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2019-03-27(Wed)

【基礎演習民事訴訟法】問題3「当事者適格⑵ 任意的訴訟担当」

酒を飲んだ翌日って,頭まわらないですよね。

つらみ。

基礎演習は3問目です。

≪問題≫

【ケース1】
 Xほか10名は,かねてより協力して行っていた化粧品の販売事業を拡大する目的で,民法上の組合であるA組合を設立した。設立の際に定められたAの規約においては,組合の目的とともに,XをAの代表者(業務執行組合員)とすること,および,Xは代表者として,化粧品売買代金の請求,受領等の対外的な業務を執行し,組合財産を管理する権限を有する旨が定められていた。Aの事業は好調で,この後,Yもその販売する商品を購入しようとAとの取引を開始した。ところが,当初は順調に継続していたYとの取引も,その後次第にYの代金支払が滞るようになり,未払金はすでに200万円を超えている。

【ケース2】
 芸能人Aは,Y出版社の出版した雑誌記事が自身のパブリシティ権を侵害するものであったので,これに対し損害賠償請求をしたいと考えている。Aはその所属する芸能プロダクション会社であるXとのあいだで,当該プロダクションに所属する際に,将来においてAのパブリシティ権が侵害されたときは,「侵害の排除又は損害の回復に必要な一切の裁判上および裁判外の権限」を授与する旨の契約を締結していた。なお,Xプロダクションでは,各芸能人との所属契約のなかに,かかるパブリシティ権侵害の排除および損害の回復について必要となる,一切の裁判上および裁判外の権限をXに授与する旨の条項が含めるのが通例であり,AX間の契約もその例外ではなかった。

〔設問〕
[ケース1][ケース2]において,Xが自己の名で,Aに帰属する売買代金債権や損害賠償請求権を訴訟上行使し,Yとのあいだで本案判決を得ることはできるか。


任意的訴訟担当です。

判例があるので,それの規範をペタっと貼ればいいような気もしますが,

学説上言われている,実体的関係みたいのを示そうとすれば,

少し工夫が必要そうです。

下の答案では,理由づけのところで,

判決効の話を取り込むことで,その趣旨を入れたつもりです。

≪答案≫
1 Xが自己の名で,Aに帰属する権利を訴訟上行使することは,任意的訴訟担当によるものであると考えられる。ここで,任意的訴訟担当とは,権利義務の帰属主体とされる者からの授権に基づいて,第三者に訴訟担当者としての当事者適格が認められる場合をいう(※1)
 もっとも,任意的訴訟担当については,明文の規定がある場合であれば格別,そうでない場合には,これが許容されるのかについて問題がある。
2 訴訟における当事者適格は,特定の訴訟物について,誰が当事者として訴訟を追行し,また,誰に対して本案判決をするのが紛争の解決のために必要で有意義であるかという観点から決せられるべき事柄である(※2)。したがって,これを財産権上の請求における原告についていうならば,訴訟物である権利または法律関係について管理処分権を有する権利主体が当事者適格を有するのが原則である。しかし,それに限られるものではないのはもとよりであって,第三者であっても,本来の権利主体からその意思に基づいて訴訟追行権を授与されることにより当事者適格が認められる場合もありうる(※3)
 もっとも,本来の権利主体からの意思に基づいて第三者に訴訟追行権が授与されることを広く許容すれば,弁護士代理の原則(民訴法54条1項本文)や訴訟信託の禁止(信託法10条)のような強行規定を潜脱するおそれがある。また,判決効は,当事者として手続保障を与えられた者だけに及ぶのが原則であるから,単に判決効を受けることに同意した第三者に対して当然に判決効が及ぶということは本来想定されていない(※4)
 したがって,明文規定のない任意的訴訟担当を許容するためには,前記の弁護士代理の原則や訴訟信託の禁止による制限を回避,潜脱するおそれがなく,かつ,これを認める合理的必要があることが必要である(※5)
3⑴ これを本件についてみると,[ケース1]においては,XとAとの間の組合契約においては,その規約に基づいて,Xを業務執行組合員として,自己の名で化粧品売買代金の請求,受領等の対外的な業務を執行し,組合財産を管理する権限を有する旨が定められており,実体上の管理権,対外的業務執行権とともに訴訟追行権が授与されていたものとみられるから,業務執行組合員に対する組合員のこのような任意的訴訟信託は,弁護士代理の原則を回避し,または訴訟信託の禁止を潜脱するものとはいえない。また,Xは,訴訟で争われているAの権利関係について,Aと同程度の知識を有する程度に関与・管理しているといえるから,Xが任意的訴訟担当となるべき合理的必要があるということがいえる。したがって,Xは任意的訴訟担当として,Aに帰属する売買代金債権を訴訟上行使することができる(※6)
 ⑵ 次に,[ケース2]では,XとAとの間の所属契約においては,Aのパブリシティ権の侵害の排除又は損害の回復に必要な一切の裁判上および裁判外の権限がXに授与されており,Aの損壊賠償請求権についての管理権とともに訴訟追行権が授与されていたものとみられるから,プロダクションに対する所属芸能人のこのような任意的訴訟信託は,弁護士代理の原則を回避し,または訴訟信託の禁止を潜脱するものとはいえないうえ,特段の事情がないかぎり,合理的必要を欠くものとはいえない。したがって,Xは任意的訴訟担当として,Aに帰属する損害賠償請求権を訴訟上行使することができる。

