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2019-03-25(Mon)

【事例演習刑事訴訟法】第32講「攻防対象論-上訴審における職権調査の限界」

ついに……

つ  い  に  !!!

古江本を解き終わります!!!

3月13日から解き始めたので,

全答案を作成するのに約2週間かかりました。

すなわち,この2週間は刑訴しかやっていなかったということですね。

もう,刑訴でこわいものはないですよ。

刑訴に対する苦手意識はすごかったんですが,

少しばかしはマシになって気がします。

いやー本当はこういうことは学部の時間があるときとかにやっておくべきでしたね。

少なくとも司法試験直前にやることではありません。

とはいえ,TKCでの刑訴の散り方の悲惨たるやを受けたら,

そんなこと言ってられないですね。

というわけで,今回は,古江の第33講です。

≪問題≫

【設 問】
 検察官は,被告人を甲罪と乙罪により起訴(両罪は観念的競合)したところ,第1審裁判所は,甲罪については無罪(理由中で判断し,主文では無罪の言渡しをしなかった),乙罪については有罪の判決を言い渡した。この第1審判決に対して,被告人が控訴を申し立て,有罪とされた乙罪について事実誤認があり,犯罪は成立しない旨主張したが,検察官は,無罪とされた部分について公訴しなかった。控訴裁判所が,甲罪,乙罪共に有罪であり,第1審裁判所には甲罪を無罪としたことについて事実誤認があると考えた場合において,控訴裁判所は,破棄自判して,起訴事実の全部について有罪とすることができるか。


……

…………

・・・・・・・・・・・・・・・・・

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

こんなの司法試験出る……?

≪答案≫
1 裁判所は,原審において甲罪については無罪,甲罪と科刑上一罪の関係にある乙罪については有罪とされ,被告人が乙罪についてのみ控訴し(刑訴法372条),検察官が甲罪について控訴しなかった場合に,甲罪について有罪とする裁判をすることができるか。
2 そもそも,この場合において,甲罪は,控訴審に移審しているかどうかについて検討すると,刑訴法357条は,裁判の一部の上訴を認めているが,これは主文が複数ある場合について定めたものであり,罪数上一罪とされるものの一部について上訴を認めたものではない。そうすると,刑訴法上,罪数上一罪とされるものについて,一部の上訴を認める規定はないのであるから,罪数上一罪とされる犯罪に係る原審の裁判に対する控訴があった場合には,その全体が控訴審に移審係属することとなる(※1)
 本件でも,被告人が乙罪について原審には事実誤認があるとして控訴した場合であっても,これとともに甲罪についても控訴の効力が及ぶため,甲罪は,控訴審の移審することとなる。
3 控訴裁判所は,原則として控訴趣意書に包含された事項について調査することができる(刑訴法392条1項)とともに,その他の事項については職権で調査することができる(同条2項)。本件では,被告人は乙罪についての事実誤認を理由として控訴しているため,裁判所が甲罪に関する事項を調査するとすれば,職権で行うこととなる。
 もっとも,刑訴法は,当事者主義が基本原則とされ,裁判所は検察官の設定した訴因に拘束されその範囲内で審判しなければならないのであって(378条3号後段),職権主義はその補充的・後見的なものとされている。そして,控訴審は,第一審と同じ立場で事件そのものを審理するのではなく,当事者の訴訟活動を基礎として形成された第一審判決を対象とし,これを事後的な審査を加えるべきものであるから,同様の理があてはまる。そうすると,その事後審査も当事者の申し立てた控訴趣意を中心としてこれをなすのが建前であって,職権調査はあくまで補充的なものにすぎない(※2)。これらの観点からすれば,裁判所は,検察官が控訴することなく審判の対象からはずしたと認められる部分については,職権で調査し判断をすることはできないというべきである(※3)(※4)
 これを本件についてみると,甲罪と乙罪とは観念的競合を構成するものであるにしても,その各部分は,それぞれ1個の犯罪構成要件を充足し得るのであり,訴因として独立し得たものである。そして,このうち甲罪の部分については,被告人から不服を申し立てる利益がなく(※5),検察官からの控訴申立てもないのであるから,当事者間においては攻防の対象からはずされたものとみることができる。したがって,控訴裁判所は,甲罪について職権調査を行うことはできない。
4 よって,控訴裁判所は,破棄自判して,起訴事実の全部について有罪とすることはできない。

