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2019-03-21(Thu)

【事例演習刑事訴訟法】第19講「類似事実証拠排除法則」

昨日は,答案を1通しか書くことができませんでした。

そんなつもりじゃなかったんですがねえ……。

突発的な飲みはよくないですね。

今日は頑張ってたくさん答案を書きます。

まずは,古江の第19講から。

≪問題≫

【設 問】
 被告人は,高級輸入ドイツ車ベンツに対する器物損壊合計10件で起訴され,うち4件(1件は犯行直後に現行犯逮捕されたもの,3件は,被告人の指紋が当該外国車に付着していた,あるいは防犯カメラに被告人の犯行状況が撮影されていたもの)については,事実を認めたが,残りの6件については,犯人性を争った。公訴事実記載の犯罪事実は,自認した4件を含め,いずれも,平成26年7月下旬から8月中旬にかけて,午後9時ころから午後10時ころまでの間に鎌倉市内の海岸沿いの高級マンションの駐車場に駐車中のベンツの右または左の後輪タイヤを千枚通し様の刃物を刺してパンクさせ,ボンネットをナイフ様の刃物で「Z」状に傷つけるというものであった(被告人の自認する4件については,2件は7月下旬,他の2件は8月上旬に,いずれも,千枚通しで右または左の後輪タイヤを数回刺してパンクさせ,ボンネットをバタフライナイフで「Z」状に傷つけたものである)。
 裁判所は,被告人の自認する4件の犯罪事実を,他の6件の器物損壊について被告人と犯人の同一性の推認に用いることができるか。


類似証拠ですね……。

TKCで出ましたね……。

もっと早く読んでおけば,あんな訳分かんない答案は書かなかったでしょうね……。

≪答案≫
1 裁判所は,被告人が自認する4件の犯罪事実を,他の6件の器物損壊について被告人と犯人の同一性の推認に用いようとしている。前4件の犯罪事実は,後6件の器物損壊と類似する事実(以下「類似事実」という。)にすぎないのであるが,裁判所が被告人と犯人との同一性の推認にあたり,類似事実を用いることができるかについて検討する。
2 類似事実を証拠として用いる場合には,類似事実と証明対象との間に関連性があることが必要である。この点,類似事実は,一般的には犯罪事実について,様々な面で証拠としての価値を有しているから,自然的関連性は認められる。もっとも,類似事実については,被告人の犯罪性向といった実証的根拠の乏しい人格評価につながりやすく,そのために事実認定を誤らせるおそれがあり,また,これを回避し,類似事実の証明力を合理的な推論の範囲に限定するため,当事者が類似事実の内容に立ち入った攻撃防御を行う必要が生じるなど,その取調べに付随して争点が拡散するおそれもある(※1)。したがって,類似事実は,原則として法律的関連性が認められないが,前記の問題点からして,類似事実によって証明しようとする事実について,実証的根拠の乏しい人格評価によって誤った事実認定に至るおそれがないと認められるときは,類似事実に法律的関連性が認められ,これを証拠とすることが許される。そして,類似事実を被告人と犯人の同一性の証明に用いる場合には,類似事実が顕著な特徴を有し,かつ,それが起訴に係る犯罪事実と相当程度類似していると認められるときには,類似事実について実証的根拠の乏しい人格評価によって誤った事実認定に至るおそれがないと認められる(※2)(※3)(※4)
3 これを本件についてみると,類似事実である前4件の犯行手口は,ベンツという特定の車種について,その後輪タイヤを同様の方法によりパンクさせ,ボンネットにいずれも「Z」状に傷つけるものであって,類似性が認められ,かつ特殊なものである。また,犯行地域は鎌倉市内の海岸沿いの高級マンションの駐車場と,特定の地域に絞られており,犯行日も平成26年7月下旬から8月中旬と短期間に限定されている上,時間帯は午後9時から午後10時の間と限定されている。これらの事実からすれば,類似事実である前4件の犯罪事実については,顕著な特徴があるということができる。
 そして,他の6件の犯罪事実についても,犯行手口や場所,日時等が前4件とほぼ同様であるから,相当程度類似していると認められる。
 以上から,本件における類似事実を用いて犯人性を推認しても,実証的根拠の乏しい人格評価によって誤った事実認定に至るおそれがないということができる。
4 よって,裁判所は,被告人の自認する4件の犯罪事実を,他の6件の器物損壊について被告人と犯人の同一性の推認に用いることができる。

