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2019-03-30(Sat)

【基礎演習民事訴訟法】問題12「文書提出命令」

本日の(起きてからの)3通目です。

なぜか左側の鼻の奥がとても痛みます。

水を鼻から吸ったときみたいな痛さです。

なぜでしょうか。

何もしてないのに。

≪問題≫

 平成2年5月,相当の不動産資産を有していたAは,B銀行のなじみの行員Cから,B銀行と事業提携しているD生命保険会社が扱う終身型の一時払変額保険に加入するよう勧誘された。Cによれば,変額保険の投資対象である株式は高利回りの運用が期待でき,保険料の一括の支払をすべてB銀行からの借入れで行っても,死亡保険金や解約返戻金によって元利返済は確実に見込める上,むしろ借入れによりA死亡時の相続税額の経験も期待できる,とのことだった。地価の高騰による相続税額の膨張を苦慮していたAは,Cの勧めに従い,保有不動産すべてを担保としてB銀行に提供し,保険料額相当金10億円を借り入れ,そのまま全額を保険料としてD生命保険会社に支払った。
 ところが,その後,本件保険の解約返戻金の額は支払保険料額を大幅に下回り,借入れのみ膨らむ事態となったので,AはB銀行に対し,本件変額保険契約ならびに金銭消費貸借契約が一体として錯誤により無効であるとして,債務不存在確認の訴えを提起した。その訴訟においてAは,B銀行が所持する以下の文書につき,文書提出命令の申立てをした。
① B銀行が,融資一体型の変額保険の勧誘販売に伴う貸付にあたり,相続税対策としての有効性を誤信させる説明をCに行わせたことを明らかにするため,本件貸付に際して作成された貸出稟議書。
② 変額保険勧誘にあたりB銀行が主体的役割を担ったことを明らかにするため,平成2年にB銀行本部から各営業部長にあてて発出された変額保険の販売にあたっての業務提携に関する社内通達文書。
〔設問〕
1.①の貸出稟議書,②の社内通達文書につき,それぞれ文書提出義務は認められるのか。
2.文書提出命令にB銀行が従わない場合,どのような効果が認められるのか。


