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2019-03-20(Wed)

【事例演習刑事訴訟法】第18講「法律上の推定」

古江しかやらない日々が続いていますが,

さっさと終わらせないと他の科目をやっている暇がなくなってしまいます。

今年に入ってから,まだ刑法と行政法とかまともにやってないですからね。

憲法とかやらないとヤバいですよね。

あと民法と民訴も。

それから短答も。

2ヶ月を切った段階でこの現状は悲惨な気がしますね。

生き残りたいです。

≪問題≫

【設 問】
 収賄罪に関して,「公務員が,その職務の執行につき密接な利害関係を有する者から,通常の社交の程度を超える財物その他の財産上の利益を収受し,要求し,又は約束したときは,職務に関して賄賂を収受し,要求し,又は約束したものと推定する」との規定を設けることの是非を検討せよ。


またよく分からない分野の設問ですね……。

ってか,答案を書くうえで酒巻先生の基本書を参照しまくっているのですが,

ここのところは,あまりにも参照箇所が多すぎて,

もはや古江本ではなく酒巻本になりつつあります。

酒巻先生の本はそのまま答案に書けるような記載が多いので,

仕方ないですね(開き直り)

≪答案≫
1 収賄罪に関する設問の規定(以下「本件規定」という。)は,収賄罪の構成要件の一部について,その事実の存否が真偽不明である場合に不利益な認定を受ける当事者の地位(以下「証明責任」という。)(※1)を被告人側に転換する機能を有するようにも思えるが,このような規定は認められるか。
2⑴ 憲法31条は,刑罰を科すにあたって,その手続が法定されていることを要求するとともに,その手続が適正であることも要求している(※2)。刑罰を科すにあたっては,検察官が主張する公訴事実について,合理的な疑いを容れない程度の証明が必要である(※3)。そして,刑罰は重大な不利益を伴うことに鑑みると,被告人が犯罪を行ったか否かが真偽不明の状態で刑罰を科すことは,刑事手続の適正に欠けるというべきである。したがって,憲法31条は,被告人が犯罪を行ったか否かが真偽不明の状態の場合には,被告人を無罪とすべきであること(以下「利益原則」という。)についても要請している(※4)。刑訴法336条は,利益原則を手続法的に規定したものであると考えられる。
 以上からすると,被告人が犯罪を行ったか否かが真偽不明の状態のときに,これを被告人に不利益に扱うことは許されないのであるから,証明責任を被告人側に負わせることは許されず,これを検察官が負わなければならない(※5)。これに反して,被告人側に証明責任を負わせるような規定は,特段の合憲的解釈が可能でない限り,憲法31条に反し違憲である(※6)
 ⑵ 本件規定は,「通常の社交の程度を超える財物その他の財産上の利益を収受し,要求し,又は約束した」ことを前提事実とし,これが証明されれば,「職務に関して賄賂を収受し,要求し,又は約束した」ことを推定事実しすることができるとする,法律上の推定を規定するものである(※7)。このような規定は,憲法31条に反しないか。
 推定事実が構成要件該当事実の一部であるばあ,仮に被告人がその不存在の立証に失敗したとき推定事実の存在を認定しなければならないとすると,刑事責任の基礎となる事実が真偽不明であるにもかかわらず被告人に刑罰を科すことになるから,利益原則に反するものであり,憲法31条に違反する。そこで,法律上の推定規定は,前提事実が証明され,これに対して被告人側が推定事実について反証できない場合に,裁判所が推定事実について合理的な疑いを容れない程度の心証を得たときには,推定事実を認定できるとしたにとどまるものと考える。この場合,法律上の推定規定は,被告人側から推定事実に対する合理的反証がない場合には,これを間接証拠として付加することにより,その総合評価によって合理的な疑いを容れない程度の心証に到達する可能性を設けるという役割を果たすことになる(※8)。このような合憲的解釈をとる限りは,法律上の推定規定は,憲法31条に反するものではない。
 したがって,本件規定も,被告人側から推定事実に対する合理的反証がない場合に,これを間接証拠として,その総合評価により合理的な疑いを容れない程度の心証に到達する可能性を設けたものにすぎないと解釈する限り,利益原則と抵触するものではない。
3 もっとも,このような合憲的解釈を行う前提として,個々の推定規定の内容が合理性を有していることが必要である(※9)。合理性の基準としては,①検察官にとって推定事実の立証が困難であるため,推定規定を設ける必要性があること,②前提事実の存在から推定事実の存在を推認することに合理性があること,③被告人において推認を破る証拠や推定事実の不存在を示す証拠を提出することが容易であることが充たされることが必要である。
 これを本件規定についてみると,②通常の社交の程度を超える財産上の利益が移転した場合には,職務関連性が肯定されるとするのが判例であるから(※10),前提事実が存在するときには,推定事実の不存在よりも存在の蓋然性が大きいということができるから,推認家庭の合理性がある。また,③被告人にとっても,社交の範囲ということ等により,職務関連性について反証を行うことが容易である。しかし,①このような推定規定を設けなくとも,職務関連性についての立証は特段困難であるとは考えられない。
 したがって,本件規定は,法律上の推定規定としての合理性を有していない。
4 よって,本件規定は,憲法31条に反し違憲とされる疑いがある。

