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2019-03-24(Sun)

【事例演習刑事訴訟法】第31講「択一的認定」

本日は,蒙古タンメン中本吉祥寺店の周年祭でして,

私もそれに参戦する予定……だったんですが,

諸事情により行くことができなくなってしまい,

やむなくtwitterで参戦してきた方々の報告を眺めるばかり……

今年も全店制覇は達成できませんでした。

残念残念……

ところで,今回は,古江の第31講です。

≪問題≫

【設 問】
 Xは,連れ子であるV(当時3歳)が内縁関係にあるYからその頭部等に暴行を受けてぐったりしているのを発見し,いったんはVに医師の診療を受けさせるべく,自己の運転する車両で,Vを自動車の助手席に乗せて病院に向かったものの,途中で,Vの様子が瀕死状態であったことから,治療を受けさせても到底助からないであろうと考えて,自動車を止めて,Vを道路脇の草むらに放置して逃げたところ,翌日,Vは,通行人により死体で発見された。
 検察官は,Xについて,本位的訴因を保護責任者遺棄罪,予備的訴因を死体遺棄罪として,公訴を提起した。
 裁判所は,審理を尽くしたものの,被告人XがVを道路脇に遺棄した時点において,Vが生存していたのか,それとも死亡していたのか,いずれであるかについては明らかでないとの心証を得た。
 裁判所は,「保護責任者遺棄又は死体遺棄」との択一的な事実を認定したうえ,軽い死体遺棄罪の罰条で処断することができるか。


択一的認定ですね。

訴因と一緒に勉強すると理解が深まるように思いますね。

とにかく当事者主義構造まで立ち返って検討することが必要なんでしょう。

他の科目もそうですけど,刑訴は特に根本原理から考えることが多い気がします。

≪答案≫
1 裁判所は,被告人XがVを道路脇に遺棄した時点において,Vが生存していたのか,それとも死亡していたのか,いずれであるかについては明らかでないとの心証を得た場合に,「保護責任者遺棄又は死体遺棄」との択一的な事実を認定することはできるか。裁判所が刑の言渡しをするためには,「被告事件について犯罪の証明」があることが必要である(刑訴法333条1項)ため,前記の心証をもって「被告事件について犯罪の証明があった」と認められるかどうかについて検討する。
2 刑訴法は裁判手続の遂行について当事者主義を採用しており(256条6項,298条1項,312条1項),このような手続の構造の下では審判対象は当事者が主張する訴因とされることから,刑訴法333条1項にいう「被告事件」とは訴因を意味する。したがって,訴因の特定に必要不可欠な事実について択一的に認定するのみでは「被告事件について犯罪の証明があった」といえないため,このような認定は刑訴法333条1項に反し許されない。
 本件では,客体Vが死亡しているか否かについて明らかでないとの心証から「保護責任者遺棄又は死体遺棄」と客体が死亡していたか否かについて択一的な事実を認定している。しかし,客体が死亡していたか否かについては,保護責任者遺棄罪又は死体遺棄罪のいずれの構成要件についても,これに該当するかどうか判断するのに必要な事実であるといえる。したがって,審判対象画定の見地から必要不可欠な事実といえ,訴因の特定に必要不可欠な事実にあたるから,Vが死亡していたか否かについて択一的認定をすることは刑訴法333条1項に反し許されない。
3 そうだとしても,本問では,Vが遺棄された当時,生きていたか死んでいたかのどちらかしかあり得ないという論理的択一関係にある以上,無罪を言い渡すことは国民の法感情に反する。そこで,論理的択一関係にある場合には例外的に軽い方の罪の事実の認定が許されないか問題となる。
 刑事責任を基礎付ける事実は実体法の定める個別の構成要件によって定まっているのであり,刑罰を科すにはその構成要件該当事実について合理的な疑いを容れない証明が要請される。しかし,択一的な事実認定をした有罪判決を認めると,個々の構成要件該当事実について合理的な疑いがあるにもかかわらず有罪とするのみならず,複数の構成要件を合成した新たな構成要件を創出して処罰することになるから,罪刑法定主義に反し許されない(※1)
 この点,論理的択一関係にある場合には,利益原則を重い方の罪の事実に適用してその事実の不存在を導き,結果として残った軽い方の罪の事実を認定できるとする見解がある。しかし,利益原則は,事実の証明が不十分な場合に有罪判決をできないという働きをするにとどまり,証明不十分な事実の不存在を積極的に認定する働きまでは有しない。したがって,論理的択一関係にある場合であっても,択一的認定は許されない。
 本件でも,Vが遺棄された当時,生きていたか死んでいたかのどちらかしかあり得ないという論理的択一関係にあるとはいえ,軽い方の死体遺棄の罪の事実を認定することは許されない。