文書提出命令です。

判例がたくさんあるので,規範はちゃんと覚えるところから始めたいですね。

しかし,設問2の最後のところ,

証明すべき事実に色々ぶち込んだときに,

どこまで真実擬制させていいのかという議論は,

初めて知りました。

へえ,勉強になるなあと思いました。

≪答案≫
第1 設問1
 1 Aが申し立てた,B銀行の貸出稟議書及び社内通達文書(以下,それぞれ「本件貸出稟議書」,「本件社内通達文書」といい,これらをまとめて「本件貸出稟議書等」という。)の文書提出命令(民訴法223条1項)の申立て(同法221条1項)に係る文書提出義務は認められるか。
 2⑴ 本件貸出稟議書等は,同法220条1号及び2号の文書には該当しない。
  ⑵ 「挙証者の利益のために作成され」た文書(同条3号前段)とは,挙証者の地位や権利などを直接的に基礎づけ,かつ,そのことを目的として作成された文書をいう(※1)。本件貸出稟議書等は,ともにB銀行の内部においての用に供されるにとどまる文書であるから,「挙証者の利益のために作成され」た文書ではない。
 また,「法律関係について作成された」文書(同条3号後段)とは,挙証者と所持者との間の具体的な法律関係及びこれと密接な関連を有する事項について,それを対外的に明らかにする目的を持って作成された文書をいう(※2)。したがって,B銀行の内部使用目的で作成された本件貸出稟議書等は「法律関係について作成された」文書ではない。
  ⑶ そこで,Aとしては,本件貸出稟議書等が同条4号の文書に該当するとして,文書提出命令を申し立てることとなる。B銀行としては,本件貸出稟議書等が,「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」(同条4号ニ)であるとして,提出義務を負わないと反論することが想定される。
 ある文書が,専ら内部の者の利用に供する目的で作成され,外部の者に開示することが予定されていない文書であって,開示によって所持者の側に看過し難い不利益が生ずるおそれがあると認められる場合には,特段の事情がない限り,当該文書は「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」にあたる(※3)
 これをまず本件貸出稟議書についてみると,銀行の稟議書とは,支店長等の決裁限度を超える規模,内容の融資案件について,本部の決裁を求めるために作成されるものであって,通常は,融資の相手方,融資金額,資金使途,担保・保証,返済方法といった融資の内容に加え,銀行にとっての収益の見込み,融資の相手方の信用状況,融資の相手方に対する評価,融資についての担当者の意見などが記載され,それを受けて審査を行った本部の担当者,次長,部長など所定の決裁権者が当該貸出しを認めるか否かについて表明した意見が記載される文書である。このような文書作成の目的や記載内容等からすると,銀行の貸出稟議書は,銀行内部において,融資案件についての意思形成を円滑,適切に行うために作成される文書であって,法令によってその作成が義務付けられたものでもなく,融資の是非の審査に当たって作成されるという文書の性質上,忌たんのない評価や意見も記載されることが予定されているものである。したがって,貸出稟議書は,専ら銀行内部の利用に供する目的で作成され,外部に開示することが予定されていない文書であって,開示されると銀行内部における自由な意見の表明に支障を来し銀行の自由な意思形成が阻害されるおそれがあるものとして,特段の事情がない限り,「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たる(※4)
 次に,本件社内通達文書についてみると,B銀行本部から各営業部長にあてて発出されたものであって,その内容は,一時払変額保険の販売にあたっての業務提携について記載したものであり,取引先の顧客の信用情報やB銀行の高度なノウハウに関する記載は含まれておらず,その作成目的は,上記の業務提携を各営業部長に周知伝達することにある。このような文書の作成目的や記載内容等からすると,本件社内通達文書は,基本的にはB銀行の内部の者の利用に供する目的で作成されたものということができる。しかし,本件社内通達文書は,B銀行の業務の執行に関する意思決定の内容等をその各営業部長に周知伝達するために作成され,法人内部で組織的に用いられる社内通達文書であって,B銀行の内部の意思が形成される過程で作成される文書ではなく,その開示により直ちにB銀行の自由な意思形成が阻害される性質のものではない。さらに,本件社内通達文書は,個人のプライバシーに関する情報やB銀行の営業秘密に関する事項が記載されているものではない。そうすると,本件社内通達文書はが開示されることによってB銀行に看過し難い不利益が生ずるおそれがあるということはできない。したがって,本件社内通達文書は,「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」には当たらないというべきである(※5)
 3 よって,B銀行は,本件貸出稟議書については文書提出義務を負わないが,本件社内通達文書については文書提出義務を負う。
第2 設問2
 B銀行は,本件訴訟における「当事者」であるから,裁判所が本件社内通達文書について文書提出命令を発令した場合に,B銀行がこれに従わないときは,本件社内通達文書の記載に関するAの主張を真実と認めることができる(民訴法224条1項)。したがって,Aが本件社内通達文書の文書提出命令の申立てにあたり記載した「文書の趣旨」(同法221条1項2号)について,裁判所はそれが真実であると認めることができる。
 もっとも,文書提出命令を申し立てる当事者には,その提出の対象となる文書の記載内容について具体的に記載することについては限界があり,ある程度概括的にしかその内容が示されない。そうすると,文書所持者としては,当該文書を提出するよりも,これを提出しないで真実擬制を受けた方が有利であり,これでは文書提出命令の不服従の制裁としての実効性が欠ける。そこで,文書所持者が文書提出命令に従わず,当該文書により証明すべき事実を他の証拠により証明することが著しく困難である場合には,裁判所は,その事実に関する相手方の主張を真実と認めることができる(同条3項)(※6)。したがって,Aは本件社内通達文書について,変額保険勧誘にあたりB銀行が主体的役割を担ったことを証明すべき事実としているから,裁判所は,当該事実が真実であると認めることができる。この場合には,B銀行は,勧誘はD生命保険が積極的に行い,B銀行は顧客を紹介したにすぎない等の事実を別の証拠によって示すことにより,同項の効果の発生を妨げることができる。
 なお,仮にAが,本件社内通達文書によって証明すべき事実として,本件貸出稟議書によって証明しようとしていた,B銀行が融資一体型の変額保険の勧誘販売に伴う貸付にあたり相続税対策としての有効性を誤信させる説明をCに行わせたことを追加していた場合に,同項の効果としてこの点まで真実である認めてよいかが問題となる。この点,文書が実際に提出された以上の利益を挙証者に与える必要はないから,証明すべき事実と当該文書との間に関連性がないことが明らかである場合や,当該時事に対する証拠価値が期待できない場合には,同項の効果を認めるべきではないとする見解もある。しかし,同項の趣旨は,文書の不提出の動機付けを可能な限り減じて審理の充実を図る点にある。したがって,証明すべき事実と当該文書との関連性が直ちに肯定できなくとも,同項の効果を認めるべきである。このように考えても,文書所持者は,不利益を回避したいのであれば当該文書を提出すればよいのであるから,文書所持者に特段不利益を負わせるものではない。

