FC2ブログ
2019-03-18(Mon)

【事例演習刑事訴訟法】第14講「訴因の特定」

今日は修了式です。

一橋ローは今年も約80人のニートをこの世に放出する偉業を達成することになります。

この,司法試験受験生は学部予備合格者とかでない限り,原則無職にならざるを得ないという制度設計,

どう考えてもおかしくないですか???

いやいやいや,在学中に試験受けさせてくれよって思います。

本当にもうね,これだから(以下検閲により削除)。

≪問題≫

【設 問】
 平成26年5月3日,東京都西多摩郡内の山林で,通行人により,Vの白骨死体が発見された。警察は,XとYが金銭関係のもつれからVをひどく憎んでいたことや,Yが友人に対してVに暴力をふるったとの口吻を洩らしていたとの情報をつかんだため,XとYを取り調べたところ,Xは,黙秘し,犯行について一切語ることはなかったが,Yは,「昨年12月30日,Xとともに,Vを自動車で西多摩郡の山林に連れ出し,午後10時ころ,その山林の中で,Xが,自動車に積んでいた木刀でVの頭部を1回殴ったところ,Vが頭から血を流し,ぐったりした様子だったので,怖くなり,そのまま放置して逃げた」旨供述した。しかし,その後,Yは,取調べに対し,「山林につくと,Vが逃げようとしたので,Vに追いつき,Xと一緒になって,Vの頭部を手拳で何度も何度も殴打したところ,Vが転倒した。木刀は用いていない」と述べて,前の供述を翻した。検察官から鑑定嘱託された医師は,死体に残る頭蓋底骨折は致命傷となり得るが,死体が白骨化しているため,正確な死因は不明であり,また,頭蓋底骨折は,木刀によって生じ得るが,手拳による強打だけでは生じがたいものの,被害者が転倒して頭部などを岩などにぶつけたときには生じる可能性がある旨鑑定した。
 検察官は,この鑑定結果も踏まえ,Yの当初の供述が信用できると考えて,XおよびY両名について,「被告人Xおよび被告人Yは,共謀の上,平成25年12月30日ころ,東京都西多摩郡内の山林において,V(当時40歳)に対し,その頭部を木刀で1回殴打し,頭蓋底骨折の傷害を負わせ,よって,そのころ,同所において,同人を上記傷害に基づく外傷性脳障害により死亡させたものである」との傷害致死罪の訴因で起訴した。
 ところが,公判において,Yは,またもや供述を翻し,「山林でVが逃げようとしたので,Vの胸部や腹部,腰部,頭部等を革靴で何十回も蹴った」旨供述した。そこで,検察官は,裁判所に対し,「被告人Xおよび被告人Yは,共謀の上,平成25年12月30日ころ,東京都西多摩郡内の山林において,V(当時40歳)に対し,その頭部等に手段不明の暴行を加え,頭蓋底骨折等の傷害を負わせ,よって,そのころ,同所において,同人を上記傷害に基づく外傷性脳障害または何らかの障害により死亡させたものである」との訴因への変更の許可を請求した。意見を求められたXおよびYの弁護人はいずれも,新訴因は,犯行の方法,傷害の内容,死因はすべてあいまいな記載であって,訴因不特定であるので訴因変更を許可すべきでない旨の意見を述べた。裁判所は,訴因変更を許可すべきか。


