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2019-03-31(Sun)

【基礎演習民事訴訟法】問題15「既判力の主観的範囲」

眠いけど寝るほどの眠さではない。

そんなときってありますよね。

私は最近ずっとそんな感じです。

ところで,今回は,基礎演習の15問目です。

≪問題≫

 Xは,その所有する土地をYに賃貸した。Yはこの土地の上に建物をたてて,その保存登記をしたうえ,そこに住んでいた。とかとYは,月々支払うことになっていた土地の賃料の支払を怠るようになった。XはYに対して,再三にわたり賃料の支払を要求したところ,Yも初めのうちは遅れがちに賃料の支払に応じていたのであるが,とうとうその支払がなされなくなったので,Xは,Yにこの土地から出ていってもらって,もとの更地だった状態に戻してほしいと考えるようになった。そのためXとYとの間で交渉が行われたが,なかなからちがあかず,話し合いがつかなかった。そこでXは,正式な法的手段をとってYとの賃貸借契約を解除しようと決意して,Yに内容証明郵便を送り,催告をした上で,解除の意思表示をした。それでもYは建物を引き払ってこの土地を更地にしてXに戻すことをしなかったので,Xは,Yを相手に,建物収去土地明渡請求を求める訴えを提起した。Xの請求は認容され,Yに対して建物収去土地明渡を命ずる判決が確定した。ところが,この訴訟の口頭弁論終結後に,Yは本件土地の上の建物をZに売却して,この土地から出ていき,現在はZがこの建物に居住していることが判明した。
〔設問〕
 XがYに対して得た,Xの請求を認容する確定判決の既判力は,Zにも及ぶか。ZがXとYの間で訴訟が行われていることを知っていた場合と,知らなかった場合とで区別があるか。


既判力の主観的範囲です。

主観的範囲については条文が割としっかり書いてあるので,

民訴の他の論点に比べれば解釈問題として展開しやすいです。

といってもちゃんと書けるわけではないんですがね。

≪答案≫
1 XのYに対する所有権に基づく返還請求権としての土地明渡請求を認容する判決(以下「本件判決」という。)の既判力は,その口頭弁論終結後に土地上の建物を特定承継したZに対しても及ぶか。本件判決の既判力がどの範囲で及ぶのか,その主観的範囲が問題となる。
2 既判力とは,前訴確定判決の後訴に対する通用力ないし拘束力をいう。確定判決のこのような効力が正当化されるのは,当事者は既に前訴において特定の権利関係について裁判資料提出の機会を与えられたという意味での手続保障が与えられた点にある。そうすると,既判力が及ぶ主観的範囲は,ここでの手続保障が与えられていたと認められる範囲に限られるため,原則として,当事者に及ぶこととされている(民訴法115条1項1号)。また,既判力は,「口頭弁論終結後の承継人」にも及ぶとされているが(同項3号),ここでいう「承継人」とはいかなる者を指すかについて検討する。
 民訴法115条1項3号が口頭弁論終結後の承継人に既判力を拡張させたのは,これを認めなければ判決によって得られた勝訴当事者の地位が容易に損なわれる一方,承継人は実体法上前主のした処分の結果を承継すべき地位にあることから,その手続保障が前主たる当事者に代替されているからである(※1)。そうすると,承継人に対する既判力の拡張は,承継人と前主との実体法上の依存関係によって基礎づけられているから,訴訟物に関連する実体法上の地位を承継した者を「承継人」とすべきである(※2)
3 これを本件についてみると,XがYに対して求めたのは,Xの所有する土地(以下「本件土地」という。)の明渡しであって,その訴訟物は所有権に基づく返還請求権としての本件土地明渡請求権であり,その被告となるべき地位は本件土地を占有している者に認められる。Yは,本件土地をその上の建物(以下「本件建物」という。)を所有することによって占有しているのであるから,前記訴訟物における被告となるべき地位を有している。Zは,そのようなYとの間で,本件建物を譲り受けており,その所有権を取得している。そうすると,Zは,Yとの間の実体法上の権利移転関係により,本件土地の占有を明け渡すべき地位を取得しているというべきであるから,Zには,被告となるべき地位をYの実体法上の依存関係に基づいて取得しているということができる。したがって,Zは,訴訟物に関連する実体法上の地位を承継した者であるから,「承継人」にあたる。
 そうすると,本件判決の既判力は,Zに対しても及ぶように思われる。
4 もっとも,ZがXY間の訴訟を知らなかったことにより,何らかの固有の抗弁を有するに至った場合にも,なおZを「承継人」とすることができるかは別途問題となる。
 しかし,既判力が後訴に対する強い拘束力を有していることからすれば,その範囲を決める基準は明確である必要があり,画一的に決められるべきである。また承継人にも既判力を拡張させたのは,前記の通り,勝訴当事者の地位を安定化させるための立法政策である。そうすると,第三者の主観によって,既判力の拡張される範囲が左右されることは望ましくはない。したがって,第三者に固有の抗弁がある場合であっても,前記のように実体法上の地位を承継した者であれば,「承継人」にあたる。なお,この場合の承継人の固有の抗弁は,基準時後の事由であるから,既判力によって遮断されないため,承継人は別途これを争うことができる。
 本件でも,Zに固有の抗弁がある場合であっても,「承継人」であることに変わりはない。したがって,Zの主観にかかわらず,本件判決の既判力はZにも及ぶ。
以 上

