FC2ブログ
2019-04-01(Mon)

【基礎演習民事訴訟法】問題17「和解」

一日が終わるのがあっという間ですよね最近。

まだこの記事書いてるの朝10時半とかですけど。

司法試験まで50日きってるらしいですよ。

驚きですね。

ところで,今回は,基礎演習の17問目です。

≪問題≫

 Xは,甲土地の所有権に基づき,甲土地上に乙建物を所有するYに対して,建物収去土地明渡しを求める訴えを提起した。これに対して,Yは,Xの甲土地所有権を争うと同時に,甲土地について賃借権に基づく占有権原があると主張した。
 ① 担当裁判官は,甲土地についてYのための使用貸借契約が存在していることを確認する内容の和解を打診した。Yが使用貸借契約の内容について質問したところ,裁判官は,「借主が亡くなった時点で終了するのが原則ですが,判例の中には,必ずしもそうでないケースもあります」。と説明した。そこでYは,少なくとも自分が生きている限りは甲土地を使うことができるし,うまく行けば息子の代まで使えるかもしれない,と考えて,和解案を受け入れることにし,次のような和解が成立した。
 「(ア)X及びYは,甲土地がXの所有であること,乙建物がYの所有であることを相互に確認する。(イ)XとYとは,甲土地につき,Xを貸主,Yを借主とし,乙建物の所有を目的とする期限の定めのない使用貸借契約が存在することを相互に確認する」。
 ところが,帰宅後,Yがこの和解について知人のAに話したところ,「その内容だと,建物を建て替えることもできないし,Xが土地を他人に譲ったら,立ち退かなければならなくなるかもしれない」と聞かされ,Yとしては,それでは話が違う,と考えている。
 ② 上記の訴訟において,①とは異なり,「(ア)X及びYは,甲土地がXの所有であること,乙建物がYの所有であることを相互に確認する。(イ)Yは,〇年〇月〇日限りで乙建物を収去し,甲土地をXに明け渡す」との内容の和解が,XとYの間で成立した。ところがその後,Yはこの和解を履行しないばかりか,乙建物をZに賃貸し,現在は,Zが乙建物に居住している。そこで,Zに対して建物からの退去を求める訴訟を提起することにした。
〔設問〕
[ケース]①において,Yとしては,どのような主張をするこが考えられるか。また,どのような手続によってその主張をすればよいか。
[ケース]②の訴訟において,XはZに対してどのような主張をすることができるか。また,ZはXに対して,どのような主張ができるか。


