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2019-04-10(Wed)

【事例から民法を考える】事例㉓「同じ兄弟なのに……」

なぜか,FC2のログインが昨日からうまくいかず,

ようやく復旧しました。

昨日書いたじれかん事例㉒の記事ですが,

せっかく答案も書き上げたのに,

全部きれいさっぱりなくなってしまいました。

悲しいですね。

でも,復習がてら,もう一度答案を書きます。

その前に,先に事例㉓を解いておきます。

≪問題≫

●事例
Aには実子B,C,Dがいる。
Aは,L県M市に建物甲及びその敷地乙,N県O町に別荘地として取得した土地丙を所有し,甲,乙,丙各不動産の登記名義人であった。Aは1985年に配偶者を亡くし,それ以降は,D,Dの妻E,D・Eの子Fと建物甲に居住していた。
Aは1989年10月,自筆証書により,「丙をCに相続させる」旨の遺言(第1遺言)をした。その後,Aは,1993年1月に成人したFと養子縁組をし,1993年2月に,公正証書により「甲,乙,丙をFに相続させる」旨の遺言(第2遺言)をした。第2遺言に遺言執行者の指定はなかった。
Aは,2003年1月22日に死亡した。Aには,甲,乙,丙以外に相続財産(積極財産,消極財産)はない。
 この場合について,以下の設問に答えなさい(設問はそれぞれ独立の問いである)。

【設問1】 Fは第2遺言に基づいて甲,乙,丙について,自己名義の所有権移転登記を取得した。これにより第2遺言の存在を初めて知ったB及びCは,甲,乙,丙をFが取得することに不満を抱き,「Aの生前にAがDらと共に居住していた建物甲及びその敷地乙をDの家族が取得することはともかく,土地丙までD家族のものになるのは納得がいかない。土地丙は自分たちが相続したい。そもそも,第2遺言の直前にAがFと養子縁組をしているのはAの財産をD一家に取得させ,B,Cの相続分を減らすためであって不当だ」と主張している。
D,E,Fは現在建物甲に住み続けているが,Fは喘息を患っているため,Aの死亡を機に,自然環境の豊かなN県O町にある土地丙に新居を建築して転居することを考えている。
A死亡時の甲,乙,丙の時価はそれぞれ1200万円,2000万円,800万円であるものとする。
B及びCの主張を実現するための手段について,検討しなさい。

【設問2】 Bの債権者Gは2003年3月,Bに代位してBが法定相続分により甲,乙,丙を相続した旨の登記をしたうえで甲,乙,丙上のBの持分の仮差押えを申し立てた。Fは,Gの仮差押えは自己の財産に対する不当なものであると考えている。FはGの仮差押えの執行を排除することができるか。


