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2019-03-28(Thu)

【基礎演習民事訴訟法】問題6「二重起訴の禁止」

学部のときに民訴ゼミに入っていたため,

民訴の基本書類はバカみたいに揃ってるんですが,

どれ一つとしてまともに読んだことがないので,

基礎演習を解いていく過程でちょいちょい読めたらなと考えていましたが,

如何せん時間がかかりすぎるので,

もう諦めました。

問題を解くうえで必要なところだけ読むことにします。

今回は,6問目ですね。

≪問題≫

 農作物の輸入を主要な業務とするA社と食品加工会社であるB社の間には長年にわたって取引関係があったが,最近,A社がB社に納入した輸入農作物は,原産地の表示が虚偽であり,品質も約束のものより格段に劣っていた。B社は,A社を信頼していたために,疑うことなくこの農作物を使って加工食品を作って販売したが,その後にマスコミによって問題が発覚したことで,市場から全品を回収することを余儀なくされたうえに,B社自身も社会的な信用を失うなど,重大な被害を受けた。
 そこで,B社は,総額で8,000万円相当の損害を被ったとして,A社に対し,債務不履行に基づく損害賠償として,とりあえず8,000万円のうちの一部である3,000万円の支払いを求める旨を明示して,訴えを提起した(別件訴訟)。A社は,この訴訟において,現地の会社に巧妙に騙されたので自分たちも被害者であるし,その現地の会社はB社から指定された会社であるから,自分たちに何ら責任はないとして,B社の主張を全面的に争った。
 他方,A社は,過去にB社が資金繰りに困ったときに,3,000万円を無利子で貸していた。すでに,返済期限は過ぎているが,長年の取引関係があることもあり,その返済を猶予していた。しかし,B社から別件訴訟を提起されたのを契機として,その返済を求めることにした。しかし,B社からの回答は,たしかに双方の先代社長のときに3,000万円を借りたことがあるが,すでに先代社長同士で免除が合意されているので,返済義務はないというものであった。そこで,A社は,消費貸借契約を理由として3,000万円の支払いを求める訴えを提起した(本件訴訟)。B社は,この訴訟において,免除による債務消滅を主張してA社の主張を争った。
 このようにして,A社とB社の間で2つの訴訟が別々に係属していたところ,B社は,本件訴訟において,別件訴訟で請求中の3,000万円の損害賠償請求権を自働債権とし,受働債権を本件訴訟の訴訟物である3,000万円の貸金債権として,相殺の抗弁を主張した。B社は,主たる抗弁として免除を主張しているので,この相殺の主張は予備的抗弁である。B社は,A社が他社との間でも原産地偽装などの重大なトラブルを抱えており,このところ急速に経営状態が悪化しているとの噂を耳にしたので,債務者の資産状態に関係なく確実に債権の回収が見込める相殺の抗弁は,是非とも裁判所に認めてもらいたいと考えている。
 その後,B社は,別件訴訟における一部請求の残額部分(B社の主張を前提とすれば,8,000万円の損害賠償請求権から3,000万円を差し引いた残額の5,000万円部分)を,相殺の抗弁の自働債権として,さらに追加した。二重起訴の禁止に関する判例に照らせば,別件訴訟で請求中の債権による相殺は否定される可能性が高いので,そのような場合に備えておく必要があるし,かりに認められたとしても,別件訴訟における裁判所の認定額がB社の主張よりも低いときは,本件訴訟における相殺の抗弁の自働債権が受働債権を下回ることになることを考慮したからである。
〔設問〕
1.本件訴訟において,別件訴訟で請求中の3,000万円の債権による相殺の抗弁は認められるか。
2.本件訴訟において,別件訴訟で請求中の3,000万円の債権の残部による相殺の抗弁は認められるか。


