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2019-03-22(Fri)

【事例演習刑事訴訟法】第24講「伝聞法則⑵」

1日4通の壁は高い。

たぶん書こうと思えば書けるんだと思うんですが,

なにしろ研究室で休憩している時間が長いため,

結局3通目を書き終わる頃には1日が終わるんですよね。

無駄を失くしてスリム化を図らないといけませんね。

今回は,古江の第24講です。

≪問題≫

【設 問】
 R株式会社総務部長Xおよび総務課長Yが総会屋Sに現金1000万円を供与したとの会社法違反(利益供与)事件の捜査において,司法警察員Kにおいて捜索差押許可状の発付を得て同社社屋を捜索したところ,同社総務部長室のX使用の机の施錠された引き出しの中から,S名義でY個人宛の額面1000万円の領収書1通および「XとYの打合せの結果,YがR社の裏金から総会屋対策としてSに現金1000万円を供与し,Y宛の領収書を徴することとする」と記載されたYの筆跡のメモ紙1枚が発見され,いずれも上記許可状により差し押さえられた。Xは,会社法違反罪(Yとの共謀によるSに対する利益供与)で起訴されたが,罪状認否において,Sへの金員供与自体を否定した。検察官は,立証趣旨を「領収書の存在と内容」として上記領収書の取調べを,立証趣旨を「メモの存在と内容」として上記メモ紙の取調べをそれぞれ請求したところ,被告人Xの弁護人は,いずれも不同意とした。裁判所は,これらを証拠として採用することができるか。


伝聞証拠の肝はなんといっても推論過程をしっかり書くことだと思うんですが,

ここの一連の論述で自分の文章力が丸裸にされますよね。

表現の適切さを欠くと,推論が成り立たなくなりますからね。

どの科目のどの答案よりも神経をつかいます。

下記の答案も果たして推論過程の記述として必要十分なのか,

とても心配です。

≪答案≫
1 検察官が,S名義でY個人宛の額面1000万円の領収書1通(以下「本件領収書」という。)及びYの筆跡のメモ紙(以下「本件メモ紙」という。)を証拠として請求したのに対して,被告人Xの弁護人は,いずれも不同意としている。これは,本件領収書及び本件メモ紙が,「公判期日における供述」に代わる「書面」(刑訴法320条1項。以下,この書面を「伝聞証拠」という。)にあたるため,関連性を欠き,証拠能力が認められないとする主張であると考えられる。そこで,本件領収書及び本件メモ紙が,伝聞証拠にあたるかどうかについて検討する。
2 刑訴法320条1項が伝聞証拠の証拠能力を制限しているのは,伝聞証拠に含まれる原供述には,知覚・記憶・表現・叙述の供述過程があり,各過程において誤りが入り不確かな推認となるにもかかわらず,反対尋問,偽証罪による処罰予告,裁判所による供述態度の観察により原供述の真実性の確認ができないためである。そこで,伝聞証拠とは,公判廷外の供述を内容とする証拠であって,要証事実との関係で原供述の内容の真実性が問題となるものをいう。
3⑴ これを本件についてみると,まず本件領収書は公判廷外の供述を内容とする証拠である。
 次に,要証事実との関係で本件領収書の内容の真実性が問題となるかについて検討する前提として,本件における要証事実が何かについて検討する。本件の公訴事実はXのYとの共謀によるSに対する会社法違反罪(利益供与)であるところ,XはSへの金員供与自体を否定しているから,公判廷ではXの犯人性が争点となっている。この点,本件領収書の立証趣旨は「領収書の存在と内容」とされている。領収書は,その性質上,金員を受領することに伴って作成されるものであるから,それが相手方に交付された事実のみをもって,その領収書に記載されている内容に相当する金員の授受の事実を推認することができる。そうすると,本件領収書は,S名義でY個人宛の額面1000万円のものであって,これがSの下を離れてYと共謀したものとされるXの下にあることから,少なくとも,YとSの間で1000万円の金員が授受されたものであることが推認される。そして,共謀共同正犯においては,共謀に基づいて一部の者が実行行為を行えば足りるところ,本件領収書から推認される事実は,共謀に基づく一部の者であるYの実行行為があったことを推認するものである。したがって,本件領収書の立証趣旨を「領収書の存在と内容」とすることは,無意味ではないから,検察官の設定した立証趣旨がそのまま要証事実となる。
 そして,前記のような推論過程からすれば,本件領収書が存在していること自体が問題となるにすぎないのであるから,要証事実との関係で,その内容の真実性が問題とはならない。
 したがって,本件領収書は伝聞証拠ではない。
 ⑵ 次に本件メモ紙も,公判廷外の供述を内容とするものである。
 次に,要証事実について検討すると,本件メモ紙の立証趣旨は「メモの存在と内容」とされている。本件メモ紙には,「YがR社の裏金から総会屋対策としてSに現金1000万円を供与し,Y宛の領収書を徴する」との記載があるが,YはR社の総務課長の地位にあること,YがSに対して1000万円を供与したこと,Sが総会屋であること,Y宛の領収書が作成されたことは,現実に起きた犯行の態様と一致しており,かつその内容は詳細である。そうすると,本件メモ紙に記載された内容と現実に起きた犯行とが偶然に一致したものとは考えにくく,この場合には,本件メモ紙に記載された計画に従って犯行が遂行されたことが推認される。また,本件メモ紙は,Xが使用する机から発見されており,しかも発見された引き出しは施錠されていたのであるから,X以外の者が引出しに本件メモ紙を出し入れしたものとは考えにくい。そうすると,Xが本件メモ紙に記載の犯行に何らかの形で巻よしていることが推認される。これらの事実からすれば,Xは,本件メモ紙に記載された犯行の主体たるYとの間で謀議を行っていたことが推認される。そして,本件の公訴事実は利益供与の共謀共同正犯であって,XとYとの間で謀議があることは,共謀が存在したことを推認する事情である。したがって,本件メモ紙が存在すること自体から,XとYとの間で共謀があったことを推認することができるのであるから,本件メモ紙の立証趣旨を「メモの存在と内容」とすることは無意味でなく,検察官の設定した立証趣旨がそのまま要証事実となる。
 そして,前記のような推論過程からすれば,本件メモ紙が存在すること自体が問題となるにすぎないのであるから,要証事実との関係で,その内容の真実性が問題とならない。
 したがって,本件メモ紙は伝聞証拠ではない。
4 よって,裁判所は,いずれの証拠についても,採用することができる。

