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2019-03-29(Fri)

【基礎演習民事訴訟法】問題8「自白」

今日も見事な二度寝をかました影響で,

答案を書く予定がズレにズレています。

ヤバいです。

≪問題≫

 Yは本件土地をAから借り受けたと称して使用している。Aの死後,相続により本件土地の所有権を取得した長男Xは,Yを被告として,所有権に基づき土地の明渡しを求める訴えを提起した。
 第1回口頭弁論期日において,この事件は弁論準備手続に付されることになった。
 弁論準備手続において,Yは,Xの所有権を認めたうえで,AY間で本件土地をYが無償で使用することを認める合意がなされたこと,および,その合意に基づいてYは本件土地の引渡しを受けたこと(使用貸借契約の事実)を主張した。これに対して,Xは,使用貸借契約締結の事実の存在を認めたうえで,本件使用貸借契約には返還の時期の定めがないので,ただちに解約すると主張した。Yは,返還時期の定めはあり,未だにその時期は到来していない,したがって即時の解約は許されないと反論した。そこで,返還時期の定めの有無が本件訴訟における証明すべき事実であることが,裁判所および両当事者間で確認され,弁論準備手続は終了した。
 その1か月後に第2回の口頭弁論期日が開かれ,弁論準備手続の結果の陳述,および,AY間の返還時期の定めの有無を明らかにするための当事者尋問および証人尋問が行われた。証人尋問終了後,裁判所は,最終口頭弁論期日を2週間後に指定した。
 最終口頭弁論期日において,Yは,Aとの間で本件土地を無償で貸してもらう合意をしたことはない,AY間でなされたのは,Yが相当な賃料を支払って本件土地を使用する旨の合意(賃貸借契約締結の事実)であり,30年の存続期間はまだ経過していないためXの解約は効力を生じない,と主張をあらためた。
〔設問〕
 裁判所は,Yの賃貸借契約締結の事実の主張について,どのような扱いをするべきかを論じなさい。


自白です。

でも,この問題でXには自白が成立しないので,

自白絡みではほとんど問題がありません。

自白を学ぶ章の問題で,

こんな問題を取り扱ってもいいのでしょうか。

なんなら自白よりも時機に後れた攻撃防御方法の方が問題となるような気がします。

おかしいですね。

≪答案≫
1⑴ 本件の弁論準備手続においては,Yが,AY間で本件土地について使用貸借契約がされたと主張しており,Xはその事実の存在を認めている。これに対して,Yは最終口頭弁論期日において,AY間で本件土地について賃貸借契約がされたと主張し,弁論準備期日とは異なる主張をしている。そこで,賃貸借契約の事実は,弁論準備手続における使用貸借契約の事実について裁判上の自白が成立していることを理由として認められないのではないかが問題となる。
 ⑵ 裁判上の自白とは,口頭弁論又は弁論準備手続における相手方の主張と一致する自己に不利益な事実の陳述をいう。民事訴訟においては,訴訟外の私的自治の原則を訴訟上にも反映した弁論主義,すなわち判決の基礎となる事実及び証拠の収集及び提出を当事者の権能かつ責任とする原則が妥当するため,裁判所は,当事者間で争いのない事実については,証拠調べなしに裁判の基礎にしなければならない。そのため,裁判上の自白の効力として,証明不要効(民訴法179条),判断拘束効及び審理排除効が生じる(※1)。また,いったん自白が成立した事実についてその撤回が自由にできることとなると,証明不要効が事実上意味を持たなくなるから,自白の効果として不可撤回効も生じる。
 また,裁判上の自白の根拠を弁論主義に求める以上,自白が成立する事実は,主要事実に関する陳述に限られる。また,自白の成立には,その事実の陳述が一方当事者にとって不利益となる事実であることが必要だから,自白が成立するのは,その不利益を被る一方当事者についてのみである。
 ⑶ これを本件についてみると,Yは,弁論準備手続において,本件土地についてAY間で使用貸借契約がされたとの事実を陳述しているところ,この事実をXは認めているので,当該事実について両当事者における主張の一致が認められる。本件における訴訟物は,XのYに対する所有権に基づく本件土地の明渡請求権であるが,使用貸借契約の事実が認められる場合には,Yは本件土地を占有する正当な権限が認められるから,使用貸借契約の事実は抗弁事実として位置づけられる事実であって,自白の対象となる主要事実である。そして,Xが当該事実について認める旨の陳述をすることは,相手方であるYが証明責任を負う抗弁事実について認めるものであるから,Yを証明責任の負担から解放する点で,Xに不利益な陳述となる。したがって,本件土地について賃貸借契約が成立したとの事実について,Xに自白が成立している。
 そうすると,Yについては,当該事実について自白が成立しているわけではないので,Yとの関係では当該事実についての不可撤回効は働かない。そうすると,Yは当該事実と異なる陳述をしても,自白の不可撤回効と抵触するものではない。したがって,Yが賃貸借契約締結の事実を陳述しても,自白の不可撤回効との関係で問題となるものではない。
2⑴ もっとも,Yが賃貸借契約の事実について主張したのは,最終口頭弁論期日においてであるから,この主張を時機に後れた攻撃防御方法であるとして却下することはできないか(民訴法157条1項)。
 ⑵ 「時機に後れた」とは,より早期の適切な時期に提出できたことを意味する(※2)。本件では,弁論準備手続が行われ,既に主張や証拠方法などについての整理が行われているのであるから,この段階で主張すべき法律構成についても整理されているため,弁論準備手続以降で主張すべき法律構成を変更することは時機に後れたものであるというべきである。
 本件でYが賃貸借契約の事実を主張するに至ったのは,弁論準備手続において,使用貸借契約の返還の定めの有無が争点となり,第2回口頭弁論期日における証人尋問等を踏まえ,返還時期の観点で賃貸借契約を主張する方がより有利であると考えたからであると考えられる。しかし,そうであれば,弁論準備手続において,返還時期の定めの有無が争点として整理された段階で賃貸借契約の事実を主張する予定であることを明らかにすべきであり,このように予めそのことを明らかにしてもYにとって特段不利益となる事実はない。したがって,Yが最終口頭弁論期日になって賃貸借契約の事実を主張することは,「重過失」があるというべきである(※3)
 「訴訟の完結の遅延」とは,その攻撃防御方法を却下した場合に想定される訴訟完結時と,その攻撃防御方法の審理を続行した場合に想定される訴訟完結時を比較して判断する(※4)。Yが賃貸借契約の事実を主張したのは,最終口頭弁論期日であって,既に使用貸借契約における返還時期の定めの有無について焦点を絞った審理が,証人尋問などを通じてほぼ完結した段階である。そうすると,これまで審理されてきた使用貸借契約とは別の構成となる賃貸借契約の事実については別途それを基礎づける事実関係を取り調べる必要があるのであるから,この攻撃防御方法を採用すると,これを却下した場合に想定される訴訟完結時よりも,その訴訟完結時が引き伸ばされる可能性が高い。したがって,賃貸借契約の事実を攻撃防御方法として採用することは「訴訟の完結の遅延」となる。
 ⑶ したがって,裁判所は,Yの賃貸借契約締結の事実について,時機に後れた攻撃防御方法として却下すべきである。

