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2019-03-21(Thu)

【事例演習刑事訴訟法】第21講「自白の証拠能力⑵」

ブルボンとかロッテとかヤマザキビスケットとかが,

製品に金属片が混入していたとかで,

お菓子を自主回収しているようです。

一部は,回収と同時にQuoカードもあげるんだそうです。

私もお菓子買っとけばよかったですね。

チョコパイとか好きですし,アルフォートも好きです。

健康被害もまだ問題となっていないようですし。

定期的にお菓子は買うことにしましょう。

ところで,今回は,古江の第21講です。

≪問題≫

【設 問】
 Xは,Aに対して覚せい剤を有償譲渡したとの被疑事実により,逮捕・勾留された。Xは,犯行を否認したので,警察官Kは,Xに対し,「本件の主犯は他にいると思われるので,君が犯行について自白し,残りの覚せい剤の場所を隠匿場所を明らかにすれば,不起訴にする。」旨説得したところ,Xは,その言葉を信じて,本件覚せい剤譲渡の犯行および主犯がYであること並びに密売用の覚せい剤はYがその愛人であるB方に隠匿していることを自白した。そこで,捜索差押許可状の発付を受けて,B方を捜索したところ,Xの供述どおり,大量の覚せい剤が発見されたので,これを差し押さえた。Xは,検察官Pに対しても,同様の自白をしたので,検察官Pは,XがYと共謀して,営利目的で,①Aに対し覚せい剤を譲渡したとの訴因および②B方において覚せい剤を所持したとの訴因でXを起訴した。上記覚せい剤およびXの検察官に対する自白は,Xの公判において,それぞれ証拠とすることができるか。


2問連続で自白の問題です。

今回は派生証拠と反復自白。

第20講に比べれば応用度は高めです。

派生証拠は違収排まで言及した方がいいんですかね。

どっちにしろ重大な違法収集証拠排除法則じゃないので,

すぐ切れてしまうと思うんですが……。

≪答案≫
第1 自白該当性について
 Xは,警察官Kに対して,覚せい剤を譲渡したこと及び主犯がYであること並びに覚せい剤はB方に隠匿している旨供述している。これは,Xが自己の覚せい剤有償譲渡及びB方における覚せい剤所持の犯罪事実の全部を認める供述であるから,「自白」(刑訴法319条)である(以下,XのKに対する供述を「本件自白①」という。)。また,Xは,検察官Pに対しても同様の供述をしているため,これも「自白」である(以下,XのPに対する供述を「本件自白②」という。)。
第2 本件自白②の証拠能力について
 1 裁判所は本件自白②を証拠として採用するためには,本件自白②が「任意にされたものでない疑」のないものである必要がある(憲法38条2項,刑訴法319条1項)。そこで,本件自白②について,「任意にされたものでない疑」があるかどうかを検討する。
 2 憲法38条2項及び刑訴法319条1項が,任意性を欠く自白を証拠とすることができないものとしたのは,供述に際して被疑者・被告人の自由な意思決定を妨げ虚偽の自白を誘発する状況がある場合には,これを用いて裁判をすることが誤った事実認定につながるおそれがあるため,これを排除するものである。したがって,供述過程にある被疑者の自由な意思決定を妨げる事情により被疑者が心理的強制を受け,類型的に虚偽の自白が誘発されるおそれのある疑いが認められるときには,その状況の下でされた自白は「任意にされたものでない疑」があるということになる。
 3 これを本件についてみると,前提として,Xが本件自白①をするに至るまでには,KがXに対して「君が犯行を自白し,残りの覚せい剤の隠匿場所を明らかにすれば,不起訴にする」などと申し向けている。そこで,ここでのXの任意性について検討すると,警察官は,被疑者を不起訴にする権限を有しないが(刑訴法248条参照),通常の被疑者であれば,警察官と検察官の権限分配について必ずしも正確に理解していないものと考えられ,警察官本人から直接的にこのように申し向けられれば,警察官が不起訴の判断をする権限があるものと誤信し,あるいは検察官に対して不起訴にするように働きかける権限があるものと誤信するものと考えられる。ここで,Kが提示した内容は,自白と引き換えに不起訴処分とすることであるが,逮捕・勾留によって身柄を拘束されているXからすれば,何よりも先に得たい利益であると考えられる。そのうえで,Kは,不起訴にするという断定的な発言をしており,その利益を確実に与えるかのように,弁護士等を介さずに直接申し向けており,特にXが不利益処分の利益を得るために自白をするように誘導しているものである。これらの事実からすれば,Kの提示した利益誘導により,Xは不起訴処分という大きな利益を得るために自白をしようという心理状態に陥っていたものとみることができる。したがって,本件自白①がされるまでに,Xは類型的に虚偽の自白が誘発される状況にあったとみることができる。このような状況の下でXは本件自白①をするに至っているのであるから,本件自白①は「任意にされたものでない疑」があるというべきである。
 次に,本件自白②についてみると(※1),Xが本件自白②をする際には,Pから特段の働き掛けがあったとの事実は認められない。そうすると,Xが本件自白②をするにあたり,それが「任意にされたものでない疑」があるということはできないようにも思える。しかし,本件自白①におけるXに対するKの約束による心理的影響はPによる取調べにおいても残存するのが一般である。そして,PとKはどちらも捜査機関であることには変わりがなく,前記のように警察官と検察官との権限分配について必ずしも理解していない被疑者からすれば,ここでの取調官の交代は前記心理的影響を除去し得るものではない。そして,取調べの日時も比較的近接しており,なお前記心理的影響が残存し続けていると考えられるから,Pにおいて特段の影響遮断措置をとらなければならないところ,Pがこのような措置をとったとの事実は認められない。したがって,本件自白②においても,Xは前記心理的影響を受け続けたままであり,類型提起に虚偽の自白が誘発される状況にあったとみることができる。このような状況の下でXは本件自白②をするに至っているのであるから,本件自白②は「任意にされたものでない疑」があるというべきである。
 4 以上から,本件自白②は,その証拠能力が認められないから,裁判所は,本件自白②を証拠とすることができない。
第3 覚せい剤の証拠能力について
 1 B方から発見された覚せい剤(以下「本件覚せい剤」という。)は,本件自白①に基づいてB方に対してされた捜索によって発見されたものであるが,本件自白①自体は前記のように証拠能力を欠くから,これに基づく捜索・差押えによって収集された本件覚せい剤も,その証拠能力が否定されないか。
 2⑴ 憲法38条2項及び刑訴法319条1項が,任意性を欠く自白を証拠とすることができないものとした前記の趣旨からすれば,不任意自白から派生して収集された証拠は,類型的に虚偽の自白が誘発されるおそれのある疑いが認められるときには証拠能力が否定される。
 もっとも,不任意自白から派生して収集された証拠で,類型的に虚偽の自白が誘発されるおそれのある疑いが認められないものあっても,自白と一体と評価し得るほど結びつきが強いものは,自白の内容を前提としてのみ要証事実との関連性が肯定されるから,そのような証拠は,関連性がないため,証拠能力が認められない(※2)
  ⑵ これを本件についてみると,本件覚せい剤は,証拠物であって,心理を持ち合わせていないのであるから,類型的に虚偽の自白が誘発されるおそれがある疑いが認められるとはいえない。また,本件覚せい剤は,本件自白①から派生して収集されたとはいえ,本件自白①が化体したようなものではなく,これと一体と評価し得るほど結びつきが強いとは認められない。
 3 また,別途本件覚せい剤について違法収集証拠排除法則の適用により,本件覚せい剤が証拠禁止にあたる可能性もあるが,KがXに対して不起訴の約束をしたことが,憲法や刑訴法の所期する基本原則を没却するような重大な違法であるとまでは認められないから,違法収集証拠排除法則の適用はない。
 4 よって,本件覚せい剤は,証拠能力が認められるから,裁判所は本件覚せい剤を証拠とすることができる。

