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2019-03-14(Thu)

【事例演習刑事訴訟法】第3講「任意取調べの限界」

昨晩はあまりよく眠れなかったので,

頭がとてもズキズキしています。

つらいですね。

答案なんか書いている場合ではないんじゃないでしょうか!?!?!?

≪問題≫

【設 問】
 警察官Kは,Xに対する殺人罪の嫌疑が固まったことから,午後9時過ぎにX方居宅に赴き,Xに警察署への任意同行を求めたところ,Xは,これに応じて,Kに同行して警察署に出頭した。Kは,直ちに取調室においてXの取調べを開始したが,取調室にはKのほか1名の警察官が常時在室し,同警察官は,取調室のドアの前にすわり,Xの用便の際は,同警察官がトイレに付き添った。Kは,午前0時を過ぎたころ,Xに対して,「遅くなったので,今夜は,こちらで用意した宿泊施設に泊まったらどうか」と執拗に申し向けたところ,Xは,渋々これに従って,警察の用意した警察共済施設に宿泊したが,Kが同室し,宿泊室のドアの前には,警察官1名を配置し,用便の際も,同警察官が,トイレに付き添った。Xは,翌日も,警察車両により警察署へ出頭し,午前9時から午後11時までの間,前日と同様の態様の下に取調べを受け,夜は,前日と同じ施設に宿泊し,Kの同室および警察官1名の配置は前日と同様であった。3日目,4日目も同様の取調べと宿泊,警察車両による送迎が行われた。Xは,当初の取調べ以降一貫して,犯行を否認していたが,5日目の午後8時過ぎころ犯行を自白したことから,その旨の供述録取書が作成され,Kは,通常逮捕状の発付を得て,Xを逮捕した。このような取り調べは適法か。


任意取調べです。

司法試験でも出題されています。

難しいですね(頭が痛いから適当にしゃべっている)