訴因の特定は,色々な論点がありますが,

それぞれどの要件レベルの話に位置付けられるのかを意識しないと,

大変なことになりそうです。

私はまさに今大変なことになっています。

≪答案≫
1 検察官は,裁判所に対し訴因変更の許可を請求しているが,XおよびYの弁護人は,訴因が不特定であることを理由として訴因変更の許可をすべきでないとしている。仮に弁護人が主張するように,変更後の訴因が不特定である場合には,不特定訴因への変更は許されないことから,裁判所は訴因変更を許可すべきでないこととなる。
 そこで,検察官の請求する変更後の訴因が特定されたものであるといえるかどうかについて検討する。
2⑴ 前提として,訴因が特定されているといえるための基準について検討する。
 訴因とは,検察官が裁判所に対して審判を求める「罪となるべき事実」の具体的な主張をいう(※1)ところ,その機能は,裁判所に対し審判対象を画定する点にあり,その反射効として,被告人に防御範囲を明示する役割を果たす(※2)。したがって,訴因が特定されているか否かは,審判対象を画定するために必要な程度の特定がされているかどうかによって決せられる。具体的には,被告人の行為が特定の犯罪構成要件に該当するかどうかを判定するに足る程度に具体的事実を明らかにし,かつ,他の犯罪事実と区別できるのであれば,訴因は特定されているということができる(※3)
 ⑵ これを本件についてみると,検察官が請求した変更後の訴因は,「……等に手段不明の暴行を加え,……等の傷害を負わせ,……何らかの傷害により死亡させた」との記載がなされており,言い換えれば,「Vの身体のいずれかの部位に何らかの暴行を加えて,何らかの傷害を負わせ,何らかの傷害により死亡させた」という内容を含むものであり,傷害致死罪の犯罪構成要件を記載したにすぎず,構成要件に該当する具体的な事実が記載されていないようにも思われる。しかし,当該訴因では,被害者がVと特定され,犯行の日時・場所が具体的に記載され,結果としてVが死亡していることが指摘された上で,暴行の部位として「頭部」,Vが負った傷害として「頭蓋底骨折」,死因として「外傷性脳障害」が記載されているのであるから,前記のように概括的な記載がされているにしても,これらの具体的記載と相まって,Yの行為が傷害致死罪の構成要件に該当するものであると認識することができる。したがって,当該訴因には,被告人の行為が特定の犯罪構成要件に該当するかどうかを判定するに足る程度に具体的事実が明らかにされているということができる(※4)(※5)
 また,被害者が死亡するという結果は1回しか生じ得ない以上,被害者を死亡させる行為も1回しかないというべきであり,そのような結果の特殊性があることに加えて,犯行の日時・場所,被害者について具体的な記述がされているのであるから,他の犯罪事実と区別できる程度に記載されているということができる。
 したがって,検察官が請求する変更後の訴因は特定されたものであるといえる。
3⑴ 刑訴法256条3項後段は,できる限り日時,場所及び方法を以て罪となるべき事実を特定することを要求しているため,検察官が請求する変更後の訴因がこの要請を満たしているかは別途問題となる。
 もっとも,刑訴法256条3項後段は,犯罪の日時,場所及び方法は,これらの事項が,犯罪を構成する要素になっている場合を除き,本来は,罪となるべき事実そのものではなく,ただ訴因を特定する一手段として,できる限り具体的に表示すべきことを要請しているにすぎないのであるから,これを詳らかにすることができない特殊事情がある場合には,前記の訴因の特定の目的を害さない限り,幅のある表示をしても,訴因の特定性に係る違法があるということはできない(※6)
 ⑵ これを本件についてみると,Yに対する取調べにより,訴因の日時・場所においてVに対し致死的な暴行が加えられたことは明らかであるが,Yは,Vに対して加えた暴行の態様や箇所について供述を何度も翻しており,また正確な死因についても専門家の鑑定を経ても明らかとならず,不明瞭な領域が残ったというのある。そうすると,検察官において,暴行態様,傷害の内容,死因について概括的に記載したことはやむを得なかったのであるから,これらを詳らかにすることができない特殊事情があったというべきである(※7)。また,このような記載であっても,Yらは,犯行現場に行っていないとか,暴行は行っていないといった弁解と,それに対応する弁護方針を立てることができる以上,訴因の特定の目的の反射効となる被告人に対する防御範囲の明示に欠けるところはない。
 したがって,検察官が請求した変更後の訴因は,刑訴法256条3項後段の要請に反しない。
4 よって,検察官が請求した変更後の訴因は,特定のとして必要十分であるから,裁判所はこれを許可すべきである。