二重訴訟の禁止といえば三木浩一,

三木浩一といえば二重訴訟の禁止,

みたいなところがあります。

この問題の解説は,やはり三木先生が書かれたようです。

このあたりは色々と判例が出されていますが,

それぞれの相互の理解をするのはなかなか大変です。

解説で「判例の言ってることおかしくね???」と指摘されていると,

たしかに,そうだよな,その通りだ,間違いないと思ってしまいます。

それでもボクは(学説で答案を書くことは)やってない

≪答案≫
第1 設問1
 1 B社がA社に対して別件訴訟において請求している債権は,債務不履行に基づく損害賠償請求権のうちの3000万円部分(以下「本件訴求部分債権」という。)であるところ,本件訴訟においてB社が相殺の抗弁として主張しようとしている債権も同一である。そうすると,同一の債権が複数の裁判所に審理にかかることとなるから,民訴法142条に反し許されないのではないか。
 2⑴ B社は,別件訴訟において,本件訴求部分債権を求めているから,本件訴求部分債権が「裁判所に係属する事件」である。もっとも,B社は,本件訴訟においては,本件訴求部分債権を相殺の抗弁として主張しているところ,相殺の抗弁はあくまで攻撃防御方法の一つにすぎないのであるから,「訴えを提起」したものとはいえない。したがって,民訴法142条が直接適用される場面ではない。
  ⑵ しかし,民訴法142条の趣旨は,同一の債権について重ねて審理がされることによる司法資源の無駄を防止する点にあり,加えて相手方の応訴の煩や既判力の矛盾抵触を回避することを目的としている(※1)。この点,相殺の抗弁は,それについて審理,判断がされると,対抗した額について既判力が生じるとされ(民訴法114条2項),相殺の自働債権は,単なる攻撃防御方法にとどまらず,訴訟物に準じるものとして取り扱われる(※2)。そうすると,相殺の抗弁について審理することは,別訴において訴求されている債権についての審理と重複する点において,訴訟不経済であるのみならず,既判力の矛盾抵触のおそれも生じる。したがって,訴求中の債権を別の訴訟において相殺の抗弁として提出することは,民訴法142条の趣旨に反するというべきであるから,この場合には同条を類推適用することにより,相殺の抗弁の提出を却下すべきである(※3)
 なお,この点について,相殺の担保的機能に対する期待を重視して,相殺の抗弁の主張を許容すべきであるとの見解もみられるところではあるが,既判力の矛盾抵触による法的安定性の阻害の危険が存する以上は,これを許容することはできない(※4)
  ⑶ これを本件についてみると,本件訴求部分債権については,別件訴訟において既に訴求にかかっており,これを本件訴訟において相殺の自働債権として視聴した場合には,本件訴求部分債権について,両訴訟において二重に審理され,かつ,異なった判断がされることにより既判力が矛盾抵触する可能性も排除できないのであるから,民訴法142条の趣旨に反する。したがって,本件訴訟において,本件訴求部分債権を相殺の自働債権として主張することは,不適法として却下される。
 3 よって,本件訴訟における本件訴求部分債権を自働債権とする相殺の抗弁は認められない。
第2 設問2
 1 B社が本件訴訟において相殺の抗弁として主張しようとしている債権は,債務不履行に基づく損害賠償請求権から本件訴求部分債権を除いた残部である5000万円部分(以下「本件残部債権」という。)である。この場合にも,本件訴求部分債権と本件残部債権とは同一の債権を数量的に分割したのみであるから,同一の債権が複数の裁判所に審理にかかることになるものとみて,民訴法142条に反し許されないのではないか。
 2⑴ 一個の債権の数量的な一部についてのみ判決を求める旨を命じして訴えが提起された場合には,訴訟物となるのは当該債権の当該一部のみに限られるから,その確定判決の既判力も当該一部のみについて生じ,残部の債権には及ばない(※5)。なぜならば,明示がある場合には,訴訟物をその一部に限定する原告の意思が表示されているといえること,また,被告としても残部請求の可能性を認識して必要があれば残部の債務不存在確認の反訴を提起するなど,再度の応訴の負担を免れるための対応が可能であるからである(※6)
 この理は,相殺の抗弁についても同様に当てはまるところであって,一個の債権の一部をもってする相殺も,それ自体は当然に許容される。
  ⑵ そして,相殺の抗弁に関しては,訴えの提起と異なり,相手方の提訴を契機として防禦の手段として提出されるものであり,相手方の訴求する債権と簡易迅速かつ確実な決済を図るという機能を有するものであるから,一個の債権の残部をもって他の債権との相殺を主張することも許容されるべきである。このように考えても,設問1の場合とは異なり,既判力の矛盾抵触が生じるものではないから,この観点から主張が遮断されることはない。
 もっとも,一個の債権が訴訟上分割して行使された場合には,実質的な争点が共通であるため,ある程度審理の重複が生ずることは避け難く,応訴を強いられる被告や裁判所に少なからぬ負担をかける上,債権の一部と残部とで異なる判決がされ,事実上の判断の抵触が生ずる可能性もないではない。そこで,一個の債権の一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴えが提起された場合において,当該債権の残部を自働債権として他の訴訟において相殺の抗弁を主張することは,債権の発生事由,一部請求がされるに至った経緯,その後の審理経過等にかんがみ,債権の分割行使をすることが訴訟上の権利の濫用に当たるなど特段の事情の存しない限り,許されると考える(※7)(※8)
  ⑶ 本件でも,前記の特段の事情がない限り,本件残部債権をもって本件訴訟において相殺の抗弁を主張することができる。
 3 よって,本件訴訟における本件残部債権を自働債権とする相殺の抗弁は認められる。

以 上


(※1)民訴法142条の趣旨について,一般的には,①訴訟不経済,②既判力の矛盾抵触,③被告の応訴の煩の3つを防止することというように言われ,これに対しては,②については既判力が矛盾抵触することは実際的にあり得ないこと,仮に前訴確定判決の存在を看過しても再審によって取り消すことができること,③については前訴と後訴で原告と被告が同一でなければ妥当しないということが反論として挙げられていることは有名です。③についての反論は妥当であるとも思いますが,しかし,②については,現実的に起きる可能性が低いにしても,やはり矛盾した判決が出される可能性がある以上は,制度設計としては事前にこれを防止することとしておく必要はあると思いますし,再審によって覆せるとしても再審を行うとなればそれこそ訴訟不経済なのではないかと思います。したがって,既判力の矛盾抵触を同条の趣旨として取り込んでおくことにはなお意義があると思います。
(※2)「甲が乙に対してある債権の弁済を訴求し,逆に,乙が甲に対して別の債権の弁済を求める別訴を提起した場合において,甲が訴求中の債権を自働債権として別訴において相殺の抗弁を主張することが二重起訴にあたるかどうかが問題とされる。これは,抗弁後行型と呼ばれるが,逆に,相殺の抗弁が先行し,その自働債権ほ別訴において訴求する抗弁先行型においても,同じ問題が生じる。いずれの場合であっても,自働債権の存否について審理の重複が生じるし,また,相殺の抗弁に対する判断については既判力が生じるので(114Ⅱ),判断の矛盾・抵触の可能性もある。このような理由から,有力説は,二重起訴禁止原則の適用または類推適用を認め,判例もこの考え方を採用する。まず抗弁後行型について考える。」「二重起訴禁止原則は,同一訴訟物または同一社会生活関係にもとづく複数の訴訟物について,別の訴訟手続によって本案判決を求めることを許さない趣旨を表したものである。上の場合に,訴求債権および抗弁の基礎として主張される自働債権は,同一の債権であり,ただ,後者が訴訟手続上では訴訟物とされていないことにとどまる。しかし,114条2項の趣旨を考慮すれば,相殺の自働債権は,訴訟物に準じるものとして裁判所の審判の対象となっている。したがって,この場合には,142条を類推適用して,相殺の抗弁を却下すべきである。」「次に,抗弁先行型について考える。この場合についても,基本的考え方は,抗弁後行型と同様である。抗弁後行型と区別して,二重起訴の成立を否定する論拠としては,相殺の抗弁が通常予備的抗弁として提出されることを考慮すると,それにもかかわらず別訴を二重起訴とするのは,相殺権者に酷であるといわれる。しかし,相殺の抗弁が予備的なものとして提出されるのは,事実上の蓋然性にすぎないし,また,予備的抗弁の場合にも,相殺権者としては,反訴を提起することによって給付判決を得る利益を満足させることができる。したがって,抗弁先行型についても二重起訴の成立を認めるべきである。」伊藤眞『民事訴訟法〔第4版補訂版〕』221頁
(※3)反対説については次の通り。「ある訴訟で訴求している債権を,別の訴訟で相殺の抗弁における反対債権(自働債権)に供することは,許されるか。通説は許されると解していた。相殺はあくまで抗弁にすぎず,かつ,審理判断順序の強制により後回しになるので別訴で審理判断されるかどうか分からない,二重審理・既判力抵触の危険は未必的,つまり不確実だという論拠による。が,重複訴訟禁止の趣旨に触れ許されないとする説も有力であり,最近ではこちらの方が多数説かもしれない。同一の債権が,前訴の訴訟物として,かつ,後訴の相殺の反対債権として二重に審理判断される危険はある,したがって,既判力の衝突・矛盾の危険もある,というのである。判例も,最判昭和63・3・15民集42巻3号170頁,百選Ⅰ80事件と最判平成3・12・17民集45巻9号1435頁,百選〔4版〕38①事件が,先行訴訟で訴求した債権を,相殺の抗弁の用に供することはできないとする。」「どう考えるべきか。対立する考量軸は,二つあるようである。