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2019-03-14(Thu)

【事例演習刑事訴訟法】第2講「職務質問・所持品検査」

古江は全部で33問あり,

既に3問答案を書いてあって,

今回の問題を含めて残り30問あります。

今月中にはどうやってでも終わらせたいです。

そうすると,一日最低でも2問,できれば4問くらいはやっていきたいところです。

ということで,こんなところで色々喋っている暇はありません。

≪問題≫

【設 問】
 警察官K・Lは,午後10時ころ,薬物密売の外国人が出没する通りを制服姿で警ら中,対向して歩行してきたXとYが,警察官の姿を見て,急に向きを変えて,もと来た道を急ぎ足で戻り始めたので,KおよびLは,この両名に職務質問をするために,同人らの後方から「そこの二人,ちょっと待って」と声を掛けた。すると,Xがいきなり走って逃げだしたので,KがXを追いかけて,Xの背後からXの右手首を右手で摑んだ。Xはいったん止まったが,再び逃げ出すそぶりをみせたため,Kは,Xの右手首に手錠を掛けたところ,観念した様子であったので,直ちにその手錠をはずしたが,その直後,XはKの顔面を手拳で数回殴打した。そこで,KはXを公務執行妨害罪の現行犯人として逮捕し,その身体に対し逮捕に伴う創作を実施したが,何も発見されなかった。他方,Lは,Yが右脇下あたりにポーチを大切そうに抱えて携帯していたので,Yに当該ポーチの提示を求めたが,Yがこれを拒否したため,Yが持ったままのポーチのチャックを開けて中に手を差し入れたところ,ビニール袋と思われるものに触ったので,これを取り出してみると,白色結晶約1グラムが入ったビニール袋であった。そこで,Lが試薬検査を実施したところ,覚せい剤の反応を示したので,Lは,Yを覚せい剤取締法違反罪(覚せい剤所持)の現行犯人として逮捕した。KおよびLの各職務執行は適法か。


あーあ,これ今年の予備の問題ですよ。

私がEをくらった刑訴の問題ですよ!!!!!!!

なんでEなんかよこしやがるんだ!!!!!!!

腹立ってきた!!!!!!!!

