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2019-04-12(Fri)

【事例から民法を考える】事例⑰「親亀こけたら皆こけた♪」

本日2問目は,事例⑰です。

ひどいタイトルですね。

≪問題≫

●事例
 会社員Aは,自己所有地上に賃貸用建物を建築してアパート経営をするために,平成20年3月20日に建設業者Bと2階建ての鉄骨住宅を建築する工事の請負契約を締結した(以下,「甲契約」という)。甲契約では,竣工時期は同年8月25日,請負代金は3000万円とされ,代金の支払時期は着工時に200万円,同年6月20日に300万円,上棟時1000万円,以後随時出来高払をすることとされていた。また,建築に必要な資材はBが調達することとされていた。
 Bは,同年3月25日,建築業者Cにこの工事を一括して2400万円で請け負わせた。B・C間の契約(以下,「乙契約」という)では,Bは出来高に応じて請負代金を分割して支払うこととされ,建築に必要な資材はCが調達することとされていた。
 Cは直ちに工事に着手し,同年6月末日の時点では,基礎工事が完了し,鉄骨構造が完成していたが,屋根や外壁は完成していない状況であった(以下,「本件出来形部分」という)。これは,Cが請け負った工事の30%に相当し,本件出来形部分の価額は900万円である。
 ところが,同年6月末日にBが倒産した。Bは,それまでにAから合計1500万円の支払を受けていたものの,CからBに対しては一切の支払がなされていない。そのため,Cは工事を中断したうえで,Aに対して,AがCに対して直接発注するなら工事を続行する意思がある旨を伝えた。Aは,BがCに対して一括下請をしていたことをこのとき初めて知って驚いたが,工事を実際に行っていたCが工事を続行するのが最も簡便であると考えて,甲契約を解除するとともに(なお,甲契約には,甲契約が解除された場合には工事の出来形部分の所有権は注文者に帰属する旨の条項があった),Cと工事続行について協議を始めた。しかし,工事代金の額についてA・C間で合意に達することができず,結局,同年8月上旬,Aは別の建設業者Dとの間で,代金2000万円,竣工時期同年10月25日の約定で,本件出来形部分をもとに建物を完成させる旨の契約を締結した(以下,「丙契約」という)。Dは,丙契約に従って,同年8月下旬には屋根と外壁を完成させ,同年10月25日には予定どおり工事を完成させるとともに代金全額の支払を受けて建物をAに引き渡し,Aは本件建物につき所有権保存登記をした。この完成建物の価額は,2400万円となっている。

【設問1】 Cは,本件建物(完成建物)の所有権が自己に帰属すると主張して,Aに対して平成20年10月25日以降現在までの本件建物の賃料相当額の支払を求めることができるかどうか論じなさい。

