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2019-03-13(Wed)

【事例演習刑事訴訟法】第1講「任意捜査と強制捜査」

さて……

今までさんざん後回しにしてきた刑訴の時間がやってまいりました。

まだ何もしていないですけど,

刑訴をやらなきゃいけないと考えただけで,

禿げそうです。

なんで……

なんでこんなつまらない科目の勉強をしなきゃいけないのか……

≪問題≫

【設 問】
 ⑴ 深夜,V方に忍び込み,Vを殺害したうえ,現金500万円を奪った強盗殺人事件が発生したが,110番通報をした隣家の住人Wは,司法警察員に対して,「かねて顔見知りの被害者Vの『助けて』という叫び声を聞いて,外に出てみたところ,V方から飛び出してきた犯人らしき男と鉢合わせになった。お互いにびっくりしたが,その男は,すぐさま駅方向に逃げて行ってしまった。その男の顔はよく覚えている」旨供述した。警察では,捜査を継続したところ,Xの刑務所仲間のYから,「Xから,事件の数日前に,一緒に忍込み強盗をやろう。ねらっている家は老人の一人暮らしで大金を溜め込んでいるようだ。分け前は折半だ,と強盗を誘われたが,もう刑務所生活はこりごりだったので,断った」との供述を得た。さらに捜査したところ,確かにYはXと刑務所において同房であり,しかもXの前科の犯罪は,深夜,一人暮らしの老人を狙った忍込み強盗致傷事件であることが判明した。そこで,司法警察員Kは,Xの容ぼうを隣家のWに確認させる目的で,裁判所からの令状の発付を受けることなく,夜間,Xの居住するアパート前の路上から,望遠レンズおよび赤外線フィルムを用いて,自室の居間でくつろいでいたXの容ぼうを写真撮影した。このような捜査方法は適法か。
 ⑵ 昼間,路上を歩行中のXをビデオで隠し撮りした場合はどうか。