以 上


(※1)「起訴状に記載すべき『公訴事実』(法256条2項2号)すなわち刑事訴訟における審理・判決の対象(審判対象)し,検察官が明示する『訴因』である(法256条3項前段)。『訴因』とは,検察官が裁判所に対して審判を求める『罪となるべき事実』の具体的な主張をいう。」酒巻匡『刑事訴訟法』266頁
(※2)「審判対象たる訴因は,『できる限り日時,場所及び方法を以て罪となるべき事実を特定して』明示しなければならない(法256条3項)。『特定』とは,他の異なる事実の主張と区別して画定することをいう。他の事実の主張と区別ができなければ,裁判所が審判対象を識別・認識することができず,証拠調べの手続段階へと審理を進行させることができないからである。また,前訴との関係で一事不再理の効力が及ぶ範囲,二重起訴禁止の範囲……,公訴時効停止の効力が及ぶ事件の範囲……を画定することもできず不都合である。」「他方,訴因の記載は,被告人の防禦対象でもあるから,他の事実の主張との区別が不分明ではおよそ一般的に防禦が不可能である。もっとも,被告人の具体的な防禦上の利益に対する配慮は,起訴に引き続く手続の進行過程に応じて様々な局面で制度化されている(例,公判前整理手続が実施される場合の『証明予定事実記載書面』の提出[法316条の13],起訴状に対する求釈明[規則208条],検察官の冒頭陳述[法296条],審理の過程における争点の顕在化・防禦の機会付与による不意打ち防止等)。」「この点を考慮すれば,起訴状における訴因明示の第1次的機能は,裁判所が実体審理を進めることができる程度に審判対象を他と区別し画定することにあるとみるべきである。訴因の明示は,この機能を果たすのに必要・十分な程度の具体的記載であれば足りる。被告人の防禦上の利益は,審判対象が他の事実と区別して画定されることによりその反射効として一般的防禦目標が呈示され,引き続く手続段階において具体的に考慮・勘案されることになる。」前掲酒巻274頁
(※3)解説202-203頁
(※4)「識別説によれば,犯罪の種類,性質等により証拠によって明らかにし得る事実に限界があるなどの事情のため,検察官が,犯罪事実を表示するに当たり,日時,場所,方法や構成要件要素の一部につき概括的な表示にとどめざるを得なかった場合であっても,概括的に表示された部分と明確に表示された部分とが相まって,被告人の行為が当該犯罪の構成要件に該当するものであると認識することができ,他の犯罪事実と区別できる程度に特定されているのであれば,検察官はできる限り訴因を特定したものと評価してよいことになろう。」最判解刑事篇平成14年度149頁
(※5)傷害致死罪の事案について,「傷害の内容や因果関係は,構成要件要素であるから,原則としては具体的に表示すべきであって,安易に概括的な表示をすることは許されないであろう(ただし,傷害罪における『傷害』が犯行の結果そのものであるのに対し,傷害致死罪における『傷害』は,死に至るまでの因果の一過程としての性質が強く,相対的に重要度が低いといえよう。)。しかし,事案によっては,検察官において,傷害の内容等につき概括的な表示しかできない場合もあると思われるが,そのような場合には,被害者の表示や犯行の日時・場所・方法・結果(被害者の死亡)の表示と相まって,被告人の行為が傷害致死罪の構成要件に該当するものであると認識することができれば,訴因の特定に欠けるところはないと考えられる(被害者を死亡させるという行為は1回しかあり得ないから,他の犯罪事実との区別という点は問題にならないであろう。)。」前掲最判解刑事篇平成14年度153頁
(※6)「刑訴256条3項において、公訴事実は訴因を明示してこれを記載しなければならない、訴因を明示するには、できる限り日時、場所及び方法を以て罪となるべき事実を特定してこれをしなければならないと規定する所以のものは、裁判所に対し審判の対象を限定するとともに、被告人に対し防禦の範囲を示すことを目的とするものと解されるところ、犯罪の日時、場所及び方法は、これら事項が、犯罪を構成する要素になつている場合を除き、本来は、罪となるべき事実そのものではなく、ただ訴因を特定する一手段として、できる限り具体的に表示すべきことを要請されているのであるから、犯罪の種類、性質等の如何により、これを詳らかにすることができない特殊事情がある場合には、前記法の目的を害さないかぎりの幅のある表示をしても、その一事のみを以て、罪となるべき事実を特定しない違法があるということはできない。」最判昭和37年11月28日刑集16巻11号1633頁
(※7)「原判決によれば,訴因変更請求時までに第1審及び原審で取り調べられた証拠により,第1次予備的訴因の日時・場所において被害者に対し致死的な暴行が加えられたことは,明らかであったが,暴行態様や傷害の内容,死因については十分な供述や鑑定結果が得られず,不明瞭な領域が残ったというのであるから,検察官が暴行態様,傷害の内容,死因,因果関係を第1次予備的訴因のように概括的に表示したことは,やむを得なかったといえよう。上記の事情は,前掲白山丸事件判決にいう『犯罪の種類,性質等の如何により,これ(筆者注・犯行の方法等)を詳らかにすることができない特殊事情がある場合』に当たると解される。」前掲最判解平成14年度154頁


