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2019-03-17(Sun)

【事例演習刑事訴訟法】第9講「逮捕に伴う無令状捜索・差押え⑴」

っていうかもうサマークラークとかの募集始まってるんですよね。

早すぎじゃないですか???

そっちのエントリーもしなきゃならんなあとか思いつつも,

やっぱり普段の勉強時間を割いてエントリーを書くのは,

時間が惜しいというかなんというか……

学内で合同説明会を開いてもらえると一番いいんですけどねえ。

国立までわざわざやってきてくださる事務所はそうそうないですよね……。

まぁ,ぼちぼち就活もやっていきたいと思います。

ところで,今回は古江の第9講です。

≪問題≫

【設 問】
 警察官Kは,X方の応接間において,Xを覚せい剤所持の現行犯人として逮捕した。そして,Kは,捜索差押許可状のないまま,X方の応接間のほか書斎・寝室等すべての部屋について捜索を実施し,寝室で,天秤,注射器,ビニール袋を発見し,これらを差し押さえた。Kの行ったX方の各部屋の捜索,天秤などの差押えは,適法か。


この演習書,問題文の長さが急に長くなったり短くなったりしますけど,

なんなんでしょうかね。

まあでも論点を勉強するというだけであれば,

最低限の事情が落ちいていれば十分な気もします。

今回は逮捕に伴う捜索差押えですね。

あまり好きな分野ではありません。

っていうか刑訴自体好きじゃないから当然なんだよなぁ。

≪答案≫
第1 警察官Kがした捜索(以下「本件捜索」という。)について
 1 本件捜索は,捜索差押許可状のないまま,X方のすべての部屋について実施されているが,これは適法か。捜索を行うにあたっては,原則として,裁判官が発付する捜索差押許可状が必要であるところ(憲法35条1項,刑訴法218条1項),逮捕に伴う捜索・差押え(同法220条1項)として無令状で行うことが許容される場合がある。そこで,本件捜索が,逮捕に伴う捜索の要件を満たすかについて検討する。
 2⑴ 「逮捕する場合において」(同法220条1項柱書)とは,単なる時点よりも幅のある逮捕する際をいい,逮捕との時間的接着を要する(※1)。本件捜索は,KがX方の応接間においてXを現行犯逮捕したこと(同法213条)に引き続いて行われたものであるから,逮捕との時間的接着が認められるため,「逮捕する場合において」にあたる。
  ⑵ Kは,X方のすべての部屋を捜索しているが,いずれの部屋も「逮捕の現場」(同法220条1項2号)に含まれるか。「逮捕の現場」の範囲が明らかではないので,この点を検討する。
 通常の捜索・差押えでは令状裁判官が「正当な理由」(憲法35条1項)として特定の犯罪の嫌疑の存在及び当該犯罪と関連性を有する証拠が捜索場所に存在する蓋然性について審査する必要があるところ,適法な逮捕がされている場合には,「正当な理由」の要素である被疑事実の存在する蓋然性は認められる上,その現場には被疑事実に関連する証拠物が存在する一般的な蓋然性が認められる(※2)。したがって,「逮捕の現場」とは,証拠が存在する蓋然性が認められる範囲である。
 もっとも,証拠の存在する蓋然性は不明確な概念であり,捜査機関の権限が不合理に広がることは防止すべきであるから,逮捕に伴う捜索・差押えにおいても,令状主義の原則との関係で,その範囲を限定する必要がある。そこで,逮捕の場所と同一の管理権の及ぶ範囲及びそこにある物については,「逮捕の現場」として,無令状での捜索・差押えをすることができる。
  ⑶ これを本件捜索についてみると,KがXを逮捕したのは,X方の応接間であって,Xの管理権が及ぶX方におけるものであるから,同一のXの管理権が及ぶX方内であれば,同一の管理権が及ぶということができる。そうすると,X方の応接間のほか書斎,寝室等のすべての部屋について,Xの同一の管理権が及んでいるのであるから,いずれの部屋も「逮捕の現場」に含まれる。
 3 また,本件では,捜索の必要性を否定するような事情は認められない。
 4 よって,本件捜索は,逮捕に伴う捜索として適法に行われたものであるということができる。
第2 Kがした差押え(以下「本件差押え」という。)について
 1 本件差押えは,本件捜索と同様に,逮捕に伴う差押えとして行われたものであると考えられる。そうすると,本件差押えは,「逮捕の場合において」「逮捕の現場で」されたものであると認められる。また,本件の事情の下では,本件差押えの必要性は否定されない。
 2⑴ それでは,本件差押えの目的物とされた天秤等は,それぞれ被疑事実との関連性を有しているか。
  ⑵ 逮捕に伴う捜索・差押えの前記の趣旨に照らすと,逮捕に伴う差押えの目的物は,逮捕の基礎となった被疑事実との関連性を有するものであることが必要である。
  ⑶ これを本件についてみると,KがXを逮捕したことの基礎となる被疑事実は,覚せい剤所持である。そして,差押目的物は,天秤,注射器,ビニール袋であるところ,天秤は覚せい剤の使用にあたって,その使用量を調整するために用いられるものであることから,Xが覚せい剤を所持していたことを推認するものであり,被疑事実との関連性を認めることができる。注射器は,覚せい剤を体内に打ち込む際に用いられるものであることから,Xが覚せい剤を所持していたことを推認するものであり,被疑事実との関連性を認めることができる。ビニール袋は,覚せい剤を保管し,又は持ち運ぶために用いるものであるから,Xが覚せい剤を所持していたことを推認するものであり,被疑事実との関連性が認められる。
 したがって,本件差押えの目的物は,いずれも被疑事実との関連性を有する。
 3 よって,本件差押えは,逮捕に伴う差押えとして適法に行われたものであるということができる。

