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2019-03-19(Tue)

【事例演習刑事訴訟法】第17講「科学的証拠」

さて,お待ちかね,【今日の一品】のコーナーですが,

今日の晩は例によって自炊で済ませてしまったので載せるものがありません。

その代わりに,昨日の晩にいただいたこちらを紹介します。

S__14426114.jpg

肉中華そばムタヒロの今月の限定メニュー「奈良県天理スタミナラーメン」でございます。

いわゆる「天スタ」っていうやつですね。

まあでも私は本場の天スタを食べたことがないので,

ムタヒロで頂くのが初めてということになります。

少しピリ辛のスープにたっぷりの野菜,

野菜も甘みがとても感じられていくらでも食べられます。

全体的にチゲ鍋みたいですね(全然違う)。

そんなような感覚でいただきました。

本場でも食べてみたいなと思いました。

少しでも気になった方は是非国立まで足を運んでみてください。

ところで今回は,古江の第17講です。

≪問題≫

【設 問】
 強盗殺人被疑事件について,被害者Vの爪の中に遺留された犯人のものと思われる細胞片につきDNA型の鑑定を行ったところ,XのDNA型と一致した。また,犯行現場に残された犯人のものと思われる物品に付着した臭気につき警察犬による臭気選別を行ったところ,Xの体臭と一致するとの選別結果がでた。検察官がXをVに対する強盗殺人罪で公訴提起した場合において,DNA型鑑定の結果および臭気選別結果に証拠能力を認めるための要件は何か。


科学的証拠……!?

証拠能力を認めるための要件は何か……!?!?!?

全く馴染みのない分野な上に,この設問の聞かれ方……

どうやって答案を作成すればよいのでしょうかねえ……

っていうかそもそも要件は何なのか……

全然分かんない……

答案書きたくねえなあ……

≪答案≫
1 ある証拠を事実認定の資料として用いることができる法的適格(以下「証拠能力という。」)が認められるためには,当該証拠と証明すべき事実との間に論理的関係(以下「関連性」という。)(※1)があることが必要である(※2)
 ここで,証拠のうち,一定の事象・作用につき,通常の五感の認識を超える手段,方法を用いて認知・分析した判断結果(以下「科学的証拠」という。)(※3)を用いる場合には,事実認定者には,証拠の内容を直接認識・把握し,その正確性を実質的に評価することに困難が伴い,かつ,専門家の科学的判断ということから過度の信頼や客観的に確実であるとの誤信を生じさせやすい点が問題となる(※4)。そこで,科学的証拠の証拠能力を認めるためには,関連性とは別個に要件を必要とすべきとも思えるが,証拠の種類や性質によって科学性の持つ意味や程度はそれぞれ異なるから(※5),証拠の類型ごとにこれを判断すべきである。
2 まず,本件ではDNA型鑑定の結果の証拠能力が問題となっている。DNA型鑑定の結果の証拠能力について,判例は,科学的原理が理論的正確性を有し,具体的な実施の方法も,その技術を習得した者により,科学的に信頼される方法で行われたと認められることを指摘して,DNA型鑑定を証拠として用いることができるとしている(※6)。そこで,本判決において示された点が,関連性とは別個の要件を成すものであるかについて検討する。
 まず,本判例が科学的原理が理論的正確性を有しているとの部分について,検査・鑑定の基礎となる科学的原理が理論的正確性を欠いていたり,学問的に発展途上でいまだ確立していないことが明らかであれば,これに基づく検査・鑑定が正確で信頼するに足りる結論を導くとは考えられず,その証明力がおよそ認められないか,微弱であるから,関連性がないとして証拠能力が否定されるものと考えられる(※7)
 次に,本判決が具体的な実施方法について言及した部分について,具体的実施過程に欠陥が認められる場合にも,同様に,正確で信頼するに足りる結論に至るとは考えられないから,関連性なしとして証拠能力が否定されるものと考えられる(※8)
 以上から,本判決で示された点は,あくまで関連性の考慮事情になるものであるから,別途固有の要件を検討する必要性は乏しい。したがって,DNA型鑑定の証拠能力が認められるための要件は,関連性のみで足り,本判決が示した事項は関連性判断の考慮事項となる。
3 次に,本件では警察犬の臭気選別結果の証拠能力が問題となっている。警察犬の臭気選別が科学を利用したものとは言い難いため(※9),科学的証拠にはあたらないようにも思われるが,人間の五感を超えた犬の優れた嗅覚を利用する点において,なお科学的証拠ということができる。そして,警察犬の臭気選別は,臭気の実体,犬の嗅覚についての科学的解明が十分でなく,人の体臭に指紋同様の個別性があるという保障がない上に,結果の正確性に対する科学的検証・追試が不可能である等の問題があるにもかかわらず,犬に持来の理由を説明させることができないため,実際に何を識別根拠とし,どのような基準で対照臭を選別したのかを把握するのが困難である(※10)。したがって,これの証拠能力を認めるためには,関連性のほかに,別個の要件が必要ではないかとも思われる。
 この点について,判例は,専門的な知識と経験を有する指導手が,臭気選別に優れ,選別時において体調等も良好でその能力がよく保持されている警察犬を使用して実施したものであって,臭気の採取,保管の過程や臭気選別の方法に不適切な点がないことを指摘して,臭気選別の結果を有罪認定のように供することができるとしている(※11)。もっとも,個別具体的な信頼性に関する事情は,証明力の問題であると考えるべきであるから,選別時において体調等が良好であること,臭気選別方法に関する個別的な事情については,証明力に関する考慮事項であると考える。そして,その余の部分については,いずれも,定型的・類型的な信頼性に関する事情と位置付けることができ,これらのいずれかを欠く場合には,最小限度の証明力がなく,関連性なしとして証拠能力が否定されるものと考えられる。
 以上から,本判決で示された点は,あくまで関連性の考慮事情になるものであるから,別途固有の要件を検討する必要性は乏しい。したがって,警察犬の臭気選別の結果の証拠能力が認められるための要件は,関連性のみで足り,本判決が示した事項は関連性判断の考慮事項となる。

