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2019-02-21(Thu)

【新司】倒産法平成19年第1問

ついに平成10年代に入りました。

あと2年分です。

長い道のりでした。

気付いたら,今月書いた記事の数は,既に20を超えていました。

当ブログ開設以来初めての更新頻度です。

当ブログを開設した当初は,

まさかこんな司法試験の答案をひたすら掲載するだけのブログに成り下がるとは,

到底思ってもみなかったでしょう。

人生何が起きるか分かりませんね。

≪問題≫

〔第1問〕(配点:50)
 次の事例について,以下の設問に答えなさい。
 【事 例】
 A株式会社は,かねてから代表取締役Bの親友であるCの経営するD社に無担保で貸付けをしていたところ,この貸付金の回収が不能になったことから,経営状況が著しく悪化した。いち早くA社が支払不能の状況にあると判断した同社の取引債権者であるE社は,平成19年3月2日,裁判所に対し,A社についての破産手続開始の申立てをし,同月23日,破産手続開始の決定がされ,破産管財人Xが選任された。破産管財人Xは,調査の結果,Bに資産があることが判明したので,A社がD社に対して有する債権のうち回収不能になった3000万円について,Bに対して役員としての損害賠償責任を追及したいと考えている。
 他方,E社は,A社に対して500万円の債権を有していたので,A社に対する破産手続において破産債権の届出をしたが,Bの妻であるFは,平成18年10月に当該債権につきE社との間で連帯保証契約を締結していたことから,E社からの求めに応じ,同社が破産債権の届出をた後,当該連帯保証債務の全額につき弁済した。

〔設 問〕
 以下の小問1から3までについては,それぞれ独立したものとして解答しなさい。
1.⑴ 破産管財人XによるBの責任追及のための手続について説明しなさい。
  ⑵ 破産手続開始前から,D社への無担保の貸付けを理由として,A社の株主GからBに対し,回収不能分である3000万円について,適法に株主代表訴訟(会社法第847条第3項)が提起されていた場合には,破産管財人Xは,Bの責任追及のためにどのように対応すべきか。⑴で説明した手続との関係にも留意しながら解答しなさい。
2.Bは,A社に対し平成17年に2000万円貸し付けたとして,A社に対する破産手続において当該貸付金について破産債権の届出をしたが,取引債権者の多くは,A社の破綻の原因を作ったBが他の破産債権者と同様の配当を受けることに不満を持っている。他方で,Bは,以前から資産をはるかに上回る多額の債務を負っており,近々自己破産の申立てをすると噂されている状況にある。破産管財人Xとしては,Bが届け出た破産債権について,どのように対応することが考えられるか。
3.Fは,破産手続開始の直前まで,A社所有名義の建物につき,A社との間で賃貸借契約を結んで居住していたが,賃料債務については合計600万円が未払状態になっていた。Fは,E社に対する連帯保証債務についての弁済に係る以下の⑴⑵の債権を自働債権,上記賃料債務に係る債権を受働債権として,相殺しようとしている。⑴⑵のそれぞれの場合について相殺は認められるか。
 ⑴ 弁済による代位によって取得した原債権
 ⑵ 求償権


役員責任査定の申立ては,どっかの年でも出題されていましたね。

どの年だったか忘れてしまいましたが。

やっぱり繰り返し出題されるんですね。

一方で,45条を類推適用するとかいう考えは,正直すぐには思いつきませんでした。

言われてみれば,株主代表訴訟も債権者代位も法定訴訟担当ですもんね。

似てる似てる。

最後は委託保証ですが,無委託保証の有名な判例が出たのは平成24年。

したがって,当該判例の知識を使うことは求められていない,というか無理ですね。

しかし,当該判例が委託保証も含めていろいろ判示してくれているので,

それに乗っかってしまえば少しは楽にはなります。

≪答案≫
第1 小問1
 1 ⑴について
  ⑴ A社は,「取締役」であるBがD社に対して無担保で貸付を行うなどして,その回収不能によりA社の経営状況を悪化させたとして,任務懈怠責任に基づく損害賠償請求権(会社法423条1項)を有しているものと考えられる。したがって,A社の破産管財人であるBとしては,直接この損害賠償請求権を行使するため,通常の民事訴訟を提起することが考えられる。
  ⑵ もっとも,Xは,役員責任査定決定の制度(破産法177条以下)を利用することもできる。これは,役員に対する責任追及の実効性を上げるため,より簡易な決定手続によっても責任追及を可能としたものである(※1)
 Xが役員責任査定の申立て(同法178条1項)を行うためには,「その原因となる事実」として,BがD社に対して無担保で貸付けを行った任務懈怠の事実を疎明しなければならない(同条2項)。この申立てがあって場合には,裁判所は,「役員」であるBを審尋した上で(同法179条2項),理由を付して役員責任査定決定または役員責任査定の申立てを棄却する決定をする(同条1項)。
 裁判所において役員責任査定決定があった場合に,Bが「不服がある者」として,異議の訴えを提起してくる可能性がある(同法180条1項)。このとき,被告は「破産管財人」であるXとなるから(同条2項),Xは当該異議訴訟を追行する必要がある。
 Bが前記異議の訴えを提起せず,または提起したが却下されたときは,役員責任査定決定は,給付確定判決と同一の効力を有する(同法181条)。したがって,Xは,これを債務名義(民執法22条7号)として,Bの財産に対して強制執行を行うことができる。また,Bが前記異議の訴えを提起した場合に,役員責任査定決定を認可した場合にも,強制執行との関係で給付確定判決と同一の効力を有するから(同法180条5項),これを債務名義として強制執行を行うことができる。
 なお,一連の手続の間,Bが財産を逸失させることを防止するために,Xは,Bの「財産に対する保全処分をすることができる」(同法177条1項)。
 2 ⑵について(※2)
  ⑴ GがBに対し提起した株主代表訴訟は,A社がBに対して有する任務懈怠責任に基づく損害賠償請求権をGがA社に代わって行使する形態のものであり,その性質は法定訴訟担当である(※3)。そうすると,債権者が債務者に代わって第三債務者に対して権利を行使する債権者代位(民法423条1項)と,その性質,構造を同じくするものである。
  ⑵ この点,債権者代位訴訟の係属中に債務者が破産手続を開始した場合には,その訴訟手続は中断する(破産法45条1項)。これは,債権者代位の目的となる被代位債権が,債務者の破産手続開始により,債務者の破産財団に属することとなる(同法34条1項)と同時に,その管理処分権が破産管財人に専属することとなるため(同法78条1項),これに係る訴訟手続を中断させて,破産管財人に当該訴訟を受継するか否かを判断させるものである(※4)
 株主代表訴訟においても,会社が役員に対して有する損害賠償請求権は,会社の破産手続の開始と同時に,その破産財団に属することとなり,破産管財人にその管理処分権が専属することとなる点は,債権者代位の場合と異なる所はない(※5)。そうすると,破産法45条の規律は,株主代表訴訟の場合にも及ぶと考えることができるから,株主代表訴訟の係属中に会社が破産手続を開始した場合には,破産法45条の類推適用を受けるものと考える(※6)
  ⑶ そうすると,GがBに対して提起した株主代表訴訟は,A社の破産手続開始により,中断する(同法45条1項)。そして,Xは,これを受継することができる(同条2項)。
 なお,Xとしては,これとは別個に役員責任査定の申立てをすることができるが,Gの提起した株主代表訴訟の進捗を見て,これが短期間で完結する見込みであれば受継することとし,他方でこれが当分の間完結しない見込みであれば,受継をせずに別途役員責任査定の申立てをすべきである(※7)
第2 小問2
 1 BがA社に対して有する2000万円の貸金返還請求権は,A社の「破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権」であるから,「破産債権」である(破産法2条5項)。
 2 まず,Xとしては,Bが届け出た破産債権を,劣後的に取り扱うことが考えられる。
 しかし,破産手続においては,破産債権を平等に取り扱うことが要請され(同法194条2項),民再法155条1項ただし書のように権利変更を行うことができる旨の規定を置いていない。また,破産手続において特定の破産債権を劣後的に取り扱うための合意は,破産手続開始前にされている必要がある(同法99条2項)。そうすると,破産手続において,特定の破産債権を,破産手続開始後に劣後化することはできない。
 したがって,Xは,Bが届け出た破産債権を劣後的に取り扱うことはできない。
 3 次に,Xは,Bが有する破産債権と,A社がBに対して有する「破産財団に属する債権」である損害賠償請求権とを相殺することが考えられる(同法102条)。
 「破産債権者の一般の利益に適合するとき」とは,破産管財人による相殺が配当以外の方法により破産債権の満足を図る例外的な方法であることから,それによって破産債権の満足を程度を増加させることができる場合を意味する。本件では,Bが資産をはるかに上回る多額の債務を負っており,近々自己破産の申立てをすると噂されるに至っていることからすると,A社がBに対して損害賠償請求権を行使したところで,全額の回収は見込まれない。そうすると,Bを破産債権者としてA社の破産手続に入れた上で,Bからわずかながら上記の損害賠償請求権に対する配当を受け,これを配当原資に組み入れるよりも,上記相殺を行った方が,A社の破産手続における配当割合を増加させることができる。そうすると,破産債権に対する満足の程度を増加させることができるのであるから,「破産債権者の一般の利益に適合するとき」にあたる(※8)
 したがって,Xは,Bが有する破産債権と,A社のBに対する損害賠償請求権とを相殺することができる。
第3 小問3
 1 ⑴について
  ⑴ Fは,A社のE社に対する500万円の債務を連帯保証しているため,FがE社に弁済をした場合には,A社に対して求償権を取得することとなる(民法459条1項)。したがって,Fは,「破産者に対して将来行うことがある求償権を有する者」であり,FはA社の破産手続開始後にE社に対して全額の弁済をしているから,E社がA社に対して有していた500万円の債権を「破産債権者として行使することができる」(破産法104条4項)。したがって,Fは,「破産債権者」である。
 そして,Fは,A社に対して,未払賃料債務として600万円の「債務を負担」している。
 したがって,Fは,A社に対する500万円の債権と,600万円の債務とを相殺することができるのが原則である(同法67条1項)。
  ⑵ もっとも,上記代位取得は,「破産者に対して債務を負担する者」であるFが,A社の「破産手続開始後」の平成18年10月にしたものであって,これによって「他人の破産債権」であるA社に対する500万円の債権を取得したものである。したがって,両債権は,相殺が禁止される(同法72条1項1号)(※9)
  ⑶ よって,Fは,弁済による代位によって取得した原債権を自働債権として相殺をすることはできない。
 2 ⑵について
  ⑴ FのA社に対する求償権(以下「本件求償権」という。)が「破産債権」にあたるかについて検討すると,保証人は弁済をした場合,民法の規定に従って主たる債務者に対する求償権を取得する関係にある。そうすると,保証人の弁済が破産手続開始後にされても,保証契約が主たる債務者の破産手続開始前に締結されていれば,当該求償権の発生の基礎となる保証関係は,その破産手続開始前に発生しているということができるから,当該求償権は,「破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権」であって,「破産債権」にあたる(※10)
  ⑵ 本件求償権は,Fが代位弁済を行うことを法定の停止条件として発生する事後求償権であるところ,A社の破産手続開始時には停止条件が成就していないから,相殺適状にない。
 しかし,破産法67条は,相殺の担保的機能に対する破産債権者の期待を保護することは,債権者間の公平・平等な扱いを基本原則とする破産制度の趣旨に反するものではないことから,原則として破産手続開始時において破産者に対して債務を負担する破産債権者による相殺を認めたものである。したがって,破産手続開始後に破産債権者の有する破産債権に係る停止条件が成就した場合であっても,それが破産債権者の期待として保護に値し得るものであれば,これを自働債権として相殺することができる(※11)
 これを本件についてみると,FがA社の破産手続開始前にA社の委託を受けて保証契約を締結し,同手続開始後に弁済をして本件求償権を取得した場合には,本件求償権を自働債権とする相殺は,他の破産債権者が容認すべきものであり,同相殺に対する期待は,破産法67条によって保護される合理的なものである(※12)
  ⑶ よって,Fは,求償権を自働債権として相殺することができる(※13)(※14)

以 上


(※1)「破産した企業の取締役・執行役・監査役等の役員が違法な行為を行い,法人に対して損害賠償義務を負っている場合が少なくない。このような場合には,破産管財人はそのような法人役員の責任を通常の訴訟手続で追及することができるが,破産法は,このような責任追及を実効的なものとするため,より簡易な決定手続でも責任追及を可能としている。それが役員責任査定決定の制度である……。」山本和彦ほか『倒産法概説[第2版補訂版]』388頁
(※2)「株式会社について倒産手続が開始した場合に株主は株主代表訴訟を提起することができるか,係属中の株主代表訴訟はいかに処理されるかという問題がある。前者の問題については,株式会社の破産後には株主代表訴訟の提起は不適法とされ,また,会社更生手続の開始後に株主が株主代表訴訟を提起できるかという問題についても裁判例及び多数説は消極に解している。後者の問題については,係属中の株主代表訴訟は中断し,破産管財人又は更生管財人が株主の地位を受継することができるとされている。これらの裁判例や学説の根拠とされているのは,次のような点である。①破産財団又は更生会社の財産の管理処分権は破産管財人又は更生管財人に専属すること……②破産財団に関する訴え又は更生会社の財産関係の訴えについて,破産管財人又は更生管財人が当事者適格を有することになること……③既に係属している訴訟は中断し……,破産管財人又は更生管財人と相手方との間で受継されること……」最判解民事篇平成15年度(上)351頁
(※3)三木浩一ほか『(LEGAL QUEST)民事訴訟法[第2版]』125頁
(※4)「債権者代位訴訟(民423条)……についても,破産手続開始により訴訟手続は中断し,破産管財人が選択して樹形することになる。債権者代位については,破産財団の管理処分権が破産管財人に一元化することを根拠とする。」前掲山本ほか364頁
(※5)「会社が破産手続開始の決定を受けると,訴訟目的物ため損害賠償請求権の管理処分権は破産管財人に専属し,訴訟追行権限も会社から破産管財人に専属するので,まずその前提が欠ける。また会社財産に対して株主より優先する債権者ですら個別的権利行使等が禁じられるのであるから,劣後する株主にも会社財産に関する個別的権限を禁止するのが相当である。また破産管財人が取締役等との特殊な関係から損害賠償請求権の行使を怠ることはありえないので,株主代表訴訟を認めるべき実質的な根拠もないと解される。従前の訴訟手続も当然終了とはせず,破産管財人による受継を認めた方が,訴訟資料の利用を通じて訴訟経済に資することになると考えられる。これらの事情は,債権者代位訴訟における状況と同じであるので,株主代表訴訟につき本条の類推適用を認めて,中断および破産管財人による受継を認めるのが相当である。」伊藤眞ほか『条解破産法[第2版]』372頁
(※6)「株主代表訴訟は,取締役の責任追及の実効性を確保するため,株主が会社に代位して取締役に対する損害賠償請求権を行使するものであり,債権者代位訴訟とその性質を同じくする訴訟である。ところで,債権者代位訴訟は,債権者が債務者の第三債務者に対する権利について管理処分権を行使するものであるところ,破産手続の開始後は,破産管財人が総債権者の利益を代表して破産財団の保全,回復にあたることが予定されているものであり,破産者の債権者や株主との関係においても,破産財団の管理処分権は破産管財人が専有するところ,破産財団に属する権利を行使する債権者代位訴訟の原告は,債務者の破産により代位行使している当該権利に対する管理処分権を喪失して当該訴訟にかかる当事者適格を喪失すると解するのが相当である。次に,原告が当事者適格を喪失した後に破産管財人が訴訟を受継することが認められるべきか,訴訟は当然に終了するかが問題となる。この点,前述のとおり破産管財人は債権者代位訴訟の訴訟物の処分権者であり当該訴訟を継続させるかどうかの判断は,その時点における当該訴訟の状況等を考慮した上での破産管財人の判断に委ねるのが相当なこと,破産管財人が新訴を提起するよりも破産管財人の受継を認める方が訴訟経済に資するといえる面もあることから,債権者代位訴訟において,債務者が破産した場合には,民事訴訟法125条1項,破産法86条1項の準用により中断し,破産管財人においてこれを受継できると解することが相当である。右に述べたところは,債権者代位訴訟とその性質を同じくする株主代表訴訟にも当てはまるものであるところであり,したがって,株主代表訴訟の訴訟追行中において,会社が破産した場合,当該損害賠償請求権は破産財団に属する権利であるから,会社の破産によって訴訟は中断し,破産管財人においてこれを受継することができると解すべきである。」東京地判平成12年1月27日金判1120号58頁
(※7)ここは全くの想像で書きましたが,査定の申立ての趣旨が簡易の方法による責任追及であるということからすれば,従前の株主代表訴訟を利用するのと査定を申し立てるのとでどちらが便宜にかなうかという視点で選択することになるのではないかなあと思いました。
(※8)「破産管財人による相殺が破産債権者の一般の利益に適合する場合としては,相手方(破産債権者)も破産しているような場合の用に破産財団所属の債権の実価が破産債権の実価よりも低下している場合(破産財団が相手方の破産手続における配当によって回収できる分よりも,破産財団から配当する分が大きい場合)がある。」前掲山本ほか266頁
(※9)「保証人が破産手続開始後に弁済して取得することとなった原債権は保証人が破産手続開始後に取得した債権であり,保証人がその原債権を自働債権として相殺することは許されない(破産法72条1項1号)。本判決[最判平成24年5月28日民集66巻7号3123頁]も,このことを前提として,本件求償権を自働債権とすめ相殺がゆるされるか否かを論じていると解される。」最判解民事篇平成24年度(下)608頁
(※10)前掲最判平成24年5月28日は,無委託保証人の事後求償権の破産債権該当性について,「保証人は,弁済をした場合,民法の規定に従って主たる債務者に対する求償権を取得するのであり(民法459条,462条),このことは,保証が主たる債務者の委託を受けてされた場合と受けないでされた場合とで異なるところはない(以下,主たる債務者の委託を受けないで保証契約を締結した保証人を『無委託保証人』という。)。このように,無委託保証人が弁済をすれば,法律の規定に従って求償権が発生する以上,保証人の弁済が破産手続開始後にされても,保証契約が主たる債務者の破産手続開始前に締結されていれば,当該求償権の発生の基礎となる保証関係は,その破産手続開始前に発生しているということができるから,当該求償権は,『破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権』(破産法2条5項)に当たるものというべきである。」としており,委託の有無を問わないとしているため,委託保証人の事後求償権についても破産債権該当性が認められることになると思われます。
(※11)「相殺は,互いに同種の債権を有する当事者間において,相対立する債権債務を簡易な方法によって決済し,もって両者の債権関係を円滑かつ公平に処理することを目的とする合理的な制度であって,相殺権を行使する債権者の立場からすれば,債務者の資力が不十分な場合においても,自己の債権について確実かつ十分な弁済を受けたと同様の利益を得ることができる点において,受働債権につきあたかも担保権を有するにも似た機能を営むものである(最高裁昭和39年(オ)第155号同45年6月24日大法廷判決・民集24巻6号587頁参照)。上記のような相殺の担保的機能に対する破産債権者の期待を保護することは,通常,破産債権についての債権者間の公平・平等な扱いを基本原則とする破産制度の趣旨に反するものではないことから,破産法67条は,原則として,破産手続開始時において破産者に対して債務を負担する破産債権者による相殺を認め,同破産債権者が破産手続によることなく一般の破産債権者に優先して債権の回収を図り得ることとし,この点において,相殺権を別除権と同様に取り扱うこととしたものと解される。」前掲最判平成24年5月28日
(※12)「破産者に対して債務を負担する者が,破産手続開始前に債務者である破産者の委託を受けて保証契約を締結し,同手続開始後に弁済をして求償権を取得した場合には,この求償権を自働債権とする相殺は,破産債権についての債権者の公平・平等な扱いを基本原則とする破産手続の下においても,他の破産債権者が容認すべきものであり,同相殺に対する期待は,破産法67条によって保護される合理的なものである。」前掲最判平成24年5月28日
(※13)「本判決[前掲最判平成24年5月28日]は,主債務者の委託がある場合(委託保証)の法律関係を直接説示するものではない。もっとも,法定意見には,『(委託保証の場合の事後)求償権を自働債権といる相殺は,破産債権についての債権者の公平・平等な扱いを基本減速とする破産手続の下においても,他の破産債権者が容認すべきものであり,同相殺に対する期待は,破産法67条によって保護される合理的なものである。』との説示があり,この求償権を自働債権とする相殺ができることを前提としていると解される。」前掲最判解613頁
(※14)「破産法72条1項1号の類推適用の場面において,本判決[前掲最判平成24年5月28日]は,本件求償権を自働債権とする相殺について『破産者の意思に基づくことなく』との点を強調している。委託保証の場合には『破産者の意思に基づく』ということができ,状況が違うと考えているのではないかと考えられる。」前掲最判解618頁




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