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2019-03-23(Sat)

【事例演習刑事訴訟法】第28講「違法収集証拠排除法則⑴」

目 が か ゆ い

未だに花粉飛んでんすかね。

寒い日にまで飛んでるのはマジでたちが悪いと思います。

この時期は,花粉症持ちの受験生には,

ほんとにディスアドヴァンテージだと思います。

司法試験でも花粉症の受験生に特別な措置が採られるべきです。

ところで,今回は,古江の第28講です。

≪問題≫

【設 問】
 警察官Kは,Xを被疑者とする不動産詐欺事件について捜査中,証拠書類がXの知人Zの自宅に保管されているとの情報を得て,裁判官にZの自宅を捜索場所とする捜索差押え許可状の発付を請求したが,疎明資料が膨大で,令状裁判官においてその閲読・検討に長時間を要し,捜索差押許可状がなかなか発付されなかったことから,令状が発付されるまでに関係書類が隠滅されてしまうのではないかと不安になり,一刻も早く捜索を開始したいとの思いから,令状発付を待たずにZの自宅に赴いた。Kは,Z宅に向かう途中で警察官Lから携帯電話により「令状が発付された」との連絡を受けたことから,請求どおりの捜索差押許可状が発付され,捜索しているうちに令状が届くものと考え,令状の内容をLに確認しないまま,Zを立会人としてZの自宅の捜索を開始し,被疑事件に関連する土地売買契約書等の関係書類を発見した。警察官Kは,引き続きZの自宅の捜索を継続しながら令状の到着を待ったが,Lは,Kが令状を持たないで捜索を開始するとは思わず,Kが令状を取りに帰署するものと考えて,れいじょうを持参することはしなかった。Kは,いつまでも令状が届かないものの,裁判官から令状が発付されていることは間違いないのであるから,後日,被処分者であるZに令状を示せば足ると考え,立会人Zに対して,「令状は裁判官から発付されているが,手違いがあって今は手元にないけれど,明日,令状は持ってくる」と申し向けたところ,Zは,黙って頷いたので,Kは,上記土地売買契約書等を差し押さえた。なお,捜索の範囲および差し押さえた証拠物は令状記載の範囲を超えるものではなかった。Kは,翌日,Zの自宅を訪れ,Zに捜索差押許可状を呈示した。なお,Kは,同日,捜索差押調書,捜査報告書を作成するにあたり,前日のZの自宅の捜索開始時に,Zに対して捜索差押許可状を呈示した旨虚偽の事実を記載した。
 上記土地売買契約書等の関係書類は,Xの後半において,証拠とすることができるか。


みんな大好き違収排です。

今までは,あの判例の有名な基準を,割とあっさり出してしまう感じだったんですが,

(※1)にあるような酒巻先生の指摘を読むと,

たしかに,ちゃんと規範の部分も丁寧に書かないといけないなと思いました(小並感)

