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2019-03-30(Sat)

【基礎演習民事訴訟法】問題13「基準時後の形成権の行使」

1日4通が限界ですね。

疲れます。

ほんとに。

頭がしおれている感じがします。

≪問題≫

 Aは,Bとその所有する土地を購入するとの売買契約を締結した。それは,Bが自分の所有するこの土地は大規模なリゾート開発の対象となることがすでに決まっており,すぐに値段が上がると述べたからであった。
 しかし,Aはすぐに売買代金を支払うことができなかったために,Bから売買代金請求訴訟を提起され,その支払を命じる判決は確定した。
 ところが,Aはその後このリゾート開発の話は全くの嘘であり,この土地は将来性のない原野であることを知った。そこでBに騙されたことに気づいたAは,詐欺により自らの買受けの意思表示を取り消す(民法96条)という書面をBに送った。しかし,Aは,先の確定判決がBへの売買代金の支払を命じたことから,この確定判決に基づきBが自分の財産に対して強制執行を行うことが予測されるので,これを阻止するために,取消しにより売買代金請求権は消滅したことを理由として「Bからの強制執行は許さない」という判決を求めて請求異議の訴え(民執35条)を提起した。
〔設問〕
 Aは,Bに対するこの請求異議の訴えにおいて,取消しによる売買代金請求権の消滅を理由として強制執行の不許を宣言する判決を求めることができるか。


このタイミングで既判力。

重い。

≪答案≫
1 請求異議の訴えで異議事由とすることができるのは,「口頭弁論の終結後に生じたもの」に限られる(民執法35条2項)。Aが,既に確定判決が出ているBのAに対する売買契約に基づく代金支払請求権について,新たに詐欺を理由とする取消権を行使することが,異議事由となり得るかどうかについて検討する。
2⑴ 請求異議の訴えにおいて,異議事由が口頭弁論終結後の事由に限られるのは,確定判決の口頭弁論終結前の事由は既判力に抵触するためである(※1)
 ここで,既判力とは,前訴確定判決の後訴に対する通用力ないし拘束力をいい(※2),その消極的作用として,当事者は,後訴において,既判力の生じた前訴判決の判断に反する主張,立証をすることが許されず,裁判所もそのような主張,立証を取り上げることができない(以下,この効力を「遮断効」という。)(※3)。確定判決のこのような効力が正当化されるのは,当事者は既に前訴において特定の権利関係について裁判資料提出の機会を与えられたという意味での手続保障が与えられた点にある(※4)。そして,前記の既判力の正当化根拠に照らすと,既判力によって確定される権利関係の存否の時点(以下「基準時」という。)は,当事者が事実と証拠を提出することができる事実審の口頭弁論終結時である(※5)
 そうすると,本件では,Aが主張する取消権は,売買代金支払請求訴訟(以下「本件訴訟」という。)の基準時よりも前に発生しているため,本件判決の遮断効によって,後に取消権を行使することは遮断されるように思われる。
 ⑵ もっとも,形成権である取消権が本件訴訟の基準時前に存在していたとしても,形成権行使の意思表示が相手方に到達してその効力を生じた時期が基準時よりも後であれば,その効果の主張は本件訴訟の遮断効によって遮断されないようにも思われる。そこで,このような見解の当否について検討する。
 取消権は,権利の発生そのものの障害事由であるから,権利そのものに付着する瑕疵というべきであり,このような瑕疵は前訴でその権利自体が審理判断される際に共に審理判断されるべき性質を有している。そして,取消権が口頭弁論終結前に成立していれば,前訴においてそれを行使しておくことを通常期待できる。このような取消権の性質に鑑みれば,取消権が基準時前に成立しているのであれば,基準時後における当該取消権の行使は,確定判決の遮断効によって遮断されることとなる(※6)
 なお,このように考えると民法126条が取消権の消滅時効期間を5年としたことの保障を奪うこととなり,妥当ではないとする見解がある。しかし,民法126条は,権利関係を安定させるために期間経過後の取消権行使を禁じたものにすぎず,期間内の行使を積極的に保障したものではない(※7)(※8)
 また,このように考えると当事者がその責に帰さない事情のため取消原因を知らなかった場合にまで遮断効を認めることになり,債務者に酷であるとする見解がある。しかし,同様のことは,当然無効や弁済,免除,時効完成などの消滅原因を知らなかった場合についてもいえるのであるから,取消しについてのみ別異に取り扱う理由はない(※9)
 ⑶ これを本件についてみると,Aが主張する取消権は,Bの詐欺によるものであり,当該詐欺は売買契約締結の段階でなされたものであるから,本件訴訟の基準時前に取消権が発生している。そうすると,Aが取消権を本件訴訟において主張せず,本件訴訟の判決の確定後になって初めて主張することは,本件訴訟の確定判決の遮断効によって遮断される。
3 よって,Aは,Bに対する請求異議の訴えにおいて,取消しによる売買代金請求権の消滅を理由として強制執行の不許を宣言する判決を求めることができない。