以 上


(※1)同種前科の証拠能力のうち,法律的関連性を問題とすることの根拠として,最判平成24年9月7日刑集66巻9号907頁は,「前科,特に同種前科については,被告人の犯罪性向といった実証的根拠の乏しい人格評価につながりやすく,そのために事実認定を誤らせるおそれがあり,また,これを回避し,同種前科の証明力を合理的な推論の範囲に限定するため,当事者が前科の内容に立ち入った攻撃防御を行う必要が生じるなど,その取調べに付随して争点が拡散するおそれもある。」としています。そして,最判解刑事篇平成25年度20頁は,「前科に係る犯罪事実であれ類似事実であれ,これを犯人性の立証に用いる場合の推認の構造と問題点は同じといえる」としています。
(※2)「前科に係る犯罪事実や被告人の他の犯罪事実を被告人と犯人の同一性の間接事実とすることは,これらの犯罪事実が顕著な特徴を有し,かつ,その特徴が証明対象の犯罪事実と相当程度類似していない限りは,被告人に対してこれらの犯罪事実と同種の犯罪を行う犯罪性向があるという実証的根拠に乏しい人格評価を加え,これをもとに犯人が被告人であるという合理性に乏しい推論をすることに等しく,許されないというべきである。」前掲最判平成25年2月20日
(※3)顕著な特徴・相当程度類似は,実証的根拠の乏しい人格評価が入らない例外的な場合の1つにすぎないので(他の例外は,解説にもあるように,強固な犯罪傾向がある場合,推認力を高める他の事情が付加できる場合など),規範として示す必要はないかもしれません(顕著な特徴・相当程度類似に沿ったあてはめをすれば十分な気がします)が,一応前掲最判平成24年9月7日や前掲最判平成25年2月20日は,あてはめの前段階で顕著な特徴・相当程度類似を示していますので,答案でもこれに従っています。
(※4)ちなみに,解説で示されている,他の例外(①強固な犯罪傾向,②推認力を高める他の事情の付加)についても論証(答案の2の「そして,類似事実……」以降の部分を代置するもの)を書くとすれば,下記のようになるかと思います。
①「そして,類似事実[同種前科]から推認される被告人の犯罪性向が,単なる悪性格という程度を超えて,特定の状況の下においては,いわば自然反応的に一定の行為を行うほどに習慣化している場合には,そのような状況の下で被告人が犯行を行ったという推認はより確実性の高いものであるといえるから,類似事実[同種前科]について実証的根拠の乏しい人格評価によって誤った事実認定に至るおそれがないと認められる」
②「そして,類似事実[同種前科]それ自体からは犯人性の推認力が強くない場合であっても,他の事情によって推認力が高まる関係にある場合には,これらの事実を総合して推認される犯人性については確実性の高いものであるといえるから,類似事実について実証的根拠の乏しい人格評価によって誤った事実認定に至るおそれがないと認められる」


【事例演習刑事訴訟法の他の問題・答案は下記のリンクから】
・ 第1講(任意捜査と強制捜査)
・ 第2講(職務質問・所持品検査)
・ 第3講(任意取調べの限界)
・ 第4講(身柄拘束の諸問題⑴-現行犯逮捕の適法性,違法逮捕後の勾留,違法逮捕と再逮捕の可否)
・ 第5講(身柄拘束の諸問題⑵-重複逮捕・勾留,同時処理による例外)
・ 第6講(身柄拘束の諸問題⑶-別件逮捕・勾留)
・ 第7講(令状による捜索・差押え⑴-捜索すべき場所の特定性,差押え目的物の特定性)
・ 第8講(令状による捜索・差押え⑵-場所に対する令状による身体に対する捜索の可否,「必要な処分」としての原状回復,電磁的記録の内容を確認せずにする差押えの可否)
・ 第9講(逮捕に伴う無令状捜索・差押え⑴-逮捕の現場,差押えの関連性)
・ 第10講(逮捕に伴う無令状捜索・差押え⑵-逮捕現場の第三者に対する捜索の可否,最寄りの場所における被逮捕者の捜索・差押えの可否)
・ 第11講(おとり捜査)
・ 第12講(接見交通)
・ 第13講(一罪の一部起訴)
・ 第14講(訴因の特定)
・ 第15講(訴因変更の要否,縮小認定)
・ 第16講(訴因変更の可否)
・ 第17講(科学的証拠)
・ 第18講(法律上の推定)
・ 第19講(類似事実証拠排除法則)
・ 第20講(自白の証拠能力⑴-約束による自白)
・ 第21講(自白の証拠能力⑵-派生証拠,反復自白)
・ 第22講(補強法則)
・ 第23講(伝聞法則⑴-総論)
・ 第24講(伝聞証拠⑵-領収書の証拠能力,犯行メモの証拠能力)
・ 第25講(伝聞証拠⑶-手続的公正を欠く場合)
・ 第26講(伝聞証拠⑷-再伝聞)
・ 第27講(伝聞法則⑸-弾劾証拠)
・ 第28講(違法収集証拠排除法則⑴-総論)
・ 第29講(違法収集証拠排除法則⑵-外国捜査機関の違法収集証拠)
・ 第30講(違法収集証拠排除法則⑶-違法性の承継,毒樹の果実)
・ 第31講(択一的認定)
・ 第32講(一事不再理効)
・ 第33講(攻防対象論-上訴審における職権調査の限界)
◎その他の答案リンク集はこちら→
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