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2019-03-25(Mon)

【事例演習刑事訴訟法】第32講「一事不再理効」

明日から辰巳の模試があるようです。

受験される方々は4日間頑張ってください。

今月の始めにTKCを4日間受けてみて,

やっぱり普段勉強しているときとは比類し得ないほど疲れました。

特に2日目の民事が終わった瞬間ですね。

あれは辛いです。

あれだけ疲れていると中日は疲労の回復に専念した方がいいでしょうね。

模試でこれだけ疲れるんだったら,本番はもっとなんだろうなあと思います。

いやぁ,受けたくないなぁ……

ところで,今回は,古江の第31講です。

≪問題≫

【設 問】
 被告人Xは,5件の窃盗罪により懲役2年の実刑判決を受け,同判決はそのころ画定したが,その後,前訴の保釈中に3件の窃盗を犯していたことが判明したため,検察官は,所要の捜査を遂げて,被告人Xにつき常習特殊窃盗罪により公訴を提起した。
 弁護人は,前訴の5件の窃盗と,本件常習特殊窃盗とは実体的に一罪を構成し,その一部である前訴の窃盗について,既に確定判決を経ているから,前訴の確定判決の一事不再理効が後訴である本件に及び,本件については免訴判決を言い渡すべきであると主張した。
 後訴裁判所は,いかなる措置を採るべきか。


一事不再理効です。

馴染みがない分野です。

たぶんまだ1回も勉強したことないんだろうと思っていたら,

古江にめっちゃ線引いてありました。

誰ですか私の古江に勝手に線を引いたやつは!!

≪答案≫
1 弁護人は,Xが5件の窃盗に係る前訴(以下「本件前訴」という。)の保釈中に犯した3件の窃盗に係る後訴(以下「本件後訴」という。)ついて,本件前訴の確定判決の一事不再理効が及ぶため免訴判決(刑訴法337条1号)がされるべきであるとの主張をしている。そこで,本件後訴との関係で本件前訴の判決が確定していることが「確定判決を経たとき」にあたるかどうかを検討する(※1)
2 ここで,一事不再理効とは,判決の確定に伴い生じる,同一事件に対する再度の公訴提起を許さない効果をいう(※2)。一事不再理効が及ぶ範囲について検討すると,憲法39条は,刑事手続が正常に作動した結果として被告人の罪責の不存在が確定し,又は有罪判決が確定したときには,刑事訴訟の目的が完遂されたことになるから,再度の公訴提起を許さないものとして,被告人が国家からの刑事責任追及について手続上の二重負担を防止するものである(※2)(※3)。そして,検察官は,「公訴事実の同一性を害しない限度において」,訴因を変更することが可能である(刑訴法312条1項)。そうすると,被告人は,当該刑事訴訟において,起訴状記載の訴因のみならず,これと公訴事実の同一性の範囲内の別の事実についても訴追・処罰される危険にさらされていたとみることができる。したがって,一事不再理効は,当該刑事手続において検察官が殺意意思を実現すべきであった事実の範囲,すなわち公訴事実の同一性の範囲内に及ぶ(※4)
 そして,訴因制度を採用した刑訴法の下においては,少なくとも第一次的には訴因が審判の対象であるから,前訴の訴因と後訴の訴因との間の公訴事実の同一性についての判断は,基本的には,前訴及び後訴の各訴因のみを基準として比較対照することにより行うべきである(※5)。もっとも,訴因自体において,両訴因が実体的に一罪を構成するかどうかにつき検討すべき契機が存在する場合については,訴因外の事実についても考慮することができる(※6)
3 これを本件についてみると,本件前訴の訴因は単純窃盗罪であるが,本件後訴の訴因は余罪の常習特殊窃盗罪である。単純窃盗罪と常習特殊窃盗罪とは一罪を構成するものではないが,両訴因の記載の比較のみからでも,両訴因の単純窃盗罪と常習特殊窃盗罪とか実体的には常習特殊窃盗罪の一罪ではないかと強くうかがわれる。そうすると,訴因自体において本件前訴の単純窃盗罪が本件後訴の常習特殊窃盗罪と実体的に一罪を構成するかどうかにつき検討すべき契機が存在する場合であるから,裁判所は,本件前訴の単純窃盗罪が常習性の発露として行われたか否かについて付随的に心証形成をし,両訴因間の公訴事実の同一性の有無について判断することができる。その結果,裁判所が,両訴因間の公訴事実の同一性を認めた場合には,本件前訴の一事不再理効は,本件後訴に及ぶこととなる。
4 よって,裁判所は,前記の場合には,本件後訴について,免訴判決を言い渡すべきである。

