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2019-04-04(Thu)

【基礎演習民事訴訟法】問題25「上訴の利益」

あと6問……

あと6問……

明日までに終わらせたい……

≪問題≫

 Xは,同郷の友人Aに対して,1,000万円を貸していたが,その後,Aが死亡した。Aは,亡妻との間に,2人の子(YおよびB)をもうけていた。YはAとともに家業を営んでおり,Bは独立して家を出ていた。Xは,Aとの間では,利息は取らない,特に返済期限は設けないというAに有利な条件で貸していたが,Aの子らとはむしろ疎遠であったので,とりあえずAの家業を継いだYを被告として,Yの法定相続分にあたる500万円の支払を求める訴え(本件訴訟という)を提起した。Yは,AがXから1,000万円も借りるはずがないと主張して,請求棄却判決を求めた。
 ところで,Bは,その後,家庭裁判所に相続の放棄の申述をし,受理の審判がされた(民938条,家事201条・別表第一の95参照)。その結果,YはAの遺産全部を相続することになった。この当時,本件訴訟は第1審に係属中で,Bが相続放棄をした事実は,訴訟手続外で進行していたX・Y間の和解交渉において,YからXに告げられたため,Xの知るところとなったが,Xは請求を拡張しなかった。
 本件訴訟の第1審裁判所は,Xの請求を全部認容する判決(【例1判決】という)を言い渡した。
〔設問〕
 Yは,【例1判決】に対して控訴の利益を有するか。
 Xは,請求を500万円拡張するために,控訴を提起することができるか。


控訴の利益です。

TKC模試でバリバリ聞かれましたね。

形式的不服説の例外をうろ覚えだったので大変でした。

≪答案≫
1 X及びYは,本件訴訟の第1審判決(以下「本件判決」という。)に対して控訴(民訴法281条1項)を提起しようとしている。そこで,X及びYが控訴のための要件を満たしているかどうかについて検討する。
2 控訴は,相手方や裁判所に対して負担を課すものであるから,控訴をする者に,控訴を提起する正当な利益があることが必要である(以下,この利益を「控訴の利益」という。)(※1)。そして,当事者の申立てと判決とを比較し,前者が後者より大きい場合には控訴の利益が認められる(※2)
3 これを本件についてみると,Yは本件訴訟において,Xの請求を全部棄却する判決を申し立てているが,本件判決はXの請求を全部認容している。そうすると,Yの申立てが本件判決を上回る関係にあるから,Yには控訴の利益が認められる。したがって,Yは,控訴期間(同法285条)内に控訴状を第1審裁判所に提出することによって(同法286条1項)控訴を提起することができる。
 これに対して,Xは,「Yは,Xに対し,500万円を支払え」との判決を申し立てているが,本件判決はXの請求を全部認容しているから,Xの申立てと本件判決が一致している。そうすると,Xには控訴の利益は認められないように思われる。
4 しかし,特別の政策的理由から別訴の提起が禁止されている場合には,別訴で主張できるものも,同一訴訟手続内で主張しておかないと,訴訟上主張する機会か奪われてしまうという不利益を受けるので,それらの請求については,同一訴訟手続内での主張の機会をできるだけ多く与える必要があり,また,この不利益は,全部勝訴の一審判決後は控訴という形で判決の確定を妨げることによってしか排除し得ないので,例外として,これらの場合には,訴えの変更又は反訴の提起をなすために控訴をする利益を認めるべきである。この理は,別訴が既判力によって遮断される場合にも同様である(※3)(※4)
 これを本件についてみると,一個の債権の数量的な一部を求める一部請求において,当該一部についてのみ判決を悖る趣旨が明示されていないときには,請求額を訴訟物たる債権の全部として訴求したものとして扱われ,ある金額の支払を請求額の全部として訴求し勝訴の確定判決を得た後,別訴において,当該請求を請求権の一部である旨主張してその残額を訴求することは,既判力に抵触し許されないこととなる。そうすると,一部請求についての確定判決は残額の請求を遮断し,債権者はもはや残額を訴求する機会を失ってしまうことになる。したがって,黙示の一部請求につき全部勝訴の判決を受けた当事者についても,例外として請求拡張のための控訴の利益を認めるべきである。
 よって,Xも本件判決に対して控訴の利益を有していることになるから,Xは控訴期間内に控訴状を第1審裁判所に提出することによって,控訴を提起することができる。

以 上


(※1)「上訴は,相手方や裁判所に対して負担を課すものであるから,不要な上訴は排除しなければならない。そこで,上訴を提起する正当な利益を有する者による上訴のみが適法な上訴とされる。この利益のことを『上訴の利益』といい,控訴については,『控訴の利益』という。」三木浩一ほか『LEGAL QUEST民事訴訟法〔第2版〕』604頁
(※2)「通説は,申立において求めた判決を得られた当事者には控訴の利益は認められないとする。このように申立てと判決とを比較し,前者が後者より大きければ控訴の利益を認め,そうでなければ認めないという考え方を『形式的不服説』という。これによると,全部敗訴した当事者また一部敗訴した当事者には控訴の利益が認められるのに対して,全部勝訴した当事者が判決理由中の判断とは別の理由による勝訴判決を求めて控訴を提起したとしても控訴の利益を認められない(最判昭和31・4・3民集10巻4号297頁)。なお,被告は申立てを明治しないこともあるが(たとえば,いわゆる欠席判決の場合),このような被告にも請求認容判決に対する上訴を認める必要はある。形式的不服説においては,このような被告についても,形式的不服説の定式を適用する際には,請求棄却判決の申立てがなされているという前提で控訴の利益の有無を判断することになる。」前掲三木ほか604頁
(※3)「全部勝訴の判決を受けた当事者は、原則として控訴の利益がなく、訴えの変更又は反訴の提起をなすためであっても同様であるが、人事訴訟手続法九条二項(別訴の禁止)、民事執行法三四条二項(異議事由の同時主張)等の如く、特別の政策的理由から別訴の提起が禁止されている場合には、別訴で主張できるものも、同一訴訟手続内で主張しておかないと、訴訟上主張する機会か奪われてしまうという不利益を受けるので、それらの請求については、同一訴訟手続内での主張の機会をできるだけ多く与える必要があり、また、この不利益は、全部勝訴の一審判決後は控訴という形で判決の確定を妨げることによってしか排除し得ないので、例外として、これらの場合には、訴えの変更又は反訴の提起をなすために控訴をする利益を認めるべきである。」「そして、その理由を進めて行くと、いわゆる一部請求の場合につき、一個の債権の一部についてのみ判決を求める趣旨か明示されていないときは、請求額を訴訟物たる債権の全部として訴求したものと解すべく、ある金額の支払を請求権の全部として訴求し勝訴の確定判決を得た後、別訴において、右請求を請求権の一部である旨主張しその残額を訴求することは、許されないと解されるので(最高判昭和三二年六月七日民集一一巻六号九四八頁参照)、この場合には、一部請求についての確定判決は残額の請求を遮断し、債権者はもはや残額を訴求する機会を失ってしまうことになり、前述の別訴禁止が法律上規定されている場合と同一となる。したがって、黙示の一部請求につき全部勝訴の判決を受けた当事者についても、例外として請求拡張のための控訴の利益を認めるのが相当ということになる。」名古屋高金沢支判平成元年1月30日判タ704号264頁
(※4)「形式的不服説によれば,黙示の一部請求を全額認容された当事者に控訴の利益が認めらるかは,この場合が前記例外[原判決が確定した場合に当事者に失権効が働くような場合には,例外的に,全部勝訴の当事者にも控訴の利益を認める]にあたるかどうかによって決まる。」「法律上別訴を提起することが許されず,当該訴訟手続内での訴えの変更によらなければ残額を請求できないとして,例外的に控訴の利益を肯定すべき場合の一つにあたるとするのが多数説である……。」「それでは,形式的不服説において,当事者が原審で請求拡張しえたのにしなかった場合にも,請求拡張のための控訴の利益が認められるか。」「小室教授は,例外として請求拡張のための控訴が許されるのは原告が過失なくして残額の請求をなしえなかった場合に限られるとされる……。ただし,債権が法律上不可分な場合に一部請求を認めない見解に立って,右の場合に公訴の利益を認めないと実体的正義が害されるとするものである。この考え方では,一部請求につき判例通説の見解に立つと,一層例外の承認に厳しくなろう。なぜなら,原告が残部請求の存在を認識できる場合には,一部請求であることを明示しさえすれば残部の請求を遮断されることはないはずであって,請求認容の一審判決で紛争を終了させようとして不服を申し立てなかった被告を犠牲にしてまで,原告に請求拡張のための控訴を許す必要があるかは疑問となるからである……。」「これに対して,前記多数説は,この場合にも控訴の利益を認めるもののようである。これは,権利実現のための裁判制度の利用の途をできるだけとざさないようにしようという考慮が背後にある。そして,前記の点は攻撃防御方法の提出,訴えの変更の制限において評価すべきことになろう……。」「黙示の一部請求における残部請求の遮断は,政策による制限というより当事者の意思による権利不行使の結果とみれなくもないから,別訴禁止が法定されている他の例外の場合と処理を異にすることには合理性がないわけではない。とはいえ,原審で残部請求しえた場合を排除する立場では,原告が原審において残部請求の存在に気付いていたかという不明確な和嘘に控訴の適法性が左右されることになり……,控訴の利益の有無をできるだけ明確な基準によろうとする立場からは不都合な難点がある。」「なお,多数説によっても,原告が原審において残部を請求しないと釈明するなど,その原審における態度に基づき,控訴の提起が信義則違反あるいは権利濫用として許されない場合があることは否定されまい。」判タ735号293頁



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