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2019-03-17(Sun)

【事例演習刑事訴訟法】第11講「おとり捜査」

睡眠は大事。

眠くて全然答案作成が進まないです。

まだ夕方前くらいの時間ですが,早くも家に帰りたいです。

≪問題≫

【設 問】
 警察官Kは,「Xが覚せい剤数十キログラムを我が国の沖合で瀬渡しの方法により受け取り,密輸入したものの,国内で売却を予定していた密売人は,既に警察に検挙され組織は壊滅状況にあったため,密輸入した覚せい剤の大口売却先を見つけることができず,売却先を探している」との確度の高い情報を得て,Xの現在の住所や立ち回り先,覚せい剤の隠匿場所を鋭意捜査したが,これを把握することはできなかった。そこで,Kは,かつて覚せい剤取締法違反(密売)で検挙したことのあるSに依頼して,SをしてXに対して5キログラムの覚せい剤の注文をさせ,Xが注文を受けた覚せい剤5キログラムを所持して待ち合わせたホテルに現れたところを,待機していた警察官Kほか数名がXを覚せい剤所持の現行犯人として逮捕した。このような捜査手法は適法か。


おとり捜査ですね。

書き方がいまいち固まっていない,

というか,決まってはいるんですが,

学部の時の刑訴の先生がちょっとそれと違う書き方を提唱していて,

こんがらがっているという感じでしょうか。

それをここで紹介しても邪魔になる(ド失礼)ので,

今回はその先生の見解は闇の葬ることにします(謝罪の気持ち)

≪答案≫
1 警察官Kは,Sを介して,Xに対して覚せい剤の注文をし,Xがこれを所持して現れたところを現行犯逮捕(刑訴法213条)している。このような捜査手法は,いわゆるおとり捜査にあたるものとして違法ではないか。
 ここで,おとり捜査とは,捜査機関又はその依頼を受けた捜査協力者が,その身分や意図を相手方に秘して犯罪を実行するように働き掛け,相手方がこれに応じて犯罪の実行に出たところで現行犯逮捕等により検挙するものをいう(※1)。Kは,Sを捜査協力者として,Xを覚せい剤取締法違反の被疑事実で逮捕する目的であることを秘して,SをしてXに対して5キログラムの覚せい剤を注文しXが覚せい剤を所持するように働き掛け,Xがこれに応じて覚せい剤を所持して待ち合わせホテルに現れたところで現行犯逮捕により検挙するものであるから,おとり捜査である。
2⑴ おとり捜査は,刑訴法上の明文の規定がない捜査手法であるが,これが「強制の処分」(刑訴法197条1項ただし書)にあたる場合には,強制処分法定主義に反することとなり,違法な捜査手法となる。そこで,おとり捜査が「強制の処分」にあたるかどうかについて検討する。
 ⑵ 強制処分は刑訴法の厳格な要件・手続が定められていることから,このような厳格な要件・手続によって保護する必要があるほどの重要な権利利益に対する実質的侵害ないし制約を伴う場合にはじめて「強制の処分」にあたる。したがって,「強制の処分」とは,個人の意思に反し,重要な権利利益を制約する処分をいう
 ⑶ おとり捜査においては,相手方は,捜査機関又はその以来を受けた捜査協力者から犯罪を実行するように働き掛けられるのではあるが,犯罪の実行に出ること自体は自己の自由な意思決定に基づいてされているのであるから,相手方に対して何らかの制約を与える態様の捜査手法ではなく,個人の重要な権利利益を制約する処分であるとはいえない(※2)。したがって,おとり捜査は,「強制の処分」にはあたらない。
3⑴ もっとも,任意処分であっても,何らかの法益を侵害し又は侵害するおそれがあるのであるから,状況のいかんを問わず常に許容されるものとするのは相当ではなく,必要性,緊急性なども考慮したうえ,具体的状況のもとで相当と認められる限度において許容される(※3)(※4)(※5)(※6)
 ⑵ これを本件についてみると,Xに係る被疑事実は,覚せい剤の所持であるところ,単に覚せい剤を所持しているだけであれば直接の被害者がいないこととなる。その上,Kは,Xの現在の住所や立ち回り先,覚せい剤の隠匿場所を鋭意調査したものの,Xが覚せい剤を所持していることを把握することはできなかったのである。そうすると,直接の被害者がいない犯罪の捜査については,通常の捜査方法のみでは当該犯罪の摘発が困難であるということができるから,Kにおいては,おとり捜査の手法を用いる必要性が高まっている。さらに,Xは密輸入した覚せい剤の大口売却先を探しているとの情報もあるところであり,Xは機会があれば覚せい剤を売却するなどの犯罪に出る意思があったと疑われるから,これによって覚せい剤を所持する者が増えることを未然に防ぐ必要があるため,おとり捜査を行う必要性が高まっている。
 一方で,おとり捜査によって侵害される利益については,本来国家が刑事実体法により保護すべき法益であると考えられるところ,前記のように,Xは覚せい剤売却の相手方がいれば犯罪を実行する意思を有していたと考えられるのであるから,Kがおとり捜査を行うことによって犯罪を創出した面が薄まるのであって,Kが行ったおとり捜査自体から覚せい剤の拡散による国民の権利利益が制約されたということはできない(※7)。また,Kは,Sを介して,Xが数十キログラムの覚せい剤を有しているうちの5キログラムを注文したにすぎないのであるから,Kが行ったおとり捜査による前記権利利益の侵害との因果性は弱いというべきである(※8)
 以上からすると,Kが行ったおとり捜査によって侵害される利益に比しても,おとり捜査を行う必要性が高いということができるから,本件のおとり捜査は具体的状況の下で相当と認められる限度を逸脱するものではない。
4 よって,本件のおとり捜査は適法である。

