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2019-04-01(Mon)

【基礎演習民事訴訟法】問題18「通常共同訴訟(同時審判申出共同訴訟・訴えの主観的予備的併合)」

新元号が「令和」に決まったようです。

いろいろ賛否が分かれているようですけど,

個人的には割とすんなり受け入れることができました。

「令」の字が入ることは全然見当もつきませんでしたね。

でも,「令和」自体はいいんですけど,

「最判令和」っていう並びはあまりしっくりこないですね……

ところで,今回は,基礎演習の18問目です。

≪問題≫

 Xは,熊本県熊本市に在住の60歳の男性であり,妻と2人暮らしである。子供はいない。X家は代々農業を営んでいたが,Xの代からは会社勤めとなり,週末等に所有する土地の一部で妻と畑仕事をすることを趣味としていた。Xは今年,無事に定年退職を迎え,いよいよ本格的に農作業に取り組むことになった。しかし,それでも所有する土地3,000坪のすべてを耕作することは,年齢等を考えても現実的ではなかった。そこで,Xは,今後の生活費のことや相続すべき子供がいないことなどを考慮し,その土地の一部(以下「本件土地」という)を売却しようと考えていた。しかし,買い手はいっこうに現れる気配がなかった。
 ところが,ちょうどそのころ,同市に本店を有し,総合小売業を営むY会社は,本件土地のあたりで,新たにショッピングモールを開設する運びとなり,付近の土地を必要としていた。同市で不動産業を営むZは,Yの代理人と称して,平成24年4月17日に,本件土地を代金3,000万円で購入する売買契約をXと締結した。
 しかし,売買契約書が交わされ,Xは,Zに対して仲介手数料として96万円を支払ったものの,どういうわけか,本件土地について引渡しや移転登記,売買代金の支払等は一切されず,そのまま数か月が経過した。Xとしては,契約を解除する選択肢もあったが,売買代金3,000万円は極めて魅力的であった。
 そこで,Xは,市中心部にある法テラスを通じて,弁護士Aに相談し,Yに対してその支払を求めることとした。Aは,まずYと接触し,代金の支払を求めた。しかし,Yは,Zなどは知らないとして,その支払を拒絶した。続いて,AはZに対して,民法117条に基づく履行請求として代金相当額の支払を求めたが,Zは,本件土地の売買に関するYからの委任状なるものを示して,その支払を拒んだ。かくして,舞台は訴訟に移る。
〔設問〕
1.Xは,Yに対して売買代金3,000万円の支払いを求める訴えと,Zに対して民法117条に基づき3,000万円の支払を求める訴えとを,単純併合の形態で提起した。
 ① 各訴えについて,請求原因事実を整理しなさい。
 ② Xが同時審判の申出をしない場合,Xはどのような不利益を被る危険があるか。
2.Xは,Yに対する訴えとZに対する訴えを単純併合ではなく,Yを主位被告,Zを予備的被告とする,いわゆる主観的予備的併合という併合形態で提起した。このような訴訟形態は適法か。


同時審判……!!

予備で出た……!!

書けなかった……!!!!!

≪答案≫
第1 設問1
 1 ①について
 XのYに対する訴えの訴訟物は,売買契約に基づく代金支払請求権である。したがって,その要件事実は,XとYとの間の売買契約(以下「本件売買契約」という。)の締結である。本件売買契約の締結は,ZがYの代理人として行っているから,代理の要件事実(民法99条)を併せて主張する必要がある。したがって,請求原因事実は,⑴Xは,Zに対し,平成24年4月17日,本件土地を代金3000万円で売った。⑵Zは,上記⑴の際,Yのためにすることを示した。⑶Yは,Zに対し,上記⑴に先立ち,本件売買契約の締結に関する代理権を授与した。である。
 XのZに対する訴えの訴訟物は,無権代理責任に基づく損害賠償請求権である。したがって,その請求原因事実は,⑴XはZに対し,平成24年4月17日,本件土地を代金3000万円で売った。⑵Zは,上記⑴の際,Yのためにすることを示した。である。なお,⑶Yは,Zに対し,上記⑴に先立ち,本件売買契約の締結に関する代理権を授与した。との事実は,Zが無権代理責任を免れるための抗弁事実に位置付けられる。
 2 ②について
  ⑴ 前提として,XのYに対する訴えとXのZに対する訴えについて,同時審判の申出をすることができるかどうかについて検討する。
   ア 同時審判申出訴訟(民訴法41条1項)は,通常共同訴訟の一形態であるから,共同訴訟の要件(同法38条)を満たす必要がある。前記の通り,XのYに対する訴訟物は売買契約に基づく代金支払請求権であり,XのZに対する訴訟物は無権代理責任に基づく損害賠償請求権であるところ,両訴訟物はZの代理権の有無という点において実体法上の択一的関係にあるから,「訴訟の目的である権利が同一の事実上の原因に基づくとき」にあたる。したがって,共同訴訟の要件を満たす。
   イ 「法律上併存し得ない関係」とは,同一事実について,一方の訴訟物との関係では請求原因事実となるが,他方の訴訟物との関係では抗弁事実となるように,その事実について真偽不明に陥ったとしても一方の請求が成立する関係にある場合をいう(※1)。前記のように,XのYに対する訴えの請求原因事実⑶は,XのZに対する訴えにおいては抗弁事実にまわるから,「法律上併存し得ない関係」にある。
   ウ Xが両訴訟について同時審判申出訴訟を求めるためには,控訴審の口頭弁論終結時までに原告が同時審判の申出をすることが必要である(同法41条1項,2項)。
   エ 以上から,Xが控訴審の口頭弁論終結時までに同時審判の申出をすれば,両訴訟を同時審判申出訴訟とすることができる。
  ⑵ 同時審判申出訴訟においては,弁論及び裁判の分離が禁止されるため(同法41条3項),両訴訟間で証拠共通の原則に従い矛盾のない事実認定が行われるため,Xが両訴訟において敗訴する事態は生じ得ない。
 これに対して,同時審判の申出がされない場合には,両訴訟が単純併合されたとしても,それは通常共同訴訟にすぎないから,裁判所は,口頭弁論を分離する裁量権を有することになる(同法152条1項)。仮に口頭弁論が分離された場合には,統一的な審判は保障されないから,一方でYに対する請求はZに対する代理権授与がないとの理由で棄却され,他方でZに対する請求は代理権授与があるとの理由で棄却されるという事態が生じることになる。このように,同時審判の申出がない場合には,Xは,両負けの不利益を負うおそれがある。
第2 設問2
 主観的予備的併合とは,主位的請求が認容されることを解除条件として予備的請求についての審理及び判決を求める併合形態をいう(※2)。この併合形態によると,予備的併合である結果,弁論の分離は禁じられるという効果が得られる。しかし,この併合形態によると,予備的請求における被告の防御が奏功して主位的請求が認容された場合には,予備的請求について判決が出されないことから,予備的請求における被告の訴訟上の地位が不安定となり,当事者公平の原則に反する。したがって,主観的予備的併合は,不適法である(※3)(※4)(※5)
 本件でも,Xは,Yを主位被告,Zを予備的被告とする主観的予備的併合の形態で訴えを提起することはできない。