≪答案≫
第1 Kの職務執行の適法性
 1 まず警察官KがX及びYに対し職務質問(警職法2条1項)を開始しているが,X及びYは,警察官の姿を見て急に向きを変えて,もと来た道を急ぎ足で戻り始めている上,K及びLが声を掛けると走って逃げ出すなどの行為に出ているから,警察官との接触を避けたい何らかの事情があるものと合理的に認められるため,「異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し,若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由」があるということができる。したがって,職務質問の要件を満たしているため,適法である。
 2⑴ 次にKはXの右手首を摑む行為をしているが,職務質問における停止行為のために有形力を行使することは適法か。
  ⑵ 警職法は,職務質問を行うために相手方を「停止させ」ることができるとする(2条1項)が,一方で,「身柄を拘束」する等の強制処分を禁止している(同条3項)(※1)。そのため,職務質問を行うための相手方の停止行為は,任意手段に限定されなければならない。したがって,職務質問のための停止行為は,身柄拘束に至らない程度の行為で,強制にわたらない限り許容される(※2)(※3)
 これを本件についてみると,KはXの右手首を右手で摑んだにすぎず,Xの移動を困難にさせたとまでは評価できないため,身柄拘束にはあたらない。また,KはXが逃げ出したことから,これを制止させるべく,とっさに右手首を摑むという軽微な有形力を行使したにすぎないから,強制にわたる行為であるともいえない。
 したがって,KがXの右手首を右手で摑んだ行為は,強制処分に至ったものではない。
  ⑶ もっとも,停止行為は,相手方の移動の自由を制約するものであるから,その程度は目的達成のために必要最小限度に留めなければならない(同法1条2項)(※2)ところ,身柄拘束に至らない行為であってもこれを受ける者の権利を害するものであるから,状況のいかんを問わず常にこのような行為が許容されるものというべきでなく,停止行為の必要性,緊急性,これによって害される個人の法益と保護される公共の利益との権衡などを考慮し,具体的状況のもとで相当と認められる限度においてのみ許容されるものというべきである(※4)(※5)
 これを本件についてみると,Kが警らを行っていたのは,薬物密売の外国人が出没する通りであり,時間帯も午後10時で昼間のように通りを往来する人物の姿態が明らかではないことから,不審人物を発見した場合には,直ちに職務質問を行い,犯罪の予防に努めなければならない必要性が高かったといえる。そのような状況の下で,Xは,警察官の姿を見るなり,来た道を引き返すようにして逃げ出したのであるから,Kとの接触を避けたものとみるべき合理的理由があり,Xに十分に不審な事由があったとみられる。そうすると,Xに対して,職務質問を行う必要性があるところ,Xは走って逃げている状態であるから,職務質問を行うためにこれを制止する必要性が高い。また,薬物の売買に関わっている嫌疑が捨てきれない中では,これを隠滅されないようにするために,現時点において職務質問を行う必要があるから,Xを直ちに制止する緊急性が認められる。薬物が蔓延すれば,国民の健康に対する危険が及ぶ可能性もあり,このような公共の利益を保護しなければならない。これに対して,Xは右手首を摑まれたのみであって,行動を制止する強度もそこまで強くなく,その時間も比較的短時間であると考えられるから,Xの移動の自由に対する制約は軽微であったということができる。
 以上の具体的状況のもとでは,Xの保護されるべき法益に比して,Xを制止する必要性・緊急性が上回っているということができるから,国民の健康という公共の利益のためにXの右手首を摑んでも,相当性を逸脱しないというべきである。
  ⑷ よって,KがXの右手首を摑んだ行為は,適法である。
 3 次にKがXの右手首に手錠をかけた行為は,適法か。
 手錠は容易には取り外すことができず,Xにおいてこれを振りほどくことが容易でないことからすると,Xの右手首に手錠がかけられた段階でXの移動の自由は著しく制約されているというべきであり,身柄拘束に匹敵する。そうすると,KがXの右手首に手錠をかけた行為は,身柄拘束に至るような行為であったといえ,警職法2条3項に反する。
 よって,KがXの右手首に手錠をかけた行為は違法である。
 4 KはXを現行犯逮捕(刑訴法213条)した上で,その身体に対し逮捕に伴う捜索(同法220条1項2号)を行っているが,XがKの顔面を殴った行為には公務執行妨害罪(刑法95条1項)が成立するため,「現に罪を行い」(刑訴法212条1項)にあたり,現行犯逮捕の要件を満たし,これに引き続く捜索もその要件を満たすのであるから,適法である。
第2 Lの職務執行の適法性
 1 Lは,Yの所持していたポーチ(以下「本件ポーチ」という。)のチャックを開けて,その中に手を入れて,中身を取り出すなど,所持品検査を行っている。このような所持品検査が適法か。
 2 職務質問に伴う所持品検査は,所持人の内容物に対するプライバシーを侵害するおそれがある行為である以上,これを行うことのできる根拠法規が必要となるところ,警職法上所持品検査を許容する明文は存在しない(※6)。しかし,所持品検査は,口頭による質問と密接に関連し,かつ,職務質問の効果を挙げるうえで必要性,有効性の認められる行為である。したがって,所持品検査は,職務質問に付随する行為としてみることができるから,警職法2条1項を根拠法規として,これを行うことができると考える(※7)
 3 もっとも,職務質問自体は任意手段としてしか認められない以上,所持品検査も任意手段としてしか許容されない。したがって,職務質問に伴う所持品検査も,これと類する強制処分である捜索に至らない程度の行為は,強制にわたらない限り,許容される(※8)
 警察官が対象者の所持物の中身を確認するために,これを一瞥する程度の行為であれば,内容物を全て直接確認することはできない部分があり,その部分についての内容物の有無や品目までは確認することができない。そうすると,この程度の行為であれば,未だ対象者の所持物の中身に対するプライバシーが侵害される程度は軽微であるということができる。
 しかしながら,警察官が対象者の所持物の中に手を差し入れてこれを取り出す行為は,所持物の中身全般に対して確認を行う行為であって,内容物に対するプライバシーを完全に侵害する行為である。そうすると,このような行為は,単に一瞥する行為とは異なり,公権力による私的領域への侵入を伴う行為であるというべきである。そして,憲法35条が,私的領域へ侵入されることのない権利を保障していることからすると,所持物に手を差し入れて内容物を取り出す行為は,合理的に推認される相手方の意思に反して,憲法が保障する重要な法的利益を侵害するものであるから,捜索に至っているというべきである。
 そうすると,本件でLがYのポーチに手を差し入れて,中身を取り出す行為も,もはや捜索というべき行為であるから,警職法上認められていない行為である。
 4 よって,LがYのポーチに手を差し入れて中身を取り出した行為は,違法である。