和解ですねえ。

この章は解説がとても読みやすかったですし,

とても勉強になる記載が多かったと思います。

演習書に基礎演習を使っていない方でも,

この章だけは読む価値があるのではないでしょうか。

≪答案≫
第1 [ケース]①
 1 XとYとの間では,建物収去土地明渡請求訴訟の手続内において,甲土地に関する権利関係について,その所有がXに帰属し,甲土地上の乙建物の所有がYに帰属するとした上で,XとYとの間で甲土地について乙建物の所有目的での使用貸借契約があるものとする互譲を確認する合意がされているから,訴訟上の和解が成立している(※1)。しかし,Yは,自分が生きている間は甲土地を使用したいと考えているのに対して,前記の和解内容ではXが甲土地を他人に譲ることによりその使用ができなくなることの懸念がある。したがって,Yとしては,和解内容に錯誤(民法95条)があるとの主張をすることが考えられる。もっとも,訴訟上の和解が調書に記載されたときには,「その記載は,確定判決と同一の効力を有する」(民訴法267条)とされており,その効力として既判力(同法114条1項参照)が含まれるのであれば,和解内容について再び争うことができなくなるようにも思われる。そこで,和解調書の記載に認められる効力について検討する。
 2 当事者が和解の内容について既判力を生じさせる意思がないのであれば,訴訟外において和解契約(民法695条)を締結した上で訴えを取り下げる(民訴法261条1項)ことができる。それにもかかわらず,民訴法上これとは別個に訴訟上の和解の制度が設けられているのは,既判力をもった解決を望むという当事者の意思を反映した制度を用意することによって,当事者の意思決定に際しての選択肢を増やすことに目的がある(※2)。したがって,訴訟上の和解には,既判力が認められていると考える。もっとも,訴訟上の和解を選択することが当事者の意思に委ねられている以上は,和解をする際の当事者の意思に瑕疵がある場合には,もはや選択の基礎を欠くことになるから,和解の効力を争う余地を認めるべきである(※3)
 これを本件についてみると,Yにおいては,自身が亡くなるまでは甲土地を使用することができるとの理解の下で和解に応じているのであるから,Xが甲土地を他人に譲渡した場合であってもこれの使用を続けることができることが前提とされていると考えられる。そうすると,Xが甲土地を他人に譲渡することによってYがこれの使用を続けられなくなるのであれば,もはやYが和解に応じる前提に瑕疵があり,和解という手段を選択する基礎が欠けているというべきである。したがって,訴訟上の和解に既判力が生じるとしても,その前提となるYの意思に瑕疵があるのであるから,Yは錯誤を主張して和解内容を争うことができる。
 3 そこで,Yがこれを争うための手段について検討する。
  ⑴ 第1に,旧訴訟の続行期日指定の申立てを行うことが考えられる。この場合には,申立てに応じて口頭弁論期日を指定したうえで,和解が有効と判断されれば訴訟終了宣言判決をし,和解が無効と判断されれば旧訴訟を続行することになる。後者の場合には,旧訴訟の訴訟資料等をそのまま利用することができ,和解の有効性について和解に関与した裁判所自身が判断することとなる点で利点がある。もっとも,和解の効力について三審級が保障されない点や,裁判所の中立性の点で問題点がある。
  ⑵ 第2に,和解無効確認の訴えを提起する方法が考えられる。もっとも,前記のように,期日指定の申立てができる場合にも訴えの利益が認められるかどうかは問題となるが,旧訴訟の訴訟物は所有権に基づく返還請求権としての土地明渡請求権であったのに対して,和解の内容には,旧訴訟の判決が出された場合に理由中の判断となる,甲土地の所有がXに帰属し,乙建物の所有がYに帰属する点についても含まれているから,旧訴訟とは別個の紛争解決の利益が存在しているということができ,訴えの利益が認められる。
第2 [ケース]②
 1 Xは,XとYとの間で成立した訴訟上の和解の効力がZにも及ぶため,Zは建物から退去しなければならないとの主張を行うことが考えられる。
 2 前記のように,和解調書の記載には既判力が生じているため,ZがYからの「承継人」にあたる場合には,Zに対しても和解調書の記載の既判力が拡張される。
 民訴法115条1項3号が口頭弁論終結後の承継人に既判力を拡張させたのは,これを認めなければ判決によって得られた勝訴当事者の地位が容易に損なわれる一方,承継人は実体法上前主のした処分の結果を承継すべき地位にあることから,その手続保障が前主たる当事者に代替されているからである。そうすると,承継人に対する既判力の拡張は,承継人と前主との実体法上の依存関係によって基礎づけられているから,訴訟物に関連する実体法上の地位を承継した者を「承継人」とすべきである。
 これを本件についてみると,和解内容には,Yが甲土地を明け渡すことが含まれており,ここにおいて被告となるべき者は甲土地を占有している者に認めれる。Zは,Yから甲土地上の乙建物の賃貸を受けることによって甲土地を占有しているから,被告となるべきものである。Zのこのような地位は,Yとの間の賃貸借契約という実体法上の関係に基づいて発生しているのであるから,Zは,訴訟物に関連する実体法上の地位を承継した者である。したがって,Zは「承継人」にあたるため,和解調書の記載の既判力の拡張を受ける。
 3 したがって,XはZに対して,和解調書の記載を主張して,その退去を求めることができる。なお,和解内容には,Xが甲土地を所有することについてまで含まれているから,この点についても既判力が生じており,Zは基準時後の事由または固有の攻撃防御方法ょ主張しない限り,Xの所有権を争うことはできない。

以 上


(※1)「『和解』とは,当事者が,一定の法律関係に関して,互いに譲歩して(これを『互譲』という),合意によってその間に存する争いをやめることをいう。」「和解の種類として,まず,大きく分けて,『裁判外の和解』(民695条・696条が定める契約であり,『民法上の和解』ともいう)と『裁判上の和解』とがある。そして,裁判上の和解には,訴え提起後,訴訟手続内で行われる『訴訟上の和解』(起訴後の和解ともいう)と簡易裁判所での手続であって訴訟係属を前提としない『即決和解』(275条。同条にいう『訴え提起前の和解』。『起訴前の和解』ともいう)とがある。民訴法上の和解に関する規定のうち89条のほか264条と265条は訴訟上の和解のみに適用される規定であり(275条4項参照,)和解調書の効力……に関する267条は訴訟上の和解と即決和解の双方に適用される規定である。」三木浩一ほか『LEGAL QUEST民事訴訟法〔第2版〕』479頁
(※2)「訴訟上の和解によって解決するという意思の中に,既判力のない形で訴訟を終了する意思を見出すということは,訴訟上の和解には既判力がないという制度的前提のもとで初めて可能になるものであり,実際には,当事者の一方または双方が和解という形でむしろ既判力のある解決を望むということも考えられるからである。そのように考えると,既判力を伴わない訴えの取下げとの対比において,既判力を伴う訴訟上の和解という制度を設けておくことが,当事者の意思決定に際しての選択肢を豊富にすることにつながる」解説204頁
(※3)「既判力のある解決を当事者に与えられた選択肢の一つとして把握することは,そうした解決を選択するかどうかはあくまでも当事者の意思に委ねられている,との理解を前提とする。したがって,ここでは,仮に既判力を肯定するとしても,訴訟上の和解を判決の代用物とみる伝統的な既判力肯定説とは異なり,和解をする際の当事者の意思に瑕疵がある場合には,もはやそうした選択の基礎を欠くことになるから,和解の効力を争う余地を認めるべきだということになりそうである」解説204頁



スポンサーサイト



コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

コメント

プロフィール

||中央特快||高尾||

Author:||中央特快||高尾||
お疲れ様です。

最新記事
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
訪問者数
カレンダー
09 | 2019/10 | 11
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード