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2019-03-30(Sat)

【基礎演習民事訴訟法】問題9「釈明権」

この記事を投稿する頃には,日付が変わっている気がするので,

【昨日の一品】のコーナーです。

S__14655490.jpg

こちらは,いわゆる「すた丼」と呼ばれる類のもの。

『伝説のすた丼屋』国立東店でいただきました。

一橋ローの周辺は,学生向けの飲食店が意外とそんなにあるわけではないので,

すた丼はかなり重宝されている店の一つです。

昨日は29日ということで,「肉の日」。

肉の日は肉が増量されるようです。

とはいえ,普段から頻繁に通っているわけではないので,

一体どれだけ増量されたのかという実感が持てているわけでもなく,

普通のすた丼を食べていただきましたという感じですね。

味はとてもしょっぱいので,たまに来るくらいがいいです個人的には。

でも,意外と盲点ですけど,

味噌汁をいただけるのって,こういう店とか定食屋に行ったときだけですよね。

ところで,今回は,基礎演習の9問目です。

≪問題≫

【ケース1】
 Aは,半年ほど前にインターネットの掲示板で知り合ったBから,「簡単に儲けが出る新しいe-ビジネスを始めようと思っているが,事業資金がないので投資してくれないか」と持ちかけられ,100万円を渡した。当初の3か月間は,毎月5万円がAの預金口座に振り込まれていたが,その後の振込はされなかった。そこで原告Aは,Bを相手取り,Bの詐欺に基づきこの投資契約を取り消したと主張して,投資金100万円の返還請求訴訟を提起した。これに対し,Bは,詐欺の事実はなく,4回目以降の配当ができなかったのは,事業が不振に陥ってしまったためであると反論した。
 裁判所は,投資契約が締結されたというAの主張に疑問をもっており,したがって,投資契約の際の詐欺も認定できず,このままでは請求は棄却すべきであるが,この契約が単なる100万円の消費貸借契約にあたるとすれば,全額とは言えないまでも(月5万円のはいとうは利息制限法違反の利息にあたる可能性が大であるから),一部認容判決をしうると考えていた。
〔設問〕
 このとき,裁判所は,Aが訴えの変更をするべく,釈明権を行使すべきか。

【ケース2】
 Cは,親友であるDの委託を受けて,DがE銀行より借りた1,000万円の債務の保証人となった。この1,000万円は,小売業を営むDがその店舗を改築し,新規事業を行うための資金であった。弁済期が来てもDが返済をしなかったため,E銀行はCに返済を請求し,Cは利息を含めた1,100万円をしはらった。
 しばらく経ってから,Cは,Dを被告として,求償権に基づき1,100万円の支払を持とめて訴えを提起した。Dは,すでに求償債務については弁済したとして争った。審理を進めるうちに,Dが求償金を支払った有力な証拠は存在しないこと,さらに,CがE銀行に保証債務を返済したのが7年前であったことが明らかとなった。判例(最判昭和42年10月6日民集21巻8号2051頁)によれば,本件求償請求権は5年の商事消滅時効(商522条)にかかる可能性がある。
〔設問〕
 このとき,裁判所は,Dに時効の抗弁を提出させるために,Dに対し,釈明権を行使することができるか。

【ケース3】
 F,GおよびHは甲土地の共有者であった。Fは,Gが無断で乙建物を建築したとして,Gを被告として建物収去土地明渡請求訴訟を提起した。GはHより賃借しており不法占有ではないと争った。これに対して,裁判所は,不法占有の事実を認定するとともに,Fの権利濫用を基礎づける事実も存在する心証を得た。
〔設問〕
 このとき,裁判所は,Fの権利濫用を理由にFの請求を棄却しようと考えているが,釈明をする必要があるか。


釈明権です。

苦手な人が多いです。

苦手っていうかなんでしょうね。

何言ってんのか分かんないというか,

学説とかでごちゃごちゃ言われていることを,

どのように答案化するかがしっかり固まっていないというところでしょうか。

事柄の性質上,規範がきっちり立つところでもないので,

論証化がなかなかしにくい側面もあります。

結局個別事案ごとの検討をするよっていうことを言えればいいのでしょうかねぇ……

≪答案≫
【ケース1】
1 裁判所は,訴訟関係を明瞭にするため,釈明権を行使することができる(民訴法149条)。釈明権は,当事者の主張・立証を正確に受領するとともに,当事者にできる限り十分な手続保障の機会を与えるために行われるものである。裁判所が当事者にこのような機会を与えることは,単に裁判所の権能にとどまらず,適正かつ公平な裁判の実施を国民から付託された裁判所の義務でもあるというべきである(以下,この義務を「釈明義務」という。)(※1)
2 もっとも,弁論主義のもとでは,訴訟資料・証拠資料提出の責任は,当事者に課されているのであるから,裁判所による釈明権の不行使が,すべて釈明義務違反と評価されるものではない(※2)。特に,当事者が申立てや主張をしていない場合にこれを積極的に示唆する積極的釈明(※3)を行う場合には,裁判所が一方当事者に加担する形を招きやすく,裁判所の中立性や公平性の観点から問題があるため,釈明義務違反と評価することは限定的であるべきである(※4)
 そこで,裁判所が釈明義務を負うか否かは,具体的な訴訟の状態に照らして,判決における勝訴逆転の可能性,当事者による法的構成の当否,当事者自治の期待可能性,当事者間の実質的公平など諸般の事情を総合的に衡量して決すべきである(※5)
3 これを本件についてみると,裁判所はAB間で投資契約が締結されたことについて疑問を持っている一方,消費貸借契約であるとすれば一部認容することができると考えているから,勝敗の逆転する可能性はあり得る。しかし,紛争の実質は,現実にAからBにわたった100万円の返還についてであること,また,既に提出された訴訟資料,証拠資料からすれば消費貸借契約の成立が窺われることからすれば,裁判所が全く新しい観点から釈明を行うものではないから,当事者間の実質的公平を害することにはならない。したがって,裁判所は,Aが訴えの変更をするべく,釈明権を行使すべきである(※6)(※7)(※8)
【ケース2】
 本件においても,裁判所がDに対して釈明権を行使すべきかどうかについて,前記の観点から検討する。
 裁判官が消滅時効の抗弁を提出させるべく釈明権を行使した場合には,釈明を受けた当事者は当然のことながら消滅時効の抗弁を提出し,その結果抗弁が容れられて,請求が棄却されることとなる。そうすると,判決の勝敗が逆転することは容易に予想される。また,時効は,その援用がない限りその効力を生じないものとして,当事者に効力発生の契機を委ねていると考えられるところ(民法145条),そのような主張がDから全くされていないにもかかわらず,これを裁判所が積極的に示唆することは,当事者間の実質的公平を著しく害するものである。そうすると,裁判所は,時効の抗弁の提出について釈明義務を負うものではないと考えられるから,裁判所は,釈明権を行使すべきではない(※9)
【ケース3】
1 裁判所は,F及びGが権利濫用の法的構成を主張していないにもかかわらず,このような構成をとって判決をすることができるか。
2 民事訴訟における当事者には,裁判の基礎となる主張及び立証の機会を与えられる権利(以下「弁論権」という。)を有している(※10)。当事者が事実の主張や立証に際してある法的観点を前提としているときに,裁判所が別の法的構成の方が妥当であると考えた場合に,裁判所が当事者にこれを示して議論や再考の機会を与えずに判決で当事者と異なる法的観点を採用することは,当事者に攻撃防御を行うのに必要な情報を与えないことによる不意打ちとなるものであり,弁論権を侵害するものである(※11)。したがって,最判所が,訴訟の経過等から当事者に予測困難な法的構成を採る場合には,当事者に十分な攻撃防御の機会を与えるべく,釈明権を行使しなければならない(※12)(※13)
3 これを本件についてみると,裁判所は,F及びGの主張する事実から,Fの権利濫用を基礎づける事実が存在するとの心証を得ているものの,両当事者からはこのような法的構成が主張されていたものとはうかがわれない。また,権利濫用という一般条項の法的構成が,従前の訴訟経過から当然に予想されるものとも限らない。したがって,裁判所は,Fの権利濫用の事実を認定して判決をするためには,当事者に釈明をしなければならない。

