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2019-04-17(Wed)

【事例から民法を考える】事例⑭「聞いてないよ」

いつもと変わらない水曜日です。

今回は,事例⑭です。

≪問題≫

●事例
 Cは,甲土地(100坪)の近くのアパートに居住するDが,自宅を建築するための敷地として甲土地を購入したがっていることを伝え聞き,自分が甲土地を買い受けてそれをDに転売して,利益を得ることを思いついた。
 甲土地を含むその周辺一帯の土地は,かつてはBの父が大地主として所有していたものであったが,その父は十数年前に亡くなっており,現在は,Bが事実上その一族を取り仕切る実力者としての地位にいることは,衆目の一致するところであった。また,甲土地は,Bの単独所有として時されていた。そこで,Cは,Bに対して甲土地の買受けを持ちかけたところ,Bは「お売りしましょう」と述べ,平成24年4月1日にB・C間で代金を5000万円とする甲土地の売買契約が締結された。代金支払は,同月20日に,移転登記および甲土地の引渡しと引換えに行われることとされた。
 これを受けて,CはDに甲土地の売却を持ちかけ,同月8日に,C・D間で代金を5300万円とする売買契約を締結したが,Dの資金調達の関係で,代金支払は,同年6月1日に移転登記および甲土地の引渡しと引換えに行われることとされた。
 ところが,甲土地は,実際にはBとその妹Aが共同相続したものであり(相続分はA・Bそれぞれ1/2ずつ),遺産分割がされないままであったものを,たまたま同年3月に,Bが書類を偽造してAに無断で単独名義の登記をしていたものである。Bは,Aの持分を安く譲り受けることは容易であると考えて,Cに甲土地を売却する契約を締結したものであった。同年4月2日,BはAに対して,2000万円での持分の譲受けを持ちかけたが,Bの予想に反してAはそれを強く拒んだ。Bは,何とか2500万円以内での譲受けをめざしてその後も粘り強くAの説得を続けていたが,Aは3000万円以上でなければ持分を譲ることはできないと述べて,断固として応じようとしなかった。Bは,結局,2500万円以内でAの持分を譲り受けることはできないと判断し,同年4月17日,Cに事情を説明して,契約をなかったことにして欲しいと告げた。
 この場合につき,次の設問に答えなさい。設問はそれぞれ独立の問いである。

【設問1】 CはBに対して,いかなる権利行使をすることができるか論じなさい。

【設問2】 平成24年4月18日に,Bは交通事故で死亡し,AがBを単独相続した(単純承認をした)。このとき,CはAに対して甲土地の引渡しおよび所有権の移転を求めることができるかどうか論じなさい。