以 上


(※1)「おとり捜査は,捜査機関又はその依頼を受けた捜査協力者が,その身分や意図を相手方に秘して犯罪を実行するように働き掛け,相手方がこれに応じて犯罪の実行に出たところで現行犯逮捕等により検挙するものである」最決平成16年7月12日刑集58巻5号333頁
(※2)「おとり捜査によって捜査対象者の意思決定の自由やプライバシーが侵害されるわけではなく,その意思の制圧や重要な権利・利益の制約があるとは認め難く,本決定がおとり捜査の許容性を検討する前提としてこれを任意捜査と位置付けたのは最決昭和51・3・16(刑集30巻2号187頁……)等の判例と整合的といえる。」井上正仁ほか『刑事訴訟法判例百選〔第10版〕』23頁
(※3)「昭和51年決定は,有形力の行使を伴う任意捜査につき,何らかの法益侵害またはそのおそれがある以上常に許容されるものではなく『必要性,緊急性なども考慮したうえ,具体的状況のもとで相当と認められる限度において許容される』としている。具体的事案に即し,当該捜査手段を用いる必要性とこれによって制約される利益を比較衡量し,相当と認められることが必要とするものであるが,この判断枠組みは,同じく任意捜査であるおとり捜査の許容性にも妥当し……,本決定[前掲最決平成16年7月12日]も同様の判断枠組みを採っているものと解される。」前掲井上ほか23頁
(※4)「おとり捜査の適法性は,検挙しようとする犯罪の内容・罪質,当該犯罪が行われる嫌疑の有無・程度,当該犯罪による直接の被害者の有無,おとり捜査を必要とする具体的事情,他の捜査手法によることの困難性,対象者への働き掛けの手段・程度等を総合考慮して判断する必要があろう」前掲井上ほか23頁
(※5)「少なくとも,[①]直接の被害者がいない薬物犯罪等の捜査において,[②]通常の捜査方法のみでは当該犯罪の摘発が困難である場合に,[③]機会があれば犯罪を行う意思があると疑われる者を対象におとり捜査を行うことは,刑訴法197条1項に基づく任意捜査として許容されるものと解すべきである。」前掲最決平成16年7月12日
(※6)「[(※5)の]①~③の事情は,本件のとおり捜査の必要性の程度を基礎付ける事情である一方,①は本件のおとり捜査により侵害・危殆化される保護法益が特定の個人的法益ではないという点で,③および④[麻薬取締官が,取引の場所を準備し,被告人に対し大麻樹脂2kgを買い受ける意向を示し,被告人が取引の場に大麻樹脂を持参するように仕向けた事情]は当該保護法益の侵害・危殆化がいずれ現実化するもので,捜査対象者への働き掛けの程度も弱いことを示す点で,本件のおとり捜査により制約される利益の程度を基礎付ける事情ということができ,本決定は,これらを比較衡量して本件のおとり捜査を適法と判断したと理解することができる。」前掲井上ほか23頁
(※7)「おとり捜査の法益侵害性に違法の実質があるとすると,その法益侵害性の強弱に応じ違法性の程度には違いがあるということになる。」「犯意誘発型は,法益侵害に対する因果性の強さという点で,国家が犯罪を創出したという面が強く,違法の度合いが大きいのに対し,機会提供型は,おとり捜査が行われなくとも別の機会に同種犯罪が行われたがい然性のある場合であるから,創出という面が薄く,違法性が小さいといえると思われる。」「この点について,犯意誘発型か機会提供型かにかからわず,『捜査機関による働き掛けがなければ当該犯行はなかった』という条件関係を否定できない以上,対象者の『犯意』の有無にかかわらず,おとり捜査は常に犯罪の創出を伴うものであるから,二分説に十分な理論的基礎は見いだし難いとする見解もある。しかし,前記のとおり,おとり捜査は,対象者の犯罪性向いかんにより,犯罪をつくり出す力の強弱に違いが生ずるとみることができるから,必ずしも二分説に理論的基盤がないとはいえないであろう。」最判解刑事篇平成16年度280頁
(※8)「おとり捜査の働き掛け行為の強さ自体も因果性の強弱に影響を与える要素となるものと思われる。例えば,働き掛けに対し拒否の態度を示していたのに,執ような働き掛けにより翻意させ,かつ,過大な報酬を提供し犯罪を行わせたような場合には,事前の犯罪性向の存在が一応認められ,機会提供型に属するとしても,犯罪を創出したに等しいと見ることができれば,おとり捜査の働き掛けの態様から違法と評価される余地もあるのではないかと思われる。」前掲最判解刑事篇平成16年度281頁


