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2019-03-12(Tue)

【事例研究行政法】第2部問題14

毎日答案を書いているだけの人生なので,

もうここで書くことも何もないんですよね。

早く試験終わんねえかな。

≪問題≫

 次の文章を読んで,資料を参照しながら,以下の設問に答えなさい。

 2011年3月31日,株式会社A(以下「A社」という)は,廃棄物処理法(以下「法」という)15条1項にいう産業廃棄物処理施設として,汚泥,廃油等の焼却処理施設W1,および最終処分場たる施設W2の設置許可を,甲県の知事から受けた。続いて同年4月22日,A社は,法14条1項・6項に基づき収集・運搬,処分業の許可を得たうえで,汚泥,廃油の搬入,W1による焼却処理,W2への残滓の埋立てを開始した。
 A社の元代表取締役のBは,弁護士であったが,2013年にA社および同業他社の確定申告に関わり法人税法違反により刑事訴追を受け,同年12月20日にはその有罪判決(4年の執行猶予付きの懲役および罰金刑)が確定したことから,弁護士資格を喪失した。Bは,その判決の言渡し直前に取締役を辞任している。ところが,A社の新たな代表取締役に就任したのは,Bの法律事務所で事務員をしていたCである。Cは,Bの指示のもと,その事務所の残務整理にもあたっていた。1年に1回開催されている,A社への近隣住民の苦情や疑問に関する話合いの席には,Cのほかに,肩書上は取締役でない部長となったBが,従前と変わらず常に同席して発言している。さらに,A社の取締役会は,Bの代表取締役在任中と同様,元弁護士事務所の部屋でBも同席して開かれており,同車の意思決定は,なおも実質的にはBによって行われているとみられる。以上のことは,話合いを仲介してきた県の職員も認識している。
 Pら10名(以下「Pら」という)は,W1・W2の敷地の周囲300m以内に居住して農業に従事している者であり,飲用を含む生活用水や農業用水に,近隣の地下水脈や河川につながる井戸や用水路を利用している。Pらが,W1・W2の操業開始から半年後,度宅の井戸および用水路の水質検査を専門の機関に依頼したところ,重金属等の有害物質の検出はなかったため,当初,Pらは施設の法令適合性に疑いをもたなかった,しかし,上記の刑事事件を契機に,Pらは,A社が上記の法人税法違反により重加算税の賦課を受けて業界の信用を損ない,違反の引き金となった経営悪化が一層進んでいると知り,同時にBの遵法意識に疑いを抱いた。そこでPらが,2015年に至り,再度,検査を依頼したところ,施設の放流水からは「一般廃棄物の最終処分場及び産業廃棄物の最終処分場に係る技術上の基準を定める省令」の濃度上限未満ではあるが鉛が検出され(上限の0.5倍),周縁地下水からも濃度上限未満ではあるがやはり検出された(上限の0.2倍。前記省令の別表第1・第2によると,鉛の含有限度は,放流水につき1ℓ中0.1mg以下,周縁地下水につき同0.01mg以下)。他の発生源は考えられず,A社を2015年末に退職した元従業員Dからは,「2013年以降,施設の点検は定期的に行われておらず,焼却炉の排気フィルターの不調や,地下水への残滓成分漏出を防ぐ遮水シートの亀裂が発見されても,社としては費用を惜しみ,それらを修復しないままである。また,収益を増すため,W1の処理能力を超えた量の廃棄物を受け入れ投入することもしばしばある」,との証言が得られた。2016年初頭,甲県職員の立入検査により,Dの証言を裏付ける資料が収集された。
 Pらは,W1・W2の操業に関わり法に基づく適切な権限の行使を甲県知事になさしめることにより,被害の発生を防ぎたい,と希望している。2016年半ば,県側がA社に対して改善指導を続けるにとどめている段階で,Pらの依頼を受けた弁護士Lは,「現時点までの検査では,放流水・地下水において有害物質の濃度は制限を下回り,検出されてはならないPCBなどの特に有害な物質は検出されていないことから,県知事の措置命令(法19条の5第1項により,支障の除去等を産業廃棄物処分業者等に命じる処分。その要件は,法に基づく政令たる産業廃棄物処理基準に適合しない処理の発生,および「生活環境の保全上支障が生じ,又は生ずるおそれがあると認められる」こと)の要件は未だ満たされていない」と考え,法に基づく他の処分の発動を県知事に求めることができないか,検討することとした。