以 上


(※1)「いきなり『一事不再理効がどうだ,こうだ』と論じ始める学生もいるけれど,当然のことながら,まずは,現行法の解釈として論じるべきだろう。つまり337条1号の『確定判決を経た』ものとして免訴とすべき範囲,すなわち,確定判決の一事不再理効の及ぶ客観的範囲を論じたうえで,一事不再理効に関する『公訴事実の単一性』の判断方法について論じるべきだろう」解説451頁
(※2)有罪判決が確定した事件は,刑事訴追が完了し刑事訴訟がその目的を完遂したことになるから,再度の公訴提起は許されない。憲法が,『同一の犯罪について,重ねて刑事上の責任を問はれない』と規定して二重の処罰を禁止しているのは,この趣意である(憲法39条後段)。また,無罪判決が確定した場合について,憲法は,『既に無罪とされた行為については,刑事上の責任を問はれない』と規定しており(憲法39条前段),同様に再度の公訴提起は許されない。こちらも,刑事手続が正常に作動した結果として被告人の罪責の不存在が確定し,その目的が完遂されているからである。」「いずれの場合も,国家からの刑事責任追及について,国民に対する手続上の二重負担,すなわち『二重の危険(double jeopardy)』を課すことの防止を基本権として保障したものである。アングロ=アメリカ法に由来する。このように,判決の確定に伴い生じる,同一事件に対する再度の公訴提起を許さない効果のことを,『一事不再理の効力』という」酒巻匡『刑事訴訟法』611頁
(※3)「一事不再理の効力は,旧法以来,確定判決の対象とされた事実と全く同じでなくとも,これと『公訴事実の同一性』のある事実に及ぶと解されてきた。訴因制度を採用した現行法とは異なり,旧法のもとでは,検察官が起訴状に記載した犯罪事実にとどまらず,裁判所には,これと同一性のある公訴犯罪事実全体について職権審理を及ぼす権限と責務があり(「職権審理主義」),また,起訴状記載の犯罪事実を含む実体法上一罪の全体が審理・判決の対象になると解されてきた(公訴不可分の原則)……。」「このような理解と運用を前提とすれば,有罪・無罪の裁判の判断内容が確定した場合,その拘束力も当初から審判対象であった同一の公訴事実の範囲に及び,後の裁判所はこれと異なる判断ができないことになる。このため,同一の事実についてそのような判断を求める再度の起訴自体も許すべきではないと解されたのである。すなわち,確定実体判決の内容的確定力(拘束力)が再度の基礎を禁止する機能として発現するのが,一事不再理効であるとの説明となる。」「このような説明に拠れば,現行法における裁判所の審理・判決の対象は,検察官が起訴状に明示・記載した訴因であるから,一事不再理の効力が,前記のような実体裁判の拘束力すなわち確定判決の判断事項とその内容に基づくものであるとすれば,それは,訴因として記載され,現に裁判所の審判対象とされた事実についてのみ及ぶということになるはずである。」「これに対して,現行法のもとにおける通説的説明は,前記のとおり,一事不再理の効力を,『二重の危険の禁止』すなわち刑事手続の二重負担を回避するという手続上の根拠に求めるものである。一事不再理の効力を裁判の判断内容に伴う拘束力ではなく,刑事訴追と実体審理・判決を受ける可能性という手続上の負担の観点から根拠付けることになる。」「既に説明したとおり,検察官は,『公訴事実の同一性を害しない限度において』,一つの刑事手続の追行過程において,起訴状に当初記載した訴因を別の訴因に変更することが可能であるから(法312条1項),被告人は,当該刑事手続において,起訴状記載の訴因のみならず,これと公訴事実の同一性の範囲内の別の事実についても訴追・処罰される危険にさらされていたとみることができる。それ故,実体裁判が確定した場合には,当該刑事手続において検察官が訴追意思を実現可能であったはずの事実の範囲,すなわち公訴事実の同一性の範囲内で,再度の起訴が許されなくなるのである」前掲酒巻612頁
(※4)「平成15年10月判決の結論を是認するとすれば,手続の『危険』については,川出教授がいわれるように,『訴因変更によって審判の範囲に取り込むことができたかどうか』(訴因変更可能性)ではなくて,『検察官が後訴の事実を訴追するのなら訴因変更によって前訴に取り込むべきであったかどうか』が問題とされることにならざるを得ない」解説450頁
(※5)「訴因制度を採用した現行刑訴法の下においては,少なくとも第一次的には訴因が審判の対象であると解されること,犯罪の証明なしとする無罪の確定判決も一事不再理効を有することに加え,前記のような常習特殊窃盗罪の性質や一罪を構成する行為の一部起訴も適法になし得ることなどにかんがみると,前訴の訴因と後訴の訴因との間の公訴事実の単一性についての判断は,基本的には,前訴及び後訴の各訴因のみを基準としてこれらを比較対照することにより行うのが相当である。本件においては,前訴及び後訴の訴因が共に単純窃盗罪であって,両訴因を通じて常習性の発露という面は全く訴因として訴訟手続に上程されておらず,両訴因の相互関係を検討するに当たり,常習性の発露という要素を考慮すべき契機は存在しないのであるから,ここに常習特殊窃盗罪による一罪という観点を持ち込むことは,相当でないというべきである。そうすると,別個の機会に犯された単純窃盗罪に係る両訴因が公訴事実の単一性を欠くことは明らかであるから,前訴の確定判決による一事不再理効は,後訴には及ばないものといわざるを得ない。」最判平成15年10月7日刑集57巻9号1002頁
(※6)「前訴の訴因が常習特殊窃盗罪又は常習累犯窃盗罪(以下,この両者を併せて「常習窃盗罪」という。)であり,後訴の訴因が余罪の単純窃盗罪である場合や,逆に,前訴の訴因は単純窃盗罪であるが,後訴の訴因が余罪の常習窃盗罪である場合には,両訴因の単純窃盗罪と常習窃盗罪とは一罪を構成するものではないけれども,両訴因の記載の比較のみからでも,両訴因の単純窃盗罪と常習窃盗罪が実体的には常習窃盗罪の一罪ではないかと強くうかがわれるのであるから,訴因自体において一方の単純窃盗罪が他方の常習窃盗罪と実体的に一罪を構成するかどうかにつき検討すべき契機が存在する場合であるとして,単純窃盗罪が常習性の発露として行われたか否かについて付随的に心証形成をし,両訴因間の公訴事実の単一性の有無を判断すべきであるが(最高裁昭和42年(あ)第2279号同43年3月29日第二小法廷判決・刑集22巻3号153頁参照),本件は,これと異なり,前訴及び後訴の各訴因が共に単純窃盗罪の場合であるから,前記のとおり,常習性の点につき実体に立ち入って判断するのは相当ではないというべきである。」前掲最判平成15年10月7日