以 上


(※1)「『法律上併存し得ない関係』の意味は必ずしも明らかではないが,前述の例における,Y1に対する契約上の債務の履行請求権と,Y2に対する無権代理を理由とする損害賠償請求権との関係は,この要件を満たすのに対し,契約締結の相手方がAであるかBであるかが争われている場合におけるAB双方に対する契約上の履行請求権は,事実上併存不可能であるにすぎず,『法律上併存し得ない関係』は認められないと考えられている。前者においては,代理権の存在はY1との関係では請求原因,Y2との関係では抗弁にあたるため,Xは,代理権の存在につき真偽不明となったとしても,Y2には勝訴できる立場にあるのに対し,後者においては,契約の相手方はABいずれの関係においても請求原因であり,ABのいずれが契約相手方であるかにつき真偽不明に陥れば原告はいずれにしても敗訴せざるを得ない地位に置かれている,という原告の要保護性の違いがかかる取扱いの背後にあると考えられる。もっとも,上記両類型における原告の要保護性の差異は必ずしも大きいものではなく,契約の相手方不明の例においても,運用上は特別の事情がないかぎり分離しないことが要請されよう」三木浩一ほか『LEGAL QUEST民事訴訟法〔第2版〕』543頁
(※2)「主体的予備的併合とは,Y1に対する請求(主位的請求)が認容されることを解除条件として,Y2に対する請求(予備的請求)についての審理および判決を求める併合形態である。」前掲三木ほか542頁
(※3)「訴の主観的予備的併合は不適法であつて許されないとする原審の判断は正当であり、原判決に所論の違法は存しない。」最判昭和43年3月8日民集22巻3号551頁
(※4)「本判決[前掲最判昭和43年3月8日]の是認する原判決は,かかる併合訴訟を認めえない理由として,第二次被告の応訴上の地位の不安定不利益を強調し,第二次被告の犠牲において原告の保護に偏する結果を招来することは許されないとしている。けだし,かかる併合訴訟を認めることは,第二次被告を訴訟上甚だしく不安定不利益な地位に置く点において,民事訴訟の基本理念である当事者公平の原則に反すると解し,この点についての前掲否定説の見解を採用したものと思われる。」最判解民事篇昭和43年度(上)296頁
(※5)「主体的予備的併合の適法性については議論がある。同時審判申出訴訟によって主体的予備的併合の機能は代替できると考える論者は,主体的予備的併合を不適法と解する傾向にあるのに対して,なお主体的予備的併合には固有の意義があると考える論者は,適法説を採用する。主体的予備的併合固有の意義として考えられるのは次の2点である。第1に,主位的請求と予備的請求とが事実上併存し得ない場合,同時審判申出訴訟は利用できないが,主体的予備的併合であれば利用できると考える余地がある。第2に,主体的予備的併合については,40条を類推するという有力説があり,これによると,主位的請求棄却,予備的請求認容の場合に,原告が念のための上訴をしなくても,予備的請求に係る被告の上訴で当然に全請求について確定が遮断され,移審するために,上訴における合一確定は達成しやすくなる。もっとも,前者の点については事実上併存し得ない場合も,特段の事情がないかぎり,弁論は分離しないことが要請されると考えることができるのであるから,主体的予備的併合を認める必要はない。また,後者の点については,そもそも40条類推の根拠が必ずしも明らかではないだけではなく,40条を類推することには手続を重くするという副作用を伴うことを考えれば,主体的予備的併合を許容する根拠として十分ではない。したがって,主体的予備的併合は不適法である。」前掲三木ほか544頁



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