FC2ブログ
2019-03-23(Sat)

【事例演習刑事訴訟法】第27講「伝聞法則⑸」

今日,急に寒くないですか???

昨日までめちゃくちゃ暖かったので,

落差がすごいです。

あんまり寒いと布団から出れなくなるので,

もうちょっと気温にも配慮してもらいたいですね(今日も寝坊した顔)

ところで,今日も刑訴です。

どうやら,だいぶ前に古江の第25講と第26講は答案を書いていたようで,

今回は第27講ということになります。

≪問題≫

【設 問】
 Xは,Vに対する殺人罪で起訴されたが,殺意はなく,傷害致死罪が成立するに過ぎない旨争っている。第1回公判期日において,証人甲は,本件犯行の1週間前に,XがVから,腹部や頭部を十数回殴打され,大腿部を数回足蹴にされた直後の状況について,「私は,XがVから暴行を加えられた直後に現場に到着した。しかし,その際,Xは,殴られたり蹴られたりした箇所を酷く痛がっていたが,果物ナイフでVの腹部を刺そうとした事実はない」旨証言した。
 そこで,検察官は,その証明力を争うために,
 ⑴ 乙の捜査段階における「私は,甲と一緒に,XがVから暴行を加えられた直後に現場に到着したが,Xは,バッグの中から果物ナイフを取り出して,それでVの腹部を刺そうとして突き出したが,Vがこれを叩き落として,そのまま逃げていったのを見た」旨の供述を記載した司法警察員Kの供述録取書の取調べを請求した場合,裁判所は,これを証拠として採用することができるか。
 ⑵ 甲の捜査段階における供述(その内容は,乙の上記⑴の供述と同様のもの)を司法警察員Lが記載した捜査報告書(Lの署名・押印はあるものの,甲のそれはない)の取調べを請求した場合はどうか。検察官が甲の上記証言後に,甲を取り調べて録取した上記⑴の供述と同旨の供述録取書(甲の署名・押印があるもの)については,どうか。
 ⑶ 甲の捜査段階における供述(その内容は,乙の上記⑴の供述と同様のもの)を司法警察員Mが録音したICレコーダーの取調べを請求した場合はどうか。


弾劾証拠っていうやつですね。

司法試験でもつい最近出題されていた気がします。

司法試験で出たのは増強証拠だか回復証拠だった気がしますね。

古江の開設にはあるが,設問にはないところっていう,

なんかちょっと意地悪な出題でしたけどね。

やっぱり司法試験委員って性格悪いですよね。

≪答案≫
第1 設問⑴
 1 検察官は,証人甲の証言(以下「本件証言」という。)の証明力を争うために,乙の捜査段階における供述を記載した供述録取書(以下「本件乙供述録取書」という。)の取調べを請求している。そこで,本件乙供述録取書を,本件証言の証明力を争うための証拠(以下「弾劾証拠」という。)として採用することができるかどうかについて検討する。
 2 刑訴法328条は,公判廷供述と矛盾する同一人の公判廷外供述を公判廷供述の信用性を弾劾するために用いるのであれば,その内容の真実性を前提とするのではなく,同一人が同一事項について,公判廷外において,公判廷供述と矛盾する供述を行ったという事実を証明することによって,公判廷供述が信用できないことを立証することができるのであるから,このような立証を行う限りにおいて,刑訴法321条ないし同法324条の規定に関わらず証拠とすることを許容したものである。そして,第三者の矛盾供述は,その内容が真実であることを前提としない限り,それが存在しているという事実だけでは信用性を減殺することができないところ,同法328条によって第三者の矛盾供述を許容することとなると,必然的に第三者の矛盾供述の内容たる事実が裁判官の心証上認められ,実質証拠として機能することとなり,伝聞例外の厳格な要件を潜脱することとなる。
 したがって,刑訴法328条によって弾劾証拠とすることができるのは,自己矛盾供述に限られる。
 3 これを本件についてみると,本件乙供述録取書は,本件証言を行った甲ではない第三者たる乙の供述を録取した第三者の矛盾供述であって,自己矛盾供述にはあたらないから,刑訴法328条の弾劾証拠とすることはできない。
 4 したがって,裁判所は,本件乙供述録取書を,弾劾証拠として採用することはできない。
第2 設問⑵
 1 前段
  ⑴ 検察官は,本件証言の証明力を争うために,甲の捜査段階における供述を記載した捜査報告書(以下「本件捜査報告書」という。)の取調べを請求している。そこで,本件捜査報告書を,本件証言の弾劾証拠として採用することができるかどうかについて検討する。
  ⑵ まず,本件捜査報告書は,甲自身の供述を内容とするものであるから,自己矛盾供述であって,刑訴法328条の弾劾証拠として許容される証拠の範囲に含まれる。
  ⑶ア 次に,本件捜査報告書には,甲の署名・押印がされていないが,このような書面についても刑訴法328条の弾劾証拠として採用することができるか。
   イ 自己矛盾供述の存在は,実質証拠の証明力に影響を及ぼす補助事実として機能する。補助事実は,刑罰権の存否及び範囲を画する事実そのものではないものの,厳格な証明を要する実質証拠の証明力に大きな影響を及ぼすものであるから,厳格な証明を要する間接事実と同様に扱われるべきである。そうすると,補助事実についても,厳格な証明が必要であるから,その一種である自己矛盾供述についても厳格な証明が必要である。
 そして,供述録取書には,供述者が供述録取者に対して供述をする過程(以下「第1供述過程」という。)と,供述録取者がこれを書面化して伝える過程(以下「第2供述過程」という。)が存在し,刑訴法328条が対象とするのは第1供述過程にすぎないのであるから,第2供述過程については,別途伝聞例外の要件を満たすことによる厳格な証明が必要となる。
 したがって,供述録取書を弾劾証拠として採用するためには,供述者の署名・押印が必要である(刑訴法322条1項)。
   ウ これを本件についてみると,本件捜査報告書には,供述者である甲の署名・押印がされていないのであるから,本件捜査報告書は刑訴法が定める要件を満たしていない。したがって,厳格な証明がされているということができないため,本件捜査報告書は,弾劾証拠として用いることができない。
  ⑷ よって,裁判所は,本件捜査報告書を,弾劾証拠として採用することができない。
 2 後段
  ⑴ 検察官は,本件証言の証明力を争うために,甲の本件証言後の取調べにおける供述を記載した供述録取書(以下「本件甲供述録取書」という。)の取調べを請求している。そこで,本件甲供述録取書を,本件証言の弾劾証拠として採用することができかどうかについて検討する。
  ⑵ まず,本件甲供述録取書は,甲自身の供述を内容とするものであるから,自己矛盾供述にあたり,弾劾証拠として許容される証拠の範囲に含まれる。
 また,本件甲供述録取書には,甲の署名・押印があるから,刑訴法の要件を満たしている。
  ⑶ア もっとも,本件甲供述録取書は,その弾劾の対象である本件証言がされた後に作成されたものであるが,このような証拠も弾劾証拠として許容されるか。
   イ 刑訴法328条は,刑訴法321条1項2号と異なり,弾劾証拠の範囲を「前の供述」に限定していない。また,憲法37条2項の証人審問権は,実質証拠に関するものであって,補助証拠についてまで保障するものではないから,弾劾証拠の内容について反対尋問権を保障する必要がなく,「前の供述」に限定する必要はない。また,自己矛盾供述の存在自体は非伝聞であるから,自己矛盾供述の時期を限定する必要はない。
 したがって,公判廷における証言より後にされた自己矛盾供述であっても,弾劾証拠として採用することができる。
   ウ そうすると,本件甲供述録取書も,弾劾証拠として許容される。
  ⑷ よって,裁判所は,本件甲供述録取書を,弾劾証拠として採用することができる。
第3 設問⑶
 1 検察官は,本件証言の証明力を争うために,甲の捜査段階における供述を録音したICレコーダー(以下「本件ICレコーダー」という。)の取調べを請求している。そこで,本件ICレコーダーを,本件証言の弾劾証拠として採用することができるかどうかについて検討する。
 2 本件ICレコーダーの内容は,甲自身の供述を録音したものであるから,自己矛盾供述である。そして,ICレコーダーにおいては,供述録取書と同様に第1供述過程と第2供述過程が含まれるが,第2供述過程については機械的な方法によって行われるため,知覚・記憶・表現・叙述の過程が含まれておらず,伝聞法則の適用がない。したがって,刑訴法の定める要件を満たすものである。
 したがって,本件ICレコーダーは,弾劾証拠として許容される。
 3 よって,裁判所は,本件ICレコーダーを,弾劾証拠として採用することができる。