〔設問〕
1.Pらは,上記「他の処分」に関し,甲県を被告とする抗告訴訟としては,どのような訴訟を提起すればよいか。Lの立場に立ち,甲県の主張も想定しながら,訴訟要件の充足について論じなさい。
2.Pらは,上記の訴訟の本案について,どのような主張をなすべきか。Lの立場に立ち,甲県の主張も想定しながら論じなさい。その際,Pらの主張のうち,行訴法10条1項にいう主張制限がかかる部分はないのか,という点についても検討しなさい。

【資料】(略)


難しいです。

義務付け訴訟にも主張制限を及ぼす議論は初耳です。

研究者の方々におかれては,法文に準用するって書いてないんだから,

それでもあえて準用しようだなんて余計なことを思わないでほしいところです。

≪答案≫
第1 設問1
 1 Pらは,主位的に,A社の産業廃棄物処理施設(以下「本件産廃施設」という。)の設置許可(以下「本件設置許可」という。)の取消処分(以下「本件取消処分」という。)の義務付け訴訟(行訴法3条6項1号)を,予備的に,A社に対する本件産廃施設についての改善命令又は使用停止命令(以下「本件改善命令等」という。)の義務付け訴訟を提起することが考えられる。
 2⑴ 「一定の処分」(行訴法3条6項1号)とは,義務付けの対象となる処分の種別と内容につき,根拠法条と具体的事実とを併せ,裁判所が審理・判断が可能な程度に特定されていれば足りる
 本件取消処分は,廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「法」という。)15条の3第1項又は第2項に基づくものであって,裁判所が審理・判断が可能な程度に特定されている。本件改善命令等は,改善命令又は使用停止命令の選択につき都道府県知事が選択をすることができる余地があるものの,法15条の2の7に基づくものであって,Pらの主張する事実と併せて裁判所が審理・判断が可能な程度に特定されているといえる。したがって,いずれも「一定の処分」にあたる。
  ⑵ 「重大な損害を生ずるおそれ」(行訴法37条の2第1項)について検討すると,本件産廃施設の放流水及び周縁地下水からは鉛が検出されており,これらを生活用水又は農業用水とするPらにとって,これらを飲用に供した場合にはPらの生命及び健康を害する危険を有し,類型的に回復の困難な保護の必要性の高い法益に対する侵害が認められる。したがって,本件取消処分又は本件改善命令等がされないことにより「重大な損害を生ずるおそれ」があると認められる。
  ⑶ 法には,Pらが上記損害を避けるための手段が用意されていないから,「他に適当な方法がないとき」にあたる。
  ⑷ア もっとも,Pらは,本件取消処分又は本件改善命令等の名あて人となるべき者ではないため,これらの処分を求めるにつき「法律上の利益を有する者」(行訴法37条の2第3項)にあたるかどうかが問題となる。
   イ 「法律上の利益を有する者」とは,当該処分がされないことにより自己の権利若しくは法律上保護された利益が侵害され,又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうそして,当該処分を定めた行政法規が,不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと考えられる場合には,このような利益もここにいう法律上保護された利益にあたる
   ウ これを本件についてみると,Pらとしては,本件取消処分又は本件改善命令等がされないことにより,自己の生命・健康への危害を受けるおそれがある。そこで,これらの利益が,法律上保護された利益であるといえるかについて検討する。
 本件取消処分は法15条の3に基づいて,本件改善命令等は法15条の2の7に基づいて,それぞれ行われるものである。法15条の2の7各号及び法15条の3第1項・2項は,許可基準を示す法15条の2第1項に掲げる基準に反したことを要件として掲げている。そこで,法15条の2第1項の基準をみると,「周辺地域の生活環境」への配慮がみられる(同項2号)。また,法15条の2の7第4号及び法15条の3第2項は,法15条の2第4項の条件に違反したときを掲げているが,ここにいう条件においても,「生活環境の保全」が図られている。また,法1条は,「生活環境の保全」を目的としており,法全体を通じて生活環境への配慮がされることを要求している。そうすると,法15条の3及び法15条の2の7は,周辺地域の生活環境を一般的法益としてこれを保護しているものと考えられる。