以 上


(※1)証拠の『関連性(relevancy)』とは,証拠価値のうち,証拠と証明すべき事実との間の論理的関係をいう……。『論理的関連性』,『自然的関連性』とも称される。」酒巻匡『刑事訴訟法』485頁
(※2)『証拠能力』とは,事実認定の資料として用いることができる証拠の法的適格をいう。証拠の『許容性(admissibility)』ともいわれる。公訴事実及びこれに準ずる事実を対象として『厳格な証明』においては,証拠能力のある証拠のみが許容される……。憲法・刑事訴訟法の条文ならびに不文法的規律として,刑事証拠法上の重要な準則群を形成している……。明文では,『証拠とすることが[は]できない』『証拠とすることができる』という文言で示されており,強制・拷問等による自白その他任意性に疑いのある自白(憲法38条2項,法319条1項・322条1項)に関する規律や,いわゆる『伝聞証拠』(法320条1項)に関する規律がその例である。不文の準則としては,『関連性』及び『違法収集証拠排除法則』が挙げられる。」前掲酒巻483頁
(※3)東京高判平成8年5月9日判時1585号139頁は,「一定の事象・作用につき、通常の五感の認識を超える手段、方法を用いて認知・分析した判断結果が、刑事裁判で証拠として許容されるためには、その認知・分析の基礎原理に科学的証拠があり、かつ、その手段、方法が妥当で、定型的に信頼性のあるものでなければならない。」と述べており,「一定の事象・作用につき、通常の五感の認識を超える手段、方法を用いて認知・分析した判断結果」と「科学的証拠」とを区別して用いているようにみえますが,解説234頁では,「一定の事象・作用につき、通常の五感の認識を超える手段、方法を用いて認知・分析した判断結果」を「科学的証拠」の定義として用いているようですので,これに従います。
(※4)「『科学的証拠』の成果を利用した……事例に現れた証拠には,以下のような共通の特色が認められる。」「第一,いずれも当該証拠がこれに関する専門的知見や技能を有する者によって提供されたものであること,すなわち,事実認定者の知識・経験を補充するため特別の専門的知識・経験(鑑定)が利用されていること。」「第二,第一の一側面であるが,事実認定者には,証拠の内容を直接認識・把握し,その正確性を実質的に評価することに困難が伴うであろうこと。」「第三,このため『専門家』の判定であること,とりわけそれが『科学』の成果である場合には,事実認定者に専門性に対する過度の信頼や客観的に確実であるとの誤信を生じさせやすい側面があること。」前掲酒巻492頁
(※5)「科学的証拠といわれる証拠の『科学性』が問われる場面は,⑴基礎となる科学的原理・知見の信頼性,⑵科学的原理・知見を実用化する理論・技術の信頼性,⑶具体的な検査に関する信頼性(㋐試料化の信頼性,㋑具体的検査方法,過程の的確性),⑷検査者の技術水準,技量,⑸検査結果の評価に関する信頼性(㋐評価に関する原理,基準の信頼性,㋑当該ケースへのあてはめの信頼性)の5段階・7項目に分類できる……。証拠の酒類・性質によって『科学性』の持つ意味や程度はそれぞれ異なるから,どの段階がどのような点から問題になっているのかを分析・検討して明確にし,当該証拠の採否判断に適した審理等を行うためにも,このような分類を用いることは非常に有益と思われる。」井上正仁ほか『刑事訴訟法判例百選〔第10版〕』149頁
(※6)「本件で証拠の一つとして採用されたいわゆるMCT118DNA型鑑定は、その科学的原理が理論的正確性を有し、具体的な実施の方法も、その技術を習得した者により、科学的に信頼される方法で行われたと認められる。したがって、右鑑定の証拠価値については、その後の科学技術の発展により新たに解明された事項等も加味して慎重に検討されるべきであるが、なお、これを証拠として用いることが許されるとした原判断は相当である。」最決平成12年7月17日刑集54巻6号550頁
(※7)「この[前掲最決平成12年7月17日の]説示に現れた証拠能力に関係する事柄を,証拠の関連性の枠組みで整理すれば,次のようになろう。」「第一,検査・鑑定の基礎となる科学的原理が理論的正確性を欠いたり,学問的に発展途上でいまだ確立していないことが明らかであれば,これに基づく検査・鑑定が正確で信頼するに足りる結論を導くとは考えられず,その証明力がおよそ認められないか,微弱であるから,『関連性』がないとして証拠能力が否定されるであろう。なお,わが国では将来も実例は乏しいと思われるが,『科学』の衣を纏ってはいるものの,およそ『科学的原理』の基礎が認められない『似非科学(junk science)』は,証明力欠如すなわち関連性なしとして証拠能力が否定される。」前掲酒巻493頁
(※8)「第二,検査・鑑定の基礎とされた科学的原理が理論的正確性を有し一般的に信頼性が認められる場合であっても,当該事案における具体的な実施方法・検査実施者の技能・検査対象とされた検体の保全管理等,具体的実施過程に欠陥が認められる場合には,同様に,正確で信頼するに足りる結論に至るとは考えられず,やはり関連性が認められないことになろう。」前掲酒巻493頁
(※9)「警察犬による臭気選別や伝統的筆記鑑定は,いわゆる『科学』の成果を利用したものとは言い難い」前掲酒巻492頁
(※10)「臭気選別については,①臭気の実体,犬の嗅覚についての科学的解明が十分でない,②人の体臭に指紋同様の個別性があるという保障がない,③犬には指導手に対する迎合性がある,④結果の正確性に対する科学的検証・追試が不可能であることが指摘されており……,そのこと自体に異論はない。これらが意味するのは,すなわち,犬に持来の理由を説明させることができないため,実際に何を識別根拠とし(真に体臭の個人差を嗅ぎ分けたのか別の要因によるのか,あるいは指導手・立会人への迎合〔いわゆる『クレバー・ハンス現象』か〕),またどのような基準で対照臭を選別したのか(同じと判断したのか,強いて選んだという程度か)を把握するのが難しいということである。臭気選別には性質上これらの難点があるため,その結果の証拠能力,証明力が問題となる。」前掲井上ほか152頁
(※11)「警察犬による本件各臭気選別の結果を有罪認定の用に供した原判決の当否について検討するに、記録によると、右の各臭気選別は、右選別につき専門的な知識と経験を有する指導手が、臭気選別能力が優れ選別時において体調等も良好でその能力がよく保持されている警察犬を使用して実施したものであるとともに、臭気の採取、保管の過程や臭気選別の方法に不適切な点のないことが認められるから、本件各臭気選別の結果を有罪認定の用に供しうるとした原判断は正当である」最決昭和62年3月3日刑集41巻2号60頁