【事例演習刑事訴訟法の他の問題・答案は下記のリンクから】
・ 第1講(任意捜査と強制捜査)
・ 第2講(職務質問・所持品検査)
・ 第3講(任意取調べの限界)
・ 第4講(身柄拘束の諸問題⑴-現行犯逮捕の適法性,違法逮捕後の勾留,違法逮捕と再逮捕の可否)
・ 第5講(身柄拘束の諸問題⑵-重複逮捕・勾留,同時処理による例外)
・ 第6講(身柄拘束の諸問題⑶-別件逮捕・勾留)
・ 第7講(令状による捜索・差押え⑴-捜索すべき場所の特定性,差押え目的物の特定性)
・ 第8講(令状による捜索・差押え⑵-場所に対する令状による身体に対する捜索の可否,「必要な処分」としての原状回復,電磁的記録の内容を確認せずにする差押えの可否)
・ 第9講(逮捕に伴う無令状捜索・差押え⑴-逮捕の現場,差押えの関連性)
・ 第10講(逮捕に伴う無令状捜索・差押え⑵-逮捕現場の第三者に対する捜索の可否,最寄りの場所における被逮捕者の捜索・差押えの可否)
・ 第11講(おとり捜査)
・ 第12講(接見交通)
・ 第13講(一罪の一部起訴)
・ 第14講(訴因の特定)
・ 第15講(訴因変更の要否,縮小認定)
・ 第16講(訴因変更の可否)
・ 第17講(科学的証拠)
・ 第18講(法律上の推定)
・ 第19講(類似事実証拠排除法則)
・ 第20講(自白の証拠能力⑴-約束による自白)
・ 第21講(自白の証拠能力⑵-派生証拠,反復自白)
・ 第22講(補強法則)
・ 第23講(伝聞法則⑴-総論)
・ 第24講(伝聞証拠⑵-領収書の証拠能力,犯行メモの証拠能力)
・ 第25講(伝聞証拠⑶-手続的公正を欠く場合)
・ 第26講(伝聞証拠⑷-再伝聞)
・ 第27講(伝聞法則⑸-弾劾証拠)
・ 第28講(違法収集証拠排除法則⑴-総論)
・ 第29講(違法収集証拠排除法則⑵-外国捜査機関の違法収集証拠)
・ 第30講(違法収集証拠排除法則⑶-違法性の承継,毒樹の果実)
・ 第31講(択一的認定)
・ 第32講(一事不再理効)
・ 第33講(攻防対象論-上訴審における職権調査の限界)
◎その他の答案リンク集はこちら→
スポンサーサイト

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

コメント

プロフィール

||中央特快||高尾||

Author:||中央特快||高尾||
お疲れ様です。

最新記事
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
訪問者数
カレンダー
06 | 2019/07 | 08
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード