の慢性骨髄性白血病に罹患していることが判明した。その直後より開始された種々の化学療法も奏功せず,Aは同年12月に死亡した。
 Xらは,Aが死亡したのはCが3月時点で必要な措置を講じなかったためであるとして,Bに対して,不法行為(715条)を根拠に,Aの死亡による逸失利益4000万円(平均稼働年数15年分で算出),Aの慰謝料3000万円,Xら固有の慰謝料1200万円等の損害の賠償を求めて訴えを提起した。この請求は認められるか。なお,同裁判では,同年3月の時点でBにおいて医療水準に応じた注意義務に従い適切な検査が行われていればAの病気は発見できたこと,ただし実際にこの時期に治療が開始されていたとしても延命できた可能性は5割程度にとどまるとする鑑定結果が出された。

【設問2】 【設問1】において,Aに自らの営む事業に係る負債15億円があったためXらが相続放棄をしたとすると,延命可能性が9割を超える場合だったとしても,Xらの損害賠償請求は認められないことになるか。

【設問3】 2010年8月,Aは,赤信号に変わるタイミングで交差点を横断していたところ,制限速度を50km上回って交差点に進入してきたD運転のトラックに撥ねられ,頭部を激しく強打した結果,言語障害と右下半身不随の障害を負った。そこで2010年12月,Aは,Dに対し,慰謝料2000万円,治療費3000万円,逸失利益2000万円(障害による労働能力喪失を平均稼働年数15年で算出),介護費用5000万円(平均余命までの30年分で算出)につき賠償請求をした。ところで,Aは,退院後も続けられていた言語療法の結果,2011年3月には意思伝達が可能となるまでに回復したが,この頃にAから体調不良を訴えられたX1は,AにCの診療を受けさせた。Cが,当初Aの体調不良は受傷の回復期にみられるものと判断し格別の検査を行わなかったこともあって,白血病の治療開始が遅れ,同年12月にAは死亡した。Aの訴訟を引き継いだXらは,Aの死亡はDの交通事故で意思伝達ができず病気の発見が遅れたことに起因するものであるとして,A死亡により,逸失利益2000万円,Aの慰謝料1000万円,Xら固有の慰謝料1200万円を従前の請求額に追加してDに賠償請求をした。この請求は認められるか。なお,交通事故におけるAとDの過失割合は1対9であった。また,交通事故当時すでにAは慢性骨髄性白血病に罹患してはいたが,症状が悪化する前段階であったため,治療をすれば寛解の可能性も7割はあったとの鑑定結果であった。


不法行為……

色々問題があってそれだけで大変なのに,

理論面で未だに学説同士が強く対立しあっているイメージがあります。

司法試験で出されたら嫌な分野の一つです。

≪答案≫
第1 設問1
 1 Xらは,Bに対して,使用者責任に基づく損害賠償請求をしているが,これが認められるかどうかについて,その要件を検討する。
 2⑴ CはBに雇用されて勤務される医師であるから,Bは「事業のために他人を使用する者」である。そして,CはBにおける勤務中の職務としてAの診療を行っているから,「被用者がの事業の執行について」行ったものである。
  ⑵ そこで,Aの死亡を権利侵害とみて,Cの過失行為とAの死亡との間に因果関係が認められるかどうかが問題となる。
 訴訟上の因果関係の立証は,一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく,経験則に照らして前証拠を総合検討し,特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認し得る高度の蓋然性を証明することであり,その判定は,通常人が疑を差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得るものであることを必要とし,かつ,それで足りる(※1)。このことは,医師が注意義務に従って行うべき診療行為を行わなかった不作為と患者の死亡との間の因果関係の存否の判断においても異なるものではない。そして,医師が注意義務を尽くして診療行為を行っていたならば,患者がその死亡の時点においてなお生存していたであろうことを是認し得る高度の蓋然性が証明されれば,医師の不作為と患者の死亡との間の因果関係は肯定される(※2)
 これを本件についてみると,Aの延命可能性は5割程度という鑑定結果が出ていることから,裁判所においても同様の心証にしか達しない場合には,Cが注意義務を尽くして診療行為を行っていたとしても,Aが死亡時点においてなお生存していたであろうことを是認し得る高度の蓋然性が証明されたとはいえないため,Cの不作為とAの死亡との間の因果関係は肯定されない。
  ⑶ もっとも,医療行為と患者の死亡との間の因果関係の存在は証明されないが,医療水準にかなった医療が行われていたならば患者がその死亡の時点においてなお生存していた相当程度の可能性の存在が証明されるときは,医師は,患者に対し,不法行為による損害を賠償する責任を負う。なぜなら,生命を維持することは人にとって最も基本的な利益であって,その可能性は法に依って保護される利益であり,医師が過失により医療水準かなった医療を行わないことによって患者の利益が侵害されたものということができるからである(※3)
 これを本件についてみると,前記の鑑定結果からすれば,医療水準にかなった医療が行われていたならばAがその死亡の時点においてなお生存していた相当程度の可能性の存在が高度の蓋然性をもって証明されているということができる。したがって,Aにおいて,その死亡の時点においてなお生存していた相当程度の可能性を喪失させられる権利侵害があり,これとCの医療行為との間の因果関係も肯定される。
 よって,XらのBに対する上記請求権は成立する。
 3 そこで,Xらが請求することができる損害の範囲について検討すると,あくまで生存の可能性が法益とされている以上は,これを具体的数値で明確に認定することは困難である。したがって,この場合には,Aの死亡による逸失利益までを賠償請求することはできず,Aの慰謝料請求のみが認められ,Xらはこれを相続した限りで賠償請求することしかできない。よって,XらはBに対し3000万円の範囲で損害賠償請求をすることが認められる。
第2 設問2
 1 Xらが相続放棄(同法938条)をする場合には,初めから相続人とならなかったものとみなされ(同法939条),AのBに対する慰謝料請求権及び逸失利益の損害賠償請求権も相続しないこととなる。そうすると,Xらがこれらの請求権を行使することはできなくなる。
 2⑴ そこでXらとしては,自己の固有の損害賠償請求権を行使することが考えられる。本件では,Aの延命可能性が9割を超えるとの鑑定結果が出されており,Cが注意義務を尽くして診療行為を行っていたならば,Aがその死亡の時点においてなお生存していたであろうことを是認し得る高度の蓋然性が証明されるものと考えられるから,Cの不作為とAの死亡との間の因果関係は肯定される。したがって,Xらは,Aの生命侵害を理由とする損害賠償請求をすることができる。