≪答案≫
1⑴ 警察官KがXに対して同行を求め,これに引き続いて取調べを行ったことは,刑訴法198条1項に基づく任意同行及び任意取調べとしてされたものと考えられる。しかし,Xが長期間にわたって帰宅していないなどの一連の状況をみれば,実質的には「逮捕」(同法199条1項)にあたるとも考えられる。この場合には,Kは,裁判官の発付する逮捕令状を5日目の夜まで得ていないため,令状主義(憲法33条,刑訴法199条1項)に反し違法となるように思われる。そこで,KのXに対する一連の行為が,「強制の処分」(同法197条1項ただし書)にあたるかについて検討する。
 ⑵ まず,「強制の処分」の意義について検討すると,強制処分は刑訴法の厳格な要件・手続が定められていることから,このような厳格な要件・手続によって保護する必要があるほどの重要な権利利益に対する実質的侵害ないし制約を伴う場合にはじめて「強制の処分」にあたる。したがって,「強制の処分」とは,個人の意思に反し,重要な権利利益を制約する処分をいう(※1)
 ⑶ 本件における同行及び取調べは,KがXに対し任意にこれに応じるよう求めたところ,Xがこれに応じたため行われたものであって,Xがこれを拒絶するような意思を表明したとの事実は認められない。また,Kは1人でX宅に赴いて同行を求めており,大勢の警察官により威圧的に同行を求めたとか,Xの身動きがとれないような態様によって連行したものとは認められないから,同行の方法・態様からは,その相手方を制圧するものであったとはいいがたい。
 もっとも,KがXに動向を求めた時刻は午後9時の夜間帯であり,通常は外出をすることなく自宅においてくつろいでいることが想定される時間であるから,それにもかかわらず警察署へ連行されることは,同行を求めた相手方の意思に反するものと考えられる。そして,初日の取調べは,午前0時という,一般人であれば就寝をしているような時刻にまで及んでいるから,それにも関わらず取調べを行うことは個人の意思に反するものである。
 また,Xの取調べ中は,取調室にKのほか1名の警察官が常時在室し取調室のドアの前に座っていたことから,Xが取調室から容易に退室できないような状況であったといえ,Xに対する強い監視状態がつくり出されていたということができる。Xの用便の際にも,同警察官が付添いを行っており,監視が外されることはなく,このような状況の下では,取調べの対象者はその精神状態を緊迫させた状態を継続することとなり,精神的・肉体的にも徐々に疲弊することとなるから,個人の意思に反する態様であったと認められる。
 さらに,KはXについて翌日にも取調べを行うべく警察共済施設に宿泊をさせている。この場合には,住み慣れた自宅ではなく外部の施設に宿泊をするということから,精神的緊張を緩和させることができず,それは警察共済施設という警察官に関係する施設への宿泊となれば尚更である。その上,宿泊中もKが同室し,ドアの前には警察官1名が配置され,用便の際にも警察官が付き添っていることから,取調べ以外の場所においても監視を解かれることはなく,以前として精神的緊張を緩和させることができない状態が続いている。宿泊施設と警察署との間の移動も,警察車両により行われていたことからも,取調べの対象者が一時たりとも精神的圧迫から解放されることがなかったことが想定される。そうすると,このような宿泊を伴い,かつ監視を継続させることは,取調べの対象者の意思に反するものといえる(※2)
 以上からすると,Xが同行及び取調べに対して明確な拒絶の意思を表明していなくとも,本件のような同行及び取調べの一連の行為は,それらの態様からして,取調べを受ける者の意思を制圧するものであるということができる。これによって,取調べを受ける者は,移動の自由を長時間にわたって奪われることとなり,その重要な権利利益に対する制約を受けることとなる。
 したがって,KがXに対して同行を求め,これに引き続き取調べを行った行為は,「強制の処分」にあたるというべきである。
 ⑷ そうすると,Kがこれらの行為を行うにあたっては,逮捕令状の発付を受けなければならないところ,Kはこれを得ないでしているから,令状主義に反するものであって,違法である。
2⑴ (※3)仮に,Kの一連の行為が実質逮捕に至っていなくとも,被疑者に対する取調べは任意捜査の一環として行われるものであり,「その目的を達するため必要な」限度(刑訴法197条1項本文)においてのみ許容されるものであるから,事案の性質,被疑者に対する容疑の程度,被疑者の態度等諸般の事情を勘案して,社会通念上相当と認められる方法ないし態様及び限度において,許容される(※4)
 ⑵ これを本件についてみると,Xにかけられている嫌疑は,殺人事件という死刑が法定刑とされるほどに重大な犯罪であり(刑法199条),その嫌疑も固まっているとされていることから,Xに対する取調べを行い,犯人とXとの同一性を確認する必要性は認められる。また,同種の事件が再び行われることを防止するため,早急に犯人を確保すべく,その一環としてXに対する取調べを行う緊急性も認められる。
 しかし,KのXに対する取調べは深夜にまで及び,一日を通じて長時間にわたって行われ,これが連日にわたって行われていたことからすれば,Xには精神的肉体的に多大な負担があったものと考えられる。また,宿泊時には,Kが同室し,ドアの前にも警察官が配置され,用便にも警察官が付き添い,宿泊施設と警察署との往復には警察車両が使用され,常に監視がされていたことからすると,前記のように精神的圧迫から解放される状況にはなかったものと認められ,Xにとっての精神的な負担は大きかったものと考えられる。このような宿泊を伴う取調べが5日間にわたって行われていたことからすれば,日に日にXの精神的肉体的な疲弊が蓄積しており,これによる負担は看過し難いものになっていたものと考えられる。
 以上からすれば,Xに対して取調べを行うべき必要性が認められるとしても,これに必要な限度を超えてXの精神的肉体的な負担が大きかったものと認められるから,社会通念上相当とされる方法ないし態様であったとは認められない。
 ⑶ よって,KのXに対する一連の取調べは,違法である。

