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2019-03-16(Sat)

【事例演習刑事訴訟法】第8講「令状による捜索・差押え⑵」

さて,今日はダイヤ改正の日です。

ダイヤ改正の概要については,以前当ブログの記事でもお伝えしております →こちら

中央線沿線民としては,もう少しスーパーあずさとか,中央ライナーとか,E257系とかを

記録しておいた方がよかったなあとは思いますよね。

中央線でこれほど大きく改正が行われたのは久しぶりじゃないですか。

そんな年に受験がかぶるのは,ツイてないなあと思いますね。

次にデカい改正があるとしたら,いつでしょうかねぇ……。

グリーン車投入の際には,東京駅の折返し時のことを考えて,

少しはダイヤをいじることになるんでしょうかねぇ。

京葉線との直通運転とかいう夢みたいな計画もありますが,

それが仮に実現するとしたら,そのときは大規模な改正になるんでしょうなあ。

どんなダイヤになるんでしょうか,妄想が捗ります。

ところで今回は,古江の設問8です。

≪問題≫

【設 問】
 ⑴ 警察は,業として無限連鎖講に加入することを勧誘したとして,A会の代表であるXらに対し,無限連鎖講の防止に関する法律違反(同法6条)の疑いで捜査を開始し,A会の東京本部事務所に対する各捜索を実施するため,裁判官から東京本部事務所を捜索場所とする捜索差押許可状の発付を受けた。令状には,「差し押さえるべき物」として,業として無限連鎖講加入を勧誘したことを明らかにするための帳簿,関係書類,磁気記録テープ,USBメモリ,フロッピーディスク等と記載されていた。警察官K,Lらは,上記捜索差押許可状に基づき,東京本部事務所の捜索を開始した。
 警察官Kは,同事務所でパソコンの前に座って作業をしていたBが,急にそわそわした態度で立ち上がり,パソコンから何かを取り出してズボンの右ポケットに突っ込んで,事務所入口から逃げ出したのを目撃したので,直ちに後を追いかけ,約100メートルの地点の公道上において,Bに追い付き,Bを背後から押さえつけて,ズボンの中を捜索したところ,ズボンの中からは,USBメモリ1本ず発見された。
 ⑵ 警察官Lは,同事務所において,総勘定元帳などの帳簿類を発見し,内容を確認したところ,上記無限連鎖講の防止に関する法律違反事件に関連する記載があったので,これを差し押さえた。
 さらに,Lは,X代表の使用する机の引出しの中にあった「重要資料」と記載された大封筒の中に,フロッピーディスク1枚,USBメモリ2本を発見したので,持参していた警察用のノートパソコンにフロッピーディスク1枚を挿入してその内容を確認しようとしたところ,「不正な操作を行ったので,データを消去します」とのディスプレイ表示とともに,フロッピーディスク内のすべてのデータが消去された。
 ⑶ そこで,Lは,USBメモリ2本およびBが持ち出したUSBメモリ1本については,いずれもその内容を確認することなく,すべてを差し押さえた。
 Kにおいて,USBメモリ2本およびBが持ち出したUSBメモリ1本について,県警本部鑑識課の係員に消去ソフト組込みの有無およびその解除を依頼したところ,前者のうち1本および後者にも消去ソフトが組み込まれていたことが判明し,これを解除して,その内容を確認したところ,2本には,「A会」の組織構成や会員募集の手口,会員名簿,会員すらのクレームに対する対応措置などに関するデジタルの文書が保存されていた。なお,消去ソフトが組み込まれていなかった残りの1本は未使用であることが判明したので,未使用のUSBメモリ1本については,これをA会東京本部に還付した。
 本件捜査は適法か。