「司法の無瑕性」とか「違法捜査抑止」というキーワードを出すだけでなくて,

これらの意味も踏まえた説明が必要なのでしょう。

≪答案≫
1 捜索・差押えを執行するためには,被処分者に裁判所の発付した捜索差押許可状を呈示する必要があるところ(刑訴法222条1項,110条),警察官Kは,Zに対してこれを呈示しないまま,Zの自宅を捜索し,被疑事件に関連する土地売買契約書等(以下「本件土地売買契約書等」という。)を差し押さえている(以下,Kが行った捜索・差押えを「本件捜索・差押え」という。)。また,捜索差押許可状の呈示については,逮捕状の緊急執行(同法201条2項,73条3項)に相当する規定が設けられていない。したがって,本件捜索・差押えには,手続上の違法がある。
 そこで,このような違法な手続によって収集された証拠である本件土地売買契約書等を,証拠として採用することができるかどうかについて検討する(※1)
2 裁判所が,捜査機関が違法な捜査によって収集した証拠を採用することは,裁判所が捜査機関の違法捜査を是認するものと捉えられ,違法捜査が拡大する危険性がある。そこで,捜査機関による将来の違法捜査を要請する見地から,捜査機関の違法捜査によって収集された証拠は,採用できないこととすべきである(※2)。もっとも,軽微な違法手続により収集された証拠であっても,違法の程度・態様を問題とせず一律にこれを排除する結果,事案解明が害されるとすれば,司法への信頼が害されることとなる(※3)
 したがって,捜査機関の捜査手続に,令状主義の精神を没却するような重大な違法があり,これによって得られた証拠として許容することが,将来における違法な捜査の抑制の見地からして相当でないと認められる場合においては,当該証拠の証拠能力は否定される(※4)
3 これを本件についてみると(※5),たしかに,本件捜索・差押えに係る捜索差押許可状(以下「本件捜索差押許可状」という。)は適法に発付されており,本件捜索・差押えは本件捜索差押許可状に記載された範囲を超えるものではなかったのであって,令状主義そのものに違反しているものではない。また,令状の呈示は,相手方に捜査機関の捜査に対する受任限度を告知するために行われているところ,被処分者であるZは,Kが後日の令状呈示を提案したのに対して黙って頷いていることから,令状が提示されないことによる不利益を受任しているものとも考えられ,違法の重大性は低いようにも考えられる。しかし,Kは警察官Lと適宜連絡をとることによって,容易に適法な捜査を行うことが可能であったにもかかわらず,関係書類が隠滅されてしまうのではないかとの不安から令状を呈示せずに捜索を開始しているが,不安を基礎付ける客観的根拠がなく違法捜査に出ざるを得ないとみるべき事情はない。したがって,Kにとって適法な捜査を行うことは十分に可能であって以上,Kには令状主義を没却する意図があったことが推認される。また,Kは,本件捜索・差押えを行った翌日に,捜索差押調書及び捜査報告書に,Zに対して事前の令状呈示を行った旨の虚偽の記載をしていることから,Kが本件捜索・差押えの時に令状主義を潜脱する意図があったことが推認される。以上から,本件捜索・差押えには,令状主義を没却するような重大な違法があったといえる。
 また,本件における被疑事実は,不動産という高価なものに関連する詐欺罪であって,事件は重大である。また,本件土地売買契約書等は,犯罪の目的物や,売買代金,売買条件等が記載されているものと考えられ,これらの記載から欺罔行為を基礎付けることもできるものと考えられるため,証拠としての重要性も認められる。しかし,本件捜索・差押えの違法は,捜査機関が意図的に行ったものであるから,将来的に同様の違法行為が繰り返される可能性が高い。以上から,将来における違法な捜査の抑制の見地から,本件土地売買契約書等を証拠として採用することは相当ではない。
 よって,本件土地売買契約書等は,その証拠能力が認められない。
4 もっとも,本件捜索・差押えはZの自宅に対して行われたところ,公判廷における被告人はXであるから,Xが自身以外に対する違法捜査によって収集された証拠について,その排除を申し立てることはできるか。
 違法捜査によって収集された証拠を排除すべき前記の趣旨からすれば,違法捜査によって法益侵害を受けた者の如何に拠らず,将来の違法捜査の抑制の要請は働き,かつ,司法に対する国民の信頼は影響を受ける。したがって,被告人自身が違法捜査を受けていなくとも,これによって収集された証拠の排除を申し立てることはできる。
 本件でも,Xは,本件土地売買契約書等の排除を申し立てることができる。
5 よって,Xの公判において,本件土地売買契約書等を証拠とすることはできない。