【事例演習刑事訴訟法の他の問題・答案は下記のリンクから】
・ 第1講(任意捜査と強制捜査)
・ 第2講(職務質問・所持品検査)
・ 第3講(任意取調べの限界)
・ 第4講(身柄拘束の諸問題⑴-現行犯逮捕の適法性,違法逮捕後の勾留,違法逮捕と再逮捕の可否)
・ 第5講(身柄拘束の諸問題⑵-重複逮捕・勾留,同時処理による例外)
・ 第6講(身柄拘束の諸問題⑶-別件逮捕・勾留)
・ 第7講(令状による捜索・差押え⑴-捜索すべき場所の特定性,差押え目的物の特定性)
・ 第8講(令状による捜索・差押え⑵-場所に対する令状による身体に対する捜索の可否,「必要な処分」としての原状回復,電磁的記録の内容を確認せずにする差押えの可否)
・ 第9講(逮捕に伴う無令状捜索・差押え⑴-逮捕の現場,差押えの関連性)
・ 第10講(逮捕に伴う無令状捜索・差押え⑵-逮捕現場の第三者に対する捜索の可否,最寄りの場所における被逮捕者の捜索・差押えの可否)
・ 第11講(おとり捜査)
・ 第12講(接見交通)
・ 第13講(一罪の一部起訴)
・ 第14講(訴因の特定)
・ 第15講(訴因変更の要否,縮小認定)
・ 第16講(訴因変更の可否)
・ 第17講(科学的証拠)
・ 第18講(法律上の推定)
・ 第19講(類似事実証拠排除法則)
・ 第20講(自白の証拠能力⑴-約束による自白)
・ 第21講(自白の証拠能力⑵-派生証拠,反復自白)
・ 第22講(補強法則)
・ 第23講(伝聞法則⑴-総論)
・ 第24講(伝聞証拠⑵-領収書の証拠能力,犯行メモの証拠能力)
・ 第25講(伝聞証拠⑶-手続的公正を欠く場合)
・ 第26講(伝聞証拠⑷-再伝聞)
・ 第27講(伝聞法則⑸-弾劾証拠)
・ 第28講(違法収集証拠排除法則⑴-総論)
・ 第29講(違法収集証拠排除法則⑵-外国捜査機関の違法収集証拠)
・ 第30講(違法収集証拠排除法則⑶-違法性の承継,毒樹の果実)
・ 第31講(択一的認定)
・ 第32講(一事不再理効)
・ 第33講(攻防対象論-上訴審における職権調査の限界)
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