前回に引き続き,令状による捜索差押えです。

捜索差押えは論点が色々あって処理が大変です。

論点をしっかりと書くのも大事ですけど,

まずは論点を落とさないというところが,点数の差にひびくのではないかと思います。

≪答案≫
第1 警察官KがBのズボンの中について行った捜索(以下「本件捜索」という。)について
 1 Kは,裁判官から発付を受けた捜索差押許可状(以下「本件捜索差押許可状」という。)に基づいて本件捜索を行っている。令状に基づく捜索の要件は,①令状を呈示したこと(刑訴法222条1項,110条),②捜索の対象が令状に記載された捜索場所,物又は身体に当たること,③被疑事実に関連する差押目的物が存在する蓋然性が認められること(同法222条1項,102条2項),④捜索の必要性が認められること(同法218条1項)である。
 2⑴ 本件では,①Kは,A会東京本部事務所について捜索を開始するに当たり,本件捜索差押許可状を呈示しているものと思われる(※1)。また,③本件の被疑事実はA会の代表であるXらが業として無限連鎖講(※2)に加入することを勧誘したことであるから,被疑者であるXらが拠点としているA会の東京事務所に本件事件と関連する差押目的物が存在する蓋然性が認められる。そして,④無限連鎖講が,終局において破たんすべき性質のものであるのにかかわらずいたずらに関係者の射幸心をあおり,加入者の相当部分の者に経済的な損失を与えるに至るものである(※3)点で,悪質性の高い犯罪であるということができる。A会では,これを業として行っているのであるから,犯罪の態様として悪質性が強いものである。無限連鎖講という組織の性質上,多数の者が加入していくこととなる制度になっているから,これを管理するための名簿等が記録されているものと考えられ,犯罪の態様等を捜査する上でこれらの証拠は重要である。そして,これらの証拠は,データで保存されている場合には,容易に破壊が可能であるから,すぐに隠滅毀損されるおそれがある。そうすると,これらの物件が差し押さえられることによってA会が被る不利益に比しても捜索を行う必要性が認められる(※4)(※5)
  ⑵ア もっとも,②本件捜索差押許可状は,その捜索場所をA会東京本部事務所としているが,Bのズボンはこれにあたらないのではないか。場所に対する捜索許可状によって,捜索場所に居合わせた者の身体を捜索することができるかが問題となる。
   イ 捜索を行うに当たって令状が必要とされているのは,事前に裁判官による「正当な理由」(憲法35条1項)についての審査を通して,重要な権利の侵害を伴う処分から国民の権利利益を保護するためである(※6)。したがって,場所に対する捜索許可状の効力が及ぶ範囲は,令状裁判官による事前審査が及んでいる範囲に限られる。そして,捜索の対象が当該場所に対する権利利益に包摂されているといえる場合には,場所に対する捜索許可状の効力が及んでいるということができるから,同許可状をもって適法に捜索することができる。
   ウ これを本件についてみると,Bのズボンの中に対する捜索は,人の身体に密着した部分に対する捜索であるから,「人の身体」に対する捜索とみるべきところ,憲法35条1項は「捜索する場所……を明示する令状」,すなわち捜索場所の特定・明示を要求しており,これを受けて刑訴法219条1項は「場所」と「身体」とを区別している(※7)ことからすれば,両者のプライバシーを異質なものであって,人の身体に係るプライバシーが場所の権利利益に包摂されているということはできない。したがって,本件捜索差押許可状を発付した令状裁判官は,当該場所に在所する人の身体についてまで事前審査をしていないと考えるべきであるから,本件捜索差押許可状の効力は,Bのズボンの中にまでは及ばない。
 そうすると,本件捜索差押許可状に基づいては,Bのズボンの中を捜索することはできない。
 3⑴ もっとも,KがBのズボンの中を漁ったのは,Bがズボンの中に何かを隠し持っている疑いがあったためである。そこで,KがBのズボンの中を捜索した行為は,あくで場所に対する捜索の「必要な処分」として見ることはできないか。
  ⑵ 刑訴法が捜査機関に強制処分である捜索差押えの権限を与えていることからすれば,捜索差押えの目的を達成するために合理的に見て必要かつ相当な措置を取ることも,捜索差押えの権限に含まれると考えるべきであり,刑訴法111条1項はこれを確認しているものであると考えられる。そこで,捜索場所に居合わせた者が,捜索中または捜索の開始直前に,捜索場所にあった捜索の対象物あるいは差押目的物を身体・携帯物に隠匿した疑いが十分にあるときは,捜索差押えの「必要な処分」(刑訴法222条1項,111条1項)として妨害行為を排除して現状に回復するために合理的にみて必要かつ相当な処分を行うことができる。