強制処分,任意処分なんてもうさんざんやってきたわけですけど,

それでもまあ答案に書けるかどうかは怪しいところです。

GPSの判決が出てからも少し熱くなってきてますしね。

今のうちにしっかり固めておきたいと思います。

せっかくなので,GPS判決に寄せた書き方を実践してみたいですね。

≪答案≫
第1 設問⑴
 1 司法警察員KがXの容ぼうを写真撮影した捜査方法(以下「本件写真撮影」という。)は適法か。写真撮影は,対象者の外見上の容ぼうを司法警察員が五官の作用によって認識する活動であるから,「検証」としての性質を有する(※1)。そこで,本件写真撮影が「強制の処分」(刑訴法197条1項ただし書(※2))にあたる場合には,同法218条1項前段により検証許可状の発付を受ける必要があるところ,Kは裁判官からの令状の発付を受けていないから,令状主義に反して違法とならないか。
 2⑴ まず,「強制の処分」の意義について検討すると,強制処分は刑訴法の厳格な要件・手続が定められていることから,このような厳格な要件・手続によって保護する必要があるほどの重要な権利利益に対する実質的侵害ないし制約を伴う場合にはじめて「強制の処分」にあたる。したがって,「強制の処分」とは,個人の意思に反し,重要な権利利益を制約する処分をいう(※3)
  ⑵ 写真撮影は,その対象者の承諾を得ずに行えば,みだりにその容ぼう等を撮影されない自由に対する制約を行うものであるが,望遠レンズおよび赤外線フィルムを用いた写真撮影は,通常肉眼では把握できないような場所にいる個人の姿態を撮影することを可能にし,個人のプライバシーが強く保護されるべき場所や空間にいる個人の姿態を撮影することを可能にするものである。このような捜査手法は,個人のプライバシーを侵害し得るものであり,また望遠レンズや赤外線フィルムによって本来であれば確認できない個人の姿態を撮影する点において,個人の姿態を公道上で肉眼で確認したりカメラ撮影したりするような手法と異なり,公権力による私的領域への侵入を伴うものというべきである(※4)
 ここで,憲法35条の保障対象には,「住居,書類及び所持品」に限らず,これらに準ずる私的領域に「侵入」されることのない権利が含まれる。そうすると,前記の通り,個人のプライバシーの侵害を可能とする態様で秘かに姿態を記録されることによって,合理的に推認される個人の意思に反してその私的領域に侵入する捜査手法である写真撮影は,個人の意思を反して憲法の保障する重要な法的利益を侵害するものである(※5)(※6)
  ⑶ したがって,本件写真撮影は,「強制の処分」に該当する。
 3 そうすると,本件写真撮影は,検証許可状の発付を受けなければならないところ,Kはこれを受けていないから,「検証」として許されるための要件を満たしていない。
 よって,本件写真撮影は,違法である。
第2 設問⑵
 1⑴ 司法警察員KがXの容ぼうをビデオ撮影した捜査方法(以下「本件ビデオ撮影」という。)は適法か。ビデオ撮影も,写真撮影と同様に「検証」としての性質を有する。そこで,本件ビデオ撮影が「強制の処分」にあたる場合には,同法218条1項前段により検証許可状の発付を受ける必要があるところ,Kは裁判官からの令状の発付を受けていないから,令状主義に反して違法とならないか。
  ⑵ ビデオ撮影においても,その対象者の承諾を得ずに行えば,みだりに容ぼう等を撮影されない自由に対する制約を行うものである。しかし,個人の容ぼう等は,家屋内であろうとなかろうと,公の場に出れば不特定多数の者に観察されるものであるから,特に保護されるべき自由であるということはできず,侵害される権利の重要性は高いとはいえない。そして,設問⑴とは異なり,本件ビデオ撮影にあたっては,望遠レンズや赤外線フィルム等を用いておらず,個人のプライバシーが強く保護されるべき場所や空間にいる個人の姿態の撮影を可能とするものではないから,未だ公権力による私的領域への侵入とまではいえず,憲法上の重要な権利を侵害するものではない。
 したがって,本件ビデオ撮影は,「強制の処分」にはあたらない。
  ⑶ そうすると,Kが本件ビデオ撮影を行うについて,裁判官の令状の発付を受けていないことは,本件ビデオ撮影の違法事由とはならない。
 2⑴ もっとも,任意処分であっても,何らかの法益を侵害し又は侵害するおそれがあるのであるから,状況のいかんを問わず常に許容されるものとするのは相当ではなく,必要性,緊急性なども考慮したうえ,具体的状況のもとで相当と認められる限度において許容される(※7)(※8)
  ⑵ これを本件についてみると,Xについて嫌疑がかけられている犯罪は,強盗殺人事件であって,死刑ともなりうる重大な犯罪である(刑法240条後段)。したがって,事件の真相解明のために,Xについて捜査を行う必要性が高まっている。
 本件の強盗殺人事件については,近隣の住民Wの目撃情報があり,「その男の顔はよく覚えている」とはいうものの,Wと犯人とが鉢合わせになったのは一瞬であると考えられ,Wがどの程度犯人の顔を覚えているのかは定かではなく,供述としての信用性が高くはない。そうすると,Xの容ぼうをWに確認させる必要性は低いようにも思われる。しかし,本件が強盗殺人事件であるという事件の性質上,被害者の供述を得ることができず,直接の目撃情報を有するのはWのみということになる。そうであるならば,犯人とされる人物がXか否かをWに確かめるべく,本件ビデオ撮影によって,Xの姿態を記録する必要性が認められる。
 さらに,Yからは,Xから犯行を持ち掛けられたことが明らかにされており,その内容は,「老人の一人暮らしの家」で「強盗」を行うというものであり,本件の強盗殺人事件と犯行態様や被害状況が酷似している。さらに,Xは「分け前は折半だ」と発言したとされ,その内容も具体性に富むものである上,Xが強盗致傷事件の前科を有する者であることからその意気込みが中途半端なものではなかったとみられるから,Xは本件の強盗殺人事件の計画を持ち掛けていたものと考えられる。したがって,Xが本件の強盗殺人事件の犯人であることの嫌疑が高いということができるから,Xの容ぼうをWに確認させるために,本件ビデオ撮影を行う必要性は高まっているということができる。
 また,Wが犯人を一瞬しか見ていないことからすると,犯人がXであるか否かを判断するにあたっては,静止画をもっては判断し得ない可能性があり,動画によってその動きの特徴なども併せて記録する必要がある。また,Xに撮影していることを気づかれてしまえば,その目的を達成することができないことから,隠し撮りをしなければならないところ,静止画を隠し撮りによって撮影するとなれば,正確にXを被写体として捉えることが困難であるから,連続的にその被写体を記録し続けることができる動画による撮影手段を用いることが,捜査の実効性を挙げるうえで不可欠である。したがって,本件ビデオ撮影を行う必要性が高いということができる。
 そして,Xには同種の前科があることから,再び同様の強盗事件を起こす可能性が否定できず,早急にXの身柄を拘束する緊急性が高い。
 一方で,Xは,写真撮影よりも鮮明にかつ長時間にわたって連続的に記録される本件ビデオ撮影により,そのプライバシーに対する一定程度の制約はあるものの,公道上においては,不特定多数の者から観察されることが前提となるから,その要保護性は低下しているのであって,被侵害利益の重要性は高いとはいえない。
 以上の具体的状況に照らすと,被侵害利益の要保護性に比して本件ビデオ撮影を行うべき必要性・緊急性が上回るのであるから,捜査手法として相当であるということができる。
  ⑶ したがって,本件ビデオ撮影は,任意捜査としても適法である。
 3 よって,本件ビデオ撮影は,捜査手法として適法である。

