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2019-03-16(Sat)

【事例演習刑事訴訟法】第6講「身柄拘束の諸問題⑶」

ここ数回の記事で鼻水のことばかり書き記している気がしますが,

鼻をかみまくっているせいで,ついに鼻血が出るようになってしまいました。

しかも毎日出ます。

ひどいもんですね。

人が傷つくこと(物理)を平気でするような花粉は,

直ちに一掃されるべきです。

違法DLとか性犯罪で無罪判決とかもはやどうでもいいので(どうでもよくない),

この花粉をどうやって失くしていくかについて真剣な議論がされるべきです。

っていうか,これだけ毎年花粉で苦しんでいる人が多発しているのに,

なんでここまでノー対策でやってきたんでしょうか。

不思議でなりません。

この国はもうダメかもしれません(極論)

ところで,今回は古江の設問6です。

≪問題≫

【設 問】
 ⑴ 司法警察員Kは,被疑者Xについて,Vに対する殺人罪により逮捕するに十分な証拠の収集ができなかったため,別件の窃盗事件で逮捕したうえで主として殺人について取り調べる目的で,窃盗罪の逮捕状を請求し,逮捕状が発付された。Kは,窃盗事件について所要の捜査をして検察官に送致し,検察官は窃盗事件について勾留を請求し,勾留状が発付された。Kは,検察官から,勾留中は窃盗事件についてのみ捜査・取調べをするよう指揮を受けたため,予定した殺人事件についての捜査・取調べは,全く行わず,専ら窃盗事件についてのみXの取調べおよびその余の捜査を行った。この場合において,逮捕・勾留は適法か。
 ⑵ 上記事例で,Kは逮捕状請求時においては窃盗のみを取り調べる目的であったが,勾留状発付後に,捜査方針を変更し,Xを主として殺人事件について取り調べた場合はどうか。


別件逮捕勾留です。

もう学説がうじゃうじゃしているあの別件逮捕勾留です。

余罪取調べも絡んできて大変なことになっている別件逮捕勾留です。

一度深入りしたらもう抜け出せない


KING OF 沼


その別件逮捕勾留です。

もう普通に別件基準説とったらよくない???何うだうだ言ってんの???バカじゃん?????

みたいな態度を僕もとっていたんですが,

でも,よく考えたら,別件逮捕勾留が問題になる場面って,

その逮捕勾留中に得られた資料の証拠能力が問題になる場面が多いわけですよね。

そういうことを考えると,逮捕勾留中の出来事全般を見て決められるべきことであって,

令状請求時の捜査機関の意図とかどうでもいいような気もしますよね……。

とかなんとか適当に思い付きで今喋った結果,

私は今日から川出説をとることにしました。

私が決めたことは絶対です。

誰がなんと言おうと川出説で書きます。

もう誰にも止められません。

新しい別件基準説?????

あ??????

これ以上学生混乱させて楽しいか??????