  ⑵ ここで,損害とされるべき対象については,Xらの慰謝料及びXらがAから扶養を受ける利益である(同法711条)。この利益は,被扶養者固有の利益であるから,相続放棄によってAの逸失利益の損害賠償請求権が失われたからといって失われるものではない。したがって,相続放棄には影響されない。
 なお,扶養利益喪失による損害額は,相続により取得すべき死亡者の逸失利益の額と当然に同じ額となるものではなく,個々の事案において,扶養者の生前の収入,そのうち被扶養者の生計の維持に充てるべき部分,被扶養者各人につき扶養利益として認められるべき比率割合,扶養を要する状態が存続する期間などの具体的事情に応じて適正に算定すべきである(※4)
 したがって,Aの死亡による逸失利益4000万円が扶養利益喪失による損害額となるものではなく,このほかに,Aの負債15億円を放棄した点や,Xらの扶養を要する状態が存続する期間などを勘案して損害額が決定される。
第3 設問3
 1 Xらは,Dに対して,不法行為に基づく損害賠償請求をしているが,その損害がどの範囲で認められるか問題となる。
 2⑴ まず,Aが生前に,Dに対して,不法行為に基づく損害賠償請求をしていた部分について,慰謝料2000万円および治療費3000万円は,既に生じた損害であるから,これらの損害にかかる請求権は相続によりXらが取得する。したがって,Aの慰謝料及び治療費は損害の範囲に含まれる。
  ⑵ それでは,逸失利益についてはどの範囲で認められるか。逸失利益の算定は基礎年収に労働能力割合と労働能力喪失期間を乗じることによって行うところ,ここでは平均稼働可能年齢を用いることとなる。しかし,Aは平均稼働可能年齢に達する前に死亡しているため,その後の逸失利益部分は実際には稼働が可能でなかったとして損害の範囲に含まれないようにも思われるため,この点について検討する。
 労働能力の一部喪失による損害は,事故の時に一定の内容のものとして発生しているのであるから,事故の後に生じた事由によってその内容に消長を来すものではない。また,事故の被害者が事故後にたまたま別の原因で死亡したことにより,賠償義務を負担する者がその義務の全部又は一部を免れ,他方被害者ないしその遺族が事故により生じた損害のてん補を受けることができなくなるのは衡平の理念に反する。したがって,事故の被害者が事故に起因する傷害のために身体的機能の一部を喪失し,労働能力の一部を喪失した場合において,逸失利益の算定にあたっては,その後に被害者が死亡したとしても,当該事故の時点で,志望の原因となる具体的事由が存在し,近い将来における死亡が客観的に予測されていたなどの特段の事情がない限り,当該死亡の事実は就労可能期間の認定上考慮すべきでない(※5)
 これを本件についてみると,AがDのトラックに衝突される交通事故の段階で,白血病の罹患の程度は進行期の前段階であり,この段階で治療をすることにより7割程度の確実性をもって寛解の余地があったのであるから,近い将来における死亡が客観的に予測されていたなどの特段の事情はなかったというべきである。したがって,交通事故に基づく逸失利益の算定において,Aが死亡した事実は就労可能期間の認定上考慮すべきではない。よって,逸失利益2000万円についても請求が可能である。
  ⑶ また,介護費用についてもどの範囲で認められるか問題となる。
 介護費用の賠償は,被害者において現実に支出すべき費用を補填すべきものであり,被害者が死亡すれば,その時点以降の介護は不要となるのであるから,もはや介護費用の賠償を命ずべき理由はなく,その費用をなお加害者に負担させることは,被害者ないしその遺族に根拠のない利得を与える結果となり,かえって衡平の理念に反する。したがって,自己の被害者が事故後に別の原因により死亡した場合には,死亡後に要したであろう介護費用を当該事故による損害として請求することはできない(※6)
 そうすると,本件では,Aの死亡後の介護費用の賠償を求めることはできないため,介護費用5000万円のうち,A死亡後の部分については請求することができない。
 3 また,Xらは,Aの死亡による逸失利益,Xら固有の慰謝料を請求に追加しているが,緊急に対処すべきであり,かつ対処すれば死を回避できたという白血病の施術が,交通事故によって不可能となったという事情が具体的に認められる等でない限り,相当因果関係があるということはできない。したがって,Xらはこれらの請求をすることはできない。
 同様に,Aの慰謝料についても,Xらは請求することができない。