以 上


(※1)「証拠調べを尽くしても,裁判所が事実の存否について要請される証明の水準・心証に達しなかった場合,それでも裁判をするためには事実を存否いずれかに認定しなければならない。このように事実の存否が真偽不明である場合に,不利益な認定を受ける当事者の地位を『挙証責任(証明責任・立証責任)』という。」酒巻匡『刑事訴訟法』475頁
(※2)「31条は,『法律の定める手続』としか書いていない。では,法律の定める手続には適正さは要求されないのであろうか。この点,合衆国憲法は『適正な(due)』と記してあるので,手続の適正さまで要求されていることが分かるが,日本国憲法の場合はどうであろうか。」「この点について,31条は手続の法定を要求するだけで,その適正さは立法政策にゆだねられているとする解釈もある。この解釈は,法文の意味に忠実であるという利点はあるものの,デュープロセスの思想がもつ豊かな内容を取り込めない欠点がある。仮に,本条が要求するのは手続の法定にとどまるとするならば,実質的な告知聴聞の手続を保障しないような手続は本条違反とすることができなくなる。このような点を考えると,本条は手続の適正さまで要求していると解すべきであって,むしろ手続の適正さを要求してはいないとする積極的理由に乏しいと考えるべきではなかろうか。」工藤達朗ほか『憲法〔第4版〕』195頁
(※3)「検察官が主張する公訴事実については,『合理的な疑いを容れない程度の証明(proof beyond a reasonable doubt)』が必要である。最高裁判所も,有罪認定に必要な立証の程度について『合理的な疑いを差し挟む余地のない』という表現を用いている(最決平成19・10・16刑集61巻7号677頁等)。」前掲酒巻471頁
(※4)「『利益原則』は,憲法31条の要請する『法の適正な手続』の構成要素を成す不文の法準則と位置付けられる。」前掲酒巻477頁
(※5)「民事訴訟では,実体法上の権利義務に関わる事実について,原告と被告のどちらに挙証責任があるとすべきかその分配につき多様な議論があるが,刑事訴訟は,国家刑罰権の存否と範囲の決定という人の基本的自由に関わる事実の認定を扱うことから,公訴事実及びこれに準ずる事項……については,原則としてすべて国家機関である検察官が挙証責任を負う。」前掲酒巻476頁
(※6)「実体法・手続法を問わず,特段の合憲的解釈が可能でない限り,刑事責任を基礎付ける事実について被告人側に挙証責任を負わせる機能を有する法規は,憲法31条に違反するものといわなければならない。」前掲酒巻477頁
(※7)「推定規定とは,法律により,一定の事実(前提事実)の存在が証明された場合に,別の事実(推定事実)の存在を推定する形式の法規をいう(『法律上の推定』)。元来は検察官が証明すべき事実を推定事実とし,別の前提事実を証明対象に設定する推定規定は,検察官にとって推定事実の証明を不要とし……,他方,被告人側が推定事実の不存在を証明できなければ,推定事実が認定されるという機能を果たすことになる。」前掲酒巻480頁
(※8)「推定事実が構成要件該当事実の一部である場合,もし被告人側がその不存在の立証に失敗したとき推定事実の存在を認定しなければならないとすれば,それは刑事責任の基礎となる事実が真偽不明であるにもかかわらず被告人に刑罰を科すことになるから,そのような解釈をとることはできない。そこで,有力な見解は,推定規定は,前提事実が証明され,これに対して被告人側が推定事実について反証できない場合に,裁判所に対し,推定事実を認定してよいとするにとどまり,認定を強制する効果を有するものではないと理解することにより,利益原則との抵触を回避しようとする。」「推定規定の効果を,裁判所は,前提事実の存在に加え,被告人が推定事実について反証できなかったという事実を併せ勘案し,推定事実について合理的な疑いを容れない程度の心証を得たとき,推定事実を認定することができるという意味に理解すれば,推定事実の挙証責任は検察官にあり被告人側に転換されているわけではないので,利益原則との抵触はない。」「そうすると,このような推定規定を設ける実際上の意義があるとすれば,それは,前提事実の存在からの推認だけでは推定事実の存在について合理的な疑いを容れない程度の心証が得られない場合に,裁判所に対し,被告人側から推定事実に対する合理的反証がないという間接証拠を付加することにより,その総合評価によって合理的な疑いを容れない程度の心証に到達する可能性を設ける法技術と位置付けることができよう。」前掲酒巻480頁
(※9)「このような合憲的解釈の前提として,個々の推定規定の内容の合理性が要請される。合理性の具体的指標として,第一,前提事実の存在から推定事実の存在を推認するのが合理的であること(合理的関連性)。第二,被告人側がそのような推認に反証し,推定事実不存在の証拠を提出するのが困難でないと認められること(反証の容易性),が挙げられている。いずれの要素も利益原則との抵触を回避するための必要条件といえよう。」前掲酒巻481頁
(※10)最判昭和50年4月24日判時774号119頁(ただし,通常の社交の範囲として職務関連性を否定したもの)