「相続させる」趣旨の遺言ですね。

短答とかではよく聞かれますし,

ワンチャン論文でもあり得そうですね。

≪答案≫
第1 設問1
 1 B及びCは,丙土地を取得することを希望している。この点,第1遺言には「丙をCに相続させる」との記載があるが,第2遺言には「丙をFに相続させる」との記載があるため,丙の取扱いについて第1遺言と第2遺言とで抵触していることになる。したがって,丙に関する部分は,前の遺言である第1遺言が撤回されたものとみなされ(民法1023条1項),第2遺言に従うこととなる。
 2 そこで,第2遺言の「丙をFに相続させる」の記載の持つ意味について検討する。
 遺言の解釈においては遺言者の意思を尊重するために,合理的にその趣旨を解釈すべきである。遺言者は,各相続人との関係にあっては,その者と各相続人との身分関係及び生活関係等諸般の事情を考慮して遺言をするのであって,遺言書において特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言書の意思が表明されている場合,当該相続人も当該遺産を他の共同相続人と共に当然相続する地位にあることにかんがみれば,遺言者の意思は,当該遺産を当該相続人をして,単独で相続させようとする趣旨のものと考えるのが合理的である。そうすると,「相続させる」趣旨の遺言は,民法908条にいう遺産の分割の方法を定めた遺言であるというべきである(※1)
 本件でも,第2遺言は,「丙をFに相続させる」というものであり,民法908条にいう遺産の分割の方法を定めた遺言であると考えられる。
 3 第2遺言の「丙をFに相続させる」との記載が遺産分割の方法の指定である場合には本来は相続承継の中で,遺産共有状態を経て遺産分割が行われて財産が承継されることを前提とするが,遺言によって遺産分割の方法が指定された場合には,他の共同相続人も当該遺言に拘束され,これと異なる遺産分割の協議,審判をなし得ない。したがって,このような遺言にあっては,当該遺言において相続による承継を当該相続人の受諾の意思表示にかからせたなどの特段の事情のない限り,何らの行為を要せずして,被相続人の死亡の時に直ちに当該遺産が当該相続人に相続により承継されるものと考える(※2)
 本件でも,第2遺言の「丙をFに相続させる」との記載があり,相続による承継をFの受諾の意思表示にかからせたなどの特段の事情はないのであるから,何らの行為を要せずして,Aの死亡の時に直ちに丙がFに相続により承継される。
 4 そうすると,B及びCが,丙を取り戻す手段としては,遺留分減殺請求権(同法1031条)を行使することが考えられる。
  ⑴ B,C及びDは,Aの子であるから,Aの相続人であり(同法887条1項),遺留分を有する(同法1028条2号)。また,FもAと養子縁組(同法792条)をしたことにより,Aの嫡出子としての身分を取得するため(同法809条),相続人としての地位を有するから,B,C及びDと同様に遺留分を有する。したがって,それぞれの遺留分は,Aが死亡時に有していた甲,乙及び丙の時価を足し合わせた4000万円の1/2についてそれぞれの相続分(同法900条4号)である1/4を掛け合わせた500万円となる。
  ⑵ ここで,B及びCは,第2遺言の直前になされたAとFとの養子縁組が不当であると主張している。その趣旨は,AがFと養子縁組をしたのは,死亡時にできるだけ財産をDの一家に取得させようという相続対策のためであって,養親と養子としての親子関係を真に設定する意思がないというものである。
 普通養子縁組においても,縁組意思が必要であり,その内容は,当事者間に社会観念上親子であると認められる関係の設定を欲する意思の合致である。もっとも,我が国では,養子縁組は,当事者間に社会観念上での親子関係といえるほどの共同生活や養育の事実,精神的な関係を形成する意思を必ずしも伴わない多様な目的のために行われている。そこで,多様な目的の縁組が直ちに無効であるとされるのは不当である。
 本件でも,AとFとは相続対策の目的で養子縁組がされたとしても,そのことから直ちに縁組意思が欠けるとしてようしえんぐみを無効とするべきではない。
  ⑶ そこで,B及びCが遺留分減殺請求権の行使により丙を取り戻すことができるかについて検討すると,複数の遺贈が存するときには,各遺贈は,遺言に別段の定めがない限り,減殺の対象として同順位とされ,減殺は目的物の価額を按分して行われる(同法1034条)。したがって,本件では,甲,乙及び丙の価額の割合は,3:5:2であるから,B及びCは甲につき150万円,乙につき250万円,丙につき100万円の減殺額につき遺留分減殺請求権を行使することになる。
 Fが価額弁償を選ばなかったときには,遺留分減殺請求の結果,甲,乙及び丙の各不動産は,FとB,Cとの物権的な共有状態となる。B及びCが分割を希望するときには,共有物分割(同法256条1項)を求めることとなる。
 Fが価額弁償を選んだときには,Fはどの財産を現物返還し,どの財産を価額弁償するかを自由に決めることができる(※3)。そして,Fは療養のため,丙への移住を考えているのであるから,甲,乙を現物返還とする可能性が高い。
 したがって,いずれにしても,B及びCは,丙を取り戻すことはできないものと考えられる。
第2 設問2
 第2遺言により,甲,乙及び丙がFに承継されることを前提とすると,Gがこれらの不動産について仮差押えを申し立てた場合には,第三者異議の訴え(民執法38条)によって仮差押えの執行を排除することが考えられる。
 Gとしては,自己が前記不動産について「第三者」にあたるから,登記がなければFは仮差押えに対抗することはできないとの主張を行うことが想定される。
 そこで,この点について検討すると,前記のように,「相続させる」趣旨の遺言は,特段の事情がない限り,何らの行為を要せずに,被相続人の死亡の時に直ちに当該遺産が当該相続人に相続により承継される。そうすると,「相続させる」趣旨の遺言による権利の移転は,法定相続分又は指定相続分の相続の場合と本質的に異ならない。そして,法定相続分又は指定相続分の相続による不動産の権利の取得については,登記なくしてその権利を第三者に対抗することができる。したがって,「相続させる」趣旨の遺言による権利の移転は,登記なくして第三者に対抗することができる(※4)(※5)
 そうすると,本件でも,甲,乙及び丙のFへの承継は,登記なくしてGに対抗することができる。したがって,Fの第三者異議の訴えは認められる。

