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2019-03-30(Sat)

【基礎演習民事訴訟法】問題11「自由心証・証明度」

とりあえず基礎演習は3分の1が終わりました。

3分の1を終わらせるのに約5日かかっているので,

このペースでいくとあと10日かかります。

それはマズいですね。

ペースをあげないといけないなと思います。

とりあえず,今回は,11問目です。

≪問題≫

 Aは,P会社に勤務する28歳の男性である。休日に1人で自動車を運転して高速道路を走行していたところ,午前2時頃に,時速100キロメートルを超えるスピードで分離帯に衝突する事故を起こしてしまった。Aは病院に運ばれたが,直後に死亡した。
 本件事故の4か月前に,Aは,職場にセールスに来たQ保険会社の販売員に勧められて傷害保険に加入していた。この契約に適用される約款には,被保険者が自動車運行中に急激かつ偶然な外来の事故により傷害を負う場合を保険事故とすること,Q社は被保険者の自殺行為による傷害を負う場合については保険金を支払わないこと,保険事故を理由として死亡した場合に3,000万円の死亡保険金を支払うことが記載されていた。
 Aは未婚であり,Aの母Bが唯一の相続人であった。BがQ社に対して保険金の支払を求めたところ,担当者は,Aに自殺の疑いがあることを理由として支払を拒絶した。そこで,Bは,Q社を被告として,3,000万円の死亡保険金支払請求訴訟を提起した。
 この訴訟の口頭弁論において,Bは,本件事故は偶然な(Aの故意によらない)事故であると主張し,Aは事故の数日前にもBと電話で明るく話していたこと,勤務態度にも変化はなく,友人らも悩みを聞いていないこと,Aは1人で旅行に出ることも多いが,今回は大きなプロジェクトが終わった直後で疲労が重なっていたため不注意で運転を誤ったと思われること,P社には事故の翌日に出金予定である旨連絡してあったことを主張・立証した。Q社は,Aが事故の1週間前に消費者金融から100万円の借金をしたが弁済しておらず,また,事故時の所持金は数千円であったこと,事故現場にはブレーキ痕がなかったこと,AはQ社と契約する直前に他の2社と傷害保険契約を結んでおり,これをQ社に告知していなかったこと,保険料は本件契約分(3万円)を含めて毎月6万円にのぼっていたが,Aの賃金は月25万円程度であることを主張・立証した。
〔設問〕
 裁判所が,本件事故はAの故意によらない事故であると認定するには,どのような問題があるか。BおよびQ社は,どのような証明活動をしなければならないだろうか。


立証活動というまたもよく分からないところ。

たぶん素でこの問題を解いたら,

ルンバールだよなあ,という頭の悪い答案構成しかできません。

≪答案≫
1⑴ AがQ社との間で締結した傷害保険契約(以下「本件傷害保険契約」という。)における約款(以下「本件約款」という。)では,被保険者が自動車運行中に急激かつ偶然な外来の事故により傷害を負う場合を保険事故とする旨が定められているとともに,被保険者の自殺行為による傷害を負う場合には保険金を支払わない旨を定めている。そこで,本件傷害保険契約の下で,BがQ社に対して保険金を請求するに際しての証明責任の所在が,前記保険事故を原因とする保険金請求権(以下「本件保険金請求権」という。)の成立要件との関係で問題となる。
 ⑵ 本件約款においては,その理由のいかんを問わずに自動車運行中に生じた事故により傷害を負ったことを傷害保険金請求権の成立要件とするものではなく,保険事故として急激かつ偶然な外来の事故であることを定めているのであるから,発生した事故が急激かつ偶然な事故であることが保険金請求権の成立要件であるというべきである。また,このように考えなければ,保険金の不正請求が容易となるおそれが増大する結果,保険制度の健全性を阻害し,ひいては誠実な保険加入者の利益を損なうおそれがある。そうすると,本件約款のうち,被保険者の自殺行為により傷害保険金の支払事由に該当したときは傷害保険金を支払わない旨の定めは,傷害保険金が支払われない場合を確認的注意的に規定したものにとどまり,被保険者の自殺行為により傷害保険金の支払事由に該当したことの主張立証責任を保険者に負わせたものではない。したがって,本件約款に基づき,保険者に対して傷害保険金の支払を請求する者は,発生した事故が急激かつ偶然な事故であることについて主張,立証責任を負う(※1)(※2)(※3)
 ⑶ 本件でも,Aについて生じた事故が急激かつ偶然な事故であることが本件傷害保険金請求権の成立要件であるから,Bにおいてこれに該当する事実について主張,立証する責任がある。
2⑴ 次に,Bにおいて,Aについて生じた事故が急激かつ偶然な事故であることについてどの程度証明する必要があるかが問題となる。
 ⑵ 証明は,証拠調べ期日を中心とする審理手続の制約された時間内で行う必要があることから,一点の疑義も許されない自然科学的証明を要求することは裁判所及び当事者に対して不可能を強いるものである。他方で,単なる蓋然性を基礎として裁判所が確信を形成することは,裁判所の事実認定に対する通常人の信頼を危うくする。そこで,訴訟上の立証の程度としては,高度の蓋然性が認められることが必要であり,その判定は通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得るものであることを要する(※4)(※5)(※6)
 ⑶ そうすると,本件でも,Bは,Aについて生じた事故が急激かつ偶然な事故であることについて,通常人が疑いを挟まない程度に真実性の確信を持ち得る程度に立証する必要がある。Q社からは,Aに自殺の疑いがあることを理由に支払が拒絶されており,それを推認させる間接事実が主張,立証されているから,Bは,Aに自殺の意思がなかったことについて立証する必要がある。
3⑴ しかし,Aの内面である自殺の意思について立証を行うことは,特にAが死亡しており,直接的な証拠が存在しない本件においては,著しく困難である。そこで,Bにおける立証活動を軽減することができないかが問題となる。
 ⑵ 間接事実とは,主要事実の存否を経験則によって推認させる具体的な事実をいう(※7)。裁判所は,証拠及び間接事実の証明力,並びに経験則の蓋然性を考慮して,間接事実に基づいて主要事実の存在を事実上推定することができる。この場合には,相手方は,他の間接事実を裁判所に確信させる反証を行うことによって,事実上の推定を覆すこととなる(※8)
 本件では,Bが,Aの死亡前の言動や旅行後の出社予定などの間接事実から,人が自殺をする前にはその兆候があり,自殺をしようとする人は将来の予定を立てないという経験則によって,Aに自殺意思がなかったという主要事実を推認させることとなる。この場合,Q社は,B事故現場の状況やAの事故直前の言動などの間接事実から,自殺意思があったことを推認させ,あるいは,Bの主張する間接事実の推認力を減殺し,又は,Aが内心を打ち明けない性格であるなどの事実を以て前記の経験則を破るといった反証を行うこととなる。
 ⑶ なお,具体的な事実を主張・立証しなくとも裁判所が要件事実の充足を認める一応の推定という考え方もあり得るが,これは実体法上の要件事実の解釈問題にすぎず,立証活動の問題ではない。

以 上


(※1)「本件約款に基づき,保険者に対して災害割増特約における災害死亡保険金の支払を請求する者は,発生した事故が偶発的な事故であることについて主張,立証すべき責任を負うものと解するのが相当である。けだし,本件約款中の災害割増特約に基づく災害死亡保険金の支払事由は,不慮の事故とされているのであるから,発生した事故が偶発的な事故であることが保険金請求権の成立要件であるというべきであるのみならず,そのように解さなければ,保険金の不正請求が容易となるおそれが増大する結果,保険制度の健全性を阻害し,ひいては誠実な保険加入者の利益を損なうおそれがあるからである。本件約款のうち,被保険者の故意により災害死亡保険金の支払事由に該当したときは災害死亡保険金を支払わない旨の定めは,災害死亡保険金が支払われない場合を確認的注意的に規定したものにとどまり,被保険者の故意により災害死亡保険金の支払事由に該当したことの主張立証責任を保険者に負わせたものではないと解すべきである。」最判平成13年4月20日民集55巻3号682頁
(※2)「商法は、火災によって生じた損害はその火災の原因いかんを問わず保険者がてん補する責任を負い、保険契約者又は被保険者の悪意又は重大な過失によって生じた損害は保険者がてん補責任を負わない旨を定めており(商法665条、641条)、火災発生の偶然性いかんを問わず火災の発生によって損害が生じたことを火災保険金請求権の成立要件とするとともに、保険契約者又は被保険者の故意又は重大な過失によって損害が生じたことを免責事由としたものと解される。火災保険契約は、火災によって被保険者の被る損害が甚大なものとなり、時に生活の基盤すら失われることがあるため、速やかに損害がてん補される必要があることから締結されるものである。さらに、一般に、火災によって保険の目的とされた財産を失った被保険者が火災の原因を証明することは困難でもある。商法は、これらの点にかんがみて、保険金の請求者(被保険者)が火災の発生によって損害を被ったことさえ立証すれば、火災発生が偶然のものであることを立証しなくても、保険金の支払を受けられることとする趣旨のものと解される。このような法の趣旨及び前記1(2)記載の本件約款の規定に照らせば、本件約款は、火災の発生により損害が生じたことを火災保険金請求権の成立要件とし、同損害が保険契約者、被保険者又はこれらの者の法定代理人の故意又は重大な過失によるものであることを免責事由としたものと解するのが相当である。」「したがって、本件約款に基づき保険者に対して火災保険金の支払を請求する者は、火災発生が偶然のものであることを主張、立証すべき責任を負わないものと解すべきである。これと結論において同旨をいう原審の判断は正当である。所論引用の最高裁平成10年(オ)第897号同13年4月20日第二小法廷判決・民集55巻3号682頁、最高裁平成12年(受)第458号同13年4月20日第二小法廷判決・裁判集民事202号161頁は、いずれも本件と事案を異にし、本件に適切でない。論旨は採用することができない。」最判平成16年12月13日民集58巻9号2419頁
(※3)「商法629条が損害保険契約の保険事故を「偶然ナル一定ノ事故」と規定したのは,損害保険契約は保険契約成立時においては発生するかどうか不確定な事故によって損害が生じた場合にその損害をてん補することを約束するものであり,保険契約成立時において保険事故が発生すること又は発生しないことが確定している場合には,保険契約が成立しないということを明らかにしたものと解すべきである。同法641条は,保険契約者又は被保険者の悪意又は重過失によって生じた損害については,保険者はこれをてん補する責任を有しない旨規定しているが,これは,保険事故の偶然性について規定したものではなく,保険契約者又は被保険者が故意又は重過失によって保険事故を発生させたことを保険金請求権の発生を妨げる免責事由として規定したものと解される。」「本件条項は,「衝突,接触,墜落,転覆,物の飛来,物の落下,火災,爆発,盗難,台風,こう水,高潮その他偶然な事故」を保険事故として規定しているが,これは,保険契約成立時に発生するかどうか不確定な事故をすべて保険事故とすることを分かりやすく例示して明らかにしたもので,商法629条にいう「偶然ナル一定ノ事故」を本件保険契約に即して規定したものというべきである。本件条項にいう「偶然な事故」を,商法の上記規定にいう「偶然ナル」事故とは異なり,保険事故の発生時において事故が被保険者の意思に基づかないこと(保険事故の偶発性)をいうものと解することはできない。原審が判示するように火災保険契約と車両保険契約とで事故原因の立証の困難性が著しく異なるともいえない。」「したがって,車両の水没が保険事故に該当するとして本件条項に基づいて車両保険金の支払を請求する者は,事故の発生が被保険者の意思に基づかないものであることについて主張,立証すべき責任を負わないというべきである。」最判平成18年6月1日民集60巻5号1887頁
(※4)訴訟上の因果関係の立証は、一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性を証明することであり、その判定は、通常人が疑を差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし、かつ、それで足りるものである。」最判昭和50年10月24日民集29巻9号1417頁
(※5)「行政処分の要件として因果関係の存在が必要とされる場合に、その拒否処分の取消訴訟において被処分者がすべき因果関係の立証の程度は、特別の定めがない限り、通常の民事訴訟における場合と異なるものではない。そして、訴訟上の因果関係の立証は、一点の疑義も許されない自然科学的証明ではないが、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認し得る高度の蓋然性を証明することであり、その判定は、通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得るものであることを必要とすると解すべきであるから、法八条一項の認定の要件とされている放射線起因性についても、要証事実につき『相当程度の蓋然性』さえ立証すれば足りるとすることはできない。」最判平成12年7月18日集民198号529頁
(※6)証明は,証拠調べ期日を中心とする審理手続という,制約された時間の中で行わなければならず,そのために用いられうる証拠の範囲も無限定ではありえない。したがって,自然科学的証明の表現が適切か否かはともかくとして,万人が疑いを差し挟む余地のない確信の形成を要求することは,裁判所および当事者に対して不可能を強いることになる。逆に,訴訟制度が納税者の負担による公の制度として設けられている以上,単なる蓋然性を基礎として裁判所が確信を形成することは,裁判所の事実認定に対する通常人の信頼を危うくする結果となる。判例が,通常人が疑いを差し挟まない程度の高度の蓋然性を基礎として確信を形成することを要求するのは,このような趣旨として理解される。」伊藤眞『民事訴訟法〔第4版補訂版〕』332頁
(※7)「『間接事実』は,主要事実の存否を経験則によって推認させる具体的な事実である。たとえば,200万円の現金の受渡しという主要事実を推認させる間接事実として,貸し手の銀行口座からの200万円の引落しの事実と,借り手の銀行口座への同金額の同時期における入金の事実などである。」三木浩一ほか『LEGAL QUEST民事訴訟法〔第2版〕』208頁
(※8)「法律上の推定の主体が立法者であるのに対して,事実上の推定の主体は,自由心証にもとづいて事実認定を行う裁判所である。裁判所は,争いのある事実に関して,証拠から直接,または証拠にもとづいて間接事実を認定し,間接事実にもとづいて主要事実の存在を推定する。証拠にもとづく主要事実の証明を直接証明と呼び,間接事実にもとづく主要事実の証明を間接証明と呼ぶ。この推定は,経験則を用いて行われ,事実上の推定と呼ばれる。事実上の推定は,裁判官の自由心証によって立証主題たる事実について確信が形成される過程を示すものであり,法律上の推定と異なって,法律要件事実についての証明責任の転換をもたらすものではない。したがって,要件事実について証明責任を負う当事者は,裁判官の確信を形成しない限り,法規不適用の危険を免れないし,逆に相手方は,当該事実についての心証を真偽不明に追い込むだけで法規の適用による法律効果の発生を妨げられる。」「事実上の推定が成立するかどうかは,証拠および間接事実の証明力,ならびに経験則の蓋然性との間の相対的関係によって決定される。たとえば,手元不如意の状態にある借主が,貸主が金銭授受が行われたとする日時の直後にそれに相当する金額をもって第三者に弁済を行った間接事実が認められれば,裁判所は,他に特段の事情が認められない限り,金銭授受の事実を確信することが許されよう。反証の負担を負う借主としては,別の者から融資を得たなど,他の間接事実を裁判所に確信させない限り,上の事実上の推定を覆すことは困難である。このように,証明責任を負わない当事者が主要事実の反証にあたって,その基礎となる間接事実について裁判所の確信を形成する負担を負うことがあるが,これは,証明責任と矛盾するものではない。」前掲伊藤366頁
(※9)「『一応の推定』は,明治期の判例で登場した概念であり,近年に至るまで,わが国の裁判例において,主張・立証負担を軽減するための道具概念として,広く用いられてきた。また,『表見証明』は,ドイツの判例・学説において形成されてきた概念であり,実質的には,一応の推定とほぼ同様の考え方である。具体的には,いずれも,主として,不法行為における『過失』などの規範的要件を認定する場面で用いられるもので,たとえば,不法行為における損害賠償請求訴訟において,過失に該当する具体的な事実の立証が十分でなくても,一定の経験則を強く働かせることにより,要件事実の充足を認めて損害賠償請求を認容してよいとする法理である。もっとも,一応の推定(表見証明)についての学説の理解は一致しておらず,どのような事案をもって一応の推定(表見証明)が使われた事例と考えるのかも,論者ごとに異なっている。したがって,以下に述べるところは,1つの視点に立った整理である。」「たとえば,開腹手術後にガーゼが腹腔内に遺留されていたのが発見された場合において,遺留の経緯や病院の過失に関する具体的な主張・立証がない場合であっても,通常ではガーゼが腹腔内に遺留されることは起こり得ないとの経験則を重くみることによって,抽象的かつ不十分な主張・立証に基づいて病院の過失を認定する場合などが,一応の推定(表見証明)の典型例であるとされる。これによって,被害者である原告が具体的な経過を知ることのできない手術室で起こった事実に関して,原告の主張・立証負担が緩和される。」「もっとも,一応の推定(表見証明)が,一般的な通用性を有する主張・立証負担の軽減手段であるかどうかは疑問である。過失などの規範的要件は,法的評価概念であって主要事実ではなく,これらに該当する具体的な事実こそが主要事実である……。そして,法的評価のための主要事実の具体性の程度は,訴訟上の問題というよりも,規範的要件の解釈という実体法上の問題であるからである。すなわち,前述の例でいえば,過失に該当する主要事実として,執刀医や看護師のうちの特定の者が行った特定の行為という具体性の高い事実を設定するか,それとも手術に関与した病院関係者のいずれかの何らかの不注意な行為という抽象性の高い事実を設定するかは,規範的要件の解釈問題である。つまり,一応の推定(表見証明)は,規範的要件という特殊な法律要件に固有の問題であり,主張・立証負担の軽減手段の種類としては,実体法の解釈における証明主題の選択の問題として位置付けられよう。」前掲三木ほか278頁



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