以 上


(※1)「心証が分解して単一の像を結ぶに至らず,それが異なる構成要件の間の択一関係である場合,犯罪の証明があったといえるか(例,保護責任者遺棄か死体遺棄のいずれかであることは確実だがどちらかに特定できない場合,窃盗か盗品譲受けのいずれかであることは確実だがどちらかに特定できない場合)。刑事責任を基礎付ける事実は実体法の定める個別の構成要件により定まっているのであり,刑罰を科すにはその構成要件該当事実について合理的な疑いを容れない証明が要請されている。もし択一的な事実認定をした有罪判決を認めるとすれば,個々の構成要件該当事実について合理的な疑いがあるにもかかわらず有罪とすることになるのみならず,複数の構成要件を合成した新たな構成要件を創出して処罰することになるから,罪刑法定主義に反するというほかなかろう。」酒巻匡『刑事訴訟法』473頁


【事例演習刑事訴訟法の他の問題・答案は下記のリンクから】
・ 第1講(任意捜査と強制捜査)
・ 第2講(職務質問・所持品検査)
・ 第3講(任意取調べの限界)
・ 第4講(身柄拘束の諸問題⑴-現行犯逮捕の適法性,違法逮捕後の勾留,違法逮捕と再逮捕の可否)
・ 第5講(身柄拘束の諸問題⑵-重複逮捕・勾留,同時処理による例外)
・ 第6講(身柄拘束の諸問題⑶-別件逮捕・勾留)
・ 第7講(令状による捜索・差押え⑴-捜索すべき場所の特定性,差押え目的物の特定性)
・ 第8講(令状による捜索・差押え⑵-場所に対する令状による身体に対する捜索の可否,「必要な処分」としての原状回復,電磁的記録の内容を確認せずにする差押えの可否)
・ 第9講(逮捕に伴う無令状捜索・差押え⑴-逮捕の現場,差押えの関連性)
・ 第10講(逮捕に伴う無令状捜索・差押え⑵-逮捕現場の第三者に対する捜索の可否,最寄りの場所における被逮捕者の捜索・差押えの可否)
・ 第11講(おとり捜査)
・ 第12講(接見交通)
・ 第13講(一罪の一部起訴)
・ 第14講(訴因の特定)
・ 第15講(訴因変更の要否,縮小認定)
・ 第16講(訴因変更の可否)
・ 第17講(科学的証拠)
・ 第18講(法律上の推定)
・ 第19講(類似事実証拠排除法則)
・ 第20講(自白の証拠能力⑴-約束による自白)
・ 第21講(自白の証拠能力⑵-派生証拠,反復自白)
・ 第22講(補強法則)
・ 第23講(伝聞法則⑴-総論)
・ 第24講(伝聞証拠⑵-領収書の証拠能力,犯行メモの証拠能力)
・ 第25講(伝聞証拠⑶-手続的公正を欠く場合)
・ 第26講(伝聞証拠⑷-再伝聞)
・ 第27講(伝聞法則⑸-弾劾証拠)
・ 第28講(違法収集証拠排除法則⑴-総論)
・ 第29講(違法収集証拠排除法則⑵-外国捜査機関の違法収集証拠)
・ 第30講(違法収集証拠排除法則⑶-違法性の承継,毒樹の果実)
・ 第31講(択一的認定)
・ 第32講(一事不再理効)
・ 第33講(攻防対象論-上訴審における職権調査の限界)
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