以 上


(※1)検証とは,特定の場所や物や人の身体の性質・状態等を五官の作用で認識する活動をいう。最高裁判所は,検証を『五官の作用によって対象の存否,性質,状態,内容等を認識,保全する』活動と定義している(電話傍受に関する最決平成11・12・16刑集53巻9号1327頁)。」酒巻匡『刑事訴訟法』132頁
(※2)ただし書を「ただし書」と書くか「但書」と書くかという,もうそんな細かいこと気にすんなよという問題があります。一説によれば,条文が「ただし」と書いてあれば「ただし書」,「但し」と書いてあれば「但書」と記すべきであると言われていますが,最高裁の判決文(例えばGPS捜査の大法廷判決である最判平成29年3月15日刑集71巻3号13頁)を読むと,最近では,条文上の文言が「ただし」であっても「但し」であっても,「ただし書」と記載していますので,判例に従って「ただし書」と書くことにします。
(※3)「強制の処分」の定義について,最決昭和51年3月16日刑集30巻2号187頁が示した「強制手段とは、有形力の行使を伴う手段を意味するものではなく、個人の意思を制圧し、身体、住居、財産等に制約を加えて強制的に捜査目的を実現する行為など、特別の根拠規定がなければ許容することが相当でない手段を意味する」をそのまま使えるのか問題もあり,事例演習の解説でもさんざん議論されているところですが,別の解説として,前掲最判平成29年3月15日の調査官解説は,「昭和51年判例は,強制処分と任意処分とを『有形力の行使の有無』で分ける考え方を否定し,任意処分においても有形力の行使を伴うことが許容される場合があるとの判断を示したものであり,前記説示の中には,事案に則して用いられたとみられる表現や用語が含まれているように思われる。本判決が『強制の処分』の定義について昭和51年判例をなぞるような説示を行わず,同判例を参照判例として引用するにとどめているのは,この点を踏まえたことによるものと思われる」(ジュリ1507号109頁)として,判例も前掲最決昭和51年3月16日の示した定義を「強制の処分」一般の定義としては用いていないものと考えられています。
(※4)「GPS捜査は,対象車両の時々刻々の位置情報を検索し,把握すべく行われるものであるが,その性質上,公道上のもののみならず,個人のプライバシーが強く保護されるべき場所や空間に関わるものも含めて,対象車両及びその使用者の所在と移動状況を逐一把握することを可能にする。このような捜査手法は,個人の行動を継続的,網羅的に把握することを必然的に伴うから,個人のプライバシーを侵害し得るものであり,また,そのような侵害を可能とする機器を個人の所持品に秘かに装着することによって行う点において,公道上の所在を肉眼で把握したりカメラで撮影したりするような手法とは異なり,公権力による私的領域への侵入を伴うものというべきである。」前掲最判平成29年3月15日
(※5)「憲法35条は,『住居,書類及び所持品について,侵入,捜索及び押収を受けることのない権利』を規定しているところ,この規定の保障対象には,『住居,書類及び所持品』に限らずこれらに準ずる私的領域に『侵入』されることのない権利が含まれるものと解するのが相当である。そうすると,前記のとおり,個人のプライバシーの侵害を可能とする機器をその所持品に秘かに装着することによって,合理的に推認される個人の意思に反してその私的領域に侵入する捜査手法であるGPS捜査は,個人の意思を制圧して憲法の保障する重要な法的利益を侵害するものとして,刑訴法上,特別の根拠規定がなければ許容されない強制の処分に当たる(最高裁昭和50年(あ)第146号同51年3月16日第三小法廷決定・刑集30巻2号187頁参照)とともに,一般的には,現行犯人逮捕等の令状を要しないものとされている処分と同視すべき事情があると認めるのも困難であるから,令状がなければ行うことのできない処分と解すべきである。」
(※6)「1点目は,本判決[前掲最判平成29年3月15日]が,本件において実施された本件GPS捜査に係る個別具体的事情,例えば,捜査の必要性・緊急性等を基礎付ける事情や本件GPS捜査により侵害された利益の内容・程度等に言及していないことである。強制処分性の問題は,特定の捜査『手法』が,特別の根拠規定がなければ許容することができない『強制の処分』に当たるかどうかという問題であるから,類型的に判断されるべきであると解されている(香城敏麿『判解』最判解刑事篇昭和51年度73頁は,「かりに捜査の必要性,緊急性など具体的状況が付け加わっても,特別の根拠規定がない限り,その手段を許容することが相当でないような類型的事情」が,「『強制の処分』の該当性の判断において基礎とすべき事情」であるとする)。」前掲ジュリ1507号109頁
(※7)「強制手段にあたらない有形力の行使であっても,何らかの法益を侵害し又は侵害するおそれがあるのであるから,状況のいかんを問わず常に許容されるものと解するのは相当でなく,必要性,緊急性なども考慮したうえ,具体的状況のもとで相当と認められる限度において許容されるものと解すべきである」前掲最決昭和51年3月16日
(※8)「本件[前掲最決昭和51年3月16日]では,処分の必要性に関わる事情として,『酒酔い運転の罪の疑いが濃厚』という犯罪の性質嫌疑の程度,捜査における呼気検査の不可欠性,呼気検査の説得継続が許される状況下で生じた『急……〔な〕退室』に対する処分の緊急性(代替手段の不存在)などが,また,被制約利益(その限定性)に関わる事情として,制止行為の程度が『さほど強いものではな〔かった〕』ことが挙げられている」井上正仁ほか『刑事訴訟法判例百選〔第10版〕』5頁


