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2019-02-20(Wed)

【新司】倒産法平成20年第2問

何やら今日は夕方に雨が降るようですね。

洗濯物を干しているので,早く答案を書きあげないと大変なことになってしまいます。

そんなデッドラインを勝手に設けながら,平成20年第2問です。

≪問題≫

〔第2問〕(配点:50)
 次の事例について,以下の設問に答えなさい。設問の各問いは相互に独立したものとして答えなさい。
 【事 例】
 A株式会社(以下「A社」という。)の従業員B及びCは,平成20年3月31日付けでA社を退職した。退職時にB及びCの給料はすべて支払われていたものの,A社の退職金規程に従えば,Bの退職金額は退職時の月給の5か月分相当額,Cの退職金額は退職時の月給の2か月分相当額であるところ,BにもCにも退職金はまだ支払われていない。A社は同年2月1日に貸金業者Dより500万円を,同日貸金業者Eより300万円を,いずれも弁済期は同年3月31日かつ無担保という約定で,A社の代表取締役Fの個人保証付きで借り入れていた。

 〔設 問〕
1.B及びCは,平成20年4月に入ってからFが会社財産の隠匿を始めていると疑っており,退職金の支払を確保するためにA社の財産を保全したいと考えている。Bは,A社について破産手続開始の申立てをすることができるか。また,Cは,A社について破産手続開始の申立てをすることができるか。B及びCの有する権利の破産手続上の地位を明らかにした上で理由を付して説明しなさい。
2.A社について平成20年5月1日に破産手続が開始された後,債権調査期日において,Dが届け出た貸金返還請求権について,既にFが弁済したことを理由に全額について異議が述べられた。以下の⑴⑵のそれぞれの場合に,述べられた異議がDの貸金返還請求権の確定を妨げるかどうかについて,理由を付して説明しなさい。Dの貸金返還請求権にはほかに異議等がないものとする。
 ⑴ 異議を述べたのは,貸金返還請求権について債権届出をしたEであった。
 ⑵ 異議を述べたのは,退職金請求権について債権届出をしたBであった。
3.平成20年4月に入ってからもA社はDに返済をしなかったため,同月7日にDがA社について破産手続開始の申立てをしたところ,この申立てに対する裁判がされる前である同月10日になって,A社は再生手続開始の申立てをした。この場合,A社の破産手続及び再生手続の帰すうについて説明しなさい。


