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2019-04-05(Fri)

【基礎演習民事訴訟法】問題28「審判権の限界」

当ブログの記事数もやっと300に達した模様です。

記事番号だけなら,少し前に300を超えていますが,

どうやら昔に記事の削除とかやったっぽいです。

何の記事を消したんですかね。

さっぱり覚えてないです。

ところで,今回は,基礎演習の28問目です。

≪問題≫

 X寺は,宗派Aに属する宗教法人である(AはXを包括する宗教法人)。X寺の住職Y(法人規則により住職=法人の代表役員)は,Aから懲戒処分を受け,住職を辞めさせられたのだが,寺に住んで相変わらずの生活を続けており,全く出て行く気配がない。そこで,Xは新しい住職=代表役員b)をすえて,Yに対し,所有権に基づく寺院建物の明渡請求訴訟を提起した。
 これに対し,Yは,「自分が現在も住職で代表役員であり,寺を占有する権限がある。Yを懲戒処分にしたというのは,宗教法人Aの代表者を名乗るaという人物であるが,この者は前任者から宗教上の秘伝を授かっておらず,真の代表者ではないで懲戒権限がない」として懲戒処分の無効を主張している。そして自らも,Yが住職であり代表役員としての地位にあることの確認を求める反訴を提起した。
〔設問〕
 両者の訴えは,法を適用して調整するにふさわしい「法律上の争訟(裁判所法3条)」にあたるか。それぞれにつき訴えの利益はあるか。それぞれの請求につき本案判決を下すべきか。


法律上の争訟……

予備の憲法で出たわ……

ちょっと目まいが……

≪答案≫
1 XのYに対する所有権に基づく返還請求権としての寺院建物明渡請求訴訟(以下「本件本訴」という。)及びYのXに対する住職であり代表役員としての地位にあることの確認請求訴訟(以下「本件反訴」という。)は,民事訴訟の対象となる「法律上の争訟」(裁判所法3条1項)にあたるか。
2 司法権(憲法76条1項)は,具体的な争訟について法を適用し宣言することによってこれを裁定する国家の作用である。したがって,その対象となる「法律上の争訟」とは,当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって,法令の適用によって終局的に解決できるものをいう(※1)(※2)。この点,宗教団体における宗教上の教義,進行に関する事項については,憲法上国の干渉からの事由が保障されているのであるから,裁判所はこれらの事項にかかわる紛議について厳に中立を保つべきである。そうすると,当事者間の具体的な権利に関する訴訟であっても,宗教団体内部においてされた懲戒処分の効力が請求の当否を決する前提問題となっており,その効力の有無が当事者間の紛争の本質的争点をなすとともに,それが宗教上の教義,信仰の内容に深くかかわっているため,当該狭義,信仰の内容に立ち入ることなくしてその効力の有無を判断することができず,しかも,その判断が訴訟の帰趨を左右する必要不可欠のものである場合には,当該訴訟は,その実質において法令の適用による終局的解決に適しないものとして,「法律上の争訟」に当たらない(※3)
3⑴ これを本件本訴についてみると,Xの寺院の所有権に基づいて寺院建物の明渡を求めるものであり,具体的な権利の存否に関する紛争である。しかし,本件本訴の請求原因事実は,Xが寺院建物を所有していることと,Yが寺院建物を占有していることであるが,これに対してYは,懲戒権限がないaによる懲戒処分が無効であることから,寺院の占有権原が失われていないとの反論を行っている。そうすると,Yの正当占有権原の抗弁を審理する上では,aの処分権限の存否について審理しなければならないところ,ここではaが前任者から宗教上の秘伝を授かっているか否かについても立ち入らなければならない。このような事実関係の下では,aが宗教上の秘伝を授かっているか否かという宗教上の教義の内容と深くかかわる懲戒処分の効力の有無が当事者間の紛争の本質的争点をなしており,その判断が訴訟の帰趨を左右する必要不可欠のものであると認められる。したがって,本件本訴は,法令の適用による終局的解決に適しないものであるから,「法律上の争訟」にあたらない。
 ⑵ 次に本件反訴についてみると,Yが住職であり代表役員の地位にあることは,宗教法人法に定める法律上の地位についての確認を求めるものであり,当事者間の具体的な法律関係の存否に関する紛争である。しかし,Yのこれらの地位は,aによる懲戒処分が有効であるか否かの判断によって左右される関係にある。したがって,本件本訴と同様に,aが宗教上の秘伝を授かっているか否かという宗教上の教義の内容と深くかかわる懲戒処分の効力の有無が当事者間の紛争の本質的争点をなしており,その判断が訴訟の帰趨を左右する必要不可欠なものであると認められる。したがって,本件反訴は,法令の適用による終局的解決に適しないものであるから,「法律上の争訟」にあたらない。
4 したがって,裁判所は,いずれの訴訟についても却下すべきである。
 なお,このような場合にも,宗教上の教義について裁判所が判断することができないことから,主張立証責任が果たせていないと評価するにとどめて,本案判決をすべきであるとする見解もあるが,これは主張立証できない事項について主張立証責任を課すことになり,妥当でない。
 また,裁判所は,宗教団体が自律的に決めた結果を受容して処分権限を認め,認容判決をすべきであるとする見解もあるが,この場合には,相手方は公序良俗違反を理由とする以外ほとんど反論を差し挟む余地がないのであるから,宗教団体の一方的な主張を容れるに等しくなり,妥当ではない。