 そして,生命・健康という法益は,他には代えられない高次の利益であるということができ,法はこれを特に保護する趣旨に出たものであると考えられる。産業廃棄物処理施設による生命・健康に対する危害は,当該施設の周辺において特に影響を及ぼすものであるから,当該施設の周辺住民であれば,その生命・健康を特に保護する必要性が高く,法はこれらの者の生命・健康を個別的利益として保護しているものであると考えられる。当該施設の周辺住民であるといえるか否かについては,当該施設の稼働により直接改変を受ける地域に居住する者か否かによる(※1)
 Pらは,本件産廃施設の立地するW1及びW2の敷地の周囲300m以内に居住して農業に従事している者であり,引用を含む生活用水や農業用水に近隣の地下水脈や河川につながる井戸や用水路を使用している。そして,これらの井戸及び用水路の水質検査によれば,鉛の含有が検出されており,本件産廃施設によって直接改変を受けている。そうすると,Pらの生命・健康という法益は,法によって個別的利益として保護されている。
 したがって,Pらの生命・健康は,法律上の利益にあたるから,Pらは「法律上の利益を有する者」である。
 3 以上から,上記義務付け訴訟はいずれもその訴訟要件を満たすから,Pらは,上記義務付け訴訟を適法に提起することができる。
第2 設問2
 1 本件改善命令等及び本件取消処分のうち法15条の3第2項に基づくものについて
  ⑴ 本件改善命令等を定める法15条の2の7第1項及び本件取消処分のうち法15条の3第2項のものは,ともに「できる」という文言を使用しており,その性質上行政庁の専門技術的な判断が必要となるから,甲県知事に効果裁量が認められている。そこで,Pらは,本案として,甲県知事が本件改善命令等及び本件取消処分等を行わないことが,「裁量権の範囲を超え若しくはその濫用となる」ことを主張する(行訴法37条の2第5項)。
  ⑵ まず,本件改善命令等及び本件取消処分の要件充足性について検討すると,本件産廃施設では,収益を増やすためW1の処理能力を超えた量の廃棄物を受け入れ投入しており,また,焼却炉の排気フィルターの不調や地下水への残滓成分漏出を防ぐ遮水シートの亀裂が発見されても修復されていないのであるから,廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(以下「規則」という。)12条の6第2号及び4号に適合しておらず,したがって,法15条の2第1項1号の「技術上の基準」に適合しておらず,法15条の2の7第1号及び法15条の3第2項に該当する。
 また,A社は法人税法違反の事件を起こすほど経営悪化が進んでいるため,規則12条の2の3第2号にいう「経済的基礎」を有しておらず,したがって,法15条の2第3号にいう「申請者の能力」が適合しておらず,法15条の2の7第2号及び法15条の3第2項に該当する。
 したがって,甲県知事は,本件改善命令等及び本件取消処分をすることができる。
  ⑶ それでは,甲県知事が本件改善命令等及び本件取消処分をしないことは,裁量権の逸脱・濫用となるか。
 たしかに,本件産廃施設の周辺での水質調査によれば,有害物質の漏出は未だ基準違反には至っておらず,未だPらの健康被害のおそれは生じていないため,本件改善命令等や本件取消処分をせずに,改善指導にとどめることも違法な権限不行使ではないとも思える。
 しかし,Pらの生命・健康の保護を図るためには,甲県知事の上記権限が適時にかつ適切に行使される必要がある。水質調査における有害物質の含有量が基準値以下であっても,現に有害物質の漏出がある上,立入検査の結果に照らしても,技術上の基準違反が見られるので施設の維持管理改善の必要があることは明白であることからすると,現時点において本件改善命令等又は本件取消処分がされなければ,さらなる有害物質の漏出によりPらに健康被害が発生するおそれがある。そうすると,このような状況を看過して,本件改善命令等又は本件取消処分を行う時期を逸失することは,甲県知事の裁量権の逸脱・濫用である。
 したがって,甲県知事が,本件改善命令等又は本件取消処分を行わないことは違法である。