他人物売買ですね。

みんな大好き担保責任の性質論にも触れ,

無権代理の相続の問題にも思いを巡らせ,

頑張って答案を書いていきたいと思います。

≪答案≫
第1 設問1
 1 Cは,Bに対して,甲土地のうちAの持分に係る部分(以下「A持分部分」という。)については他人物売買であるとして,契約を解除する(民法563条2項)ことが考えられる。
 甲土地は,A及びBが共同で相続したものであるから,それぞれ2分の1ずつ(同法900条4号)の持分を有する共有状態となっている。そうすると,A持分部分については,Bはこれを処分する権限を有していないから,BC間の「売買の目的である権利の一部が他人に属する」(同法563条1項)といえる。
 「売主がこれを買主に移転することができないとき」とは,社会の取引観念上,権利移転を期待できない場合をいい,権利者の処分意思の有無,売主による履行意思の欠如,時間の経過等から判断する。A持分部分の権利者であるAは,Bの提示した2500万円での譲渡しを断固として拒絶しているから,処分意思はないものといえる。また,BはCに対し,契約はなかったことにしてほしいと告げているから,Bの履行意思は欠如している。したがって,社会の取引観念上,BがCにA持分部分を移転することは期待できないといえるから,「売主がこれを買主に移転することができないとき」にあたる。
 「残存する部分のみであれば買主がこれを買い受けなかったとき」とは,通常人を基準として,制約の性質や目的から客観的に判断される(※1)。Cが,甲土地のうちBの持分に係る部分(以下「B持分部分」という。)のみを取得した場合には,甲土地はA及びCの共有となるが,CはDが居住用住宅を建てるための敷地として甲土地を転売しようとしているのであり,同様に転売を考えている通常人であれば,B持分部分を取得できるだけであれば甲土地を買い受けなかったということができるから(同法249条参照),「残存する部分のみであれば買主がこれを買い受けなかったとき」にあたる。
 そして,Cは,A持分部分が他人物であることについて,契約締結当初において「善意」であったといえる。
 したがって,Cは,Bに対して,契約を解除することができる。
 2 Cは,Bに対して,他人物売買の担保責任として損害賠償請求をする(同法563条3項)ことが考えられる。
 同項は,売買の目的である権利の一部が他人に帰属する場合でも,売主は目的物を移転する契約上の義務を負っている(同法560条)ことから,債務不履行責任の特則を定めたものである。その特則性は,買主の善意が要件であること,無過失責任であることに求められるから,損害賠償の対象は信頼利益に限られる。
 そうすると,CはBに対して,契約費用や登記の準備費用等についてのみ損害賠償を受けられる。
 3 そこで,Cは,Bに対して,債務不履行に基づく損害賠償請求をする(同法415条後段)ことが考えられる。
 前記の担保責任に基づく損害賠償請求は,悪意の買主に債務不履行に基づく損害賠償請求を認めない趣旨にとどまらず,善意の買主に売主の無過失責任の追及を認めるものであるから,担保責任に基づく損害賠償請求が認められる場合であっても,これとは別個に債務不履行に基づく損害賠償請求が成立する余地がある。
 前記のように,BはA持分部分をCに譲渡することについて「履行することができなく」なっている。
 「責めに帰すべき事由」とは,故意,過失又は信義則上これと同視し得る事由をいう。Aは3000万円以上の価格であれば売るといっているのであって,2500万円以内で買いたいというBと条件が折り合っていないだけであるが,金銭の提供には不能はありえないのであるから,AがA持分部分を相当価格で売り渡そうという態度を示していたのであれば,Bとしてはこれを買い受けられなかったことに不可抗力はないはずである。不能でない限り,いくら不利な条件でもAから買い受けてCに対する債務を履行すべきであり,これを買い受けなければ当該債務の履行ができないことは当然認識できるのであるから,過失どころか故意の不作為として帰責事由を基礎づける事情となる。仮にAに全く売却の意思がなくとも,これを取得できなければBの過失があるということができる。
 したがって,Cは,Bに対して,債務不履行に基づく損害賠償請求をすることができる。この場合には,損害賠償の対象に履行利益まで含まれるのであるから,CのAに対する甲土地の転売利益である300万円及びCがDから損害賠償請求を受けた場合の損害額を請求することができる。
第2 設問2
 1 Cは,Aに対して,売主Bの地位を相続したことをもって,売買契約に基づく目的物引渡請求権としての土地明渡請求権を行使する。これに対して,Aは,A持分部分をCに移転することを承諾するか否かの自由を有しているとして,Cの上記請求を拒むことが考えられる。そこで,売主の地位を相続した権利者が権利の移転を拒絶することができるかどうかについて検討する。
 2 権利者が他人の権利の売主を相続した場合であっても,そのたに権利者自身が売買契約を締結したことになるものではないし,これによって売買の目的とされた権利が当然に買主に移転するものとされる根拠もない。また,権利者は権利の移転につき諾否の自由を有しているのであって,それが相続による売主の義務の承継という偶然の事由によって左右されるべき理由もなく,また権利者がその権利の移転を拒否したからといって買主が不測の不利益を受けるというわけでもない。したがって,権利者は,相続によって売主の義務ないし地位を承継しても,相続前と同様その権利の移転につき諾否の自由を有し,信義則に反すると認められるような特別の事情がない限り,当該売買契約上の売主として履行義務を拒否することができる(※2)
 そうすると,本件でも,Aは,権利者としての地位に基づいて,Cへの権利移転を拒絶することができる。
 したがって,CはAに対して甲土地の引渡しおよび所有権の移転を求めることはできない。
 3 なお,CはAに対して,前記のように損害賠償責任を負うBの地位を相続したとして,担保責任又は債務不履行に基づく損害賠償請求をすることはできる。

以 上


(※1)「民法563条の規定に徴すれば,売買の目的たる権利の一部が他人に属するに因り,売主が之を買主に移転すること能わざる場合に於て,残存する部分のみなれば買主が之を買受けざるべかりし事情は,売買の当時売主に於て之を知りたること,若は契約の性質,売主に知れたる契約の動機等によりて推断し得べきものたることを要すと解すべき根拠なく,唯正常の人が其の買主となりたる場合に於ては,通常之を買受けざるべかり事情たるを以て足ると解するを相当とし,原審は本件各売買の場合に斯る事情ありたることを認めたるものなること判文上自ら明白なるを以て,原判決には所論の如き違法あるものに非ず。」大判昭和6年10月31日新聞3339号10頁(一部現代表記に改め,句読点挿入済み)
(※2)「他人の権利の売主が死亡し、その権利者において売主を相続した場合には、権利者は相続により売主の売買契約上の義務ないし地位を承継するが、そのために権利者自身が売買契約を締結したことになるものでないことはもちろん、これによつて売買の目的とされた権利が当然に買主に移転するものと解すべき根拠もない。また、権利者は、その権利により、相続人として承継した売主の履行義務を直ちに履行することができるが、他面において、権利者としてその権利の移転につき諾否の自由を保有しているのであつて、それが相続による売主の義務の承継という偶然の事由によつて左右されるべき理由はなく、また権利者がその権利の移転を拒否したからといつて買主が不測の不利益を受けるというわけでもない。それゆえ、権利者は、相続によつて売主の義務ないし地位を承継しても、相続前と同様その権利の移転につき諾否の自由を保有し、信義則に反すると認められるような特別の事情のないかぎり、右売買契約上の売主としての履行義務を拒否することができるものと解するのが、相当である。」「このことは、もつぱら他人に属する権利を売買の目的とした売主を権利者が相続した場合のみでなく、売主がその相続人たるべき者と共有している権利を売買の目的とし、その後相続が生じた場合においても同様であると解される。」最判昭和49年9月4日民集28巻6号1169頁



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