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2019-03-24(Sun)

【事例演習刑事訴訟法】第30講「違法収集証拠排除法則⑶」

3月も終盤になってきました。

もうすぐ入学シーズンがやってきます。

しかし,私はローを卒業したにもかかわらず,どこかに入学できるわけでも,

かといって入社するわけでもないんですね。

そうです。

ニートです。

≪問題≫

【設 問】
 警察官Kは,以前覚せい剤事犯で捜査したことのあるXが覚せい剤中毒者特有の表情で歩いているのを発見し,覚せい剤使用の疑いを抱き,嫌がるXを無理矢理パトカーの後部座席に押し込み,警察署に同行した。Kは,警察署において,直ちに,Xに対して,排尿・提出を求めたところ,Xは,素直に排尿のうえ,これを任意提出したので,Kはこれを領置した。当該尿を鑑定したところ覚せい剤が検出され,Xは覚せい剤使用の罪で起訴された。尿の鑑定書をXの公判で証拠として用いることができるか。


違収排のラストを飾るのは,違法性の承継。

この分野を理解できたこと,今までで一度もないです。

違法性の承継だけでも理解に苦労するのに,

これと別に毒樹の果実とか言い出した日には,

もうまともな答案なんかかけたもんじゃありません。

今回の答案作成を通して,

少しだけでも違法性の承継に関する理解を深められればと思います。

≪答案≫
1 警察官KがXを警察署に連行した行為(以下「本件連行行為」という。)は,Xが同行を拒否しているにもかかわらず,Kがパトカーの後部座席に無理矢理押し込むなどして強制的に連行したものであるから,Xの意思や連行の態様などからみて,実質的に「逮捕」(刑訴法199条1項)にあたる。そして,本件連行行為は,Kが裁判官から令状の発付を受けずに行ったものであるから,令状主義(憲法33条,刑訴法199条1項)に反する違法がある。
 一方で,本件連行行為に引き続いて行われたXの採尿(以下「本件採尿行為」という。)は,Xが任意に提出した尿をKが領置しており(刑訴法221条),刑訴法上の手続違反は認められない。
 そこで,裁判所は,違法と評価される本件連行行為に引き続いて適法に行われた本件採尿行為によってKが取得した尿を鑑定して作成された尿の鑑定書(以下「本件尿鑑定書」という。)をXの公判で証拠として採用することができるか。
2 裁判所が,捜査機関が違法な捜査によって収集した証拠を採用することは,裁判所が捜査機関の違法捜査を是認するものと捉えられ,違法捜査が拡大する危険性がある。そこで,捜査機関による将来の違法捜査を要請する見地から,捜査機関の違法捜査によって収集された証拠は,採用できないこととすべきである。もっとも,軽微な違法手続により収集された証拠であっても,違法の程度・態様を問題とせず一律にこれを排除する結果,事案解明が害されるとすれば,司法への信頼が害されることとなる。
 したがって,捜査機関の捜査手続に,令状主義の精神を没却するような重大な違法があり,これによって得られた証拠として許容することが,将来における違法な捜査の抑制の見地からして相当でないと認められる場合においては,当該証拠の証拠能力は否定される。
 もっとも,証拠収集手続自体が違法と評価されなくとも,それに先行する手続に違法があり,先行手続と証拠収集手続との間に密接な関連性が認められる場合には,先行手続の違法性が証拠収集手続に承継される(※1)
3 これを本件についてみると,本件採尿行為は,違法と評価された本件任意同行によりXを警察署に同行後直ちに行われている上,違法な先行行為によってもたらされた状態を直接的に利用している。したがって,本件任意同行と本件採尿行為との間には,密接な関連性があると認められる。そうすると,本件任意同行の違法性は,本件採尿行為に承継されることとなるから,本家採尿行為も違法性を帯びることとなる。
 そこで,本件採尿行為について検討すると,たしかに本件任意同行はその限度を超えた実質的逮捕であって,本来令状を必要とする行為を無令状で行っている点で違法の程度は小さくはない。しかし,KはXに対してあくまで任意同行を求めようとしたにすぎず,Xをパトカーに乗車させるにあたり有形力を行使しているものの,暴行を振るったといったものではなく軽微なものにすぎないのであるから,Kに令状主義潜脱の意図があったとは認められない。また,本件採尿手続において,KはXに対して何ら強制を加えておらず,Xの自由な意思に基づいて応諾していることからすれば,手続違反の程度は大きいとまではいえない。したがって,本件採尿行為は,令状主義を没却するような重大な違法が認められるものではない。
 また,本件尿鑑定書をXの罪証に供することが,違法捜査抑制の見地から相当でないとは認められない。
 したがって,本件採尿手続によって得られた本件尿鑑定書の証拠能力は否定されない。
4 よって,裁判所は,本件尿鑑定書をXの公判で証拠として採用することができる。