以 上


(※1)最判昭和36年6月7日刑集15巻6号915頁は,「逮捕する場合において」の意義について「単なる時点よりも幅のある逮捕する際をいう」とし,「逮捕との時間的接着を必要とするけれども、逮捕着手時の前後関係は、これを問わないものと解すべきであ」ると指摘しています。その上で,「例えば、緊急逮捕のため被疑者方に赴いたところ、被疑者がたまたま他出不在であつても、帰宅次第緊急逮捕する態勢の下に捜索、差押がなされ、且つ、これと時間的に接着して逮捕がなされる限り、その捜索、差押は、なお、緊急逮捕する場合その現場でなされたとするのを妨げるものではない」との例示を挙げています。
(※2)逮捕に伴う捜索・差押えにおいて令状が不要とされている理由について,酒巻匡『刑事訴訟法』122頁は,「通常逮捕,現行犯逮捕,緊急逮捕のいずれの場合であっても,適法な逮捕の要件があることが前提となるので,捜索・差押えの『正当な理由』の要素である嫌疑の存在すなわち被疑事実の存在する蓋然性は認められる……。その上で,『逮捕の現場』並びに被逮捕者の身体及び所持品には,被疑事実に関連する証拠物または没収すべき物が存在する一般的な蓋然性も認めることができる。」としています。なお,酒巻先生の見解は緊急処分説によっているものと思われますが,上記の論拠単体は相当説にも妥当するものと思われます。


【事例演習刑事訴訟法の他の問題・答案は下記のリンクから】
・ 第1講(任意捜査と強制捜査)
・ 第2講(職務質問・所持品検査)
・ 第3講(任意取調べの限界)
・ 第4講(身柄拘束の諸問題⑴-現行犯逮捕の適法性,違法逮捕後の勾留,違法逮捕と再逮捕の可否)
・ 第5講(身柄拘束の諸問題⑵-重複逮捕・勾留,同時処理による例外)
・ 第6講(身柄拘束の諸問題⑶-別件逮捕・勾留)
・ 第7講(令状による捜索・差押え⑴-捜索すべき場所の特定性,差押え目的物の特定性)
・ 第8講(令状による捜索・差押え⑵-場所に対する令状による身体に対する捜索の可否,「必要な処分」としての原状回復,電磁的記録の内容を確認せずにする差押えの可否)
・ 第9講(逮捕に伴う無令状捜索・差押え⑴-逮捕の現場,差押えの関連性)
・ 第10講(逮捕に伴う無令状捜索・差押え⑵-逮捕現場の第三者に対する捜索の可否,最寄りの場所における被逮捕者の捜索・差押えの可否)
・ 第11講(おとり捜査)
・ 第12講(接見交通)
・ 第13講(一罪の一部起訴)
・ 第14講(訴因の特定)
・ 第15講(訴因変更の要否,縮小認定)
・ 第16講(訴因変更の可否)
・ 第17講(科学的証拠)
・ 第18講(法律上の推定)
・ 第19講(類似事実証拠排除法則)
・ 第20講(自白の証拠能力⑴-約束による自白)
・ 第21講(自白の証拠能力⑵-派生証拠,反復自白)
・ 第22講(補強法則)
・ 第23講(伝聞法則⑴-総論)
・ 第24講(伝聞証拠⑵-領収書の証拠能力,犯行メモの証拠能力)
・ 第25講(伝聞証拠⑶-手続的公正を欠く場合)
・ 第26講(伝聞証拠⑷-再伝聞)
・ 第27講(伝聞法則⑸-弾劾証拠)
・ 第28講(違法収集証拠排除法則⑴-総論)
・ 第29講(違法収集証拠排除法則⑵-外国捜査機関の違法収集証拠)
・ 第30講(違法収集証拠排除法則⑶-違法性の承継,毒樹の果実)
・ 第31講(択一的認定)
・ 第32講(一事不再理効)
・ 第33講(攻防対象論-上訴審における職権調査の限界)
◎その他の答案リンク集はこちら→
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コメント

わかりません。。。

「逮捕の現場」の解釈について。220条1項1号の趣旨を証拠存在の蓋然性があるから裁判所による審査を経る必要がなく、令状主義の例外を許したと点にある。として、裁判所に令状請求をすれば、発付されたであろう範囲、すなわち管理官の単一性の範囲内をいうとすれば、私的には分かりやすいのですがどう思いますか。
なんというか、令状に基づく捜索と逮捕に伴う捜索でその範囲の基準を同じくする以上は、両者が別個独立に導かれるというより、もっとリンクさせられないかなという思いがあるんです。
清水大地さん、教えて下さい。

Re: わかりません。。。

コメントいただきありがとうございます。
ご指摘のいただいた令状による場合と無令状の場合とをリンクさせるという視点は,私も同様に考えており,答案でも「令状主義の原則との関係で」という部分にそれを入れ込んだつもりです。おそらく,令状に基づく捜索と逮捕に伴う捜索でその範囲の基準を同じくする以上は,というよりも,リンクさせたからこそ同じ基準になるのではないかと思いますが,Y.F.さんの考え方と私の示した答案の考え方とは実質的に違いはないものと考えております。
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お疲れ様です。

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