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2019-03-15(Fri)

【事例演習刑事訴訟法】第5講「身柄拘束の諸問題⑵」

鼻水がとまらないんですが……

いや,こんなに出続けるの初めてですよ……

今年の花粉よっぽどひどいようですね……

こりゃあ勉強も捗らないわけだ

≪問題≫

【設 問】
 Xは,常習として,V1に対して暴行を加えて全治まで約3週間を要する傷害を負わせた(A事実)として,常習傷害罪(暴力行為等処罰に関する法律1条ノ3)により逮捕・勾留のうえ,同罪で起訴され,第1回公判期日において公訴事実を認めて,保釈された。しかし,保釈後になって,A事実による上記逮捕の前に犯したV2に対する傷害行為(B事実)が新たに発覚し,警察は捜査を開始した。その結果,V2に対する傷害行為も常習として犯したとの嫌疑が濃厚となり,起訴済みのA事実についての常習傷害罪と包括一罪の関係にあると認められた。この場合において,捜査機関は,B事実によりXを逮捕・勾留することができるであろうか。また,XがA事実について保釈中に,新たに,V3に対する傷害行為(C事実)を行い,これがA事実に係る常習傷害罪と包括一罪の関係にある場合はどうか。


一罪一逮捕一勾留っていうやつですね。

名前が長いわりに言いにくいですよね。

2段階の判断枠組みがあるようです。

法令違憲からの適用違憲的な流れですかね。

全然違いますねごめんなさい。

≪答案≫
第1 B事実についてXを逮捕・勾留することの可否
 1 捜査機関は,Xを,A事実に係る常習傷害罪によって逮捕・勾留を行ったのちに,A事実に係る常習傷害罪と包括一罪の関係にあるB事実に係る常習傷害罪によってXを逮捕・勾留しようとしているが,これは同一被疑事実について複数の逮捕・勾留を重複して行うこととなり許されないのではないか。
 2⑴ 刑訴法203条以下が厳格な身柄拘束期間を定めているのは,被疑者の身体の自由に対する不当な制約を防止するものであるところ,同一の被疑事実について複数の逮捕・勾留が重複して行われれば,逮捕・勾留の不当な蒸し返しとなり,被疑者の身体の自由に対する不利益が生じる。したがって,同一の被疑事実について複数の逮捕・勾留を重複して行うことは原則として許されない。
 ここで,実体法上一罪を構成する事実は,一般的に相互に密接な関係があるため,それを分割して逮捕・勾留を認めると,捜査の重複を招き,実質上逮捕・勾留の蒸し返しになるおそれが高いといえる。したがって,同一の被疑事実とは,実体法上一罪を構成する事実を意味すると考える。
  ⑵ これを本件についてみると,A事実に係る常習傷害罪とB事実に係る常習傷害罪とは,包括一罪の関係にあり,実体法上一罪として扱われる。そうすると,A事実とB事実とは,同一の被疑事実として処理されることとなるから,原則として,両事実について逮捕・勾留を重複して行うことはできない。
 3⑴ もっとも,刑訴法203条以下の身柄拘束期間制限は,捜査機関に対して,逮捕・勾留の蒸し返しを防ぐために,一個一回の身柄拘束の中で一罪の関係にある被疑事実の全部について同時に捜査をすることを求めるものである。そうすると,捜査機関において,実体法上一罪を構成する複数の犯罪について,同時処理が不可能であった場合には,後の逮捕・勾留は,不当な逮捕・勾留の蒸し返しということはできず,前記身柄拘束期間制限の趣旨に反するものではない。
 したがって,実体法上一罪を構成する事実であっても,同時処理が観念的に不可能であった場合には,別個の被疑事実として扱われることとなり,これらを重複して逮捕・勾留することが許される。
  ⑵ これを本件についてみると,前記のように,A事実に係る常習傷害罪とB事実に係る常習傷害罪とは実体法上一罪となるところ,B事実は,捜査機関がA事実によってXを逮捕する前に発生しているため,捜査機関がA事実によりXを逮捕する段階でB事実についても同時処理を行うことが観念的には可能であったということができる。
 したがって,B事実についても,刑訴法203条以下の身柄拘束期間制限の趣旨が妥当するため,A事実とB事実はやはり同一の被疑事実というべきであって,捜査機関はB事実についてA事実と重複して逮捕・勾留することはできないように思われる。
 4⑴ しかし,捜査機関において,A事実によりXを逮捕した時点で,B事実については発覚していなかったのであるから,実質的には同時処理が不可能であったともみれる。
 前記身柄拘束期間制限の前記趣旨からすれば,被疑者に対する不当な逮捕・勾留の蒸し返しとなる場合であっても,それを凌駕するほどの合理的理由がある場合には,同一の被疑事実に係る複数の犯罪について重複して逮捕・勾留を行うことができる。そして,捜査機関において重要な新証拠を発見し,または被疑者の逃亡・罪証隠滅のおそれの復活などの新事情が出現し,事案の重大性,事情変更による重複逮捕・勾留の必要性,先行逮捕・勾留の身柄拘束期間とその間の捜査状況などの諸事情を勘案して,被疑者の利益と対比してみても重複逮捕・勾留が真にやむを得ない場合には,前記の合理的理由があるということができる。
  ⑵ これを本件についてみると,捜査機関においては,XのA事実による逮捕・勾留中にはB事実について発覚しておらず,Xの釈放後にこれが発覚したのであるから,重要な新事実を発見したものとして新事実が出現したものといえる。そして,常習傷害罪は,単なる傷害罪(刑法204条)に留まらず,これを常習的に行う点において,人の身体に対する危険がより広範囲にわたって認められる犯罪であるから,事案としての重大性が認められる。また,B事実に係る常習傷害罪がA事実に係る常習傷害罪と実体法上一罪とされることからすると,これを処断するにあたっては,検察官としてはその量刑において複数の傷害事件を起こしていることを主張する必要があるから,B事実に係る常習傷害罪についても捜査を行う必要があるため,重複逮捕・勾留の必要性が認められる。一方で,捜査機関において,A事実による逮捕・勾留の間に捜査の怠慢があった等,捜査機関に非が認められるような事情はない。以上からすれば,Xの身体の自由と対比してみても重複逮捕・勾留を行うことが真にやむを得ないというべきである。
 したがって,捜査機関において,XのB事実による重複逮捕・勾留を行うべき合理的な理由があるということができる。
 5 よって,捜査機関は,XをB事実により逮捕・勾留することができる。
第2 C事実についてXを逮捕・勾留することの可否
 1 捜査機関は,Xを,A事実に係る常習傷害罪によって逮捕・勾留を行ったのちに,A事実に係る常習傷害罪と包括一罪の関係にあるC事実に係る常習傷害罪によってXを逮捕・勾留しようとしているが,これは同一被疑事実について複数の逮捕・勾留を重複して行うこととなり許されないのではないか。
 2 A事実に係る常習傷害罪とC事実に係る常習傷害罪とは,包括一罪の関係にあるから,同一の被疑事実を構成するものとして扱われるのが原則であり,したがって,両事実に係る犯罪によって重複して逮捕・勾留することは原則として認められない。
 3 もっとも,C事実は,XがA事実によって逮捕・勾留され保釈された後にXが行った犯罪である。そうすると,捜査機関がXをA事実により逮捕・勾留した段階では,C事実について同時処理を行うことが観念的にも不可能であったと認められる。
 したがって,C事実についてXを逮捕・勾留しても,前記の身柄拘束期間制限の趣旨に反するものではない。
 4 よって,捜査機関は,XをC事実により逮捕・勾留することができる。

以 上


【事例演習刑事訴訟法の他の問題・答案は下記のリンクから】
・ 第1講(任意捜査と強制捜査)
・ 第2講(職務質問・所持品検査)
・ 第3講(任意取調べの限界)
・ 第4講(身柄拘束の諸問題⑴-現行犯逮捕の適法性,違法逮捕後の勾留,違法逮捕と再逮捕の可否)
・ 第5講(身柄拘束の諸問題⑵-重複逮捕・勾留,同時処理による例外)
・ 第6講(身柄拘束の諸問題⑶-別件逮捕・勾留)
・ 第7講(令状による捜索・差押え⑴-捜索すべき場所の特定性,差押え目的物の特定性)
・ 第8講(令状による捜索・差押え⑵-場所に対する令状による身体に対する捜索の可否,「必要な処分」としての原状回復,電磁的記録の内容を確認せずにする差押えの可否)
・ 第9講(逮捕に伴う無令状捜索・差押え⑴-逮捕の現場,差押えの関連性)
・ 第10講(逮捕に伴う無令状捜索・差押え⑵-逮捕現場の第三者に対する捜索の可否,最寄りの場所における被逮捕者の捜索・差押えの可否)
・ 第11講(おとり捜査)
・ 第12講(接見交通)
・ 第13講(一罪の一部起訴)
・ 第14講(訴因の特定)
・ 第15講(訴因変更の要否,縮小認定)
・ 第16講(訴因変更の可否)
・ 第17講(科学的証拠)
・ 第18講(法律上の推定)
・ 第19講(類似事実証拠排除法則)
・ 第20講(自白の証拠能力⑴-約束による自白)
・ 第21講(自白の証拠能力⑵-派生証拠,反復自白)
・ 第22講(補強法則)
・ 第23講(伝聞法則⑴-総論)
・ 第24講(伝聞証拠⑵-領収書の証拠能力,犯行メモの証拠能力)
・ 第25講(伝聞証拠⑶-手続的公正を欠く場合)
・ 第26講(伝聞証拠⑷-再伝聞)
・ 第27講(伝聞法則⑸-弾劾証拠)
・ 第28講(違法収集証拠排除法則⑴-総論)
・ 第29講(違法収集証拠排除法則⑵-外国捜査機関の違法収集証拠)
・ 第30講(違法収集証拠排除法則⑶-違法性の承継,毒樹の果実)
・ 第31講(択一的認定)
・ 第32講(一事不再理効)
・ 第33講(攻防対象論-上訴審における職権調査の限界)
◎その他の答案リンク集はこちら→
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