以 上


【事例演習刑事訴訟法の他の問題・答案は下記のリンクから】
・ 第1講(任意捜査と強制捜査)
・ 第2講(職務質問・所持品検査)
・ 第3講(任意取調べの限界)
・ 第4講(身柄拘束の諸問題⑴-現行犯逮捕の適法性,違法逮捕後の勾留,違法逮捕と再逮捕の可否)
・ 第5講(身柄拘束の諸問題⑵-重複逮捕・勾留,同時処理による例外)
・ 第6講(身柄拘束の諸問題⑶-別件逮捕・勾留)
・ 第7講(令状による捜索・差押え⑴-捜索すべき場所の特定性,差押え目的物の特定性)
・ 第8講(令状による捜索・差押え⑵-場所に対する令状による身体に対する捜索の可否,「必要な処分」としての原状回復,電磁的記録の内容を確認せずにする差押えの可否)
・ 第9講(逮捕に伴う無令状捜索・差押え⑴-逮捕の現場,差押えの関連性)
・ 第10講(逮捕に伴う無令状捜索・差押え⑵-逮捕現場の第三者に対する捜索の可否,最寄りの場所における被逮捕者の捜索・差押えの可否)
・ 第11講(おとり捜査)
・ 第12講(接見交通)
・ 第13講(一罪の一部起訴)
・ 第14講(訴因の特定)
・ 第15講(訴因変更の要否,縮小認定)
・ 第16講(訴因変更の可否)
・ 第17講(科学的証拠)
・ 第18講(法律上の推定)
・ 第19講(類似事実証拠排除法則)
・ 第20講(自白の証拠能力⑴-約束による自白)
・ 第21講(自白の証拠能力⑵-派生証拠,反復自白)
・ 第22講(補強法則)
・ 第23講(伝聞法則⑴-総論)
・ 第24講(伝聞証拠⑵-領収書の証拠能力,犯行メモの証拠能力)
・ 第25講(伝聞証拠⑶-手続的公正を欠く場合)
・ 第26講(伝聞証拠⑷-再伝聞)
・ 第27講(伝聞法則⑸-弾劾証拠)
・ 第28講(違法収集証拠排除法則⑴-総論)
・ 第29講(違法収集証拠排除法則⑵-外国捜査機関の違法収集証拠)
・ 第30講(違法収集証拠排除法則⑶-違法性の承継,毒樹の果実)
・ 第31講(択一的認定)
・ 第32講(一事不再理効)
・ 第33講(攻防対象論-上訴審における職権調査の限界)
◎その他の答案リンク集はこちら→
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