以 上


(※1)任意的訴訟担当とは,権利義務の帰属主体とされる者からの授権に基づいて,第三者に訴訟担当者としての当事者適格が認められる場合をいう。訴訟信託と呼ばれることもあるが,信託法上の信託とは異なるものであるから,適切な用語ではない。」三木浩一ほか『LEGAL QUEST民事訴訟法〔第2版〕』130頁
(※2)最判平成26年2月27日民集68巻2号192頁の言い回し。
(※3)「訴訟における当事者適格は、特定の訴訟物について、何人をしてその名において訴訟を追行させ、また何人に対し本案の判決をすることが必要かつ有意義であるかの観点から決せられるべきものである。したがつて、これを財産権上の請求における原告についていうならば、訴訟物である権利または法律関係について管理処分権を有する権利主体が当事者適格を有するのを原則とするのである。しかし、それに限られるものでないのはもとよりであつて、たとえば、第三者であつても、直接法律の定めるところにより一定の権利または法律関係につき当事者適格を有することがあるほか、本来の権利主体からその意思に基づいて訴訟追行権を授与されることにより当事者適格が認められる場合もありうるのである。」最判昭和45年11月11日民集24巻12号1854頁
(※4)「任意的訴訟担当の適法性について議論が生じるのは,次のような事情による。第1に,これを無制限に認めると,弁護士代理の原則(54条1項本文。……)や信託法における訴訟信託の禁止(信託10条)のように,権利義務主体以外の第三者による訴訟追行を制限する規律が潜脱されるおそれがある。すなわち,これらの規律は,一方では,訴訟手続の円滑な進行という訴訟制度運営者や相手方当事者の利益に関わるとともに,他方では,いわゆる三百代言といった職業の発生を一般的に防止し,資格制限によって専門的能力と高い職業倫理が確保された弁護士による訴訟代理の基盤を保障するという点で,訴訟制度の他の利用者の利益にも関わるものであることから,権利義務主体による任意の処分を許さない強行法規と解されている。にもかかわらず,任意的訴訟担当を無制限に認めると,実質的にこうした立法趣旨に反する結果が生じると考えられるのである。」「第2に,権利義務主体による授権があるだけで,担当者の受けた判決の効力を被担当者に及ぼしてよいか,という点で,実は自明とはいえない。……判決効は,当事者として手続保障を与えられた者だけに及ぶのが原則であり,単に判決効を受けることに同意した第三者に対して当然に判決効が及ぶといったことは,想定されていない。そうだとすると,任意的訴訟担当の場合においても,単に授権があるというだけで当事者としての手続保障に代替し得るのかどうかについては疑問が生じるのである。こうした観点からは,授権があるだけでなく,授権の合理性を基礎づけるような事情の存在や,判決効の拡張によって被担当者が不当に害されることのないような条件の確保が問題になる。」「第3に,相手方当事者としても,当事者が権利義務主体ではなく担当者だということになれば,訴訟費用の負担者などの点で,不利益を受ける可能性があり,この点からも,授権についての合理的な必要性が要求されることになる。もっとも,この点に関しては,ドイツ法のように弁護士費用を訴訟費用に含まない日本法のもとでは,致命的な問題ではないとか,被担当者を当事者に準じた地位にある者として扱うことによって,解釈上問題点を回避できるといった指摘もある。」前掲三木ほか130頁
(※5)「このようないわゆる任意的訴訟信託については、民訴法上は、同法四七条が一定の要件と形式のもとに選定当事者の制度を設けこれを許容しているのであるから、通常はこの手続によるべきものではあるが、同条は、任意的な訴訟信託が許容される原則的な場合を示すにとどまり、同条の手続による以外には、任意的訴訟信託は許されないと解すべきではない。すなわち、任意的訴訟信託は、民訴法が訴訟代理人を原則として弁護士に限り、また、信託法一一条が訴訟行為を為さしめることを主たる目的とする信託を禁止している趣旨に照らし、一般に無制限にこれを許容することはできないが、当該訴訟信託がこのような制限を回避、潜脱するおそれがなく、かつ、これを認める合理的必要がある場合には許容するに妨げないと解すべきである。」前掲最判昭和45年11月11日
(※6)「民法上の組合において、組合規約に基づいて、業務執行組合員に自己の名で組合財産を管理し、組合財産に関する訴訟を追行する権限が授与されている場合には、単に訴訟追行権のみが授与されたものではなく、実体上の管理権、対外的業務執行権とともに訴訟追行権が授与されているのであるから、業務執行組合員に対する組合員のこのような任意的訴訟信託は、弁護士代理の原則を回避し、または信託法一一条の制限を潜脱するものとはいえず、特段の事情のないかぎり、合理的必要を欠くものとはいえないのであつて、民訴法四七条による選定手続によらなくても、これを許容して妨げないと解すべきである。」前掲最判昭和45年11月11日



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