以 上


(※1)「第一審判決がその理由中において無罪の判断を示した点は、牽連犯ないし包括一罪として起訴された事実の一部なのであるから、右第一審判決に対する控訴提起の効力は、それが被告人からだけの控訴であつても、公訴事実の全部に及び、右の無罪部分を含めたそのすべてが控訴審に移審係属すると解すべきである。」最決昭和46年3月24日刑集25巻2号293頁
(※2)「控訴審が第一審判決について職権調査をするにあたり、いかなる限度においてその職権を行使すべきかについては、さらに慎重な検討を要するところである。いうまでもなく、現行刑訴法においては、いわゆる当事者主義が基本原則とされ、職権主義はその補充的、後見的なものとされているのである。当事者主義の現われとして、現行法は訴因制度をとり、検察官が公訴を提起するには、公訴事実を記載した起訴状を裁判所に提出しなければならず、公訴事実は訴因を明示してこれを記載しなければならないこととし、この訴因につき、当事者の攻撃防禦をなさしめるものとしている。裁判所は、右の訴因が実体にそぐわないとみられる場合であつても、原則としては訴因変更を促がし或いはこれを命ずべき義務を負うものではなく……、反面、検察官が訴因変更を請求した場合には、従来の訴因について有罪の言渡をなし得る場合であつても、その訴因変更を許さなければならず……、また、訴因変更を要する場合にこれを変更しないで訴因と異なる事実を認定し有罪とすることはできないのである。このように、審判の対象設定を原則として当事者の手に委ね、被告人に対する不意打を防止し、当事者の公正な訴訟活動を期待した第一審の訴訟構造のうえに立つて、刑訴法はさらに控訴審の性格を原則として事後審たるべきものとしている。すなわち、控訴審は、第一審と同じ立場で事件そのものを審理するのではなく、前記のような当事者の訴訟活動を基礎として形成された第一審判決を対象とし、これに事後的な審査を加えるべきものなのである。そして、その事後審査も当事者の申し立てた控訴趣意を中心としてこれをなすのが建前であつて、職権調査はあくまで補充的なものとして理解されなければならない。けだし、前記の第一審における当事者主義と職権主義との関係は、控訴審においても同様に考えられるべきだからである。」前掲最決昭和46年3月24日
(※3)「包括一罪,科刑上一罪は一罪であるから不可分であり,仮にその一部について控訴しても,全部について控訴したものとみなされる。ただし,最高裁判所の判例は,科刑上一罪の一部を無罪とし,他を有罪と認定する第1審判決があり,これに対して被告人のみが控訴した事案について,一罪の全部が控訴審に係属するものの,無罪部分に不服のなかった両当事者の意思を尊重し,当事者間の攻防対象からはずれた無罪部分に控訴審が職権調査を及ぼしてこれを変更することは許されないとする(最大決昭和46・3・24刑集25巻2号293頁[新島ミサイル事件])。さらに,判例は,単純一罪の訴因についても攻防対象の考え方を及ぼし,本位的訴因とされた賭博開帳図利の共同正犯は認定できないが,予備的訴因とされた賭博開帳図利の幇助犯は認定できるとした第1審判決に検察官が控訴の申立てをしなかった事案について,控訴審が職権により本位的訴因について調査を加えて有罪の自判をすることは,職権発動として許される限度を超え違法であるとしている(最決平成25・3・5刑集67巻3号267頁)。」酒巻匡『刑事訴訟法』624頁
(※4)現行刑訴法は,当事者主義を採用し,訴追裁量権を検察官に与え,訴因の設定を検察官の権限としており,裁判所は,検察官の設定した訴因に拘束され,その範囲内で審判をしなければならない(同法378条3号後段参照)。職権調査の権限を有する控訴審(同法392条2項)においても,その理は当てはまり,検察官が控訴することなく審判の対象から外したと認められる部分については,職権で調査し判断をすることはできないとするのが,当事者主義の下における事後審査制の構造に適合する。」井上正仁ほか『刑事訴訟法判例百選〔第10版〕』226頁
(※5)「被告人側の控訴については,事実認定や量刑等に関する瑕疵の主張を審査し,理由があれば原判決を破棄して当該事件における被告人の具体的救済を主眼とするので,被告人に実益のない控訴は許されない。明文はないが,無罪判決に対しては,『控訴の利益』がないので被告人から申し立てることはできないと解されている。また,免訴や公訴棄却の形式裁判があった場合も,被告人からの控訴は許されないというのが判例である(最決昭和53・10・31刑集32巻7号1793頁)。」前掲酒巻623頁


【事例演習刑事訴訟法の他の問題・答案は下記のリンクから】
・ 第1講(任意捜査と強制捜査)
・ 第2講(職務質問・所持品検査)
・ 第3講(任意取調べの限界)
・ 第4講(身柄拘束の諸問題⑴-現行犯逮捕の適法性,違法逮捕後の勾留,違法逮捕と再逮捕の可否)
・ 第5講(身柄拘束の諸問題⑵-重複逮捕・勾留,同時処理による例外)
・ 第6講(身柄拘束の諸問題⑶-別件逮捕・勾留)
・ 第7講(令状による捜索・差押え⑴-捜索すべき場所の特定性,差押え目的物の特定性)
・ 第8講(令状による捜索・差押え⑵-場所に対する令状による身体に対する捜索の可否,「必要な処分」としての原状回復,電磁的記録の内容を確認せずにする差押えの可否)
・ 第9講(逮捕に伴う無令状捜索・差押え⑴-逮捕の現場,差押えの関連性)
・ 第10講(逮捕に伴う無令状捜索・差押え⑵-逮捕現場の第三者に対する捜索の可否,最寄りの場所における被逮捕者の捜索・差押えの可否)
・ 第11講(おとり捜査)
・ 第12講(接見交通)
・ 第13講(一罪の一部起訴)
・ 第14講(訴因の特定)
・ 第15講(訴因変更の要否,縮小認定)
・ 第16講(訴因変更の可否)
・ 第17講(科学的証拠)
・ 第18講(法律上の推定)
・ 第19講(類似事実証拠排除法則)
・ 第20講(自白の証拠能力⑴-約束による自白)
・ 第21講(自白の証拠能力⑵-派生証拠,反復自白)
・ 第22講(補強法則)
・ 第23講(伝聞法則⑴-総論)
・ 第24講(伝聞証拠⑵-領収書の証拠能力,犯行メモの証拠能力)
・ 第25講(伝聞証拠⑶-手続的公正を欠く場合)
・ 第26講(伝聞証拠⑷-再伝聞)
・ 第27講(伝聞法則⑸-弾劾証拠)
・ 第28講(違法収集証拠排除法則⑴-総論)
・ 第29講(違法収集証拠排除法則⑵-外国捜査機関の違法収集証拠)
・ 第30講(違法収集証拠排除法則⑶-違法性の承継,毒樹の果実)
・ 第31講(択一的認定)
・ 第32講(一事不再理効)
・ 第33講(攻防対象論-上訴審における職権調査の限界)
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