≪答案≫
第1 設問⑴
 1 司法警察員Kは,Xを逮捕・勾留しているので,まずその要件を満たしているかについて検討すると,Xが窃盗事件を起こしたことについて相当の嫌疑があり,逃亡の虞又は罪証を隠滅する虞がないとはいえないから,逮捕の理由(刑訴法199条1項)及び逮捕の必要性(同法199条2項ただし書,規則143条の3)が認められ,勾留の理由(同法207条1項,60条1項)及び勾留の必要性(同法207条1項,87条1項)も認められるから,逮捕及び勾留の要件を満たす(※1)
 もっとも,ここでの逮捕・勾留は,Kが,主として証拠の揃っていない殺人事件について取調べを行う目的の下,名目的に窃盗事件について逮捕・勾留をしたものであるから,このような逮捕は違法とならないか。
 2⑴ 被疑者の起訴前に設けられる身柄拘束期間は,被疑者の逃亡及び罪証隠滅を阻止した状態で,身柄拘束の理由とされた被疑事実(以下「別件被疑事実」という。)につき,起訴・不起訴の決定に向けた捜査を行うためのものである。そうすると,別件被疑事実を理由とする逮捕・勾留の期間が,主として令状に示された被疑事実以外の事実(以下「本件被疑事実」という。)の捜査のために利用されている場合には,その身柄拘束は,別件被疑事実による身柄拘束としての実体を失い,身柄拘束期間が本件被疑事実による身柄拘束となっていると評価すべきである。この場合には,本件被疑事実について身柄拘束の要件が欠け,裁判所の審査を経ていないのであるから,違法な身柄拘束であるというべきである(※2)
  ⑵ これを本件についてみると,KはXについて窃盗罪の逮捕状を請求する段階で,主として殺人事件について取り調べる目的を有していたのではあるが,Kは,実際には,検察官へ送致する前には窃盗事件についてのみ所要の捜査をしたにすぎず,殺人の被疑事実について捜査・取調べを行っていないものとみられる。また,検察官に送致した後も,検察官からの指揮を受けて,殺人の被疑事実については捜査・取調べを全く行わず,専ら窃盗の被疑事実についてのみ取調べ及びその余の捜査を行ったにすぎないのである。そうすると,KはXに対する取調べの全般にわたって,別件被疑事実についてのみ取調べを行っていたのであるから,窃盗の被疑事実を理由とする逮捕・勾留の期間が,主として殺人の被疑事実の捜査のために利用されていたとは認められない。
 したがって,Xに対する窃盗の被疑事実による身柄拘束は,未だその実体を失っておらず,Xの身柄拘束は終始にわたって適法なものである。
 3 また,前記のように,KはXの殺人の被疑事実について一切取調べを行っていないとみられるから,余罪取調べの問題を生じていない(※3)(※4)
 4 よって,KがXに対して行った逮捕・勾留は適法である。
第2 設問⑵
 1 Xについての逮捕・勾留は,前記の通り,それぞれその要件を満たしている。
 もっとも,Kは,Xに対して主として殺人事件の取調べを行っている。そこで,このような実態を伴う逮捕・勾留は違法とならないか。
 2 Kは,逮捕状請求時には窃盗の被疑事実についてのみ取り調べる目的であった上,勾留状発付時までは,専ら窃盗の被疑事実についてのみ取調べを行っていたのであるが,勾留状発付後からは,捜査方針を変更して,主として殺人の被疑事実について取調べを行っている。そうすると,窃盗の被疑事実についての取調べは,実質的に勾留状発付時までには完了していたものとみられる上,勾留状発付前の取調べ時間に比して,勾留状発付後の取調べ時間の方が長いものと考えられ,そうすると全体の取調べ時間のうち主として殺人の被疑事実について取調べを行っていた時間の割合が大きいものと推認される。その上,本件の事情からは明らかではないが,窃盗の被疑事実と殺人の被疑事実とは,殺人直後の窃盗といった事案でない限り,一般に関連性は低いと考えられる。以上からすると,Xについて窃盗の被疑事実を理由とする逮捕・勾留が,主として殺人の被疑事実の捜査のために利用されているものと評価せざるを得ない。
 したがって,Xについての窃盗の被疑事実を理由とする逮捕・勾留は,その実体を失っているというべきである。
 3 よって,遅くとも,勾留状発付後からの逮捕・勾留は違法である(※5)

以 上


(※1)この部分は,問題文に事情が書かれていないため何も書けませんが,問題文に色々書いてある場合には,逮捕・勾留の要件から認定する必要があるのだろうと思います。
(※2)主として本件被疑事実の捜査のために利用されているといえるか否かの考慮要素について,川出敏裕『別件逮捕・勾留の研究』288頁は,「別件捜査の完了時期,別件・本件の取調べ状況(取調べ時間の比率),取調べの内容,別件と本件との関連性,供述の自発性,令状請求時の捜査機関の意図」としています。
(※3)別件逮捕勾留について,答案の見解を採用した場合でも,「身柄拘束が,令状に示された被疑事実による身体拘束としての実体を失い,身体拘束期間が主として利用された方の被疑事実による身体拘束となっていると評価され得ないときは,余罪取調べの限界の問題となり得る」とされています(解説94-95頁)。
(※4)取調べ受忍義務を肯定する論拠としては,「㋐198条1項ただし書が逮捕・勾留されている事実を(本罪に)限定していないこと,㋑223条2項が被疑者以外の者(=当該被疑事実について逮捕・勾留されていない者)の取調べについて198条1項ただし書を準用していること,㋒事件単位の原則は,身柄拘束を規制する原理であって,取調べを目的とするものではない逮捕・勾留には適用されないことなど」が挙げられています(解説96頁)。個人的には取調べ受忍義務を肯定してよいと考えているので,否定説の方は各自でご確認ください(面倒なだけ)。
(※5)答案の見解による場合には,「別件による身体拘束の実体が失われた以降の本件による身柄拘束を違法とすることも可能であり,1つの身柄拘束を分割して,部分的に違法とすることを認めること」ができるとされています(解説92頁)。
(※6)以下は,川出説(解説で「起訴前の身柄拘束期間の趣旨説」と呼ばれているもの。)と中谷説(解説で「実体喪失説」と呼ばれているもの。)の抜粋です。
●川出説=「起訴前の身柄拘束期間の趣旨について,『被疑者の逃亡及び罪証隠滅を阻止した状態で,身柄拘束の理由とされた被疑事実につき,起訴・不起訴の決定に向けた捜査を行うための期間である』との理解……を前提に,別件を被疑事実とする逮捕・勾留の期間が,主として本件の捜査のために利用されている場合には,『その身体拘束は,令状に示された被疑事実による身柄拘束としての実体を失い,身柄拘束期間が主として利用された方の被疑事実による身体拘束となっている評価すべき』であり,この場合には本件について身体拘束の要件が欠け,裁判官の審査を経ていないので,違法な身柄拘束となるとされている……。」「起訴前の身柄拘束期間の趣旨」を持ち出すのは,「逮捕・勾留の目的は逃亡の防止と罪証隠滅の防止であって,取調べ等の捜査はその目的ではないこと(逮捕・勾留と取調べとは無関係)を前提にすれば,逮捕・勾留中の取調べ等の捜査の実態が逮捕・勾留の違法を導くことはない。そこで,身柄拘束期間中の取調べ等の捜査の実態と,逮捕・勾留の適否との中間に,『起訴前の身柄拘束期間の趣旨』(逮捕・勾留被疑事実について起訴・不起訴を決すべく捜査を尽くすべき期間)を媒介項として入れることによって,取調べ等の捜査の実態を逮捕・勾留の適否の判断に反映できるようにした」解説90-91頁
●中谷説=「『第1次勾留は,あくまで別件による勾留であるから,別件についての勾留要件の存在が令状発付および執行継続の要件であることはいうまでもない』……とされており,また,東京地裁平成12年決定も,まずもって別件による逮捕・勾留の理由と必要性の有無を検討し,『(別件による)逮捕勾留に違法はない』と判断した上で,その逮捕・勾留中の被疑者取調情況を検討し,『(別件)による勾留としての実体を失い,実質上(本件)を取り調べるための身柄拘束になったとみるほかはない。したがって,その間の身柄拘束は,令状によらない違法な身柄拘束となった』として……,基本的に別件基準説に立った上……,その間の余罪取調べが許された限度を大きく超えた場合には,別件による逮捕・勾留としての実体を失い,本件取調べのための身柄拘束となったと評価して,別件による逮捕・勾留を令状によらない身柄拘束として違法とする……。」「『別件逮捕・勾留の適否』の判断基準として,別件についての逮捕・勾留の要件があるかどうかという観点と,その間の捜査の在り方という観点の2つの観点から検討するとされ……,別件逮捕・勾留中の捜査(被疑者取調べを中核とする)の在り方も,第1段階の判断しとして行っている……。『余罪取調べの限界』についても,『別件による勾留としての実態が失われたとする実体喪失説』を挙げるので……,第2段階判断は,第1段階判断枠組みの『別件による逮捕・勾留中の捜査の在り方』に重なることとなり,第2段階の判断枠組みは実質的には存しないということになる」解説92-93頁


【事例演習刑事訴訟法の他の問題・答案は下記のリンクから】
・ 第1講(任意捜査と強制捜査)
・ 第2講(職務質問・所持品検査)
・ 第3講(任意取調べの限界)
・ 第4講(身柄拘束の諸問題⑴-現行犯逮捕の適法性,違法逮捕後の勾留,違法逮捕と再逮捕の可否)
・ 第5講(身柄拘束の諸問題⑵-重複逮捕・勾留,同時処理による例外)
・ 第6講(身柄拘束の諸問題⑶-別件逮捕・勾留)
・ 第7講(令状による捜索・差押え⑴-捜索すべき場所の特定性,差押え目的物の特定性)
・ 第8講(令状による捜索・差押え⑵-場所に対する令状による身体に対する捜索の可否,「必要な処分」としての原状回復,電磁的記録の内容を確認せずにする差押えの可否)
・ 第9講(逮捕に伴う無令状捜索・差押え⑴-逮捕の現場,差押えの関連性)
・ 第10講(逮捕に伴う無令状捜索・差押え⑵-逮捕現場の第三者に対する捜索の可否,最寄りの場所における被逮捕者の捜索・差押えの可否)
・ 第11講(おとり捜査)
・ 第12講(接見交通)
・ 第13講(一罪の一部起訴)
・ 第14講(訴因の特定)
・ 第15講(訴因変更の要否,縮小認定)
・ 第16講(訴因変更の可否)
・ 第17講(科学的証拠)
・ 第18講(法律上の推定)
・ 第19講(類似事実証拠排除法則)
・ 第20講(自白の証拠能力⑴-約束による自白)
・ 第21講(自白の証拠能力⑵-派生証拠,反復自白)
・ 第22講(補強法則)
・ 第23講(伝聞法則⑴-総論)
・ 第24講(伝聞証拠⑵-領収書の証拠能力,犯行メモの証拠能力)
・ 第25講(伝聞証拠⑶-手続的公正を欠く場合)
・ 第26講(伝聞証拠⑷-再伝聞)
・ 第27講(伝聞法則⑸-弾劾証拠)
・ 第28講(違法収集証拠排除法則⑴-総論)
・ 第29講(違法収集証拠排除法則⑵-外国捜査機関の違法収集証拠)
・ 第30講(違法収集証拠排除法則⑶-違法性の承継,毒樹の果実)
・ 第31講(択一的認定)
・ 第32講(一事不再理効)
・ 第33講(攻防対象論-上訴審における職権調査の限界)
◎その他の答案リンク集はこちら→
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