以 上


(※1)「明文の証拠法則である伝聞法則(法320条1項)・自白法則(法319条1項)や,関連性のない証拠の証拠能力が否定される趣意の中核は,証明力・信用性に弱点があり類型的に証拠価値に乏しい証拠を事実認定の素材から排除することにより,正確な事実の認定に資することを目標とするものである……。これに対して違法収集証拠排除法則は,当該証拠の証明力とは無関係に,すなわち高度の証明力の認められる関連性のある証拠物(例,薬物所持犯罪立証の要となる被告人の所持していた薬物)であっても,証拠としての許容性を否定しようとするものである。それは,前記判例の説示にもあるとおり,正確な事実の認定・刑罰法令の適用実現の基礎となる『事案の真相』の解明(法1条)という刑事手続の基本目的に真っ向から衝突する帰結を導く(例,薬物所持犯罪の被告人が当該薬物の証拠能力が否定される結果無罪となる場合)。それ故,その要件と適用範囲については,このような証拠法則が認められるべき趣旨・根拠……からの,できる限り明晰な論理構成と説得的説明が要請される。」酒巻匡『刑事訴訟法』497頁
(※2)「最高裁の説示から伺われるこの証拠法則の根拠の中核は,『将来における違法な捜査の抑制』という政策目的とみられる。前記のとおり排除法則の適用は刑事手続の基本目標の一つである事案の真相解明に正面衝突するので,その発動は,当該証拠収集の手続過程に捜査機関による『重大な違法』が認められる場合に限られる旨が示されている。したがって,裁判所による捜査手続の違法判断と証拠排除の結論は直結しない。」「このような構造から,証拠排除の申立てを受けた裁判所は,事案の真相解明の前提となる正確な事実認定への直接的影響を顧慮することなく,捜査手続の適否を判断することができ,捜査の違法を認めればこれを裁判(証拠決定や判決)において明確に宣言することができる。」前掲酒巻499頁
(※3)「判例において明言されていないが,違法捜査の抑制と並んでしばしば排除法則の根拠として挙げられるのが,『司法の無瑕性・廉潔性(judical integrity)』の維持・顕現という説明である。これは違法な捜査手続により発見・収集された証拠が,正義を実現し廉潔であるべき裁判の場で用いられることは,違法・裁判所に対する国民の信頼を害することになるから,そのような証拠は司法手続から排除されるべきであるとの考え方である。」「もっとも,司法・裁判所に対する信頼は,刑事手続の本来的目的達成とも深く関係するから,軽微な違法手続により収集された証拠であっても,違法の程度・態様を問題とせず一律にこれを排除する結果,事案解明が害されるとすれば,かえって司法への信頼を害することにもなろう。ここからは,排除法則を用いるについて捜査手続の違法の程度を考慮勘案し,それが『重大な違法』である場合に排除を検討すべきであるとの判例の説示に結びつく考え方が導かれよう。」前掲酒巻500頁
(※4)「証拠物の押収等の手続に、憲法三五条及びこれを受けた刑訴法二一八条一項等の所期する令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、これを証拠として許容することが、将来における違法な捜査の抑制の見地からして相当でないと認められる場合においては、その証拠能力は否定されるものと解すべきである。」最判昭和53年9月7日刑集32巻6号1672頁
(※5)「『違法の重大性』の判断は,⒜手続違反の程度(法規〔適法行為〕からの逸脱の程度,法益侵害の程度),⒝手続違反がなされた状況(遵法行為の困難性,緊急性),⒞手続違反の有意性(令状主義潜脱の意図,計画性,認識性)等を考慮すべきです……。また,『排除の相当性』の判断は,違法の重大性を前提として,⒟手続違反の頻発性,⒠手続違反と当該証拠獲得との因果性の程度,⒡事件の重大性,⒢証拠の重要性等を考慮する」開設396頁


【事例演習刑事訴訟法の他の問題・答案は下記のリンクから】
・ 第1講(任意捜査と強制捜査)
・ 第2講(職務質問・所持品検査)
・ 第3講(任意取調べの限界)
・ 第4講(身柄拘束の諸問題⑴-現行犯逮捕の適法性,違法逮捕後の勾留,違法逮捕と再逮捕の可否)
・ 第5講(身柄拘束の諸問題⑵-重複逮捕・勾留,同時処理による例外)
・ 第6講(身柄拘束の諸問題⑶-別件逮捕・勾留)
・ 第7講(令状による捜索・差押え⑴-捜索すべき場所の特定性,差押え目的物の特定性)
・ 第8講(令状による捜索・差押え⑵-場所に対する令状による身体に対する捜索の可否,「必要な処分」としての原状回復,電磁的記録の内容を確認せずにする差押えの可否)
・ 第9講(逮捕に伴う無令状捜索・差押え⑴-逮捕の現場,差押えの関連性)
・ 第10講(逮捕に伴う無令状捜索・差押え⑵-逮捕現場の第三者に対する捜索の可否,最寄りの場所における被逮捕者の捜索・差押えの可否)
・ 第11講(おとり捜査)
・ 第12講(接見交通)
・ 第13講(一罪の一部起訴)
・ 第14講(訴因の特定)
・ 第15講(訴因変更の要否,縮小認定)
・ 第16講(訴因変更の可否)
・ 第17講(科学的証拠)
・ 第18講(法律上の推定)
・ 第19講(類似事実証拠排除法則)
・ 第20講(自白の証拠能力⑴-約束による自白)
・ 第21講(自白の証拠能力⑵-派生証拠,反復自白)
・ 第22講(補強法則)
・ 第23講(伝聞法則⑴-総論)
・ 第24講(伝聞証拠⑵-領収書の証拠能力,犯行メモの証拠能力)
・ 第25講(伝聞証拠⑶-手続的公正を欠く場合)
・ 第26講(伝聞証拠⑷-再伝聞)
・ 第27講(伝聞法則⑸-弾劾証拠)
・ 第28講(違法収集証拠排除法則⑴-総論)
・ 第29講(違法収集証拠排除法則⑵-外国捜査機関の違法収集証拠)
・ 第30講(違法収集証拠排除法則⑶-違法性の承継,毒樹の果実)
・ 第31講(択一的認定)
・ 第32講(一事不再理効)
・ 第33講(攻防対象論-上訴審における職権調査の限界)
◎その他の答案リンク集はこちら→
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