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2019-03-17(Sun)

【事例演習刑事訴訟法】第13講「一罪の一部起訴」

明日,ローの修了式的なものがあるらしいです。

いや,2年間のロー生活も終わるんだなあと感慨深いものがあります。

とはいえ,明後日以降も普通にローに通って勉強し続ける日々は続くわけなので,

本当に通過儀礼というか,流れ作業的な意味合いしかない修了式となりそうです。

さて,今回は古江の第13講です。

≪問題≫

【設 問】
 ⑴ 被告人は,老齢のVから委託されてV所有の土地の権利証,実印を預かり保管していたが,自己の経営するA株式会社の資金繰りに窮したため,A株式会社が金融機関から融資を受けるに際して,Vの了解を得ることなく,Vの上記土地につき,A会社を債務者として債権額5000万円の抵当権を設定し,その旨の登記を了した。さらに,被告人は,Vに無断で,上記土地を1億円で売却し,その旨の登記を了し,代金はA株式会社の資金繰りに充てた。検察官は,被告人を,上記土地を売却してこれを横領したとして,横領罪により公訴提起した。被告人は,公判で,上記土地については抵当権を設定し,登記を了したことにより横領罪が成立しているので,売却行為はその不可罰的事後行為であって犯罪は成立しないと主張した。裁判所は,売却行為に先立って抵当権設定行為があったかどうかについて審理判断すべきか。
 ⑵ 検察官は,強姦被疑事件について,公訴提起に足る嫌疑が認められたが,被害者の告訴が得られなかったことから,被告人を強姦罪の手段である暴行罪で公訴提起した。これに対し,被告人は,本件暴行は強姦罪の一部(一罪の一部)であって,告訴がないので公訴棄却判決がなされるべきである旨主張した。裁判所は,本件暴行が強姦罪の一部であるかどうか審理判断すべきか。


一罪の一部起訴。

もぅ無理(早い)

≪答案≫
第1 設問⑴
 1 裁判所は,被告人がV所有の土地の売却行為(以下「本件売却行為」という。)に先立って同土地に抵当権設定行為(以下「本件抵当権設定行為」という。)をしたと主張する事実に立ち入って審理判断することはできるか。
 2 当事者主義を採用している刑訴法の下では,審判対象は検察官が主張する具体的犯罪事実である訴因であり,裁判所が審理判断することができるのは,訴因の範囲に係る事実に限定されるべきである。したがって,裁判所は,原則として訴因外の事実に立ち入って審理判断することは許されない。
 もっとも,訴因外の事実が訴因に係る犯罪の成立を否定する事実や公訴提起を無効とする事実である場合には,実質的には訴因内の事実ということができるから,例外的に裁判所はこれらの事実に立ち入って審理判断することができる。
 3 これを本件についてみると,検察官が設定した訴因は本件売却行為についての横領罪であって,本件抵当権設定行為は訴因外の事実である。そのため,裁判所は,原則として,本件抵当権設定行為について立ち入って審理することはできない。
 もっとも,本件抵当権設定行為についても横領罪が成立するところ,ここでの横領罪の成立により,本件売却行為が不可罰的事後行為となって横領罪の成否に影響を与えるのであれば,訴因に係る犯罪の成立を否定する事実であるとして,実質的に訴因内の事実として扱われるから,裁判所は例外的に本件抵当権設定行為についても審理判断することができる。
 しかし,横領罪の保護法益は,委託された物の所有権であるところ,抵当権が設定された段階では,将来抵当権が実行されることにより所有権を失うおそれが生じるという程度での所有権の侵害がされるにすぎないが,売却がされた場合には確定的に所有権を失うこととなるから,両行為の所有権侵害の程度は異なるのであって,質的に別個に処罰される行為であるといえる。したがって,抵当権設定行為がされた後に売却行為がされた場合であっても,売却行為について別途横領罪が成立するのであるから,両行為の関係は共罰的事後行為とみるべきである。この場合には,抵当権設定行為に横領罪が成立することが,売却行為に横領罪が成立することを否定するものではない。
 また,検察官は,事案の軽重,立証の難易度等諸般の事情を考慮し,後行行為をとらえて公訴を提起することができるのであるから,本件売却行為についてのみ起訴したことは,検察官の裁量権を逸脱濫用するものではない。したがって,本件抵当権設定行為は,検察官のした本件売却行為についての公訴提起を無効とする事実でもない。
 したがって,本件でも,裁判所は,原則通り,本件抵当権設定行為に立ち入って審理判断することはできない。
第2 設問⑵
 1 裁判官は,本件暴行が強姦罪の一部であるかどうかを審理判断することはできるか。前提として,検察官は,強姦被疑事件について被害者の告訴が得られていないのにもかかわらず,その一部である暴行罪の部分を基礎することはできるか。
 2 刑訴法248条は,起訴便宜主義を採用し,検察官は犯罪の全部について起訴しないことも許されるのであるから,一部について起訴しないこととし,その余を起訴するという取扱いも原則として許される。
 もっとも,一罪の一部起訴が許されるのは,検察官の訴追裁量が認められた結果であるから,検察官に認められた裁量の範囲内においてのみそのような取扱いをすることができるにすぎず,一罪の一部起訴が裁量権を逸脱するような不合理な場合には,そのような取扱いをすることは許されない。
 3 これを本件についてみると,強姦罪は親告罪とされているが,その趣旨は,被害者の名誉感情を保護する点にある。ここで,本件のように強姦罪のうち暴行の部分のみを起訴したとしても,その審理を行う上では,暴行の態様や暴行の目的・動機の審理の過程において,姦淫の事実が明らかとなるおそれがある。そうすると,強姦罪が親告罪とされた趣旨が没却されることとなる。したがって,本件暴行の起訴は,強姦罪が親告罪とされた趣旨を没却するような一部起訴であって,検察官に認められた訴追裁量権の範囲を逸脱するものであるから,許されない。
 4 ここで,裁判所としては,検察官の起訴が許されないものとして,公訴棄却判決をすべきであるとも考えられる。しかし,公訴棄却の判決を導くために被告人は本件暴行が強姦罪の一部であることを主張せざるを得なくなり,被害者の名誉感情が結局のところ害されることとなる。それにもかかわらず,被告人に対しては罪を問えなくなり,妥当性を欠く結論となる。
 そこで,一罪の一部起訴が許されないことは,あくまで検察官の行為規範にとどまるというべきであり,これに違反しても起訴が無効になるものではなく,裁判所は公訴棄却判決をすべきではない。したがって,裁判所は,本件暴行が強姦罪の一部であるかどうか審理判断すべきではない。