一つは,理論面を重視するか,実際的な処理の可能性を考慮に入れるかという軸である。確かに,裁判所の判断(既判力)の衝突,二重審理の無駄が生ずる可能性はある。相殺不許説は,これを重視する。が,それは理論的,むしろ『教条主義的』だと反対説(相殺許容説)からは,反論される。反対説は,言う。判決は,電光石火になされるわけではない,二つの訴訟が無関係に審理され無関係に確定するというのは実際には稀有に近い。当事者は他方訴訟の存在を裁判所に指摘するであろうから,裁判所は弁論の併合,手続の停止,等々,いろいろな処理をすることができる。わざと裁判所の処理を困らせるようなことをする当事者がいるとすれば,その具体的な訴訟行為を信義則違反で排斥すれば足りる,と。これは,反対説のいう通りであろう。しかし,理論としては,実際上の処理で足りる,というだけでは十分ではなく理屈も用意しなければならない。そこで,第二の考量軸であるが,先行訴訟の被告が別訴を提起したことをどう評価するか,関連して,先行訴訟原告(相殺の抗弁を提出した後訴被告)における相殺の担保的機能への期待をどう評価するか,という問題がある。すなわち,平面的に見れば,先行訴訟と後行訴訟との間で,同一債権の二重審理の危険は生じている。が,これが生じたのは,前訴被告が別訴を提起したからである。前訴被告としては,前訴において反訴を提起するという道も存在した。反訴を提起したのであれば,同一手続で審理されるのであるから二重審理の危険は生じない。ところで,住吉説,新堂説によれば,請求の基礎の同じ訴訟物,または主要な争点の共通な訴訟物は,別訴提起が許されない……。しかし,銀行に対する預金債権と銀行からの貸付債権のように,請求の基礎,または主要な争点共通ではないが,相殺の担保的機能への期待の強い対立債権というものは存在する。継続的取引でも,主要な争点は共通ではないが相殺の担保的機能への期待のあることはありえよう。けれども,これらの場合は,請求の基礎,または主要な争点共通ではないから,住吉説,新堂説によっても前訴被告が別訴を提起することを封ずることができない。その結果,前訴被告の相殺の担保的機能への期待も危殆に瀕する。なぜなら,前訴原告が相殺の担保的機能への期待を御そで貫徹したいと考えるとき,相殺不許説(重複起訴禁止類推説)では前訴を取り下げなければ後訴で相殺を提出することができない。しかし,前訴の取下げには,被告の同意が必要であるので(261条2項),この同意が得られないと相殺を主張することができない。敢えて別訴を提起するような前訴被告は,同意を簡単にはしないであろう。となると,前訴原告の相殺の担保的機能への期待は,実現されなくなるのである。この事態をどう評価するか。被告(後訴原告)の別訴提起という行動には疑問があり,そうだとすると,前訴原告による後訴での相殺の抗弁提出を許すべきではあるまいか。」「以上から,理論の上でも,後訴での相殺の抗弁は適法とみるべきである。判例も,最判平成10・6・30民集52巻4号1225頁,百選〔4版〕38②事件において,前訴が一部請求の場合であるが,残部請求を後訴の相殺の反対債権とすることを許容した。二重審理の回避に重点を置くと見られていた判例が,相殺の担保的機能への着目に転換したとみることもできないではない。今後の判例の展開は,注目されるところである。」高橋宏志『重点講義民事訴訟法上〔第2版補訂版〕』141頁
(※4)ここの記載は,設問2との対比のために無理矢理ねじ込んだものです。
(※5)「一個の債権の数量的な一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴が提起された場合は、訴訟物となるのは右債権の一部の存否のみであつて、全部の存否ではなく、従つて右一部の請求についての確定判決の既判力は残部の請求に及ばないと解するのが相当である。」最判昭和37年8月10日民集16巻8号1720頁
(※6)「一部請求訴訟の判決確定後に,残部についての請求をすることができるかどうかについては,見解が対立している。こうした議論においては,実質的には,同一債権を複数回に分けて訴求することについての原告の利益と,同一の債権について複数回の応訴や審理を迫られる被告や裁判所の負担とをどのように調整するかが問題となるが,理論構成としては,一部請求訴訟における訴訟物をどのように構成するか,という点が検討の出発点となる。」「一部請求訴訟において一部である旨の明示があった場合には,債権のうち訴求された一部のみが訴訟物となるが,明示がなかった場合には,債権全体が訴訟物となるとする見解である……。その根拠は,明示があれば,訴訟物をその一部に限定する原告の意思が表示されているといえること,また,被告としても,残部請求の可能性を認識して,必要があれば残部の債務不存在確認の反訴を提起するなど,再度の応訴の負担を免れるための対応が可能であることに求められる。」三木浩一ほか『LEGAL QUEST民事訴訟法〔第2版〕』442頁
(※7)「もっとも、一個の債権が訴訟上分割して行使された場合には、実質的な争点が共通であるため、ある程度審理の重複が生ずることは避け難く、応訴を強いられる被告や裁判所に少なからぬ負担をかける上、債権の一部と残部とで異なる判決がされ、事実上の判断の抵触が生ずる可能性もないではない。そうすると、右2のように一個の債権の一部について訴えの提起ないし相殺の主張を許容した場合に、その残部について、訴えを提起し、あるいは、これをもって他の債権との相殺を主張することができるかについては、別途に検討を要するところであり、残部請求等が当然に許容されることになるものとはいえない。」「しかし、こと相殺の抗弁に関しては、訴えの提起と異なり、相手方の提訴を契機として防御の手段として提出されるものであり、相手方の訴求する債権と簡易迅速かつ確実な決済を図るという機能を有するものであるから、一個の債権の残部をもって他の債権との相殺を主張することは、債権の発生事由、一部請求がされるに至った経緯、その後の審理経過等にかんがみ、債権の分割行使による相殺の主張が訴訟上の権利の濫用に当たるなど特段の事情の存する場合を除いて、正当な防御権の行使として許容されるものと解すべきである。」「したがって、一個の債権の一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴えが提起された場合において、当該債権の残部を自働債権として他の訴訟において相殺の抗弁を主張することは、債権の分割行使をすることが訴訟上の権利の濫用に当たるなど特段の事情の存しない限り、許されるものと解するのが相当である。」最判平成10年6月30日民集52巻4号1225頁
(※8)設問1との関係については,高橋宏志ほか『民事訴訟法判例百選〔第5版〕』85頁が「両判決[最判平成3年12月17日民集45巻9号1435頁及び前掲最判平成10年6月30日]を俯瞰すると,相殺(の抗弁)が一般的に有する機能の要保護性を強調する②判決の論理は①事件の事案にも当てはまることが目につく。よって両者の間に緊張関係が存在することを否定するのは困難であるが,①事件と異なり,一部請求論の負うようによって既判力が矛盾抵触するリスクを完全に排除できた②事件では,別訴と相殺の抗弁を併存させることの弊害・リスクが後者の保護を優先させうる程度のものにとどまったのだとの説明・理解はなお不可能ではない」としています。以下は完全なる私見(というか学説の縷々述べるところを私なりに解釈したもの)ですが,142条を①訴訟不経済と②既判力の矛盾抵触という点から見た場合,②の点は一部請求論でクリアできているので,今回は専ら①の観点が問題となることとなりますが,解説63頁では,「訴訟経済は重要な価値ではあるが,利益衡量を許さない絶対的な価値ではない」としているため,相殺の担保的機能に対する期待を強調することによって②の点もクリアできるということになるのではないかと思います。



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