何やら,設問1と設問2は,二者間の対比を求めているような形になっていますね。

これまで,破産と民再との対比はさんざんさせられましたが,

同手続内での対比はあまりさせられなかった気がしますね。

なので,少し動揺させられました。

というより,書き方が固まっていないので,困惑したという感じでしょうか。

その一方で設問3はバリバリの手続です。

これはとにかく手続をたくさん挙げていけばいいのでしょうかねえ……

羅列してもしょうがない気がしますが,

如何せん問題文に事情が落ちていないので,

細かく検討することもできないというか,求められていないのでしょう。

そういうことにしておきます。

≪答案≫
第1 設問1
 1⑴ Bは,A社に対し,退職時の月給の5か月分相当額の退職金請求権を有している。A社は未だ破産手続が開始されていないから,Bは「破産手続の終了前に退職した破産者の使用人」であって,上記退職金請求権は,その「退職手当の請求権」である。そうすると,「退職前三月間の給料の総額に相当する額」は「財団債権」として扱われる(破産法149条2項)。したがって,B社の有する上記退職金請求権のうち,退職時の月給の3か月分相当額の部分は財団債権となるから,当該部分についてBは「財団債権者」としての地位を有する(同法2条8項)。
 一方で,上記退職金請求権のうち,残部である退職時の月給の2か月分相当額に部分については,BがA社とA社の破産手続開始前に締結した雇用契約(民法623条)に基づいて生じた債権であるから,「破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権」であって,上記の財団債権に関する規律の適用を受けず「財団債権に該当しないもの」であるから,「破産債権」にあたり(破産法2条5項),Bは「破産債権者」としての地位を有する(同条6項)。なお,上記請求権は,「雇用関係」に基づいて生じていることから,BはA社に対し一般の先取特権を有しており(民法306条2号,308条),優先的破産債権として扱われる(破産法98条1項)。
  ⑵ Cは,A社に対し,退職時の月給の2か月分相当額の退職金請求権を有している。そして,これは「退職前三月間の給料の総額に相当する額」の範囲内であるから,「財団債権」として取り扱われ,Cは「財団債権者」としての地位を有する。
 2 それでは,B及びCは,A社の破産手続開始の申立てをすることができるか。
  ⑴ 破産手続開始の申立てをすることができるのは「債権者及び債務者」とされている(破産法18条1項)。この文言からすると,破産者に対して何らかの債権を有する債権者であれば,当然に破産手続開始の申立権者となるようにも思える。
 しかし,破産手続が,債権者の個別執行を包括的に禁止し,債務者の財産等の適正かつ公平な清算を図ることを目的とした手続である(破産法1条)ことに照らすと,このような手続によって利益を享受することができる者に限って,破産手続開始の申立権を認めるべきである。
  ⑵ これを本件についてみると,Cは財団債権者としての地位のみを有する者である。
 この点,財団債権者は,破産手続によらずとも随時弁済を受けることができ(同法2条7項),破産手続による利益を享受するものではない。したがって,破産手続開始の申立権者としての「債権者」には,財団債権者は含まれない(※1)
 そうすると,財団債権者であるCは,「債権者」にあたらないから,A社の破産手続開始の申立をすることができない。
  ⑶ 一方,Bは,財団債権者であるとともに,破産債権者でもある。
 この点,破産債権者は,破産手続によらなければ,これを行使することができないため(同法100条1項),破産手続によって配当を受けるという利益を享受することができる。優先的破産債権であっても,他の破産債権に優先する効力を有するに過ぎないのであって,あくまでその行使は破産手続による必要があるのであるから,上記の理は,優先的破産債権にも妥当する。したがって,破産債権者は,「債権者」にあたる。
 そうすると,破産債権者であるBは,「債権者」にあたるから,A社の破産手続開始の申立てをすることができる。
第2 設問2
 1 前提として,Dの貸金返還請求権は,DがA社の破産手続開始前に500万円を貸し付けたことにより生じたものであるから,「破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権」であって「破産債権」にあたるため,Dは「破産債権者」としての地位を有する。なお,当該破産債権については,特に優先的地位は認められていない(破産法98条1項参照)。
 2 小問⑴
  ⑴ Eは,A社の破産手続開始前に,A社に対し300万円を貸し付けているから,これに基づく貸金返還請求権は「破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権」であって「破産債権」にあたるため,「破産債権者」としての地位を有する。
  ⑵ Eは,貸金返還請求権について債権届出をしているから,「届出をした破産債権者」である。したがって,一般調査期日において,届出がされた「破産債権」であるDの有する貸金返還請求権について,「異議を述べることができる」(同法121条2項)。
  ⑶ 届出がされた破産債権について異議が述べられると,その破産債権に係る認否書記載事項は,確定が妨げられる(同法124条1項参照)。
 3 小問⑵
  ⑴ Bは,上記のように,財団債権者としての地位及び破産債権者としての地位を有している。したがって,Bが破産債権者としての地位を併存的に有している以上,退職金請求権について債権届出を行えば,「届出をした破産債権者」にはあたる。
  ⑵ もっとも,「異議」の制度は,他の債権者が実際の債権額よりも多い額で手続に参加すると,自分の配当額が減少する関係にあるために,他の破産債権者に対して異議を述べることができるとするものである(※2)。そうすると,異議の対象となる破産債権に対して優先的地位を有する者は,「異議」を述べる利益がないというべきである。
  ⑶ まず,Bの財団債権者としての地位についてみると,財団債権は手続外で随時弁済を受けるのであるから,他の債権者が実際よりも多い額を届け出たところで,自分の弁済を受ける額に影響しない。したがって,Bの財団債権部分については,「異議」を述べる利益を有しない。
 また,Bの破産債権者としての地位についてみると,上記のように,Bの有する破産債権は優先的破産債権である一方,Dの貸金返還請求権は優先権のない破産債権であるから,Bの破産債権はDの破産債権よりも優先的に弁済を受けることができる。したがって,Dの届け出た破産債権の額の多寡は,Bの受けることができる配当の多寡に影響を及ぼさないため,Bは「異議」を述べる利益を有しない。
 したがって,Bはいずれの地位によっても「異議」を述べる利益を有しないから,Bが異議を述べても,Dの貸金返還請求権の確定は妨げられない。
第3 設問3
 1 A社については,破産手続開始の申立てがされた後に再生手続開始の申立てがされている。
 まず,再生手続については,「破産手続によることが債権者の一般の利益に適合するとき」,すなわち清算価値保障原則の観点から破産配当利率が再生手続による弁済率を上回るときには,再生手続開始の申立てが棄却されることとなる(民再法25条2号)。
 2 次に,再生手続開始の申立てがされた場合には,裁判所は,破産手続の中止命令を発令することができる(同法26条1項1号)。
 3 そして,再生手続開始の決定がされたときは,破産手続は中止する(同法39条1項)。
 4 再生計画認可の決定が確定すると,破産手続はその効力を失う(同法184条)。
 5 一方で,再生手続が終了した場合には,裁判所は,職権で,破産手続開始の決定をすることができる(同法250条1項)。

以 上


(※1)「申立権を有する債権者は,開始した破産手続において破産債権者の地位を認められる債権者である(手続開始後財団債権者となるべき債権者には申立権は認められない)。」山本和彦ほか『倒産法概説[第2版補訂版]』350頁
(※2)「各破産債権者は,他の債権者が実際の債権額よりも多い額で手続に参加すると,自分の配当額が減少する関係にあるので,他の破産債権者に対して異議を述べる利益が認められる。」前掲山本ほか381頁



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