以 上


(※1)本問は,いわゆる違法性の承継のみによって片が付く問題であるため,単純な違法性の承継の論述をすることとしましたが,いわゆる毒樹の果実の問題の場合には,解説で紹介されている川出説にのってしまおうと考えています。川出説と同旨であると思われる酒巻匡『刑事訴訟法』505頁は,「排除が問題とされる証拠とその発見・収集に至る過程における違法手続との間には因果関係が必要である。違法手続と当該証拠の発見・収集との連鎖過程に適法手続が介在する場合(例,違法な任意同行や身体の留め置きの間に実施された適法な採尿手続による尿の収集,採取された尿についての適法な鑑定の実施)もあり得るが,問題とされるべきは,違法手続に由来して発見・収集された当該証拠の証拠能力の有無であるから,証拠排除法則の趣旨・目的に照らして,違法手続の『結果』発見・収集されたいわゆる派生証拠についてその排除の当否を端的に検討すれば足りるというべきである。」「最高裁判所は,一時期,先行する手続の違法が後続する証拠発見・収集の手続に承継されるかどうかという判断枠組みの下で,先行手続と後続の手続との『同一目的・直接利用』の関係を指標にしているかに読める説示をしていた(例,……最判昭和61・4・25,最決昭和63・9・16,最決平成7・5・30)。しかし,この判断枠組みの機能の実質は,事案に即して,違法手続と発見・収集された証拠との間の因果関係の存否を確認しその程度を点検する一手法とみられるものであり,現に近時の判例(……最判平成15・2・14)では,先行する違法手続(窃盗事件についての違法逮捕)と後行の証拠収集手続(覚せい剤使用嫌疑による採尿手続)とは同一目的とはいえず,また,利用関係の直接性も乏しい事案であったことから,最高裁は,違法逮捕と採取された尿及びその鑑定書とが『密接な関連を有する証拠』と説示するにとどめており,その上で,当該証拠を排除する判断をしているのである。」「こうして,違法手続と因果関係のある手続により発見・収集された派生証拠の証拠能力を端的に検討する場合には,……違法の重大性と排除の相当性に関する判断基準をそのまま適用すればよいことになる。そして証拠排除の可否が前記のとおり利益衡量で決まる以上,違法手続と因果関係のある派生証拠がすべて排除されることになるのではなく,個別具体的事案において,違法手続と証拠との因果関係の程度が希薄であるものは排除されないという帰結になろう。」などと指摘されています。


【事例演習刑事訴訟法の他の問題・答案は下記のリンクから】
・ 第1講(任意捜査と強制捜査)
・ 第2講(職務質問・所持品検査)
・ 第3講(任意取調べの限界)
・ 第4講(身柄拘束の諸問題⑴-現行犯逮捕の適法性,違法逮捕後の勾留,違法逮捕と再逮捕の可否)
・ 第5講(身柄拘束の諸問題⑵-重複逮捕・勾留,同時処理による例外)
・ 第6講(身柄拘束の諸問題⑶-別件逮捕・勾留)
・ 第7講(令状による捜索・差押え⑴-捜索すべき場所の特定性,差押え目的物の特定性)
・ 第8講(令状による捜索・差押え⑵-場所に対する令状による身体に対する捜索の可否,「必要な処分」としての原状回復,電磁的記録の内容を確認せずにする差押えの可否)
・ 第9講(逮捕に伴う無令状捜索・差押え⑴-逮捕の現場,差押えの関連性)
・ 第10講(逮捕に伴う無令状捜索・差押え⑵-逮捕現場の第三者に対する捜索の可否,最寄りの場所における被逮捕者の捜索・差押えの可否)
・ 第11講(おとり捜査)
・ 第12講(接見交通)
・ 第13講(一罪の一部起訴)
・ 第14講(訴因の特定)
・ 第15講(訴因変更の要否,縮小認定)
・ 第16講(訴因変更の可否)
・ 第17講(科学的証拠)
・ 第18講(法律上の推定)
・ 第19講(類似事実証拠排除法則)
・ 第20講(自白の証拠能力⑴-約束による自白)
・ 第21講(自白の証拠能力⑵-派生証拠,反復自白)
・ 第22講(補強法則)
・ 第23講(伝聞法則⑴-総論)
・ 第24講(伝聞証拠⑵-領収書の証拠能力,犯行メモの証拠能力)
・ 第25講(伝聞証拠⑶-手続的公正を欠く場合)
・ 第26講(伝聞証拠⑷-再伝聞)
・ 第27講(伝聞法則⑸-弾劾証拠)
・ 第28講(違法収集証拠排除法則⑴-総論)
・ 第29講(違法収集証拠排除法則⑵-外国捜査機関の違法収集証拠)
・ 第30講(違法収集証拠排除法則⑶-違法性の承継,毒樹の果実)
・ 第31講(択一的認定)
・ 第32講(一事不再理効)
・ 第33講(攻防対象論-上訴審における職権調査の限界)
◎その他の答案リンク集はこちら→
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