以 上


(※1)「反復自白については,『影響の残存・遮断』の判断要素として,第1次取調べの方法,取調官の異同,取調べの時間的間隔・場所的同一(近接)性,弁護士との接見の有無,その他の影響遮断措置の有無等を総合的に考慮すべき」解説297頁
(※2)「虚偽排除説によって自白を排除した場合であっても,不任意自白に基づいてなされた引き当たりの捜査報告書(福岡高判平成5・3・18判時1489号159頁)のように,『自白と一体と評価しうるほど結びつきが強い派生証拠』は,自白の内容を前提としてのみ要証事実(主要事実)との関連性が肯定されることから,そのような派生証拠は,関連性がないことを理由として排除されうること……に留意が必要だろう」解説292頁


【事例演習刑事訴訟法の他の問題・答案は下記のリンクから】
・ 第1講(任意捜査と強制捜査)
・ 第2講(職務質問・所持品検査)
・ 第3講(任意取調べの限界)
・ 第4講(身柄拘束の諸問題⑴-現行犯逮捕の適法性,違法逮捕後の勾留,違法逮捕と再逮捕の可否)
・ 第5講(身柄拘束の諸問題⑵-重複逮捕・勾留,同時処理による例外)
・ 第6講(身柄拘束の諸問題⑶-別件逮捕・勾留)
・ 第7講(令状による捜索・差押え⑴-捜索すべき場所の特定性,差押え目的物の特定性)
・ 第8講(令状による捜索・差押え⑵-場所に対する令状による身体に対する捜索の可否,「必要な処分」としての原状回復,電磁的記録の内容を確認せずにする差押えの可否)
・ 第9講(逮捕に伴う無令状捜索・差押え⑴-逮捕の現場,差押えの関連性)
・ 第10講(逮捕に伴う無令状捜索・差押え⑵-逮捕現場の第三者に対する捜索の可否,最寄りの場所における被逮捕者の捜索・差押えの可否)
・ 第11講(おとり捜査)
・ 第12講(接見交通)
・ 第13講(一罪の一部起訴)
・ 第14講(訴因の特定)
・ 第15講(訴因変更の要否,縮小認定)
・ 第16講(訴因変更の可否)
・ 第17講(科学的証拠)
・ 第18講(法律上の推定)
・ 第19講(類似事実証拠排除法則)
・ 第20講(自白の証拠能力⑴-約束による自白)
・ 第21講(自白の証拠能力⑵-派生証拠,反復自白)
・ 第22講(補強法則)
・ 第23講(伝聞法則⑴-総論)
・ 第24講(伝聞証拠⑵-領収書の証拠能力,犯行メモの証拠能力)
・ 第25講(伝聞証拠⑶-手続的公正を欠く場合)
・ 第26講(伝聞証拠⑷-再伝聞)
・ 第27講(伝聞法則⑸-弾劾証拠)
・ 第28講(違法収集証拠排除法則⑴-総論)
・ 第29講(違法収集証拠排除法則⑵-外国捜査機関の違法収集証拠)
・ 第30講(違法収集証拠排除法則⑶-違法性の承継,毒樹の果実)
・ 第31講(択一的認定)
・ 第32講(一事不再理効)
・ 第33講(攻防対象論-上訴審における職権調査の限界)
◎その他の答案リンク集はこちら→
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