以 上


(※1)『挙証者の利益のため』とは,その文書が挙証者の地位や権利などを直接的に基礎づけるものであり,かつ,そのことを目的として作成されたことを意味する。文書作成の目的が,挙証者の法的地位や権利義務を発生させるものであるときや,挙証者の法的地位や権利義務を証明するものであるときには,その文書を訴訟において証拠方法として利用することを認めるのが相当であるからである。ただし,挙証者に事実認定上の有利な結果が生じるというだけでは,利益文書には当たらない(広島地決昭和43・4・6訟月14巻6号620頁,大阪高決昭和54・3・15判タ387号73頁等)。挙証者が文書の提出を求めるときは,多かれ少なかれ事実認定上の有利な結果を期待しているので,『利益』をこのように捉えると,利益文書の範囲は無限定になるからである。利益文書の例としては,挙証者を受遺者とする遺言状,挙証者のためにする契約の契約書,挙証者の代理権を証明する委任状,挙証者を支払人とする領収書,挙証者にた意思て出された同意書,挙証者の身分を証明する身分証明書などがある。」三木浩一ほか『LEGAL QUEST民事訴訟法〔第2版〕』321頁
(※2)『法律関係』とは,挙証者と所持者の間の具体的な法律関係およびこれと密接な関係を有する事項を意味する。挙証者と所持者の間において,文書に関する共同の法律関係が存在する場合には,挙証者が文書という物の共有権を有していないとしても,その記載内容に対しては一種の支配権を有するとする考え方に基づく。法律関係それ自体が記載されている文書の例としては,契約書,解除通知,家賃通帳などがあり,法律関係と密接な関連を有する事項を記載した文書の例としては,印鑑証明書,商業帳簿などがある。私法上の法律関係だけではなく,公法上の法律関係でもよい。公法上の法律関係の例としては,挙証者に対する捜索差押許可状および捜索差押令状請求書(最決平成17・7・22民集59巻6号1837頁),勾留状(最決平成19・12・12民集61巻9号3400頁)などがある。しかし,文書の所持者による内部使用のみが想定されている文書……は,法律関係文書に当たらない。法律関係文書は,作成者が法律関係またはそれと密接な関連を有する事項を対外的に明らかにする目的を持って作成した文書であることを要するが,内部使用のみを想定した文書はこの目的を欠くからである。」前掲三木ほか321頁
(※3)「ある文書が、その作成目的、記載内容、これを現在の所持者が所持するに至るまでの経緯、その他の事情から判断して、専ら内部の者の利用に供する目的で作成され、外部の者に開示することが予定されていない文書であって、開示されると個人のプライバシーが侵害されたり個人ないし団体の自由な意思形成が阻害されたりするなど、開示によって所持者の側に看過し難い不利益が生ずるおそれがあると認められる場合には、特段の事情がない限り、当該文書は民訴法220条4号ハ所定の『専ら文書の所持者の利用に供するための文書』に当たると解するのが相当である。」最決平成11年11月12日民集53巻8号1787頁
(※4)「これを本件についてみるに、記録によれば、銀行の貸出稟議書とは、支店長等の決裁限度を超える規模、内容の融資案件について、本部の決裁を求めるために作成されるものであって、通常は、融資の相手方、融資金額、資金使途、担保・保証、返済方法といった融資の内容に加え、銀行にとっての収益の見込み、融資の相手方の信用状況、融資の相手方に対する評価、融資についての担当者の意見などが記載され、それを受けて審査を行った本部の担当者、次長、部長など所定の決裁権者が当該貸出しを認めるか否かについて表明した意見が記載される文書であること……が明らかである。」「右に述べた文書作成の目的や記載内容等からすると、銀行の貸出稟議書は、銀行内部において、融資案件についての意思形成を円滑、適切に行うために作成される文書であって、法令によってその作成が義務付けられたものでもなく、融資の是非の審査に当たって作成されるという文書の性質上、忌たんのない評価や意見も記載されることが予定されているものである。したがって、貸出稟議書は、専ら銀行内部の利用に供する目的で作成され、外部に開示することが予定されていない文書であって、開示されると銀行内部における自由な意見の表明に支障を来し銀行の自由な意思形成が阻害されるおそれがあるものとして、特段の事情がない限り、『専ら文書の所持者の利用に供するための文書』に当たると解すべきである。」前掲最決平成11年11月12日
(※5)「これを本件各文書についてみると,記録によれば,本件各文書は,いずれも銀行である抗告人の営業関連部,個人金融部等の本部の担当部署から,各営業店長等にあてて発出されたいわゆる社内通達文書であって,その内容は,変額一時払終身保険に対する融資案件を推進するとの一般的な業務遂行上の指針を示し,あるいは,客観的な業務結果報告を記載したものであり,取引先の顧客の信用情報や抗告人の高度なノウハウに関する記載は含まれておらず,その作成目的は,上記の業務遂行上の指針等を抗告人の各営業店長等に周知伝達することにあることが明らかである。」「このような文書の作成目的や記載内容等からすると,本件各文書は,基本的には抗告人の内部の者の利用に供する目的で作成されたものということができる。しかしながら,本件各文書は,抗告人の業務の執行に関する意思決定の内容等をその各営業店長等に周知伝達するために作成され,法人内部で組織的に用いられる社内通達文書であって,抗告人の内部の意思が形成される過程で作成される文書ではなく,その開示により直ちに抗告人の自由な意思形成が阻害される性質のものではない。さらに,本件各文書は,個人のプライバシーに関する情報や抗告人の営業秘密に関する事項が記載されているものでもない。そうすると,本件各文書が開示されることにより個人のプライバシーが侵害されたり抗告人の自由な意思形成が阻害されたりするなど,開示によって抗告人に看過し難い不利益が生ずるおそれがあるということはできない。」「以上のとおりであるから,本件各文書は,民訴法220条4号ニ所定の『専ら文書の所持者の利用に供するための文書』には当たらないというべきである。」最決平成18年2月17日民集60巻2号496頁
(※6)「所持者が訴訟当事者である場合には,制裁は事実認定,ひいては訴訟の勝敗に結びつけられる。その方が制裁として強力だからである。本則は,224条1項により,裁判所は,当該文書の記載に関する相手方当事者(文書提出命令申立人)の主張を真実だと認めることができる。当該文書の記載に関する相手方の主張とは,文書提出命令申立ての手続における221条1項1号・2号の文書の表示・趣旨に対応する。要するに,その文書に何が書かれているかという主張である。文書提出命令に従わないときの制裁としては,論理的には,文書が提出されたと同じ状態に持ち込めば必要にして十分である。そこで,文書が提出されたのと同じ状態とするために,当該文書の記載に関する相手方の主張を真実だと認め,事実認定に役立てるとしたのである。しかし,この論理は,実際には完全ではない。当該文書の記載に関する相手方の主張は,多かれ少なかれ,文書そのものよりは簡潔である。文書そのものを読むよりは,迫力を欠き証拠力は縮減するのが道理である。書証は,文書の紙質,筆跡などについての検証を兼ねるのであるが……,この部分の証拠力もない。したがって,一般的には,所持者側当事者としては,文書を提出してしまうよりも,提出せず224条1項の真実擬制を受ける方が立証上有利である。しかも,224条の真実擬制は裁判官の裁量によるのであって,必ず擬制されるとは限らない。」「そこで,所持者側当事者に対する制裁は強化しなければならない。224条3項は,申立人当事者の側が,文書の記載に関して具体的な主張をすることが著しく困難であり,かつ,その文書で証明しようとした要証事実を他の証拠で証明することが著しく困難である場合には,裁判所は要証事実そのものを真実擬制することができるとした。」高橋宏志『重点講義民事訴訟法・下〔第2版補訂版〕』210頁



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