【事例演習刑事訴訟法の他の問題・答案は下記のリンクから】
・ 第1講(任意捜査と強制捜査)
・ 第2講(職務質問・所持品検査)
・ 第3講(任意取調べの限界)
・ 第4講(身柄拘束の諸問題⑴-現行犯逮捕の適法性,違法逮捕後の勾留,違法逮捕と再逮捕の可否)
・ 第5講(身柄拘束の諸問題⑵-重複逮捕・勾留,同時処理による例外)
・ 第6講(身柄拘束の諸問題⑶-別件逮捕・勾留)
・ 第7講(令状による捜索・差押え⑴-捜索すべき場所の特定性,差押え目的物の特定性)
・ 第8講(令状による捜索・差押え⑵-場所に対する令状による身体に対する捜索の可否,「必要な処分」としての原状回復,電磁的記録の内容を確認せずにする差押えの可否)
・ 第9講(逮捕に伴う無令状捜索・差押え⑴-逮捕の現場,差押えの関連性)
・ 第10講(逮捕に伴う無令状捜索・差押え⑵-逮捕現場の第三者に対する捜索の可否,最寄りの場所における被逮捕者の捜索・差押えの可否)
・ 第11講(おとり捜査)
・ 第12講(接見交通)
・ 第13講(一罪の一部起訴)
・ 第14講(訴因の特定)
・ 第15講(訴因変更の要否,縮小認定)
・ 第16講(訴因変更の可否)
・ 第17講(科学的証拠)
・ 第18講(法律上の推定)
・ 第19講(類似事実証拠排除法則)
・ 第20講(自白の証拠能力⑴-約束による自白)
・ 第21講(自白の証拠能力⑵-派生証拠,反復自白)
・ 第22講(補強法則)
・ 第23講(伝聞法則⑴-総論)
・ 第24講(伝聞証拠⑵-領収書の証拠能力,犯行メモの証拠能力)
・ 第25講(伝聞証拠⑶-手続的公正を欠く場合)
・ 第26講(伝聞証拠⑷-再伝聞)
・ 第27講(伝聞法則⑸-弾劾証拠)
・ 第28講(違法収集証拠排除法則⑴-総論)
・ 第29講(違法収集証拠排除法則⑵-外国捜査機関の違法収集証拠)
・ 第30講(違法収集証拠排除法則⑶-違法性の承継,毒樹の果実)
・ 第31講(択一的認定)
・ 第32講(一事不再理効)
・ 第33講(攻防対象論-上訴審における職権調査の限界)
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