【設問2】 Cは,AまたはDに対して本件出来形部分の所有権に相当する額(900万円)の支払を求めることができるかどうか論じなさい。


下請負人との法律関係です。

ローの授業でも割と厚く扱われていた気がします。

下請負人という文字を読んだ瞬間に,

親亀子亀が連想されるくらいにはなっています。

≪答案≫
第1 設問1
 1 CはAに対して本件建物の所有権を理由とする不当利得(民法703条)に基づく利得金返還請求権又は所有権侵害を理由とする不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求権として,本件建物の賃料相当額の支払を請求しているものと考えられる。いずれにしても,Cに本件建物の所有権が認められなければ,主張は認められない。そこで,Cが本件建物の所有権を有しているかどうかについて検討する。
 2⑴ Cが本件建物の所有権を取得するには,その前提として,本件出来形部分についての所有権を取得している必要がある。建物建築請負契約における完成建物の所有権の帰属は,建物の建築のための材料の主要部分を提供した者にある。なぜならば,目的物の引渡しと代金の支払は同時履行の関係にあるものの(同法633条),請負人の仕事完成義務は,注文者の代金支払義務よりも先履行とならざるを得ないから,請負人は代金債権回収において危険な地位におかれているため,これを担保する必要があるためである。
 これを本件についてみると,本件建物の建築に必要な資材はCが調達することとされており,本件出来形部分まではCの調達した資材によって建築されているのであるから,Cは材料の主要部分を提供した者として本件出来形部分の所有者となり得る地位にある。
  ⑵ もっとも,甲契約においては,甲契約が解除された場合には工事の出来形部分の所有権は注文者に帰属する旨の条項があるところ,Aは甲契約を解除しているから,本件出来形の所有権はAに帰属しているようにも思える。もっとも,甲契約の当事者はA及びBであって,Cにおいては甲契約と別個のBとの間における乙契約が締結されているにすぎないのであるから,甲契約の特約によってCを拘束することができないようにも思える。
 そこでこの点について検討すると,下請負契約は,その性質上,元請負契約の存在があって初めて成立するものであるから,下請負人は注文者との関係では元請負人の履行補助者的立場にあるにすぎず,下請負人が下請であることを認識して契約関係に入っているのであれば,元請負契約と下請負契約とは密接相互に関連する複合契約を構成する。したがって,この場合には,下請負人は,元請負契約にも拘束されることになる。このように考えても,下請負人の債権確保は本来元請負人の資力に依存するものであり,下請負人の請負代金債権は元請負人に対するものであって,注文者とはかかわりがなく,元請負人の資力を見誤った下請負人を注文者の二重払いの犠牲の下で保護するのは妥当ではないため,下請負人の債権確保との関係で問題となるものではない。
 これを本件についてみると,甲契約には前記の通り,甲契約を解除した場合には出来形の所有権はAに帰属するとの定めがあるところ,Cは下請負契約であることを認識してBとの契約関係に入っているもののと考えられるから,甲契約と乙契約とは複合契約として扱われ,Cは甲契約上の特約に拘束されることとなる。したがって,AはCとの関係でも,本件出来形部分の所有権を主張することができる。
 3 よって,Cは本件出来形部分の所有権を主張することができないから,本件建物の所有権も主張することができない。以上から,CはAに対して,本件建物の賃料相当額の支払を請求をすることができない。
第2 設問2
 1 Cの主張は,本件出来形部分の所有権が,その後のDの工事による加工(同法246条1項)のため喪失したとして,償金請求(同法248条)をするものと考えられる。
 2⑴ まず,この請求がAとの関係で認められるかどうかについて,民法703条の要件充足性を検討する。
  ⑵ア Aは本件出来形部分を基礎にした本件建物を取得しているから「他人の財産又は労務によって利益を受け」ている。
   イ Cは本件出来形部分についての対価を支払われていないため「損失」を生じている。
   ウ Aが取得した本件建物の基礎となった本件出来形部分は,Cが自己で調達した資材等を利用して建築したものであるから,前記「利益」と「損失」との間には,社会通念上の連結関係があると認められ,因果関係を肯定することができる。
   エ それでは,Aは「法律上の原因なく」前記「利益」を取得したといえるか。AとCとの間には直接の契約関係がなく,利益の移転も直接的にあったものとも認められないため,このようなAに対しても利得の返還を請求することができるかどうかについて検討する。
 「法律上の原因なく」とは,当事者間の公平を図る趣旨に出たものと考えられるが,第三債務者に対して不当利得返還請求をする場合には,第三債務者を二重弁済を強いることとなる危険性があるため,限定的に考えるべきである。したがって,第三債務者に対する不当利得返還請求をする場合には,契約全体をみたときに第三債務者が対価関係なしに利益を受けたときに限り,「法律上の原因」がないというべきである。
 しかし,本件では,Aは本件出来形部分の対価を既にBに支払っているから,Aは本件建物のうち本件出来形部分に相当する部分を対価関係なしに取得したということはできない。したがって,「法律上の原因」があるというべきである。
  ⑶ よって,CはAに対して償金請求をすることができない。
 3⑴ 次に,この請求がDとの関係で認められるかどうかについて検討する。
  ⑵ Dは本件出来形部分を基礎として工事を行ったことにより本件建物を完成させている。AD間で特約がない場合には,本件建物の所有権は,一旦Dに帰属することになるから,これをもってDには「利益」があったとも考えられる。
 しかし,Dは,本件建物をその後にAに取得させているのであり,Dが所有権を取得するのは,DのAに対する請負代金債権を確保するための技巧的な手段にすぎない。また,Dは,本件出来形部分に関する対価支払を受けていない。そうすると,Dからすれば,本件出来形部分はいわば押し付けられた利得というべきであり,当事者間の公平を図るという不当利得法の趣旨からみて「利益」にあたらないというべきである。
  ⑶ よって,CはDに対して償金請求をすることができない。

以 上



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