以 上


(※1)訴訟上の因果関係の立証は、一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性を証明することであり、その判定は、通常人が疑を差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし、かつ、それで足りるものである。」最判昭和50年10月24日民集29巻9号1417頁
(※2)「[訴訟上の因果関係の立証は,]医師が注意義務に従って行うべき診療行為を行わなかった不作為と患者の死亡との間の因果関係の存否の判断においても異なるところはなく、経験則に照らして統計資料その他の医学的知見に関するものを含む全証拠を総合的に検討し、医師の右不作為が患者の当該時点における死亡を招来したこと、換言すると、医師が注意義務を尽くして診療行為を行っていたならば患者がその死亡の時点においてなお生存していたであろうことを是認し得る高度の蓋然性が証明されれば、医師の右不作為と患者の死亡との間の因果関係は肯定されるものと解すべきである。患者が右時点の後いかほどの期間生存し得たかは、主に得べかりし利益その他の損害の額の算定に当たって考慮されるべき事由であり、前記因果関係の存否に関する判断を直ちに左右するものではない。」最判平成11年2月25日民集53巻2号235頁
(※3)「疾病のため死亡した患者の診療に当たった医師の医療行為が、その過失により、当時の医療水準にかなったものでなかった場合において、右医療行為と患者の死亡との間の因果関係の存在は証明されないけれども、医療水準にかなった医療が行われていたならば患者がその死亡の時点においてなお生存していた相当程度の可能性の存在が証明されるときは、医師は、患者に対し、不法行為による損害を賠償する責任を負うものと解するのが相当である。けだし、生命を維持することは人にとって最も基本的な利益であって、右の可能性は法によって保護されるべき利益であり、医師が過失により医療水準にかなった医療を行わないことによって患者の法益が侵害されたものということができるからである。」最判平成12年9月22日民集54巻7号2574頁
(※4)「不法行為によって死亡した者の配偶者及び子が右死亡者から扶養を受けていた場合に、加害者は右配偶者等の固有の利益である扶養請求権を侵害したものであるから、右配偶者等は、相続放棄をしたときであっても、加害者に対し、扶養利益の喪失による損害賠償を請求することができるというべきである。しかし、その扶養利益喪失による損害額は、相続により取得すべき死亡者の逸失利益の額と当然に同じ額となるものではなく、個々の事案において、扶養者の生前の収入、そのうち被扶養者の生計の維持に充てるべき部分、被扶養者各人につき扶養利益として認められるべき比率割合、扶養を要する状態が存続する期間などの具体的事情に応じて適正に算定すべきものである。」最判平成12年9月7日集民199号477頁
(※5)「交通事故の被害者が事故に起因する傷害のために身体的機能の一部を喪失し、労働能力の一部を喪失した場合において、いわゆる逸失利益の算定に当たっては、その後に被害者が死亡したとしても、右交通事故の時点で、その死亡の原因となる具体的事由が存在し、近い将来における死亡が客観的に予測されていたなどの特段の事情がない限り、右死亡の事実は就労可能期間の認定上考慮すべきものではないと解するのが相当である。けだし、労働能力の一部喪失による損害は、交通事故の時に一定の内容のものとして発生しているのであるから、交通事故の後に生じた事由によってその内容に消長を来すものではなく、その逸失利益の額は、交通事故当時における被害者の年齢、職業、健康状態等の個別要素と平均稼働年数、平均余命等に関する統計資料から導かれる就労可能期間に基づいて算定すべきものであって、交通事故の後に被害者が死亡したことは、前記の特段の事情のない限り、就労可能期間の認定に当たって考慮すべきものとはいえないからである。また、交通事故の被害者が事故後にたまたま別の原因で死亡したことにより、賠償義務を負担する者がその義務の全部又は一部を免れ、他方被害者ないしその遺族が事故により生じた損害のてん補を受けることができなくなるというのでは、衡平の理念に反することになる。」最判平成8年4月25日民集50巻5号1221頁
(※6)「介護費用の賠償は、被害者において現実に支出すべき費用を補てんするものであり、判決において将来の介護費用の支払を命ずるのは、引き続き被害者の介護を必要とする蓋然性が認められるからにほかならない。ところが、被害者が死亡すれば、その時点以降の介護は不要となるのであるから、もはや介護費用の賠償を命ずべき理由はなく、その費用をなお加害者に負担させることは、被害者ないしその遺族に根拠のない利得を与える結果となり、かえって衡平の理念に反することになる。……交通事故による損害賠償請求訴訟において一時金賠償方式を採る場合には、損害は交通事故の時に一定の内容のものとして発生したと観念され、交通事故後に生じた事由によって損害の内容に消長を来さないものとされるのであるが、右のように衡平性の裏付けが欠ける場合にまで、このような法的な擬制を及ぼすことは相当ではない。……被害者死亡後の介護費用が損害に当たらないとすると、被害者が事実審の口頭弁論終結前に死亡した場合とその後に死亡した場合とで賠償すべき損害額が異なることがあり得るが、このことは被害者死亡後の介護費用を損害として認める理由になるものではない。以上によれば、交通事故の被害者が事故後に別の原因により死亡した場合には、死亡後に要したであろう介護費用を右交通事故による損害として請求することはできないと解するのが相当である。」最判平成11年12月20日民集53巻9号2038頁



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