以 上


(※1)「実質逮捕に当たるかの判断は,強制処分該当性判断であり,一般的・類型的に行われる……から,個別の事件での必要性や緊急性の要素は考慮されない。この判断について,最決昭和59・2・29(刑集38巻3号479頁……)以前の裁判例は,客観的事情を評価して,被疑者が任意同行を拒否しようと思えば拒否でき,途中から退去しようと思えば退去できる状況にあったか(刑訴198条1項但書)を判断してきた……。その客観的事情としては,①同行を求めた時刻・場所(夜間や深夜,遠距離の同行は強制的性格を強める),②同行の方法・態様(警察官の人数や態度,監視状況等),③同行後の取調べ時間・監視状況(早朝や深夜,長時間の取調べの有無,さらには取調べの前後・用便や休憩の際の監視状況),④逮捕状が発付されていた,あるいは逮捕可能な嫌疑があったにもかかわらず任意同行が行われた場合,その合理的理由があったか(あえて正式な逮捕を遅らせ事実上の身体拘束を意図していたか),⑤被疑者の同行拒否や退去希望の有無・内容,⑥被疑者の属性(年齢や性別,職業など)があげられる。このうち,③が最も重要であるとの見解もある……。」「[最判昭和59年2月29日]の後の裁判例も,上記の考慮事情が総合的に評価され,強制手段の一内容たる実質逮捕に当たるかの判断をしている。他方で,これらの裁判例は,従来の裁判例では実質逮捕と評価されるような客観的事情が存在しても,被疑者の明確な拒絶意思の欠如(事情⑤)を重視し,実質逮捕に当たらないとする傾向にあるとの評価もある……。」「もっとも,昭和59年決定やこれらの裁判例は,問題となる取調べ中の自白の証拠能力が争われた事例……について,当該取調べが実質逮捕などの強制手段を用いたものかを判断するもので,任意同行等が実質逮捕に当たるかが問題となる局面……での判断方法の変化を示すものとは即断できないとの理解もありうる」井上正仁ほか『刑事訴訟法判例百選〔第10版〕』13頁
(※2)取調べと宿泊との関係について,平成26年司法試験論文式試験刑事系科目第2問の採点実感等に関する意見では,「本事例において,初日の宿泊はその翌日の『①甲の取調べ』のための出頭確保の手段として,また2日目の宿泊はその翌日の『②甲の取調べ』のための出頭確保の手段として,それぞれ用いられている。答案の中には,例えば,『①甲の取調べ』の適法性について,それに引き続く同日夜の宿泊(2日目の宿泊)が及ぼす影響を論じたものも少数ながら見られたが,このような答案は,上述のような宿泊と取調べの関係を適切に把握できていないものといわざるを得ない。」と指摘されています。
(※3)強制処分段階で違法にしているので,本来はこれ以降を論じる必要はありませんが,自分のお勉強のために任意取調べについても書こうと思います。
(※4)「任意捜査においては、強制手段、すなわち、『個人の意思を抑圧し、身体、住居、財産等に制約を加えて強制的に捜査目的を実現する行為など、特別の根拠規定がなければ許容することが相当でない手段』……を用いることが許されないということはいうまでもないが、任意捜査の一環としての被疑者に対する取調べは、右のような強制手段によることができないというだけでなく、さらに、事案の性質、被疑者に対する容疑の程度、被疑者の態度等諸般の事情を勘案して、社会通念上相当と認められる方法ないし態様及び限度において、許容されるものと解すべきである。」最判昭和59年2月29日刑集38巻3号479頁


【事例演習刑事訴訟法の他の問題・答案は下記のリンクから】
・ 第1講(任意捜査と強制捜査)
・ 第2講(職務質問・所持品検査)
・ 第3講(任意取調べの限界)
・ 第4講(身柄拘束の諸問題⑴-現行犯逮捕の適法性,違法逮捕後の勾留,違法逮捕と再逮捕の可否)
・ 第5講(身柄拘束の諸問題⑵-重複逮捕・勾留,同時処理による例外)
・ 第6講(身柄拘束の諸問題⑶-別件逮捕・勾留)
・ 第7講(令状による捜索・差押え⑴-捜索すべき場所の特定性,差押え目的物の特定性)
・ 第8講(令状による捜索・差押え⑵-場所に対する令状による身体に対する捜索の可否,「必要な処分」としての原状回復,電磁的記録の内容を確認せずにする差押えの可否)
・ 第9講(逮捕に伴う無令状捜索・差押え⑴-逮捕の現場,差押えの関連性)
・ 第10講(逮捕に伴う無令状捜索・差押え⑵-逮捕現場の第三者に対する捜索の可否,最寄りの場所における被逮捕者の捜索・差押えの可否)
・ 第11講(おとり捜査)
・ 第12講(接見交通)
・ 第13講(一罪の一部起訴)
・ 第14講(訴因の特定)
・ 第15講(訴因変更の要否,縮小認定)
・ 第16講(訴因変更の可否)
・ 第17講(科学的証拠)
・ 第18講(法律上の推定)
・ 第19講(類似事実証拠排除法則)
・ 第20講(自白の証拠能力⑴-約束による自白)
・ 第21講(自白の証拠能力⑵-派生証拠,反復自白)
・ 第22講(補強法則)
・ 第23講(伝聞法則⑴-総論)
・ 第24講(伝聞証拠⑵-領収書の証拠能力,犯行メモの証拠能力)
・ 第25講(伝聞証拠⑶-手続的公正を欠く場合)
・ 第26講(伝聞証拠⑷-再伝聞)
・ 第27講(伝聞法則⑸-弾劾証拠)
・ 第28講(違法収集証拠排除法則⑴-総論)
・ 第29講(違法収集証拠排除法則⑵-外国捜査機関の違法収集証拠)
・ 第30講(違法収集証拠排除法則⑶-違法性の承継,毒樹の果実)
・ 第31講(択一的認定)
・ 第32講(一事不再理効)
・ 第33講(攻防対象論-上訴審における職権調査の限界)
◎その他の答案リンク集はこちら→
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