  ⑶ これを本件についてみると,Kが本件捜索差押許可状に基づいてA会東京本部事務所の捜索を開始したところで,Bはパソコンから何かを取り出してズボンのポケットの突っ込んでいる。本件捜索差押許可状には,USBメモリやフロッピーディスクなど,パソコンに附属させることができる電磁的媒体であって,かつ大きさもズボンのポケットに入るような小さなものが挙げられているから,Bの前記動作からすると,差押目的物となっているものをポケットに突っ込んだ可能性が高い。また,Bは前記動作の前後から,急にそわそわした態度をとるといった不自然な行為が目立つようになり,その直後に事務所から逃げ出すといった行為に出ている。Bのこのような行為は,捜索を行っている警察官Kから逃れるような態度であるといえることから,ポケットに突っ込んだものが,Kに発見されたくないようなもの,すなわち差押目的物である可能性が高い。したがって,Bは,捜索中に捜索場所にあった差押目的物を身体に隠匿した疑いが十分にあるということができる。
 そして,KがBを追いかけるも,Bは既に100メートルも逃げており,Kから逃れようとする意思が強く表れているとみられる。そうすると,仮にKがBに任意にポケットに突っ込んだものを提出するように求めても,Bがこれに応じる可能性は低いというものと考えられ,差押目的物と思われるものの回収に奏功しないのであるから,Bに対して有形力を行使して,背後から押さえつけるなどの行為をしても合理的にみて必要かつ相当であるということができる。
 したがって,KがBのズボンの中を捜索した行為は,差押目的物の捜索のための「必要な処分」として許容される。
 4 そして,Bのズボンの中からはUSBメモリ1本が発見されているところ,これは捜索場所であるA会東京本部事務所の権利利益に包摂される物であるから,捜索の対象とすることができる。したがって,②捜索の対象が令状に記載された捜索場所にあたる。
 5 よって,本件捜索は適法である。
第2 警察官LがUSBメモリ計3本(以下「本件USBメモリ」という。)を,その内容を確認せずにした差押え(以下「本件差押え」という。)について
 1 Lは,本件捜索差押許可状に基づいて本件差押えを行っている。令状に基づく差押えの要件は,①令状を呈示したこと,②差押えの対象が令状に記載された差押物件に当たること,③差押目的物と被疑事実との関連性が認められること,④捜索の必要性が認められることである。
 2⑴ 本件では,①Lは,A会東京本部事務所について捜索を開始するに当たり,本件捜索差押許可状を呈示しているものと思われる(※1)。また,②本件捜索差押許可状には,差し押さえるべき物としてUSBメモリが掲げられているから,本件USBメモリは令状に記載された差押物件にあたる。さらに,④差押えの必要性については,前記の捜索の必要性と同様である。
  ⑵ア もっとも,③Lは,本件USBメモリの内容を確認しておらず,USBメモリはその外観からしてどのような情報が記録されているかは判別できないことから,被疑事実との関連性を判断できておらず,違法ではないか。
   イ 差押えを行うに当たって令状が必要とされているのは,事前に裁判官による「正当な理由」についての審査を通して,重要な権利の侵害を伴う処分から国民の権利利益を保護するためである。したがって,差し押さえるべき物と被疑事実との関連性については,捜査機関も審査すべきであり,関連性について判断しないで差押えをすることは原則として許されない。
 もっとも,「正当な理由」の存否の判断は,被処分者の利益と捜査の必要性との比較衡量に基づく規範的なものであるから,それに必要とされる被疑事実と差押目的物との間の関連性の程度は一義的に決まるものではなく,令状執行の際の具体的状況によって変動し得るものである。そして,差押目的物に被疑事実に関する情報が記録されている蓋然性が認められ,そのような情報が実際に記録されているかをその場で確認していたのでは記録された情報を損壊される危険がある場合には,捜査の必要性が高まることから,内容を確認することなく関連性があるものと認定することができる。
   ウ これを本件についてみると,本件USBメモリのうち,2本については,A会のX代表の机から発見され,かつ「重要書類」と記載された大封筒の中に保管されていたものであり,その一部であるフロッピーディスクには消去送付が組み込まれていたことなどの事実に照らすと,USBメモリの中に被疑事実に関する情報が記録されている蓋然性が認められる。また,本件USBメモリのうち,Bが所持していたものについては,前記のとおり,被疑事実に関する情報が記録されている蓋然性が認められる。
 また,Lが捜索現場で内容を確認しようとしたフロッピーディスクについては,消去ソフトにより情報が損壊されており,本件USBメモリについても同様の消去ソフトが組み込まれている可能性が高いことから,捜索現場での内容確認作業によって本件USBメモリの情報が損壊されるおそれがあると認められる。
 これらの事情からすれば,本件では,本件USBを,その内容を確認せずに差し押さえる必要性が高いため,前記の蓋然性を有することから本件USBメモリが被疑事実との関連性を有するものと認められる。
 3 よって,本件差押えは,その要件を充足するものであるから,適法である。

