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2019-04-09(Tue)

【事例から民法を考える】事例㉒「あなたを当てにしていました」

事例㉓の記事の方でも書きましたが,

この記事,なぜか一回全部消えてるんですよね。

ほんとに腹が立ちますよね。

1から書き直す側の気持ちも考えて欲しいですね。

ところで,今回は,事例㉒です。

≪問題≫

●事例
 食肉卸売を営むA会社は,2005年6月15日に,加工食品を製造販売するB会社との間で,継続的に加工食品の材料となる食肉を供給する契約を締結した。Aは,この契約に基づいてBに食肉を売却して取得する売掛代金債権およびその遅延損害金等を担保するために,Bの経営者であるCとの間で,極度額を500万円として,CがBの連帯保証人となる旨の契約を締結し,契約書を取り交わした。Bは,Cが加工食品を自宅付属の店舗で販売するために起こした企業であり,E(Cとその妻Dとの間の子)が店舗での販売や配達業務などを手伝っていた。CとDとの間には,Eの他に子Fがおり,Fは2007年9月以来海外留学中である。Fは留学に際して,Cから経済的援助を得ている。
 2010年11月18日にCが急逝し,EがBの経営を引き継いだ。Cの生前にはBの経営は順調だったが,Cの死後,その経営状態は悪化し,BのAに対する売掛代金債務の弁済も滞るようになり,C死亡時に60万円だった未払債務の額は,現在(2011年8月)までに300万円となっている。
 Cは遺言を残しておらず,Cの相続人はD,E,F(相続分はそれぞれ1/2,1/4,1/4)である。
 この場合について,以下の設問に答えなさい(設問はそれぞれ独立した問いである)。

【設問1】 Cが死亡した後,DはCの居室を整理し,Cが収集していた古民芸品の一部をFに送り,残りを廃棄した。他方で,FはBの経営状態やCの負債について何も知らなかったため,Cの相続について不安を抱き,D,Eと相談をした結果,DおよびFは2011年3月6日に相続放棄をした。この場合に,AがD・E・Fに対して300万円の支払を請求してきた。D・E・Fはそれぞれ拒むことができるか。

【設問2】 D・E・FはCの相続について放棄または限定承認をせず,2011年8月に,遺産分割協議を行い,Cの所有していた自宅およびその敷地たる宅地をそれぞれDとEが各1/2の持分により取得することとした。Cにはほかに相続財産はない。Fには留学中の学費を賄う程度のアルバイト収入があるだけで,資産はないことから,Aは,Fに相続財産を取得させないこの遺産分割協議は,Aの債権回収を困難にするものだと考えている。この場合に,Aはこの遺産分割協議を詐害行為であるとして取消しできるか。