以 上


(※1)「確定判決を対象とする請求異議の事由は,口頭弁論の終結後に生じたものに限られる(35条2項)。確定判決の基準時前の事由は,既判力に抵触するので,主張できないのである」上原敏夫ほか『民事執行・保全法〔第5版〕』80頁
(※2)「いったん判決が確定すると,もはやその判決を上訴等の通常の不服申立方法によって覆すことができなくなる(形式的確定力)のはもちろん,新たな訴えを提起するなどの方法によってその判断内容を争うことも許されないものとされる。このように,確定判決は,その事件を決着済みのものとし,判決の内容を以後の当事者間の関係を規律する基準として通用させる効力を有する。確定判決の持つこうした通有性ないし拘束力を,既判力と呼ぶ。既判力は,手続を形式的に終結させる形式的確定力との対比において,実体的確定力または実質的確定力と呼ばれることもある。」三木浩一ほか『LEGAL QUEST民事訴訟法〔第2版〕』418頁
(※3)「既判力が現実に作用するのは,既に確定判決の存在する事件に関連して後訴が提起された場合である。この場合の作用の形態としては,積極的作用と消極的作用とがあるといわれる。」「消極的作用とは,当事者は,後訴において,既判力が生じた前訴判決の判断に反する主張・立証をすることが許されず,裁判所もまたそうした主張・立証を取り上げることができないことを指す。たとえば,XのYに対する売買代金支払請求訴訟において請求認容判決が確定した後に,Yがその執行力を争って請求異議の後訴を提起した場合,売買契約は錯誤により無効であるとか,問題となっている契約は売買ではなく贈与であったから代金支払債務は存在しないといった主張は,既判力によって遮断されることになる。」「消極的作用は,遮断効または失権効と呼ばれることもある。しかし,既判力とは独立にそのような効力が認められるわけではなく,消極的作用とは,既判力の攻撃防御方法のレベルにおける作用を表現したものである。」前掲三木ほか420頁
(※4)「憲法上保障されている裁判を受ける権利の内容を考えれば,受訴裁判所が確定判決の拘束力を受け,その結果として,当事者が裁判所の判断形成のための裁判資料提出の機会を制限されることは,憲法の理念に反する。そこで,既判力の根拠として手続保障の理念が援用される。すなわち,当事者は,すでに前訴において特定の権利関係に関して裁判資料提出の機会を与えられ,その結果として一定の判断が確定した以上,後訴においてもその判断の拘束力によって裁判資料提出の機会が制限されてもやむをえないというものである。」伊藤眞『民事訴訟法〔第4版補訂版〕』508頁
(※5)「訴訟物たる権利関係の存否について受訴裁判所は,弁論主義の原則によって当事者が提出した事実と証拠にもとづいて判断を行う。当事者が事実と証拠を提出できるのは,事実審の最終口頭弁論終結時までであるから,裁判所の判断資料もこの時点によって画され,権利関係の存否もこの時点を基準とする。このことを既判力の時的限界または基準時は事実審の最終口頭弁論終結時であると表現する。」前掲伊藤515頁
(※6)「基準時後の取消権行使を認めない見解の根拠としては,①取消権は,相殺権とは異なり,権利の発生そのものの障害事由であるから,要素の錯誤,強行法規違反などと等しく権利そのものに付着する瑕疵とみることができ……,このような瑕疵は,法的安定性をその本質とする判決の既判力により最初の訴訟に際して全部洗い流されるべきであること……,②取消権や解除権については,それが口頭弁論終結前に成立していれば,前訴で行使しておくことを通常期待できること……,③基準時後の取消権行使を認めるとすれば,前訴の基準時前に主張されなかった,より重大な瑕疵である当然無効の事由が遮断されることと釣り合いがとれないこと……,が挙げられる。」高橋宏志ほか『民事訴訟法判例百選〔第5版〕』165頁
(※7)「遮断を肯定すると民法126条が保障する5年間の行使期間が奪われることになり,実体法の規定に反するとの批判がされる。この点は,実体法の解釈問題であるが,多数説の立場からは,この規定は権利関係を安定させるために期間経過後の取消権行使を禁じたものにすぎず,期間内の取消権の行使を積極的に保障したものではない,と解することになる。」前掲三木ほか430頁
(※8)「中野説の最も重要なポイントは,民法126条が取消権行使につき期間を保障しているとする点である。しかし,この期間制限は,この期間を過ぎれば取消権行使はできないということを意味するにとどまるのではなかろうか。それを超えて,この期間内は権利行使が当然に保障されているとまで強く捉えるべきものかは疑問がある。少なくとも,相手方が訴訟を提起して決着を求めてきたときまでも権利行使が保障されている期間と見るべきではないのではあるまいか。訴訟が提起されたときには,特別の事情がない限り,被告もその訴訟の中で取消事由をも含めて決着をつけるべきであり,それを被告に要求しても不当とは言えないからである。」高橋宏志『重点講義民事訴訟法・上〔第2版補訂版〕』615頁
(※9)「通説によると,債務者がその責に帰すべからざる事情のため取消原因を知らなかったような場合にまで遮断効を認めることになって債務者に酷な結果となるが,そのことは,当然無効や弁済,免除,時効完成などの消滅原因を知らなかった場合についてもいえるところであり,取消についてのみ別異に解すべき理由にはならない」最判解民事篇昭和55年度327頁



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