【事例演習刑事訴訟法の他の問題・答案は下記のリンクから】
・ 第1講(任意捜査と強制捜査)
・ 第2講(職務質問・所持品検査)
・ 第3講(任意取調べの限界)
・ 第4講(身柄拘束の諸問題⑴-現行犯逮捕の適法性,違法逮捕後の勾留,違法逮捕と再逮捕の可否)
・ 第5講(身柄拘束の諸問題⑵-重複逮捕・勾留,同時処理による例外)
・ 第6講(身柄拘束の諸問題⑶-別件逮捕・勾留)
・ 第7講(令状による捜索・差押え⑴-捜索すべき場所の特定性,差押え目的物の特定性)
・ 第8講(令状による捜索・差押え⑵-場所に対する令状による身体に対する捜索の可否,「必要な処分」としての原状回復,電磁的記録の内容を確認せずにする差押えの可否)
・ 第9講(逮捕に伴う無令状捜索・差押え⑴-逮捕の現場,差押えの関連性)
・ 第10講(逮捕に伴う無令状捜索・差押え⑵-逮捕現場の第三者に対する捜索の可否,最寄りの場所における被逮捕者の捜索・差押えの可否)
・ 第11講(おとり捜査)
・ 第12講(接見交通)
・ 第13講(一罪の一部起訴)
・ 第14講(訴因の特定)
・ 第15講(訴因変更の要否,縮小認定)
・ 第16講(訴因変更の可否)
・ 第17講(科学的証拠)
・ 第18講(法律上の推定)
・ 第19講(類似事実証拠排除法則)
・ 第20講(自白の証拠能力⑴-約束による自白)
・ 第21講(自白の証拠能力⑵-派生証拠,反復自白)
・ 第22講(補強法則)
・ 第23講(伝聞法則⑴-総論)
・ 第24講(伝聞証拠⑵-領収書の証拠能力,犯行メモの証拠能力)
・ 第25講(伝聞証拠⑶-手続的公正を欠く場合)
・ 第26講(伝聞証拠⑷-再伝聞)
・ 第27講(伝聞法則⑸-弾劾証拠)
・ 第28講(違法収集証拠排除法則⑴-総論)
・ 第29講(違法収集証拠排除法則⑵-外国捜査機関の違法収集証拠)
・ 第30講(違法収集証拠排除法則⑶-違法性の承継,毒樹の果実)
・ 第31講(択一的認定)
・ 第32講(一事不再理効)
・ 第33講(攻防対象論-上訴審における職権調査の限界)
◎その他の答案リンク集はこちら→
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