以 上


(※1)警職法2条3項の解釈について,解説42頁は「2条3項の『身柄拘束』,『意に反する連行』,『答弁の強要』は例示にすぎ」ず,同項は「強制処分(警職法上の強制処分)を禁止している」としています。
(※2)「国民の身体・行動の自由をある程度侵害・制約し得る『停止させ』る行為,『同行することを求める』行為は,身体拘束や意に反する連行という『強制』手段に至ってはならない(警職法2条3項)。したがって,『停止』,『同行』の方法は『任意(非強制)手段』に限定される。そして,当該手段は,対象者の法益をある程度侵害・制約するものであるから,目的達成のため必要最小限度に留めなければならない(同法1条2項。厳格な『比例原則』)」酒巻匡『刑事訴訟法』40頁
(※3)「強制にわたるか否かは,警察官の言動や対象者の対応,甲市された有形力の内容等を勘案して決せられる」井上正仁ほか『刑事訴訟法判例百選〔第10版〕』11頁
(※4)「停止させる手段の限界について,具体的な基準を示した判例はない。しかし,職務質問に伴う所持品検査の許否につき説示した判例は,その論拠に拠れば『任意手段である職務質問の附随行為』である所持品検査について,原則対象者の承諾,承諾なき場合,すなわち対象者の意思に反してその法益を侵害する場合については,『限定的な場合において……[そ]の必要性,緊急性,これによって害される個人の法益と保護されるべき公共の利益との権衡などを考慮し,具体的状況のもとで相当と認められる限度においてのみ,許容されるものと解すべきである』と説示しているので(後掲最判昭和53・6・20,前掲最判昭和53・9・7),『質問』実施の前提として不可欠な『停止』手段についても,この説示と同様の『比例原則(権衡原則)』が適用されることを前提としているはずである」前掲酒巻42頁
(※5)「所持品検査には種々の態様のものがあるので、その許容限度を一般的に定めることは困難であるが、所持品について捜索及び押収を受けることのない権利は憲法三五条の保障するところであり、捜索に至らない程度の行為であつてもこれを受ける者の権利を害するものであるから、状況のいかんを問わず常にかかる行為が許容されるものと解すべきでないことはもちろんであつて、かかる行為は、限定的な場合において、所持品検査の必要性、緊急性、これによつて害される個人の法益と保護されるべき公共の利益との権衡などを考慮し、具体的状況のもとで相当と認められる限度においてのみ、許容されるものと解すべきである。」最判昭和53年6月20日刑集32巻4号670頁
(※6)「警職法2条は,職務質問の要件・手続を明示するものの,対象者の携行品または着衣等の在中品についてその内容を点検することを許容する明文の規定を置いていない。もちろん,適法な職務質問の過程で,対象者が所持品を開示し警察官による点検を承諾した場合は,対象者による法益の放棄があるから,当該所持品検査の適法性を肯定してよい。一方,承諾なしの所持品検査は,直ちにその適法性を肯定することはできない。対象者の非侵害法益が比較的軽微であるため任意処分と評価できる場合はあり得るとしても,非侵害法益が存在する以上,法令上の授権規定が要求されるからである。不審事由の解明または対象者による自傷他害の防止等,正当な理由に基づく所持品検査は想定できるが,正当な理由による必要な処分だから法的根拠がなくても法益侵害が許される,というものではない。」前掲百選11頁
(※7)「警職法は、その二条一項において同項所定の者を停止させて質問することができると規定するのみで、所持品の検査については明文の規定を設けていないが、所持品の検査は、口頭による質問と密接に関連し、かつ、職務質問の効果をあげるうえで必要性、有効性の認められる行為であるから、同条項による職務質問に附随してこれを行うことができる場合があると解するのが、相当である。」前掲最判昭和53年6月20日
(※8)「所持品検査は、任意手段である職務質問の附随行為として許容されるのであるから、所持人の承諾を得て、その限度においてこれを行うのが原則であることはいうまでもない。しかしながら、職務質問ないし所持品検査は、犯罪の予防、鎮圧等を目的とする行政警察上の作用であつて、流動する各般の警察事象に対応して迅速適正にこれを処理すべき行政警察の責務にかんがみるときは、所持人の承諾のない限り所持品検査は一切許容されないと解するのは相当でなく、捜索に至らない程度の行為は、強制にわたらない限り、所持品検査においても許容される場合があると解すべきである。」前掲最判昭和53年6月20日
(※9)「これを本件についてみると、所論のB巡査長の行為は、猟銃及び登山用ナイフを使用しての銀行強盗という重大な犯罪が発生し犯人の検挙が緊急の警察責務とされていた状況の下において、深夜に検問の現場を通りかかつたA及び被告人の両名が、右犯人としての濃厚な容疑が存在し、かつ、兇器を所持している疑いもあつたのに、警察官の職務質問に対し黙秘したうえ再三にわたる所持品の開披要求を拒否するなどの不審な挙動をとり続けたため、右両名の容疑を確める緊急の必要上されたものであつて、所持品検査の緊急性、必要性が強かつた反面、所持品検査の態様は携行中の所持品であるバツグの施錠されていないチヤツクを開披し内部を一べつしたにすぎないものであるから、これによる法益の侵害はさほど大きいものではなく、上述の経過に照らせば相当と認めうる行為であるから、これを警職法二条一項の職務質問に附随する行為として許容されるとした原判決の判断は正当である。」前掲最判昭和53年6月20日
(※10)「本判決は,事例判断としても重要である。まず,事案の重大性を特に考慮する必要がある。本件対象者らは,複数犯の持凶器銀行強盗という凶悪犯罪を敢行した者かもしれず,当初の情報提供からその嫌疑があり,夜間に捕捉されたのに黙秘に終始し嫌疑が深まる一方だったとされる。K2によるバッグ開披は,約1時間半の質問後にチャックを開けて内部を一瞥したにとどまり,説得が不奏功なために外部観察と同程度の有形力を行使したものと評価できる。すなわち,携行品や包装物の開披一般に妥当する議論ではない。法益の権衡という観点から,本件対象者らの被侵害利益は職務質問における問答のみの場合を上回らかったのである。なお,本件対象者らには持凶器の疑いもあるとして,危険防止の観点から承諾なしのバッグ等の点検を許容する余地もあったといえよう。」「アタッシュケースをこじ開けた行為は,これと同等には判断できない。施錠済みの封緘物には開披を拒む意思が客観的に表示されており,その状態は一般に重要法益として法的保護に値する。また現にYは開披の承諾をしていない。したがって,本件開披行為強制処分というほかない。」前掲百選11頁