以 上


(※1)「裁判所がその固有の権限に基づいて審判することのできる対象は、裁判所法3条にいう『法律上の争訟』、すなわち当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって、かつ、法令の適用により終局的に解決することができるものに限られ、したがって、具体的な権利義務ないし法律関係に関する紛争であっても、法令の適用により解決するに適しないものは、裁判所の審判の対象となり得ないというべきである」最判平成元年9月8日民集43巻8号889頁
(※2)「司法権の内容については,一般に,具体的な争訟について,法を適用し,宣言することによって,これを裁定する国家の作用である,といった定義がされる。これには,民事訴訟(行政訴訟を含む),刑事訴訟の裁判をする権限が含まれ,裁判所法は,このことを,一切の法律上の争訟を裁判する権限と表現している(裁3条1項)。したがって,法律に別段の定めがないかぎり,法律上の争訟に該当しない事件については,裁判所の審判権は認められず,裁判所は,訴えを却下しなければならない。」「判例によれば,法律上の争訟とは,①当事者間のぐたいてきな権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって,②法令の適用によって終局的に解決できるものでなければならない(最判昭和28・11・17行裁集4巻11号2760頁)。したがって,当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係とは無関係に,抽象的に法令の解釈や有効性について争うことは,①の要件を欠き,審判権の対象とならない(最大判昭和27・10・8民集6巻9号783頁)。また,単なる事実の存否や,学問上の見解の当否などについての争いは,②の要件を欠くことから,法律上の争訟に当たらないとされる。」三木浩一ほか『LEGAL QUEST民事訴訟法〔第2版〕』351頁
(※3)「宗教団体における宗教上の教義、信仰に関する事項については、憲法上国の干渉からの自由が保障されているのであるから、これらの事項については、裁判所は、その自由に介入すべきではなく、一切の審判権を有しないとともに、これらの事項にかかわる紛議については厳に中立を保つべきであることは、憲法20条のほか、宗教法人法1条2項、85条の規定の趣旨に鑑み明らかなところである……。かかる見地からすると、特定人についての宗教法人の代表役員等の地位の存否を審理判断する前提として、その者の宗教団体上の地位の存否を審理判断しなければならない場合において、その地位の選任、剥奪に関する手続上の準則で宗教上の教義、信仰に関する事項に何らかかわりを有しないものに従ってその選任、剥奪がなされたかどうかのみを審理判断すれば足りるときには、裁判所は右の地位の存否の審理判断をすることができるが、右の手続上の準則に従って選任、剥奪がなされたかどうかにとどまらず、宗教上の教義、信仰に関する事項をも審理判断しなければならないときには、裁判所は、かかる事項について一切の審判権を有しない以上、右の地位の存否の審理判断をすることができないものといわなければならない……。したがってまた、当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係に関する訴訟であっても、宗教団体内部においてされた懲戒処分の効力が請求の当否を決する前提問題となっており、その効力の有無が当事者間の紛争の本質的争点をなすとともに、それが宗教上の教義、信仰の内容に深くかかわっているため、右教義、信仰の内容に立ち入ることなくしてその効力の有無を判断することができず、しかも、その判断が訴訟の帰趨を左右する必要不可欠のものである場合には、右訴訟は、その実質において法令の適用による終局的解決に適しないものとして、裁判所法3条にいう『法律上の争訟』に当たらないというべきである」前掲最判平成元年9月8日



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