以 上


(※1)「被相続人の遺産の承継関係に関する遺言については、遺言書において表明されている遺言者の意思を尊重して合理的にその趣旨を解釈すべきものであるところ、遺言者は、各相続人との関係にあっては、その者と各相続人との身分関係及び生活関係、各相続人の現在及び将来の生活状況及び資力その他の経済関係、特定の不動産その他の遺産についての特定の相続人のかかわりあいの関係等各般の事情を配慮して遺言をするのであるから、遺言書において特定の遺産を特定の相続人に『相続させる』趣旨の遺言者の意思が表明されている場合、当該相続人も当該遺産を他の共同相続人と共にではあるが当然相続する地位にあることにかんがみれば、遺言者の意思は、右の各般の事情を配慮して、当該遺産を当該相続人をして、他の共同相続人と共にではなくして、単独で相続させようとする趣旨のものと解するのが当然の合理的な意思解釈というべきであり、遺言書の記載から、その趣旨が遺贈であることが明らかであるか又は遺贈と解すべき特段の事情がない限り、遺贈と解すべきではない。そして、右の『相続させる』趣旨の遺言、すなわち、特定の遺産を特定の相続人に単独で相続により承継させようとする遺言は、前記の各般の事情を配慮しての被相続人の意思として当然あり得る合理的な遺産の分割の方法を定めるものであって、民法908条において被相続人が遺言で遺産の分割の方法を定めることができるとしているのも、遺産の分割の方法として、このような特定の遺産を特定の相続人に単独で相続により承継させることをも遺言で定めることを可能にするために外ならない。したがって、右の『相続させる』趣旨の遺言は、正に同条にいう遺産の分割の方法を定めた遺言であ[る。]」」最判平成3年4月19日民集45巻4号477頁
(※2)他の共同相続人も右の遺言に拘束され、これと異なる遺産分割の協議、さらには審判もなし得ないのであるから、このような遺言にあっては、遺言者の意思に合致するものとして、遺産の一部である当該遺産を当該相続人に帰属させる遺産の一部の分割がなされたのと同様の遺産の承継関係を生ぜしめるものであり、当該遺言において相続による承継を当該相続人の受諾の意思表示にかからせたなどの特段の事情のない限り、何らの行為を要せずして、被相続人の死亡の時(遺言の効力の生じた時)に直ちに当該遺産が当該相続人に相続により承継されるものと解すべきである。そしてその場合、遺産分割の協議又は審判においては、当該遺産の承継を参酌して残余の遺産の分割がされることはいうまでもないとしても、当該遺産については、右の協議又は審判を経る余地はないものというべきである。」前掲最判平成3年4月19日
(※3)「受贈者又は受遺者は、民法1041条1項に基づき、減殺された贈与又は遺贈の目的たる各個の財産について、価額を弁償して、その返還義務を免れることができるものと解すべきである。」「なぜならば、遺留分権利者のする返還請求は権利の対象たる各財産について観念されるのであるから、その返還義務を免れるための価額の弁償も返還請求に係る各個の財産についてなし得るものというべきであり、また、遺留分は遺留分算定の基礎となる財産の一定割合を示すものであり、遺留分権利者が特定の財産を取得することが保障されているものではなく(民法1028条ないし1035条参照)、受贈者又は受遺者は、当該財産の価額の弁償を現実に履行するか又はその履行の提供をしなければ、遺留分権利者からの返還請求を拒み得ないのであるから……、右のように解したとしても、遺留分権利者の権利を害することにはならないからである。このことは、遺留分減殺の目的がそれぞれ異なる者に贈与又は遺贈された複数の財産である場合には、各受贈者又は各受遺者は各別に各財産について価額の弁償をすることができることからも肯認できるところである。そして、相続財産全部の包括遺贈の場合であっても、個々の財産についてみれば特定遺贈とその性質を異にするものではないから……、右に説示したことが妥当するのである。」最判平成12年7月11日民集54巻6号1886頁
(※4)「相続財産に属する不動産につき単独所有権移転の登記をした共同相続人中の乙ならびに乙から単独所有権移転の登記をうけた第三取得者丙に対し、他の共同相続人甲は自己の持分を登記なくして対抗しうるものと解すべきである。けだし乙の登記は甲の持分に関する限り無権利の登記であり、登記に公信力なき結果丙も甲の持分に関する限りその権利を取得するに由ないからである」最判昭和38年2月22日民集17巻1号235頁
(※5)「特定の遺産を特定の相続人に『相続させる』趣旨の遺言は,特段の事情のない限り,何らの行為を要せずに,被相続人の死亡の時に直ちに当該遺産が当該相続人に相続により承継される……。このように,『相続させる』趣旨の遺言による権利の移転は,法定相続分又は指定相続分の相続の場合と本質において異なるところはない。そして,法定相続分又は指定相続分の相続による不動産の権利の取得については,登記なくしてその権利を第三者に対抗することができる……。したがって,本件において,被上告人は,本件遺言によって取得した不動産又は共有持分権を,登記なくして上告人らに対抗することができる。」最判平成14年6月10日家月55巻1号77頁



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