以 上


(※1)問題文に事情が書かれていないので空想です。
(※2)「無限連鎖講(むげんれんさこう)とは、金品を払う参加者が無限に増加するという前提において、2人以上の倍率で増加する下位会員から徴収した金品を、上位会員に分配することで、その上位会員が自らが払った金品を上回る配当を受けることを目的とした金品配当組織のことである。」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「無限連鎖講」
(※3)無限連鎖講の防止に関する法律
 (目的)
第一条 この法律は、無限連鎖講が、終局において破たんすべき性質のものであるのにかかわらずいたずらに関係者の射幸心をあおり、加入者の相当部分の者に経済的な損失を与えるに至るものであることにかんがみ、これに関与する行為を禁止するとともに、その防止に関する調査及び啓もう活動について規定を設けることにより、無限連鎖講がもたらす社会的な害悪を防止することを目的とする。
(※4)「犯罪の態様、軽重、差押物の証拠としての価値、重要性、差押物が隠滅毀損されるおそれの有無、差押によつて受ける被差押者の不利益の程度その他諸般の事情に照らし明らかに差押の必要がないと認められるときにまで、差押を是認しなければならない理由はない。」最決昭和44年3月18日刑集23巻3号153頁
(※5)たぶんこんなに長々と書く必要はないと思います。
(※6)「憲法35条1項は,『侵入,捜索及び押収を受けることのない権利』を侵す場合には,原則として,『正当な理由』に基づいて発せられ,『捜索する『場所』及び押収する物を明示する令状』が必要である旨定めている……。これを受けて,法は,捜索差押令状の発付に際して,特定の被疑事実に関連する物(差押目的物)が,特定の捜索対象に存在する蓋然性等の『正当な理由』について,裁判官が事前に審査するという仕組みを定めている(刑訴法218条・219条)。」井上正仁ほか『刑事訴訟法判例百選〔第10版〕』42頁
(※7)場所に対する捜索許可状によって人の身体を捜索することができない理由として,刑訴法222条1項が準用する同法102条が場所と人の身体とのを区別していることを挙げる見解に対しては,「102条はそこに掲げられたものはすべて捜索の対象にできることを示したにすぎず,これを捜索するために別個の授権が必要なことまで意味するものではないとして,これを批判したうえ,場所に対する捜索許可状によって身体捜索が許されない根拠として,……憲法35条の『捜索する場所……を明示する令状』,つまり捜索場所の特定・明示の要請を根拠にすべきであるとし,憲法35条およびこれを受けた刑訴法107条,219条1項を根拠とする見解も有力に主張されている」と指摘されています(解説110頁)。


【事例演習刑事訴訟法の他の問題・答案は下記のリンクから】
・ 第1講(任意捜査と強制捜査)
・ 第2講(職務質問・所持品検査)
・ 第3講(任意取調べの限界)
・ 第4講(身柄拘束の諸問題⑴-現行犯逮捕の適法性,違法逮捕後の勾留,違法逮捕と再逮捕の可否)
・ 第5講(身柄拘束の諸問題⑵-重複逮捕・勾留,同時処理による例外)
・ 第6講(身柄拘束の諸問題⑶-別件逮捕・勾留)
・ 第7講(令状による捜索・差押え⑴-捜索すべき場所の特定性,差押え目的物の特定性)
・ 第8講(令状による捜索・差押え⑵-場所に対する令状による身体に対する捜索の可否,「必要な処分」としての原状回復,電磁的記録の内容を確認せずにする差押えの可否)
・ 第9講(逮捕に伴う無令状捜索・差押え⑴-逮捕の現場,差押えの関連性)
・ 第10講(逮捕に伴う無令状捜索・差押え⑵-逮捕現場の第三者に対する捜索の可否,最寄りの場所における被逮捕者の捜索・差押えの可否)
・ 第11講(おとり捜査)
・ 第12講(接見交通)
・ 第13講(一罪の一部起訴)
・ 第14講(訴因の特定)
・ 第15講(訴因変更の要否,縮小認定)
・ 第16講(訴因変更の可否)
・ 第17講(科学的証拠)
・ 第18講(法律上の推定)
・ 第19講(類似事実証拠排除法則)
・ 第20講(自白の証拠能力⑴-約束による自白)
・ 第21講(自白の証拠能力⑵-派生証拠,反復自白)
・ 第22講(補強法則)
・ 第23講(伝聞法則⑴-総論)
・ 第24講(伝聞証拠⑵-領収書の証拠能力,犯行メモの証拠能力)
・ 第25講(伝聞証拠⑶-手続的公正を欠く場合)
・ 第26講(伝聞証拠⑷-再伝聞)
・ 第27講(伝聞法則⑸-弾劾証拠)
・ 第28講(違法収集証拠排除法則⑴-総論)
・ 第29講(違法収集証拠排除法則⑵-外国捜査機関の違法収集証拠)
・ 第30講(違法収集証拠排除法則⑶-違法性の承継,毒樹の果実)
・ 第31講(択一的認定)
・ 第32講(一事不再理効)
・ 第33講(攻防対象論-上訴審における職権調査の限界)
◎その他の答案リンク集はこちら→
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