以 上


(※1)判断拘束効と審理排除効の差異については,三木浩一ほか『LEGAL QUEST民事訴訟法〔第2版〕』232頁を参照。「一般的には,自白の効果として,『証明不要効』,『審判排除効』,『撤回制限効』の3つが挙げられることが多い。このうち,『審判排除効』は,裁判所の審理および判断を排除する効果であり,本書にいう『審理排除効』と『判断拘束効』の両者を含む意味で使われる。しかし,『審理排除効』は,審理途中で問題になる効果であるのに対し,『判断拘束効』は,審理終結後の判決作成の時点で問題になる効果であるので,両者はその機能する場面が異なる。また,擬制自白においては,『審理排除効』は観念できないが,『判断拘束効』は,通常の自白と同様に認められるという差異が生じる。そこで,本書では,議論の混乱や概念の矛盾を避けるために,『審判排除効』に代えて,『審理排除効』および『判断拘束効』の言葉を用いる。」
(※2)「『時機に後れた』とは,より早期の適切な時期に提出できたことを意味する。弁論準備手続などの争点整理手続が行われたときは,その終了後の提出は,特段の事情がない限り,時機に後れたものと判断される。控訴審での提出は,続審制がとられているので,控訴審の手続のみで判断するのではなく,第1審からの手続の過程を通じて判断すべきである(最判昭和30・4・5民集9巻4号439頁)」前掲三木ほか192頁
(※3)「『故意または重過失』は,攻撃防御方法の酒類を考慮して判断する必要がある。たとえば,相殺の抗弁のように実質的な敗訴を前提とした攻撃防御方法は,たとえ提出が遅れても,故意または重過失は認定されにくい。また,争点整理手続の終了後に攻撃防御方法が提出され,これについて説明義務が履行されないときは,重過失が推定されると解すべきである。」前掲三木ほか192頁
(※4)「『訴訟の完結の遅延』は,その攻撃防御方法を却下した場合に想定される訴訟完結時と,その攻撃防御方法の審理を続行した場合に想定される訴訟完結時を比較して判断する。既に弁論を終結している場合や,弁論終結の直前の場合には,この要件を満たしやすい。その場ですぐに取調べが可能な証拠の申出などは,訴訟の完結を遅延させるとはいえない。」前掲三木ほか192頁



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