相続の一身専属性とか,

遺産分割協議の詐害行為取消とか。

後者はちょいちょい見る論点ですが,

前者は全然知らんですね。

連帯根保証契約とか初めて聞きました。

根保証は短答で毎回苦しめられるイメージしかないです。

≪答案≫
第1 設問1
 1 AがD,E及びFに対して300万円の支払を請求しているのは,AがCに対して保証契約に基づく保証債務履行請求権を有していたところ,Bが死亡したため,Bの配偶者であるD並びにその子であるE及びF(以下,D,E及びFをまとめて「Dら」という。)が前記保証債務履行請求権に係る保証債務(以下「本件保証債務」という。)を承継しているとして(民法882条,887条1項,890条,896条本文),その債務の履行を求めるものであると考えられる。
 2 これに対して,D及びFは,相続放棄をしているから,本件保証債務を負わないと反論することが想定される。
 もっとも,DはCの死亡後にCが収集していた古民芸品(以下「本件古民芸品」という。)をFに送るなどしているから,これをもって法定単純承認(同法921条1号本文)をしたものとされないかが問題となる。しかし,単純承認が擬制されれば,相続人は被相続人の債務を限定的な責任ではなく承継するという重大な効果がもちらされるから,処分の意味は相続人に不意打ち的な効果をもちらさないよう,厳格に解釈されるべきである。そうすると,本件でも,Dが本件古民芸品をFに送ったことは,形式的には処分にあたるが,本件古民芸品の財産的価値が著しく高いといった事情ない限り,「処分」には該当しないというべきである。
 しかしながら,D及びFは,Aが死亡した時から3か月以上が経過した時点で相続放棄をしている。D及びFにとって,相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難であって,相続財産が全く存在しないと信ずるについて相当な理由があったものとは認められないから(※1),D及びFは同時点で相続放棄をすることができない(同法915条1項本文)。
 したがって,D及びFの上記反論は認められない。
 3 そうであるとしても,Dらは,本件保証債務は,連帯根保証債務であるから,その責任の及ぶ範囲が広範であり,当事者の人的信用関係を基礎とするものであるから,「被相続人の一身に専属したもの」であり承継しないとの反論をすることが想定される(※2)
 しかし,一身専属性の判断は,ある権利義務を相続人に相続させるのが妥当ではないことを意味する評価的なものである。そして,極度額の定めがあれば責任の限度額は明らかである上,相続人は放棄または限定承認を選択することができることから,保証債務の一身専属性の判断にあたっては,責任の限度が予測可能かどうかが重視されるべきである。
 本件保証債務は,極度額が500万円との定めがあるため,Dらにとってその責任の範囲が予測可能である。したがって,これをDらに相続させても不当であるということはできず,一身専属性を有しない債務であるというべきである。
 よって,Dらの上記反論は認められない。
 4 そうすると,Dらは本件保証債務を承継することとなり,これを拒むことはできない。本件保証債務は金銭債務であって,可分債務であるから,Dらはその相続分に応じて承継することとなり,Dは150万円,E及びFはそれぞれ75万円を負担する。
第2 設問2
 1 Dらが行った遺産分割協議(以下「本件遺産分割協議」という。)が詐害行為であるとして取り消すことができるか,その要件(同法424条)の充足性について検討する。
 2⑴ Dらとしては,本件遺産分割協議は,相続に関連する身分行為であるから,「財産権を目的としない法律行為」(同条2項)であって,詐害行為取消権行使の対象とならないと反論をすることが想定される。
 しかし,遺産分割協議は,相続の開始によって共同相続人の共有となった相続財産について,その全部又は一部を,各相続人の単独所有とし,又は新たな共有関係に移行させることによって,相続財産の帰属を確定させるものである。したがって,遺産分割協議は,財産権を目的とする法律行為であるというべきである(※3)
 そうすると,本件遺産分割協議も,財産権を目的とする法律行為であるから,Dらの上記反論は認められない。
  ⑵ 被保全債権となる前記保証債務履行請求権は金銭債権であり,本件遺産分割協議の前に成立したものである。
 もっとも,遺産分割協議は,遺産に属する物又は権利の種類及び性質等を考慮してなされるものである上(同法906条),特定の相続人に財産が割り当てられたのが,当該相続人のなした寄与または他の相続人が得た特別受益を考慮した結果である場合や,対象となる相続財産が居宅であるなど相続人の生活上の利益に密接に関わるため,相続人の生活の状況や身心の状態を考慮してなされた場合などの事情があるときは,詐害性が認められない。
 これを本件遺産分割協議についてみると,Dらの遺産共有状態からの変更を捉えれば,本件遺産分割協議のFの取り分がなくなり,Eが法定相続分よりも多い1/2の持分の相続財産を取得しているため,詐害行為であるとも思える。しかし,EがCの生前に留学に対する資金援助を受けていることが特別受益(同法903条)に当たる可能性がある。また,D及びEが相続財産たる自宅に同居しているような事情がある場合には,D及びEが自宅及びその敷地を取得する形で遺産分割協議を行うことが合理的である。そして,Dらには,専ら本件保証債務を免れるために本件遺産分割協議がされたというような事情はない。したがって,本件遺産分割協議には,未だ詐害性が認められず,詐害行為であるということはできない。
 3 よって,Aは本件遺産分割協議を詐害行為として取り消すことはできない。

以 上


(※1)「民法915条1項本文が相続人に対し単純承認若しくは限定承認又は放棄をするについて3か月の期間(以下『熟慮期間』という。)を許与しているのは、相続人が、相続開始の原因たる事実及びこれにより自己が法律上相続人となつた事実を知つた場合には、通常、右各事実を知つた時から3か月以内に、調査すること等によつて、相続すべき積極及び消極の財産(以下『相続財産』という。)の有無、その状況等を認識し又は認識することができ、したがつて単純承認若しくは限定承認又は放棄のいずれかを選択すべき前提条件が具備されるとの考えに基づいているのであるから、熟慮期間は、原則として、相続人が前記の各事実を知つた時から起算すべきものであるが、相続人が、右各事実を知つた場合であつても、右各事実を知つた時から3か月以内に限定承認又は相続放棄をしなかつたのが、被相続人に相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、被相続人の生活歴、被相続人と相続人との間の交際状態その他諸般の状況からみて当該相続人に対し相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があつて、相続人において右のように信ずるについて相当な理由があると認められるときには、相続人が前記の各事実を知つた時から熟慮期間を起算すべきであるとすることは相当でないものというべきであり、熟慮期間は相続人が相続財産の全部又は一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべき時から起算すべきものと解するのが相当である。」
(※2)「継続的取引について将来負担することがあるべき債務についてした責任の限度額ならびに期間について定めのない連帯保証契約においては,特定の債務についてした通常の連帯保証の場合と異なり,その責任の及ぶ範囲が極めて広汎となり,一に契約締結の当事者の人的信用関係を基礎とするものであるから,かかる保証人たる地位は,特段の事由のないかぎり,当事者その人と終始するものであって,連帯保証人の死亡後生じた主債務については,その相続人においてこれが保証債務を承継負担するものではないと解するを相当とする。」最判昭和37年11月9日民集16巻11号2270頁
(※3)「共同相続人の間で成立した遺産分割協議は、詐害行為取消権行使の対象となり得るものと解するのが相当である。けだし、遺産分割協議は、相続の開始によって共同相続人の共有となった相続財産について、その全部又は一部を、各相続人の単独所有とし、又は新たな共有関係に移行させることによって、相続財産の帰属を確定させるものであり、その性質上、財産権を目的とする法律行為であるということができるからである。」最判平成11年6月11日民集53巻5号898頁



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