以 上


【事例演習刑事訴訟法の他の問題・答案は下記のリンクから】
・ 第1講(任意捜査と強制捜査)
・ 第2講(職務質問・所持品検査)
・ 第3講(任意取調べの限界)
・ 第4講(身柄拘束の諸問題⑴-現行犯逮捕の適法性,違法逮捕後の勾留,違法逮捕と再逮捕の可否)
・ 第5講(身柄拘束の諸問題⑵-重複逮捕・勾留,同時処理による例外)
・ 第6講(身柄拘束の諸問題⑶-別件逮捕・勾留)
・ 第7講(令状による捜索・差押え⑴-捜索すべき場所の特定性,差押え目的物の特定性)
・ 第8講(令状による捜索・差押え⑵-場所に対する令状による身体に対する捜索の可否,「必要な処分」としての原状回復,電磁的記録の内容を確認せずにする差押えの可否)
・ 第9講(逮捕に伴う無令状捜索・差押え⑴-逮捕の現場,差押えの関連性)
・ 第10講(逮捕に伴う無令状捜索・差押え⑵-逮捕現場の第三者に対する捜索の可否,最寄りの場所における被逮捕者の捜索・差押えの可否)
・ 第11講(おとり捜査)
・ 第12講(接見交通)
・ 第13講(一罪の一部起訴)
・ 第14講(訴因の特定)
・ 第15講(訴因変更の要否,縮小認定)
・ 第16講(訴因変更の可否)
・ 第17講(科学的証拠)
・ 第18講(法律上の推定)
・ 第19講(類似事実証拠排除法則)
・ 第20講(自白の証拠能力⑴-約束による自白)
・ 第21講(自白の証拠能力⑵-派生証拠,反復自白)
・ 第22講(補強法則)
・ 第23講(伝聞法則⑴-総論)
・ 第24講(伝聞証拠⑵-領収書の証拠能力,犯行メモの証拠能力)
・ 第25講(伝聞証拠⑶-手続的公正を欠く場合)
・ 第26講(伝聞証拠⑷-再伝聞)
・ 第27講(伝聞法則⑸-弾劾証拠)
・ 第28講(違法収集証拠排除法則⑴-総論)
・ 第29講(違法収集証拠排除法則⑵-外国捜査機関の違法収集証拠)
・ 第30講(違法収集証拠排除法則⑶-違法性の承継,毒樹の果実)
・ 第31講(択一的認定)
・ 第32講(一事不再理効)
・ 第33講(攻防対象論-上訴審における職権調査の限界)
◎その他の答案リンク集はこちら→
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