以 上


(※1)釈明権と釈明義務との関係については,三木浩一ほか『LEGAL QUEST民事訴訟法〔第2版〕』218頁は,「釈明権と釈明義務の関係については,①釈明権は事実審の権限行使の問題であるが,釈明義務は事実審の権限不行使に関する上告審の評価の問題であるから,両者の範囲はおのずから異なるとする見解もあれば,②釈明権と釈明義務は表裏の関係にあり,両者の範囲は一致するが,上告審での破棄事由となるのは釈明義務違反の一部にとどまるとする見解もある。事実審の行為規範としての釈明義務の範囲は釈明権と一致するが,上告審の評価規範としての釈明義務は行為規範としての釈明義務よりも狭くなるものと解すべきであるから,②の立場が妥当である。もっとも,いずれの見解をとろうと,具体的な結論に違いはなく,理念としての差異にとどまる」としています。リークエは②の見解を推していますが,この記述からはなぜ②の見解が妥当なのか説明されているとはいえない(事実審の行為規範としての……の部分は,②の見解を言い換えているだけにしか読めない)と思います。
(※2)「弁論主義の下では,訴訟資料・証拠資料提出の責任は,当事者に課されているのであるから,裁判所による釈明権の不行使が,すべて釈明義務違反と評価されるわけではない。具体的な訴訟の状態に照らして,釈明権が行使されなければ不合理な結果が生じる場合であって,かつ,適切な申立てや主張をなさなかった当事者が釈明権不行使の違法を主張することが訴訟上の信義則に反しない場合,はじめて釈明義務違反が肯定される。」伊藤眞『民事訴訟法〔第4版補訂版〕』306頁
(※3)「『積極的釈明』とは,当事者が申立てや主張をしていない場合に,これを積極的に示唆する釈明権の行使である。」前掲三木ほか221頁
(※4)「積極的釈明は,一方当事者に対して裁判所が新たな武器を与えることにつながりやすく,中立性や公平性の観点から慎重な態度が要求されるので,釈明義務違反となる場合は限定的に解すべきである。」前掲三木ほか221頁
(※5)「具体的に,いかなる場合が積極的釈明における釈明義務違反となるかについては,事案ごとに多面的な利益衡量が要求されるので一概に論じることは困難であるが,考慮要素としては,判決における勝訴逆転の可能性,当事者による法的構成の当否,当事者自治の期待可能性,当事者間の実質的公平などが挙げられる。また,当事者の本人訴訟か弁護士による代理訴訟かも,釈明権が当事者の手続保障を実質化する制度である以上,考慮要素となり得ることは否定できない。」前掲三木ほか221頁
(※6)「釈明の制度は、弁論主義の形式的な適用による不合理を修正し、訴訟関係を明らかにし、できるだけ事案の真相をきわめることによつて、当事者間における紛争の真の解決をはかることを目的として設けられたものであるから、原告の申立に対応する請求原因として主張された事実関係とこれに基づく法律構成が、それ自体正当ではあるが、証拠資料によつて認定される事実関係との間に喰い違いがあつて、その請求を認容することができないと判断される場合においても、その訴訟の経過やすでに明らかになつた訴訟資料、証拠資料からみて、別個の法律構成に基づく事実関係が主張されるならば、原告の請求を認容することができ、当事者間における紛争の根本的な解決が期待できるにかかわらず、原告においてそのような主張をせず、かつ、そのような主張をしないことが明らかに原告の誤解または不注意と認められるようなときは、その釈明の内容が別個の請求原因にわたる結果となる場合でも、事実審裁判所としては、その権能として、原告に対しその主張の趣旨とするところを釈明することが許されるものと解すべきであり、場合によつては、発問の形式によつて具体的な法律構成を示唆してその真意を確めることが適当である場合も存するのである。」最判昭和45年6月11日民集24巻6号516頁
(※7)「事実審における釈明の必要は,個々の具体的事件においてその事件の訴訟状態に応じて個別的に決定されるべきもので,一般的抽象的に或る場合については釈明は許されるが,他の或る場合については絶対に釈明は許されないと論断することは不可能なのであるが,請求原因の変更を示唆する結果となるような場合の釈明の可否についても同様のことがいえると思う。現在の実務のとる旧訴訟物理論に立てば,請求原因を異にするかぎり,一定の事実関係の主張に基づいて敗訴しても既判力が及ばず,再訴は妨げられない故,敗訴は原告にとって決定的な打撃ではない。しかし,抽象的にそうはいえても,及ぶかぎり,現に係属する訴訟において当事者間の紛争を終息させるのが訴訟制度本来の目的と訴訟経済からいってそれ自体適正,妥当な解決というるのであるから,形式的公平に勝る実質的公平を保つことのできる状況にある場合には,形式的な訴訟物の異同にこだわる必要はむしろ存在しないといってよく,いちがいに請求原因を異にするというだけの理由で釈明権能を否定する理由は乏しいものと思われる」最判解民事篇昭和45年度(上)296頁
(※8)「当事者,特に原告による申立てが不明瞭な場合,たとえば主張事実を前提とすれば,他の種類の請求権を訴訟物とするのが適当な場合などにおいては,裁判所の釈明義務が肯定される。これらは,多くの場合訴えの変更を生じさせるものであるが,一般に訴えの変更を促す釈明権行使も許され,かつ,当事者の訴訟追行能力や訴えの変更を余儀なくされる事情などを考慮して裁判所に釈明権行使が期待される場合には,釈明義務が肯定される。特に,……旧訴訟物理論を採用する場合には,紛争の抜本的解決という視点からも,裁判所は,同一の社会生活関係が前提とされている限り,請求原因の変更による訴えの変更について積極的に釈明権を行使すべきである。」前掲伊藤307頁
(※9)「所論原審の陳述は、本件175番山林の客観的範囲を明らかならしめる事情を陳述したにとどまり、その取得時効完成の要件事実を陳述したものとは解されないのみならず、仮りに、その陳述の真意が後者を陳述するにあつたとしても、時効を援用する趣旨の陳述がなかつたのであるから、原審が時効取得の有無を判断しなかつたのは不当でなく、その陳述の足らなかつたことの責任を裁判所に転嫁し、釈明権不行使の違法をもつて非難し得べき限りではない。」
(※10)「『手続保障』は,現在の民事訴訟法学における最重要概念の1つである。しかし,その意味するところは,論者や論じられる場面によって,必ずしも同一ではない。一般的には,憲法32条が保障する『裁判を受ける権利』を具体化するために,当事者に手続主体としての地位を保障すべき理念として観念される。手続主体としての地位にある者に認められる諸権能は『当事者権』と呼ばれるので……,この意味における『手続保障』は,当事者権の保障とほぼ同義といってもよい。」「当事者権の中核に位置するのは弁論権である。『弁論権』とは,裁判の基礎となる資料を提出する権利,すなわち主張および立証の機会を与えられる権利である。こうした弁論権およびこれを保障するための諸権利を包含するものとして,ドイツから輸入された『審尋請求権(審問請求権ともいう)』という概念もある。したがって,『手続保障』の中でもとくに重要なのは,当事者権のうちの『弁論権』ないし『審尋請求権』の保障である。後者の意味における手続保障は,判決手続のみならず,非訟手続を含むあらゆる司法上の手続において,等しく尊重されるべきものである。」前掲三木ほか23頁
(※11)「『法的観点指摘義務』とは,裁判官が当該事案に関して採用を考えている法的観点について,そのことを当事者に示すべき義務をいう。当事者が,事実の主張や立証に際してある法的観点を前提としているときに,裁判所が別の法的構成の方が妥当であると考えた場合には,裁判所がこれを当事者に示すことによって,当事者に裁判所と議論する機会や再考の機会を与えるべきである。裁判所が,これをせずにいきなり判決で当事者とは異なる法的観点を採用すると,当事者は不意打ちを受けることになって手続保障の侵害が生じる。弁論主義との関係では,裁判所は,当事者が主張しない事実を判決の基礎にするわけではないので,弁論主義違反の問題は直接的には生じないが,弁論権との関係では,攻撃防御を行うのに必要な情報が与えられていないことになるので,裁判所が法的観点指摘義務を十分に果たさない場合には弁論権の侵害となる。すなわち,法的観点指摘義務は手続保障の中でも弁論権に関わるものであり,したがって職権探知主義のもとでも問題となり得る。」前掲三木ほか222頁
(※12)「(1) 本件訴訟において,被上告人は,前記1(3)の事実を,本件合意の存在を推認させる間接事実としては主張していたが,当事者双方とも,上告人が定年規程による定年退職の効果を主張することが信義則に反するか否かという点については主張していない。」「かえって,記録によれば,本件訴訟の経過として,① 本件は,第1審の第2回口頭弁論期日において弁論準備手続に付され,弁論準備手続期日において本件の争点は本件合意の存否である旨が確認され,第3回口頭弁論期日において,弁論準備手続の結果が陳述されるとともに,被上告人本人及び2名の証人の尋問が行われ,第4回口頭弁論期日において口頭弁論が終結されたこと,② 第1審判決は,本件合意があったとは認められないとして被上告人の請求を棄却するものであったところ,これに対し,被上告人から控訴が提起されたこと,③ 原審の第1回口頭弁論期日において,控訴状,被上告人の準備書面(控訴理由が記載されたもの)及び上告人の答弁書が陳述されて口頭弁論が終結されたところ,控訴理由もそれに対する答弁も,専ら本件合意の存否に関するものであったこと,以上の事実が認められる。」「(2) 上記(1)のような訴訟の経過の下において,前記3のように信義則違反の点についての判断をするのであれば,原審としては,適切に釈明権を行使して,被上告人に信義則違反の点について主張するか否かを明らかにするよう促すとともに,上告人に十分な反論及び反証の機会を与えた上で判断をすべきものである。とりわけ,原審の採った法律構成は,① 上告人には,被上告人に対し,定年退職の1年前までに,定年規程を厳格に適用し,かつ,再雇用をしない旨を告知すべき信義則上の義務があったとした上,さらに,② 具体的な告知の時から1年を経過するまでは,賃金支払義務との関係では,信義則上,定年退職の効果を主張することができないとする法律効果を導き出すというもので,従前の訴訟の経過等からは予測が困難であり,このような法律構成を採るのであれば,なおさら,その法律構成の適否を含め,上告人に十分な反論及び反証の機会を与えた上で判断をすべきものといわなければならない。」「(3) 原審が,上記(1)のような訴訟の経過の下において,上記(2)のような措置をとることなく前記3のような判断をしたことには,釈明権の行使を怠った違法があるといわざるを得ず,原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。」最判平成22年10月14日集民235号1頁
(※13)「狭義の一般条項[公序良俗規定(民法90条),信義則および権利濫用規定(民法1条3項)]について,仮に主張不要説に従うと,信義則違反等の規範的要件に該当する事実が証拠資料から明らかになった場合,裁判所は,当該事実について当事者の主張がなくても信義則違反等に基づく裁判をすることができる。このような場合,例えば,あらかじめ,信義則が問題となることが当事者に知らされていれば,当事者の一方が信義則違反を妨げる事由を主張する可能性や,信義則を適用する法的構成を問題にする機会が保障される。当事者にそうした機会が保障されていなければ,当事者に事実的または法的な側面で不意打ちを与えるであろうことは十分に推測できる。それゆえ,主張不要説の下でも,当事者に不意打ちを与えないよう,裁判所は,信義則違反等に該当する事実が証拠資料などから現れたときは,それを当事者に釈明し,当事者に事実主張や法的討議を促す義務--いわゆる法的観点指摘義務(法的問題指摘義務)--を負うとする見解が有力に主張されている……。」「このような見解を前提にすると,信義則違反に該当する事実を当事者自らが主張している場合でも,当事者が信義則適用を自覚していないときは,裁判所による法的観点指摘義務が必要になるものと考えられる……。なぜなら,かかる場合も,自覚がないために当事者は,信義則違反を根拠づける事実を補充する機会や,信義則適用を妨げる事由を提出したり,信義則という法的構成を争う機会を失うことによって,不意打ちを受ける危険が存するからである……。したがって,当事者による事実の主張がある場合でも,不意打ち防止の観点から,裁判所には,信義則違反の法的観点を当事者に指摘することが要求されうる。もっとも,このような法的観点指摘義務を理論的にどう位置づけるか,例えば釈明義務(民訴149条)の一態様と見るかは,その根拠と同様,さらに詰める必要がある。」髙田昌宏「信義則違反の主張と釈明義務」ジュリ1420号162頁



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