  ⑷ これに対して,甲県知事は,PらがA社の経理的基礎要件を欠くことを主張することはできないと反論することが想定される。すなわち,行訴法10条1項は同法38条1項によって準用されていないが,Pらが本件設置許可の取消しを求める場合と,本件設置許可の取消し・停止等の義務付けを求める場合とでは,利益状況が同じであるから,上記義務付け訴訟について行訴法10条1項の準用を認めるべきであるという主張である。
 この主張による場合には,処分の相手方以外の者が原告となる場合,一般に,原告適格の根拠とされた法令の規定についての違反以外に違法の主張を認められていないため,Pらは経理的基礎要件に関する違法事由を主張することができないように思われる。
 しかし,A社の経理的基礎の悪化は,それにより前記排気フィルターや遮水シートの修復の懈怠を招いており,施設の部分的欠陥をもたらしている。そうすると,近い将来,Pらの健康被害の発生に至る可能性が十分にあるということができるから,本件ではA社の経理的基礎要件は主張制限にはかからない。
 したがって,この点における甲県知事の反論は失当である。
 2 本件取消処分のうち法15条の3第1項に基づくものについて
  ⑴ 本件取消処分のうち法15条の3第1項に基づくものは,「取り消さなければならない」との文言を使用しており,法が危険性の評価を定型的に行うべきであるとする趣旨であると考えられるから,甲県知事に本件取消処分をすることについての効果裁量は認められない。そこで,Pらは,本案として,甲県知事が本件取消処分を行うべきであることが「その処分の根拠となる法令の規定から明らかである」ことを主張する。
  ⑵ 本件取消処分の要件充足性について検討すると,A社では法人税法違反により刑事訴追を受けたBが同社の取締役会に同席し,同社の意思決定は実質的にBによって行われていると見られているから,Bは法14条5項2号ニにいう「役員」にあたり,法15条の3第1項1号に該当する。
 したがって,甲県知事は本件取消処分をしなければならない。それにもかかわらず,甲県知事が本件取消処分を行わないことは,違法である。
  ⑶ もっとも,甲県知事は,名あて人への権利侵害の程度が高い不利益処分の発動に関わる場合には,裁量の余地のない文言にもかかわらず,比例原則がなお妥当し,本件取消処分も義務的に行われる必要がない旨の反論をすることが想定される。
 しかし,Bの欠格事由該当性は,A社の経営の危うさを示す犯罪に関わり,特別の反証があれば格別,そうでない限りは,施設稼働に高い危険性があることを推認させるものである。そして,形だけのBの辞任以後,同社が漸次高めている危険を考慮すれば,文言通りの処分発動は妨げられないというべきである。
 したがって,この点に係る甲県知事の反論は失当である。
  ⑷ また,甲県知事は,Bの欠格事由は,事業者の一般的適正を確保する公益的要請に応えるものであって,周辺住民の個別的利益の保護に仕える要件ではないから,主張制限にかかると反論することが想定される。
 しかし,具体的な事実関係において安全性低下と密接に結びつく欠格事由違反については,主張制限は及ばないというべきであり,本件では,前記の通りBの欠格事由該当性がA社の安全性と密接に結びつくのであるから,この点について主張制限は及ばない。
 したがって,この点に係る甲県知事の反論は失当である。

以 上


(※1)個別的利益として保護される者の範囲の限定については,資料に基準となりそうなものがなく,問題文中にも何も書いていないので,環境アセスメントにおいて対象となる地域を参考としました。環境アセスメントは,「調査対象となる情報の特性、事業特性及び地域特性を勘案し、対象事業の実施により環境の状態が一定程度以上変化する範囲を含む地域又は環境が直接改変を受ける範囲及びその周辺区域等」についてされることとされているようです(環境影響評価法に基づく基本的事項(環境庁告示第八十七号))。


【事例研究行政法の他の問題・答案は下記のリンクから】
第1部 
問題1問題2問題3問題4問題5問題6問題7問題8
第2部
問題1問題2問題3問題4問題5問題6問題7問題8問題9問題10
問題11問題12問題13問題14問題15問題16問題17
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