(※1)「口頭弁論終結後の承継人に対して既判力が拡張される根拠は,次のように説明される。すなわち,まず,①既判力拡張を認めなければ,判決によって得られた勝訴当事者の地位が容易に損なわれることになるため,権利の保護ないし紛争解決という確定判決の機能を十分に果たすためには,拡張の必要が認められる。たとえば,XのYに対する甲土地所有権確認の訴えにおいてXの請求を認容する判決が確定し,Xの甲土地所有権が既判力によって確定されても,Yは口頭弁論終結後にXから甲土地所有権の譲渡を受けたZに対して,Xが所有権者であった事実を再び争えるということになると,実際上甲土地の譲渡は困難となり,勝訴したXの地位が害されることになる。逆に,この訴訟で請求棄却判決が確定し,Xの甲土地所有権の不存在が既判力によって確定されたにもかかわらず,承継人ZがYに対して再び前主たるXから土地所有権を承継したとして自己の土地所有権を主張できるということになると,勝訴したYの地位が害されることになる。他方で,②承継人は,自らは前訴において当事者として手続保障が与えられていた者ではないが,実体法上,元来前主のした処分の結果を承継すべき地位にあることから(これを,実体法上の依存関係と呼ぶ),前主の受けた確定判決による不利益を甘受させられてもやむを得ないともいえるし,③承継が口頭弁論終結後にされている以上,相手方当事者としては,承継人に対する手続保障を講じるための手段は前訴当時存在しなかったことを考えると,この場合にあくまで承継人自身に対する手続保障を要求するのは,相当でないと考えられるのである。」「このように,口頭弁論終結後の承継人に対する既判力の拡張は,前訴の勝訴当事者の地位の安定という要請と,承継人に対する手続保障の要請との対立を立法的に調整したものといえ,現行法の規律が,想定できる唯一の解決というわけではない。たとえば,日本法の母法であるドイツ法は,口頭弁論終結前の承継人であっても,訴訟係属後の承継人に対しては原則として既判力を及ぼすものとして……,日本法よりもいっそう勝訴当事者の保護に傾斜しているなど,立法政策としては多様な解決があり得るところである。」三木浩一ほか『LEGAL QUEST民事訴訟法〔第2版〕』450頁
(※2)「前訴当事者から何を承継した場合に既判力の拡張を受ける承継人となるかについては,議論がある。訴訟物である権利義務関係そのものを承継した者のがここでの承継人に該当することについては,異論がないが,承継人の範囲をこの場合にのみ限定すると,……既判力拡張の趣旨が十分に果たされない場合も考えられる。たとえば,XのYに対する所有権確認請求訴訟の口頭弁論終結後に係争物をYから譲り受けたZや,XのYに対する建物収去土地明渡請求訴訟の口頭弁論終結後にYから家屋を譲り受けたり,賃借したZは,訴訟物である権利義務関係そのものを承継した者とはいえないが,これらの場合にZに対する既判力の拡張を認めないとすると,Xが勝訴判決を得たとしても,その結果は容易に潜脱し得ることになってしまう。そこで,判例および多数説は,訴訟物である権利義務の承継人に限らず,これらの者についても,承継人として既判力の拡張を認めている(最判昭和26・4・13民集5巻5号242頁等)。もっとも,承継の対象を訴訟物そのものから拡大した場合に,その範囲をどのように画するかについては,さまざまな説明が試みられている。その中で代表的な見解としては,①当事者適格の承継とするもの,②紛争の主体たる地位の承継とするもの,③訴訟物に関連する実体法上の地位の承継とするものが挙げられる。」「このうち,①については,当事者適格の有無は,主張される訴訟物の内容にしたがって定まるものであるから……,前訴と後訴とでは訴訟物が異なる以上,当事者適格そのものの承継は考えられないとの批判が妥当する。また,②は,訴訟承継の場面において判例でも用いられる概念であり(最判昭和41・3・22民集20巻3号484頁。……),その実質的に意図するところは③と異ならないものと考えられるが,紛争の主体たる地位という概念の内容は不明確であり,どのような場合にその移転が認められるかが明らかでないという問題がある。むしろ,……承継人に対する既判力の拡張が承継人が前主に対して実体法上依存する地位に立つことによって基礎づけられることを考えると,承継の対象としては,③訴訟物に関連する実体法上の地位,言い換えれば,その訴訟物について原告または被告となることを適切なものとするような実体法上の地位と説明するのが最も適切であろう。」前掲三木ほか451頁



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