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2019-03-03(Sun)

【事例研究行政法】第2部問題8

司法試験まで残りわずかとなってまいりましたが,

先日,某事務所の司法試験壮行会というものに参加させていただきました。

やはり,ここ数日は(比較的)勉強詰めになっていたような気もするので,

息抜きの機会を頂けてとてもよかったです。

特にお料理がとてもおいしかったですね!!!

このような点でも予備試験に受かっておいてよかったなと思うのであります。

ところで今日は第2部問題8です。

≪問題≫

 次の文章を読んで,資料を参照しながら,弁護士Cから指示を受けた弁護士Dの立場に立って,以下の設問に答えなさい。

 A社は,道路運送法に基づく許可を受けて,甲市域交通圏を営業区域としてタクシー事業を営んでいる。
 甲市域交通圏を管轄する乙地方運輸局長Bは,甲市域交通圏における自動認可運賃(以下「本件自動認可運賃」という)を設定・工事していた(自動認可運賃制度については,【資料1】を参照)。その内容は,例えば中型車の初乗運賃(1.6km)について,上限を730円,下限を670円(初乗距離を1.2kmとする場合は,上限620円,下限570円)とするものであった。A社は,2009年の開業以来,本件自動認可運賃を下回る運賃で認可を受けて,タクシー事業を行ってきたところ,2014年1月8日付けで,同月14日から2015年1月13日までの間,運賃の設定(例えば中型車の初乗運賃〔1.2km〕が520円)につき認可を受けた(以下「本件認可」という)。
 国土交通大臣は,2014年1月24日,甲市域交通圏を「特定地域及び準特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法」(以下「特措法」という)3条の2所定の準特定地域に指定した。同日,特措法16条・16条の4および17条の3の規定に基づく国土交通大臣の権限を委任されているBは,以下の内容の「運賃変更命令等に関する公示」(以下「本件処分基準」という)を行った。すなわち,①事業者が特措法16条の4第1項に基づき届け出た運賃が同法16条1項に基づき指定された公定幅運賃の範囲内にない場合,当該事業者に対し,公定幅運賃に適合する運賃を届け出るよう指導を行う(状況に応じて複数回行う)。②上記指導後,正当な理由なく公定幅運賃の範囲内の運賃に設定した運賃変更届出がされない場合には,15日以内に運賃変更届出を行わなければ運賃変更命令の対象となることを勧告する。③上記勧告後15日を経過しても運賃変更届出を行わない場合には,運賃変更命令を発動することを前提に行手法に基づき当該事業者に対し弁明書の提出の通知を行ったうえで,運賃変更届出書の提出期限として15日程度の期限を付して,運賃変更命令を発令する。④上記期限までに運賃変更届出書を提出しない場合には,再度,運賃変更届出書の提出期限として15日程度の期限を付して,運賃変更命令を発令する。⑤1回目の運賃変更命令に違反した場合,60日車(「日車」とは,日数と自動車の台数との積をいう)の自動車の使用停止処分を行う。⑥再度の運賃変更命令に違反した場合,事業認可取消処分を行う。
 Bは,同年2月28日,特措法16条1項に基づき,適用日を同年4月1日として,甲市域交通圏におけるタクシー運賃の範囲(以下「本件公定幅運賃」という)を指定し,公示した(以下「本件指定」という)。本件公定幅運賃は,本件自動認可運賃とほぼ同じ金額(消費税増税分のみ上乗せ)になっていた。A社は,同年3月28日,特措法16条の4第1項に基づき,本件認可による運賃と同一の金額をBに届け出た(以下「本件届出」という)。同年4月3日以降,BはA社に対し,電話等により,運賃を本件公定幅運賃の範囲内に変更するよう複数回の行政指導を行ったが,A社は,本件公定幅運賃は著しく不合理であると考えており,指導に従わなかった。A社は,このままではBから様々な不利益処分を受けるおそれがあるのではないかと考え,同車の社員は同月10日,弁護士Cに相談した。

〔設問〕
1.A社がBから不利益処分を受けることを予防し,本件届出に係る運賃によって営業を続けるためには,どのような訴訟を提起し,どのような仮の救済を申し立てるべきか。考えられる手段を複数挙げ,それらが訴訟要件・申立要件を満たすか否かを検討しなさい。
2.A社は,本件指定,運賃変更命令,自動車の使用停止処分および事業許可取消処分の違法事由として,どのような主張をすることが考えられるか。想定されるBの主張も踏まえて,論じなさい。


もうお馴染みの訴訟類型と訴訟要件の検討,そして本案で裁量の検討という流れです。

大枠の流れは特に変わったことはないと思います。

ただ,最判平成24年の国歌斉唱義務の判例,

あれをちゃんと知っているか知っていないかで,

答案の書きやすさはだいぶ違うんだろうと思います。

僕もとてもあやふやでしたので,

この機会に判例を見直すことができてよかったです。

あと,本案のところで憲法適合的解釈とか言い出した時には,

呆然としました。

もうがっつり憲法ですよね……

≪答案≫
第1 設問1
 1 まずA社は,本件指定の取消訴訟(行訴法3条2項)を提起し,併せて本件指定の効力の執行停止(同法25条2項)を申し立てることが考えられる。
 「処分」とは,公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち,その行為によって,直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。
 本件指定は,国土交通大臣が,特措法16条1項に基づいて,その優越的地位に立って一方的に行う行為であるから,公権力の主体たる国が行う行為であって,法律上認められているものである。本件指定は,特措法16条1項に基づきされるものであり,本件指定が公表されてその効力を生ずると,本件指定に係る地域においては,指定された運賃の範囲内で運賃を定めて届けてなければならないことになるから(同法16条の4第1項,2項),本件指定が当該地域内のタクシー事業者に特措法上新たな制約を課し,その限度で一定の法状態の変動を生ぜしめるものであることは否定できない。しかし,かかる効果は,あたかも新たに上記の制約を課す法令が制定された場合におけるのと同様の当該地域内の不特定多数の者に対する一般的抽象的なそれにすぎず,このような効果を生ずるということだけから直ちに当該地域内の個人に対する具体的な権利侵害を伴う処分があったということはできない。したがって,本件指定は,直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものとはいえないため,「処分」にはあたらない(※1)
 2⑴ 次にA社は,Bがする運賃変更命令,自動車使用停止処分及び事業認可取消処分(以下「運賃変更命令等」という。)のそれぞれにつき,差止訴訟(行訴法3条7項)を提起し,併せて仮の差止め(同法37条の5第2項)の申立てをすることが考えられる。
  ⑵ア 運賃変更命令等は,いずれも抗告訴訟の対象となる「処分」であって,裁判所が判断可能な程度に特定されているということができるから,「一定の処分」にあたる。
   イ 運賃変更命令等がされる蓋然性について検討すると,BがA社に対してしようとする処分は,本件処分基準によれば,事業者の届出運賃が公定幅運賃の範囲内にない場合,①行政指導,②勧告,③運賃変更命令,④再度の運賃変更命令,⑤運賃変更命令違反に対する60日車の自動車使用停止処分,⑥再度の運賃変更命令違反に対する事業認可取消処分となっている。本件指定は2014年2月28日に,適用日を同年4月1日としてされたものであって,A社がこれに従わないことを理由とするBによる運賃変更命令等は,適用後初めて行われるものであるから,従来の処分の程度が定まっていない事例である。しかし,②③④については,それぞれ15日程度の期限が付されることから,15日程度で違反状態が生じ,次の処分手続きに移行することとなる。また③④⑤については弁明の機会の付与(行手法13条1項2号),⑥については聴聞手続(同項1号イ)をとらなければならないが,比較的短期間で次の処分が課されることとなっている。そして,本件処分基準の文言上,違反事実と一定期間の経過のみを基準として処分が行うこととされており,Bは本件公定幅運賃の適用日の直後からA社に対し繰り返し指導を行い,近日中に勧告を行う旨を告げるなど,本件処分基準を積極的に適用する姿勢を見せている。他方で,A社は,本件公定幅運賃が著しく不合理であると考えており,運賃変更命令が発せられても従う可能性が低いことからすると,A社に対する運賃変更命令等がされる可能性をうかがわせる事情が存するということができる。したがって,運賃変更命令等がされる蓋然性は認められる(※2)
   ウ 「重大な損害を生ずるおそれ」とは,国民の権利利益の実効的な救済及び司法と行政の権能の適切な均衡との調和から,処分がされることにより生ずるおそれのある損害が,処分がされた後に取消訴訟等を提起して執行停止の決定を受けることなどにより容易に救済を受けることができるものではなく,処分がされる前に差止めを命ずる方法によるのでなければ救済を受けることが困難なものであることを要する(※3)
 これを本件についてみると,前記のとおり,本件処分基準に従うと,運賃変更命令の発令から同命令の違反状態が生じるまでの期間が15日と短く,同期間をもって同命令に違反したことを理由としてそれに引き続く自動車使用停止処分と事業許可取消処分がされることとなる。また,運賃変更命令に違反して運賃を収受した場合には,刑事罰が科されることが規定されている(特措法20条の3第3号)。そうすると,短期間のうちに,本件処分基準に従って不利益処分が反復継続的かつ累積加重的にされる危険が現に存在する状況にあるということができる。また,A社のタクシー事業の遂行が相当期間禁止されれば,事業回復は困難となり,その期間が伸びるほど困難度は増し,不利益処分及び刑事罰を受けることによるA社に対する社会的信用の失墜も生じる。そうすると,一連の累次の処分がされることによりA社に生ずる損害は,処分された後に取消訴訟等を提起して執行停止の決定を受けることなどにより容易に救済を受けることができるものであるとはいえず,処分がされる前に差止を命ずる方法によるのでなければ救済を受けることが困難なものであるということができる。したがって,運賃変更命令等の差止訴訟については「重大な損害を生ずるおそれ」があると認められる。(※4)
   エ 前記のように運賃変更命令等は,その取消訴訟等及び執行停止を求めただけでは容易な救済を行うことが困難であることからすると,補充性の要件(行訴法37条の4第1項ただし書)を欠くものではない。以上の外,運賃変更命令の予防を目的とする事前救済の争訟方法として他に適当な方法があるとは考えられないから,運賃変更命令等の差止訴訟は,補充性の要件を満たすものということができる。(※5)
   オ なお,本件指定の影響を受けるA社が運賃変更命令等の差止めを求める訴えである以上,A社にその差止めを求める法律上の利益(同法37条の4第3項)が認められることは明らかである。
   カ 以上によれば,国に対する(行訴法38条1項,11条1項1号,特措法18条)運賃変更命令等の差止訴訟は,適法というべきである。
  ⑶ア 前記のように,A社は運賃変更命令等の差止訴訟を適法に提起することができるから,「差止めの訴えの提起があつた場合」である。
   イ 前記のように,運賃変更命令等により,A社に事業回復が困難となり,社会的信用も失墜するような損害が生じることから,「償うことのできない損害」が生じる。
   ウ 前記のように,運賃変更命令等は,短期間のうちに反復継続的かつ累積加重的にされる危険が生じているから,前記損害を「避けるため緊急の必要があ」る。
   エ 後記のように,運賃変更命令等の差止訴訟は,「本案について理由があるみえる」ということができる。
   オ 本件において,「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがある」とは認められない。
   カ 以上によれば,運賃変更命令等の仮の差止めの申立てを適法にすることができる。
 3⑴ またA社は,本件届出に係る運賃によって適法に営業を行い得る地位を有することの確認訴訟(行訴法4条後段)を提起し,併せて,同地位を仮に定める仮処分(民保法23条2項)を申し立てることが考えられる。
  ⑵ 確認訴訟においては,訴訟要件として,確認の利益として,①確認対象としての適切性,②方法選択の適切性及び③即時確定の必要性があることが必要である。①A社は,既に届け出た本件届出に係る運賃によって現在適法に営業を行い得る地位を有することの確認を求めているから,現在の法律関係を対象とするものであり,確認対象として適切である。②本件確認訴訟は,将来の運賃変更命令等の予防を主たる目的とする訴えではなく,本件届出に係る運賃によって営業が行えないことによる損害の発生・拡大の予防を主たる目的とする訴えと捉えることができるから,法定抗告訴訟を提起することができず,方法選択として適切である(※6)。③A社は,特に近距離の運賃を低く抑えることで,従来あまりタクシーを利用しなかった顧客を開拓して業績を伸ばしており,従前の運賃を維持することは経営戦略上不可欠であるところ,本件指定により,公定幅運賃内への運賃値上げを義務付けられ(特措法16条の4第2項),連日行政指導されたうえ,近日中に本件処分基準に従った勧告の手続に移行することを通告されて,従前の運賃で営業するというA社の法的地位に現実的かつ具体的な危険が及んでいる。A社が本件指定による公定幅運賃内への運賃値上げを余儀なくされ,その状態が継続すると,A社は経営戦略の核心を奪われ,これまで開拓してきた顧客を失うという損害が発生し拡大していくことにより,A社の倒産にも至りかねず,事後的な損害の回復が著しく困難になる。したがって,即時確定の利益が認められる。
 よって,本件確認訴訟は,その訴訟要件を満たし,適法に提起することができる。
  ⑶ア まず,行訴法44条は,公権力の行使に関わらない当事者訴訟には適用されないため,A社の同地位を仮に定める仮処分を認めることは,同条に反しない。
   イ 前記のとおり,A社に生ずる損害に照らせば,「著しい損害」が生じ,同仮処分を認める必要性も認められる。
   ウ よって,A社の上記地位を定める仮処分の申立ては,これを適法にすることができる。
第2 設問2
 1 本件指定の違法性について
  ⑴ A社は,本件指定は,Bに認められた裁量権の範囲を逸脱・濫用するものであり,違法であるとの主張を行う。
  ⑵ 特措法は,タクシー事業について,特定地域及び準特定地域における適正化及び活性化を推進し,地域交通の健全な発達に寄与すべきこと等の基本理念の下で(1条),標準的なタクシー事業に係る適正な原価に適正な利潤を加えた運賃を標準とし(16条2項1号),タクシー事業者間で不当競争を引き起こすこととなるおそれがないものであることとし(同項3号),国土交通大臣がタクシー事業に係る旅客運賃の範囲を指定するものとされているところ(同条1項),タクシー事業に係る旅客運賃の範囲の指定に当たっては,当該地域に関する諸般の事情を総合的に考慮した上で,政策的,技術的見地から判断することが不可欠である。そうすると,このような判断は,これを決定する行政庁の広範な裁量に委ねられているというべきである(※7)
  ⑶ もっとも,本件指定がBの裁量権の行使としてされたことを前提として,その判断過程が合理性を欠きその内容が社会通念に照らして著しく妥当性を欠くものと認められる場合には,裁量権の範囲を逸脱・濫用したものとして違法となる(行訴法30上参照)(※8)
 自動認可運賃は,道路運送法上の認可基準に適合することが合理的に推認される一定の範囲内の運賃については,申請が出されれば自動的に認可することとした行政運用上の措置にすぎず,自動認可運賃の範囲内にない運賃であっても法令に則り個別に審査してその適否の判断がされていたのに対し,公定幅運賃は,減車の推進を妨げるような過度の運賃値下げ競争を防ぐため,公定幅の範囲内にない運賃による営業を,行政処分やその違反に対する罰則によって厳しく禁じるものである。しかしながら,本件指定は,このような両者の趣旨や法的位置づけの差異を踏まえておらず,自動認可運賃の下限を下回る運賃が減車の推進を妨げるような過度の運賃値下げ競争の原因になるかどうかを考慮することなく,自動認可運賃の範囲を公定幅運賃の範囲にスライドさせたものであり,判断要素の選択や判断過程が合理性を欠く。その結果,Bの判断は,その内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合にあたるから,裁量権の範囲を逸脱・濫用したものであって,違法である。
 2 運賃変更命令等の違法性について
  ⑴ A社は,本件処分基準は,その内容が合理性を欠き,これに基づいてする運賃変更命令等は違法であるとの主張を行う。
 本件処分基準は,それ自体に国民に対する法的拘束力を認め得るものではないため(※9),行政規則としての性質を有する裁量基準である。裁量基準に不合理な点があり,行政庁の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には,その判断過程が合理性を欠きその内容が社会通念に照らして著しく妥当性を欠くものと認められ,裁量権の範囲を逸脱・濫用したものとして違法となる(※10)
  ⑵ 公定幅運賃制度は,減車の推進を妨げるような過度の運賃値下げ競争を防ぐ趣旨とであること,及び同制度がタクシー事業者の営業の自由と抵触するおそれがあるものであり,同制度を憲法適合的に解釈する必要があることからすると,公定幅運賃の下限を下回る届出をした事業者に対して,個別の事情を考慮せずに一律に運賃変更命令を発するのではなく,当該届出に係る運賃が減車の推進を妨げるような過度の運賃値下げ競争の原因となるかどうかを個別的に判断したうえで,運賃変更命令を発するか否かを決定すべきである。そうすると,本件処分基準が公定幅運賃の下限を下回る届出をした事業者に対して一律かつ機械的に運賃変更命令を発するものとしている点で,裁量権行使の基準として合理性を欠く。
 そして,A社は,特に近距離の運賃を低く襲えることで,従来あまりタクシーを利用しなかった者を開拓しているのであり,限られた需要を同業他社から奪うための運賃値下げ競争とは性質が異なる。したがって,このような事情を考慮していない点からすると,Bは専ら前記のように合理性を欠く本件処分基準に依拠して運賃変更命令等の判断をしていると認められるから,その判断過程が合理性を欠きその内容が社会通念に照らして著しく妥当性を欠くものと認められる。
  ⑶ よって,Bがする運賃変更命令等は,裁量権の範囲を逸脱・濫用するものであって,違法である。

以 上


(※1)都市計画区域内において工業地域を指定する決定は、都市計画法八条一項一号に基づき都市計画決定の一つとしてされるものであり、右決定が告示されて効力を生ずると、当該地域内においては、建築物の用途、容積率、建ぺい率等につき従前と異なる基準が適用され(建築基準法四八条七項、五二条一項三号、五三条一項二号等)、これらの基準に適合しない建築物については、建築確認を受けることができず、ひいてその建築等をすることができないこととなるから(同法六条四項、五項)、右決定が、当該地域内の土地所有者等に建築基準法上新たな制約を課し、その限度で一定の法状態の変動を生ぜしめるものであることは否定できないが、かかる効果は、あたかも新たに右のような制約を課する法令が制定された場合におけると同様の当該地域内の不特定多数の者に対する一般的抽象的なそれにすぎず、このような効果を生ずるということだけから直ちに右地域内の個人に対する具体的な権利侵害を伴う処分があつたものとして、これに対する抗告訴訟を肯定することはできない。もつとも、右のような法状態の変動に伴い将来における土地の利用計画が事実上制約されたり、地価や土地環境に影響が生ずる等の事態の発生も予想されるが、これらの事由は未だ右の結論を左右するに足りるものではない。なお、右地域内の土地上に現実に前記のような建築の制限を超える建物の建築をしようとしてそれが妨げられている者が存する場合には、その者は現実に自己の土地利用上の権利を侵害されているということができるが、この場合右の者は右建築の実現を阻止する行政庁の具体的処分をとらえ、前記の地域指定が違法であることを主張して右処分の取消を求めることにより権利救済の目的を達する途が残されていると解されるから、前記のような解釈をとつても格別の不都合は生じないというべきである。」最判昭和57年4月22日民集36巻4号705頁
(※2)「本件差止めの訴えに係る請求は,本件職務命令の違反を理由とする懲戒処分の差止めを求めるものであり,具体的には,免職,停職,減給又は戒告の各処分の差止めを求める請求を内容とするものである。そして,本件では,第1の2(3)ウのとおり,本件通達の発出後,都立学校の教職員が本件職務命令に違反した場合の都教委の懲戒処分の内容は,おおむね,1回目は戒告,2回目及び3回目は減給,4回目以降は停職となっており,過去に他の懲戒処分歴のある教職員に対してはより重い処分量定がされているが,免職処分はされていないというのであり,従来の処分の程度を超えて更に重い処分量定がされる可能性をうかがわせる事情は存しない以上,都立学校の教職員について本件通達を踏まえた本件職務命令の違反に対しては,免職処分以外の懲戒処分(停職,減給又は戒告の各処分)がされる蓋然性があると認められる一方で,免職処分がされる蓋然性があるとは認められない。そうすると,本件差止めの訴えのうち免職処分の差止めを求める訴えは,当該処分がされる蓋然性を欠き,不適法というべきである。」最判平成24年2月9日民集66巻2号183頁
(※3)「行政庁が処分をする前に裁判所が事前にその適法性を判断して差止めを命ずるのは,国民の権利利益の実効的な救済及び司法と行政の権能の適切な均衡の双方の観点から,そのような判断と措置を事前に行わなければならないだけの救済の必要性がある場合であることを要するものと解される。したがって,差止めの訴えの訴訟要件としての上記『重大な損害を生ずるおそれ』があると認められるためには,処分がされることにより生ずるおそれのある損害が,処分がされた後に取消訴訟等を提起して執行停止の決定を受けることなどにより容易に救済を受けることができるものではなく,処分がされる前に差止めを命ずる方法によるのでなければ救済を受けることが困難なものであることを要すると解するのが相当である。」前掲最判平成24年2月9日
(※4)「本件においては,前記第1の2(3)のとおり,本件通達を踏まえ,毎年度2回以上,都立学校の卒業式や入学式等の式典に際し,多数の教職員に対し本件職務命令が繰り返し発せられ,その違反に対する懲戒処分が累積し加重され,おおむね4回で(他の懲戒処分歴があれば3回以内に)停職処分に至るものとされている。このように本件通達を踏まえて懲戒処分が反復継続的かつ累積加重的にされる危険が現に存在する状況の下では,事案の性質等のために取消訴訟等の判決確定に至るまでに相応の期間を要している間に,毎年度2回以上の各式典を契機として上記のように懲戒処分が反復継続的かつ累積加重的にされていくと事後的な損害の回復が著しく困難になることを考慮すると,本件通達を踏まえた本件職務命令の違反を理由として一連の累次の懲戒処分がされることにより生ずる損害は,処分がされた後に取消訴訟等を提起して執行停止の決定を受けることなどにより容易に救済を受けることができるものであるとはいえず,処分がされる前に差止めを命ずる方法によるのでなければ救済を受けることが困難なものであるということができ,その回復の困難の程度等に鑑み,本件差止めの訴えについては上記『重大な損害を生ずるおそれ』があると認められるというべきである。」前掲最判平成24年2月9日
(※5)「また,差止めの訴えの訴訟要件については,『その損害を避けるため他に適当な方法があるとき』ではないこと,すなわち補充性の要件を満たすことが必要であるとされている(行訴法37条の4第1項ただし書)。原審は,本件通達が行政処分に当たるとした上で,その取消訴訟等及び執行停止との関係で補充性の要件を欠くとして,本件差止めの訴えをいずれも却下したが,本件通達及び本件職務命令は前記1(2)のとおり行政処分に当たらないから,取消訴訟等及び執行停止の対象とはならないものであり,また,上記イにおいて説示したところによれば,本件では懲戒処分の取消訴訟等及び執行停止との関係でも補充性の要件を欠くものではないと解される。以上のほか,懲戒処分の予防を目的とする事前救済の争訟方法として他に適当な方法があるとは解されないから,本件差止めの訴えのうち免職処分以外の懲戒処分の差止めを求める訴えは,補充性の要件を満たすものということができる。」前掲最判平成24年2月9日
(※6)「本判決後に現れた最二小判平成25・1・11民集67巻1号1頁の原審(東京高判平成24・4・26民集67巻1号221頁)は,省令の規定により特定の事業を禁止されている事業者が当該規定の無効を主張して当該事業を行うことができる地位の確認を求める訴えについて,公法上の当事者訴訟(公法上の法律関係に関する確認の訴え)として,確認の利益及び法律上の争訟性が肯定され,適法であるとしており(その第1審・東京地判平成22・3・30民集67巻1号45頁も同旨),上記確認の訴えの適法性については,上告受理申立ての論旨で争われていなかったこともあり,同最二小判は判断を示していないが,事案や事柄の性質等に鑑み,当該事件における当該訴えの適法性を肯定する原審(上掲東京高判平成24・4・26)の判断が是認できるものであることを前提として当該訴えにつき本案の判断がされたものと解される。しかるところ,上記事件の原審は,上記確認の訴えにつき,当該省令の規制によって,当該事件の1審原告(控訴人)らは,当該省令の規定の適用を受けるとすると,営業活動の制限を受け,その営業活動によって得ていた利益を得ることができなくなり,継続的に損害が拡大していくこととなるから,当該訴えは,『その不利益を排除しかつ予防すること』を目的とする公法上の法律関係に関する確認の訴えとして,その目的に即した有効適切な争訟方法であるということができるので,当該事件においては,その確認の利益を肯定することができると判示している。なお,上記事件の原審は,これに続けて,1審原告らが当該規定の効力を争う方法としては,その規制に違反した営業活動を行うことによって課される行政処分に対する抗告訴訟を提起することが可能であるが,そのような行政処分を受けることによる『経済的,社会的不利益』を回避する必要が認められる当該事件のような事案においては,行政処分を受けない段階における公法上の法律関係に関する確認の訴えである当事者訴訟による争訟が認められるべきことになるとも判示しているが,上記の判決理由の判示や事案の内容等に照らすと,上記事件の原審は,上記確認の訴えにつき,上記のような営業損害の発生・拡大という不利益の予防を主たる目的とする訴えと捉えたものと解され,行政処分の予防を主たる目的とする訴えと捉えて適法性を肯定した事例ではなかったものとみるのが相当であろう。」最判解民事篇平成24年度(上)147頁
(※7)「都市計画法は,都市計画について,健康で文化的な都市生活及び機能的な都市活動を確保すべきこと等の基本理念の下で(2条),都市施設の整備に関する事項で当該都市の健全な発展と秩序ある整備を図るため必要なものを一体的かつ総合的に定めなければならず,当該都市について公害防止計画が定められているときは当該公害防止計画に適合したものでなければならないとし(13条1項柱書き),都市施設について,土地利用,交通等の現状及び将来の見通しを勘案して,適切な規模で必要な位置に配置することにより,円滑な都市活動を確保し,良好な都市環境を保持するように定めることとしているところ(同項5号),このような基準に従って都市施設の規模,配置等に関する事項を定めるに当たっては,当該都市施設に関する諸般の事情を総合的に考慮した上で,政策的,技術的な見地から判断することが不可欠であるといわざるを得ない。そうすると,このような判断は,これを決定する行政庁の広範な裁量にゆだねられている」最判平成18年11月2日民集60巻9号3249頁
(※8)「裁判所が都市施設に関する都市計画の決定又は変更の内容の適否を審査するに当たっては,当該決定又は変更が裁量権の行使としてされたことを前提として,その基礎とされた重要な事実に誤認があること等により重要な事実の基礎を欠くこととなる場合,又は,事実に対する評価が明らかに合理性を欠くこと,判断の過程において考慮すべき事情を考慮しないこと等によりその内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限り,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法となるとすべきものと解するのが相当である。」前掲最判平成18年11月2日
(※9)「もともと国民に対する法的拘束力を認め得るものではないため,法律のお墨付きを直接得る必要もなく制定される行政立法のことを,『行政規則』という。」曽和俊文ほか『現代行政法入門[第3版]』37頁
(※10)「原子炉施設の安全性に関する判断の適否が争われる原子炉設置許可処分の取消訴訟における裁判所の審理、判断は、原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の専門技術的な調査審議及び判断を基にしてされた被告行政庁の判断に不合理な点があるか否かという観点から行われるべきであって現在の科学技術水準に照らし、右調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点があり、あるいは当該原子炉施設が右の具体的審査基準に適合するとした原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落があり、被告行政庁の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、被告行政庁の右判断に不合理な点があるものとして、右判断に基づく原子炉設置許可処分は違法と解すべきである。」


【事例研究行政法の他の問題・答案は下記のリンクから】
第1部 
問題1問題2問題3問題4問題5問題6問題7問題8
第2部
問題1問題2問題3問題4問題5問題6問題7問題8問題9問題10
問題11問題12問題13問題14問題15問題16問題17
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