【事例演習刑事訴訟法の他の問題・答案は下記のリンクから】
・ 第1講(任意捜査と強制捜査)
・ 第2講(職務質問・所持品検査)
・ 第3講(任意取調べの限界)
・ 第4講(身柄拘束の諸問題⑴-現行犯逮捕の適法性,違法逮捕後の勾留,違法逮捕と再逮捕の可否)
・ 第5講(身柄拘束の諸問題⑵-重複逮捕・勾留,同時処理による例外)
・ 第6講(身柄拘束の諸問題⑶-別件逮捕・勾留)
・ 第7講(令状による捜索・差押え⑴-捜索すべき場所の特定性,差押え目的物の特定性)
・ 第8講(令状による捜索・差押え⑵-場所に対する令状による身体に対する捜索の可否,「必要な処分」としての原状回復,電磁的記録の内容を確認せずにする差押えの可否)
・ 第9講(逮捕に伴う無令状捜索・差押え⑴-逮捕の現場,差押えの関連性)
・ 第10講(逮捕に伴う無令状捜索・差押え⑵-逮捕現場の第三者に対する捜索の可否,最寄りの場所における被逮捕者の捜索・差押えの可否)
・ 第11講(おとり捜査)
・ 第12講(接見交通)
・ 第13講(一罪の一部起訴)
・ 第14講(訴因の特定)
・ 第15講(訴因変更の要否,縮小認定)
・ 第16講(訴因変更の可否)
・ 第17講(科学的証拠)
・ 第18講(法律上の推定)
・ 第19講(類似事実証拠排除法則)
・ 第20講(自白の証拠能力⑴-約束による自白)
・ 第21講(自白の証拠能力⑵-派生証拠,反復自白)
・ 第22講(補強法則)
・ 第23講(伝聞法則⑴-総論)
・ 第24講(伝聞証拠⑵-領収書の証拠能力,犯行メモの証拠能力)
・ 第25講(伝聞証拠⑶-手続的公正を欠く場合)
・ 第26講(伝聞証拠⑷-再伝聞)
・ 第27講(伝聞法則⑸-弾劾証拠)
・ 第28講(違法収集証拠排除法則⑴-総論)
・ 第29講(違法収集証拠排除法則⑵-外国捜査機関の違法収集証拠)
・ 第30講(違法収集証拠排除法則⑶-違法性の承継,毒樹の果実)
・ 第31講(択一的認定)
・ 第32講(一事不再理効)
・ 第33講(攻防対象論-上訴審における職権調査の限界)
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