【事例演習刑事訴訟法の他の問題・答案は下記のリンクから】
・ 第1講(任意捜査と強制捜査)
・ 第2講(職務質問・所持品検査)
・ 第3講(任意取調べの限界)
・ 第4講(身柄拘束の諸問題⑴-現行犯逮捕の適法性,違法逮捕後の勾留,違法逮捕と再逮捕の可否)
・ 第5講(身柄拘束の諸問題⑵-重複逮捕・勾留,同時処理による例外)
・ 第6講(身柄拘束の諸問題⑶-別件逮捕・勾留)
・ 第7講(令状による捜索・差押え⑴-捜索すべき場所の特定性,差押え目的物の特定性)
・ 第8講(令状による捜索・差押え⑵-場所に対する令状による身体に対する捜索の可否,「必要な処分」としての原状回復,電磁的記録の内容を確認せずにする差押えの可否)
・ 第9講(逮捕に伴う無令状捜索・差押え⑴-逮捕の現場,差押えの関連性)
・ 第10講(逮捕に伴う無令状捜索・差押え⑵-逮捕現場の第三者に対する捜索の可否,最寄りの場所における被逮捕者の捜索・差押えの可否)
・ 第11講(おとり捜査)
・ 第12講(接見交通)
・ 第13講(一罪の一部起訴)
・ 第14講(訴因の特定)
・ 第15講(訴因変更の要否,縮小認定)
・ 第16講(訴因変更の可否)
・ 第17講(科学的証拠)
・ 第18講(法律上の推定)
・ 第19講(類似事実証拠排除法則)
・ 第20講(自白の証拠能力⑴-約束による自白)
・ 第21講(自白の証拠能力⑵-派生証拠,反復自白)
・ 第22講(補強法則)
・ 第23講(伝聞法則⑴-総論)
・ 第24講(伝聞証拠⑵-領収書の証拠能力,犯行メモの証拠能力)
・ 第25講(伝聞証拠⑶-手続的公正を欠く場合)
・ 第26講(伝聞証拠⑷-再伝聞)
・ 第27講(伝聞法則⑸-弾劾証拠)
・ 第28講(違法収集証拠排除法則⑴-総論)
・ 第29講(違法収集証拠排除法則⑵-外国捜査機関の違法収集証拠)
・ 第30講(違法収集証拠排除法則⑶-違法性の承継,毒樹の果実)
・ 第31講(択一的認定)
・ 第32講(一事不再理効)
・ 第33講(攻防対象論-上訴審における職権調査の限界)
◎その他の答案リンク集はこちら→
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