【事例演習刑事訴訟法の他の問題・答案は下記のリンクから】
・ 第1講(任意捜査と強制捜査)
・ 第2講(職務質問・所持品検査)
・ 第3講(任意取調べの限界)
・ 第4講(身柄拘束の諸問題⑴-現行犯逮捕の適法性,違法逮捕後の勾留,違法逮捕と再逮捕の可否)
・ 第5講(身柄拘束の諸問題⑵-重複逮捕・勾留,同時処理による例外)
・ 第6講(身柄拘束の諸問題⑶-別件逮捕・勾留)
・ 第7講(令状による捜索・差押え⑴-捜索すべき場所の特定性,差押え目的物の特定性)
・ 第8講(令状による捜索・差押え⑵-場所に対する令状による身体に対する捜索の可否,「必要な処分」としての原状回復,電磁的記録の内容を確認せずにする差押えの可否)
・ 第9講(逮捕に伴う無令状捜索・差押え⑴-逮捕の現場,差押えの関連性)
・ 第10講(逮捕に伴う無令状捜索・差押え⑵-逮捕現場の第三者に対する捜索の可否,最寄りの場所における被逮捕者の捜索・差押えの可否)
・ 第11講(おとり捜査)
・ 第12講(接見交通)
・ 第13講(一罪の一部起訴)
・ 第14講(訴因の特定)
・ 第15講(訴因変更の要否,縮小認定)
・ 第16講(訴因変更の可否)
・ 第17講(科学的証拠)
・ 第18講(法律上の推定)
・ 第19講(類似事実証拠排除法則)
・ 第20講(自白の証拠能力⑴-約束による自白)
・ 第21講(自白の証拠能力⑵-派生証拠,反復自白)
・ 第22講(補強法則)
・ 第23講(伝聞法則⑴-総論)
・ 第24講(伝聞証拠⑵-領収書の証拠能力,犯行メモの証拠能力)
・ 第25講(伝聞証拠⑶-手続的公正を欠く場合)
・ 第26講(伝聞証拠⑷-再伝聞)
・ 第27講(伝聞法則⑸-弾劾証拠)
・ 第28講(違法収集証拠排除法則⑴-総論)
・ 第29講(違法収集証拠排除法則⑵-外国捜査機関の違法収集証拠)
・ 第30講(違法収集証拠排除法則⑶-違法性の承継,毒樹の果実)
・ 第31講(択一的認定)
・ 第32講(一事不再理効)
・ 第33講(攻防対象論-上訴審における職権調査の限界)
◎その他の答案リンク集はこちら→
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