以 上


【事例演習刑事訴訟法の他の問題・答案は下記のリンクから】
・ 第1講(任意捜査と強制捜査)
・ 第2講(職務質問・所持品検査)
・ 第3講(任意取調べの限界)
・ 第4講(身柄拘束の諸問題⑴-現行犯逮捕の適法性,違法逮捕後の勾留,違法逮捕と再逮捕の可否)
・ 第5講(身柄拘束の諸問題⑵-重複逮捕・勾留,同時処理による例外)
・ 第6講(身柄拘束の諸問題⑶-別件逮捕・勾留)
・ 第7講(令状による捜索・差押え⑴-捜索すべき場所の特定性,差押え目的物の特定性)
・ 第8講(令状による捜索・差押え⑵-場所に対する令状による身体に対する捜索の可否,「必要な処分」としての原状回復,電磁的記録の内容を確認せずにする差押えの可否)
・ 第9講(逮捕に伴う無令状捜索・差押え⑴-逮捕の現場,差押えの関連性)
・ 第10講(逮捕に伴う無令状捜索・差押え⑵-逮捕現場の第三者に対する捜索の可否,最寄りの場所における被逮捕者の捜索・差押えの可否)
・ 第11講(おとり捜査)
・ 第12講(接見交通)
・ 第13講(一罪の一部起訴)
・ 第14講(訴因の特定)
・ 第15講(訴因変更の要否,縮小認定)
・ 第16講(訴因変更の可否)
・ 第17講(科学的証拠)
・ 第18講(法律上の推定)
・ 第19講(類似事実証拠排除法則)
・ 第20講(自白の証拠能力⑴-約束による自白)
・ 第21講(自白の証拠能力⑵-派生証拠,反復自白)
・ 第22講(補強法則)
・ 第23講(伝聞法則⑴-総論)
・ 第24講(伝聞証拠⑵-領収書の証拠能力,犯行メモの証拠能力)
・ 第25講(伝聞証拠⑶-手続的公正を欠く場合)
・ 第26講(伝聞証拠⑷-再伝聞)
・ 第27講(伝聞法則⑸-弾劾証拠)
・ 第28講(違法収集証拠排除法則⑴-総論)
・ 第29講(違法収集証拠排除法則⑵-外国捜査機関の違法収集証拠)
・ 第30講(違法収集証拠排除法則⑶-違法性の承継,毒樹の果実)
・ 第31講(択一的認定)
・ 第32講(一事不再理効)
・ 第33講(攻防対象論-上訴審における職権調査の限界)
◎その他の答案リンク集はこちら→
スポンサーサイト



コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

コメント

プロフィール

||中央特快||高尾||

Author:||中央特快||高尾||
お疲れ様です。

最新記事
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
訪問者数
カレンダー
09 | 2019/10 | 11
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード